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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第45話 共演の終わり

◇◇◇

体の中。


 私が怒らないからディアとロディが代わりに怒る。

 私が我慢するからディアとロディが代わりに怒る。

 私が耐えるからディアとロディが代わりに怒る。


 勝手なことをする能力たちは今から消す。

 あなた達から奪えるものは全て奪った。


 先はまだ何が起きるのか分からない…。

 だけどディアとロディが怒ることは減らせられる。


 共演は終わりにしよう。


≪結界≫

外の音を遮断


≪結界≫

念のため自分に張る


≪強制命令:リュウとリンは私の指示に従え≫


「リュウとリンは止まれ!」


 2人が声から逃げるように移動しようとして止まった。やはり抗えない。


≪念話≫


「ロディ、魔石に入っている記憶と精神以外の魔力の使用者を空白にして持ってきて。そして専用の魔石を起動して。そのあとに作戦終了後に残った問題について家族への説明もお願い。」

「分かりました。ついにクロアも怒りました?魔石にしなくても大人の私が排除しました。クロアは優しすぎます!」


 隠していたから分からなかったのかな。怒り続けていたよ。

 それにロディは子供だから。女性を襲う男性の排除を続けてほしくない。自分で魔石を用意できなかったのが情けないよ…。


「明日は綺麗に迎えたいじゃない。それと死黒森も復活させておいて。上位の魔獣が集まる場所として残しておいた方がいい。」

「分かりました。邪魔者たちが消えます。頑張ります!」


 邪魔だった。怒ってくれていた。ロディとディアの思いは全て伝わってきていた。だけど知らない振りを続けていた。無知で無力な私はそれだけしか戦う方法が分からなかったから。


 ごめんね…。


≪念話終了≫


「リュウは動かず話さない。リンは通路を作ってディアとクリスを呼んできて。」

「はい、分かりました。」


 リンが通路を作って小走りで部屋に向かった。

 少しするとディアとクリスを連れてリンが戻ってきた。


「お姉ちゃん、急にどうしたの?」

「ディア、眠っている?起きていると嫌な思いをするよ。」


 ディアが真剣な顔つきになった。


「絶対に起きてる!」

「分かったよ。私の側に来なさい。」


≪強制命令:クリスは私の指示に従え≫


≪結界解除≫

自分に張っていた結界を解除


≪2重結界≫

私とディアを結界で包んだ


≪2重結界≫

全員を結界で包んだ


 私たちと3人が少し離れて対面した。


「リンは部屋と通路を消して。」

「はい、分かりました。」


 リンを消せば部屋と通路が消えると思うけれど、検証はできないからね。


「リュウとリンとクリスは話さず横に並んで楽に座って。」


 状況を理解したリュウは眉を吊り上げ私を睨んでいる。リンは戸惑っている振りをしている。クリスは説教の続きを恐れているのかな?


「3人に質問をしていくから真実を答えて。」


「クリス、今は何年くらいの記憶があるの?」

「16年だよ。」


「記憶の内容は?」

「クロアの16年と私が必要だと思った記憶だよ。」


 最悪だよ…。

 クリスの記憶には意味があったはず。


「いつ、誰に、どのような理由で消されたの?」

「先程リュウに邪魔な記憶を消すと楽になれると言われて消したよ。」


 リュウの表情が明らかに変わった。焦っているのがよく分かる。

 だけど本当に自分の失態を理解しているの?


「リュウに質問するよ。私に無断で大切な情報を消したのは何故かな?指示を出したわけでもないのにクリスの記憶を消している。何故消したの?」

「今までと同じことをしただけだ。敵が来たら潰せばいいじゃねえか!」


 何を勘違いしているの?あなたが敵を潰せるはずがない。


「今回の作戦もクズ能力たちを消す作戦も竜王一家を殺したときも狂った自己回復を壊したときも、あなたの意思で魔法を使ったことがあるの?」

「ねえな。」


 会話するのが面倒になる返答。

 それに何故か偉そうにしている。今まで敵を潰してきたのは自分の魔法だからかな。今後もあたなを使い続けるのであればこのようなことはしない。そのくらい理解して。


「あなたに何ができるの?何も考えずに行動し私は死にかけた。ロディに作戦を聞きに行ったときに、ロディが魔力の流れを変えていなければ人形に念話されて私の頭が吹き飛んだのかもしれなかった。クソ雑魚が偉そうな態度をとるな。無断で記憶消去、考えなしの行動、何も考えられない、自力で成長できない。今回の作戦前に消すべきだったと後悔しているよ。拷問か消滅。好きな方を選べ。ディアに関係ないことであれば最期の会話には付き合ってあげるよ。」

「精神がク…。」


氷魔法(アイススピア)


 今の話を聞いていなかったの?


「口に槍が刺さって何も言えないの?仮想体だから軽く抜ける。早く槍を抜いて自分の脚に刺せ。」


 私の頭に突き刺せる絶好の機会だと思っているね。能力が私の影響を受けていなかった検証ができたよ。一瞬で濁ったからね。


「お別れ前に教えてやるよ。仮想体は痛みを感じねえ。それに自分の頭の中だと忘れているのか?馬鹿はこれでお終いだな!」


 仮想体は魔力で作られた存在。記憶と精神も複写されている。攻撃を受けたり精神的に辛いことがあれば本体に戻らず消せば何も影響はない。分身計画は仮想体からの発想だと気づいてもいないみたいだね。どんどん濁っていくね。


氷魔法(アイススピア)

氷魔法(アイススピア)


 氷の槍を2本出してリンとクリスに投げた。


「槍が頭に刺さらずに折れたことにすら気づけない。あなたは拷問で決定。リンとクリスはリュウをその槍で好きなだけ刺していいよ。あなたの精神が濁っていなかったのは何も考えていないから。少し刺激すればすぐに濁った。」


 リンが必死に槍を刺し続けている。私の敵を刺しているように見えるよ。

 クリスは刺す理由がないみたい。救出されたばかりだからなのかディアの説教の影響なのかボンヤリとしている。


「お疲れ様。リュウは動くな。ディアのこと以外で何か言いたいことはある?」

「最初から俺を利用して捨てる計画だったのかよぉ!?ふざけるなぁー!」


 精神が濁ると演技するようになるのかな。泣き落としが今更通用するはずがない。それをするとは思わなかったけれどね。


 ディアに袖を引かれた。

 そろそろロディが来る頃でもあるね。


≪結界変更≫

≪結界変更≫

ロディも結界内に入れるように変更


「ディアの質問に正直に答えて。」

「お姉ちゃんに泣き落としが通用すると思うとか馬鹿だね。泣いて許されるのなら拷問なんてされてないよ。本当にどいつもこいつもお姉ちゃんを大切にしない!利用して知識を得て自分が凄いと偉ぶる。私とロディは計画勝負する。お前は何をして遊ぶつもりだった?それすらもお姉ちゃんに聞かなければ分からないだろ。」

「遊ぶ予定なんて決めてねえよ。そのときに遊びたいことをすればいいだろ!」


 敵は残っている。クズドラゴンの親玉で遊んでいた存在がいる。自分の情報は徹底して隠し私の情報は得ている。厄介な敵だよ…。


「私が相談せずに勝手に行動したからお姉ちゃんはクズ能力たちに縛られた。寄生された。敵に狙われ力がなければ何もできないのにお姉ちゃんから力を奪ったのは私だから。ようやく解放される。お前は空っぽだよ。何も考えてないし何も感じてないから簡単に記憶を消せる。それに何も決められないし後のことも考えてない。お姉ちゃん、拷問するのは無理だよ。精神が弱すぎるからすぐに砕けて終わるもん。」

「もうすぐ専門家が来るから大丈夫だよ。」

「専門家が来ました。精神を複製し続ければいいのです。」


 完璧な登場だよ。待機していたのかな?


「そんなことできるはずがねえ。馬鹿じゃねえのか!?」


 馬鹿にロディの凄さが分かる訳が無い。


「この人の記憶を消して森での拷問5年分の記憶を入れて。そして精神を4つ複製して維持するように指示して。空間庫に置いておけば私たちが死ぬまで拷問できるでしょ。」

「10㎝の魔石で十分です。形を加工して武器の方に置きます。準備できました!」

「ロディならできるね。今すぐ始めよう!」


 ディアがご機嫌だよ。ロディの規格外な力に気づいたね。


「待て、ま…、キャー!」


 仮想体が消えた。

 悲鳴は女性だね。痛みを耐えている様子がない。


「キャー!」

「キャー!」


 魔石から悲鳴が聞こえる。途切れているから精神が砕けているはず。やはり耐えている様子がない。魔獣が怖いのか一噛みで終わりのようだね。

 痛みを感じたことがない作られた精神の人形だね。虚しくなる…。

 

「煩いので沈黙も入れました。」

「ロディ、悲鳴の間隔から作られた精神の人形だと分かった。クズ加護を拷問できなかったから今日で終わりにしよう。拷問は好きではないしロディの力の無駄遣いだよ。」

「お姉ちゃんは優しすぎるよ…。だけど決めるのはお姉ちゃんだよ。」


 ディアは私を気遣ってくれているね。本当に優しい妹だよ。


「2人をどのようにするのかは決めていないから、終わるまで魔石はロディが持っていて。」

「クロアらしいです。無駄な拷問は似合いません!」

「ロディ、私も力が使えるようにして。」


 私は索敵と感情把握を常に連携させて維持している。それに私たちと孤児院と関係者を守る結界と幻影も維持している。自分を守る結界も同じものを維持している。リュウとリンが消えたと敵に気づかせない。

 悪意を持つ気体を閉じ込めてから同じように魔法を使っていたのだけれど、魔力が同じだから予想通り気づかなかった。

 5ヵ国で女性を襲う男性の排除だけはロディに専用の魔石を用意してもらった。男性恐怖症でその状況を意識するのが怖い。男性を想像するのも怖い。そのための魔法を考えようとするだけで体が震えてしまう。


 結局何もできなかったよ…。


「感情把握と思考誘導は悪人や問題のある人にしか使わない。守らないと泣かせるよ。」

「一緒に遊ぶ子たちに能力を使ったりしない。まずはロディの精神を解放する。そのときは封印を解いた状態にする。高性能な人形を作るときも封印を解いた状態にする。」


 ロディの解放は最優先だね。


「ロディ、入れてあげて。そのあと家族への説明を続けて。また呼ぶからお願いね。」

「分かりました。勝負するまでは封印解除です!」


 2人で協力すればロディの解放が早まる。

 すぐにロディはディアに能力と知識を入れに行った。


「次はリンに質問する。何故私の指示を無視したの?」

「見えない魔力を見える状態にしておかなければ研究できないと思ったからです。」


 あなたの予想通りの質問をしてあげる。少しの間だけ何も気づいていないように思わせてあげる。私を持ち上げておいて見下していたのだからお互い様だね。


「自己回復は一月私を実験体のように扱った。そうなのでしょ?」

「感情を入れたときの反応を観測していました。」


 何の意味もない訓練を続けた。クズ能力たちにお母さんを寝る場所としか思っていない記憶を見せ続けて油断させる必要があった。能力を信じていると思い込ませる必要があった。

 ディアが我慢していたのは完全に想定外で私の力不足でしかない。

 

 ディアが変わらなくて本当によかった…。


「これから先はどのように過ごしたいの?」

「残って研究や実験をしたいです。」

「お姉ちゃんの専属医じゃないの!?」


 ディアが少し怒っている。私のことになるとすぐに怒るね…。


「自己回復が自分の居場所を求めた結果です。」

「それで何を隠れてするつもりなの?」


 強制命令に抗えないのに演技を続けられる訳が無い。


「元の人間を作るつもりです。」


 敵に都合のいい体にされる前の状態を知らないでしょ。


「私たちに話すとまずいと思っていることは何かな?」

「襁褓の男の子を触って気絶するクロアが楽しみです。」

「お姉ちゃん、拷問でいいよ!」


 ディア、怒りすぎだよ…。


「私たちに話すと一番まずいと思っていることは何かな?」

「クローディアとお母さんを解体したいです。3人いるのですからいいですよね?」

「お姉ちゃん、こいつは拷問で決定だよ!」


 怒りが増していくね…。


「ディア、私がどのように戦ってきたのか冷静に見ていて。」

「分かったよ…。」


 責任を感じさせてしまった。常識を学びたい…。


「私たち家族のことをどのように思っているの?」

「拷問被害者が集まって家族ごっこをしているのです。見ていてとても楽しいです。」

「何で質問を続けてるの?」


 冷静になってくれたみたい。


「この人は自分が一番頭がいいと思っている可哀想な人だから。ディアに子供の死体を見せて追い詰める作戦はリンが考えたのでしょ?」

「その通りです。」

「何で分かるの?」


「3歳前後の女の子だけを大勢集めるのは難しい。だから人形に命令した。」


 不愉快だよ。


「思考誘導で感情操作しているから気づかれていないと思っていたでしょ?」

「その通りです。」

「あの子たちは思考誘導されてたの?」


「親を殺されたか誘拐された子が笑顔で偽の家族と暮らせるはずがない。」


 本当に不愉快だよ。


「88人の魔力拡散器を集めたのは自分の記録が残っていると思ったからでしょ?」

「その通りです。」

「魔力拡散器は記録するの?」


「穴が5つある。5人か4人分記録できると分かれば人形が出会った人は誰なのか探す。」


 肉体の痛みと精神の痛みは同じなのかな。

 こいつはリュウと違う。幼い子を平気で殺しているのだから過去にも同じようなことをしている気がする。88回殺してから拷問したい。


「リュウに記憶を消させたのは思考誘導でしょ?」

「その通りです。」


「何もしないのは馬鹿な小娘に指示されてムカついたからでしょ?」

「その通りです。」


「崩れた演技をして相手を騙したと報告したでしょ?」

「その通りです。」


「魔法を付与されているのを隠しているつもりだよね?」

「その通りです。」


「ディア、自己回復には精神を砕く力がある。だから私たちを見下している相手がいいと考えていた。前の自己回復も見下していたけれど、リンは更に見下していた。それに出会って一週間も経っていない。前の自己回復の記憶があったとしても私の努力を語る必要はない。私のことを皆が分かっていないと言う必要はない。何故そのようなことを言ったと思う?」

「自分が優れていると自慢したいから?」


 正解。全て分かっている私は優れていると言いたいだけ。下らない理由だよ。


「リンになってからもクズの親玉からの嫌がらせが続いた。人形がお茶会と聞いて報告すると思う?」

「お姉ちゃんの人形は何も気づいてないしお母さんとフィオナ姉ちゃんの人形はクズの親玉についてのみ送るように設定されてるはずだから送らないと思う。」


 正解。お母さんと姉さんの人形がお茶会に合わせて強制命令を発動する理由がない。


「リンの目的は何だったと思う?」

「自分に入っている人形の破壊とクズの親玉を殺す。」


 全問正解。そういえば封印を解除していたね。


「リュウにリンの魔法を気にしないと思考誘導を付与する。そしてリンは体内だけを索敵していた。リュウが突然ロディに計画を聞きに行ったときに不味いと考えたリンは人形に何もさせないようにした。私は偶々ロディが魔力を人形に送らなかったから助かったと言ったけれど、人形が消えるのか安全だと分かるまでリンは人形に張り付くよ。リンは人形を誤認していたからではなくリュウが問題行動を起こそうとしていたから急いで人形の元に行っただけ。監視されている私は何もできない。だから動いてもらった。」

「お姉ちゃんは思い通りに能力たちを動かすために信じてると演技してたの?」


 正解。皆を騙していたのだけれど、重要なのは力を持つ能力たちの動きだから。


「私はどのように思われてもよかった。守れるのならそれだけで十分だった。目的があって行動が読める相手の方が楽だっただけ。私は演技なんてしていないよ。リンが演技していただけ。何故分かるのかだけれど、人形が怯えて能力の記憶を見せてくれた。私はお店の会話を気にしている振りをした。実際はリンとリュウの動きを流し見した。万が一でもあってはいけないから。演技が下手なリンさん、何か言ったら?」

「この化け物!何故あのとき私に命令したの?」


 この世界は不愉快な敵が多いね。


「あなたが喜びそうな私だったでしょ。自分が上だと思っている馬鹿を見下すのは楽しいでしょ。ディア、狂った自己回復からみんな同じだよ。」

「その状態が続くと油断するし慢心するんだね。」


 この人は出会いから油断し慢心していた。目的と能力が明確だった。

 だけど残っている敵は違う。今まで以上に警戒しなければならない。


「そういうことだよ。主の指示を無視するのだから精神が濁っている。料理を食べてお店の雰囲気について蘊蓄を語れる自由があった。それなのに縛りに抗えない。私がいつから自己回復と魔法を疑っていたのか分からないでしょ。最初からだよ!13年間も私を無視していた能力たちを信じる訳が無い。だけど私は拷問により能力しか信じることができない馬鹿な小娘だと思われていればよかった。拷問か消滅どちらがいい?」

「消滅します。」


 残念だけど、どちらを選んでも結果は同じだよ。


「消滅するまで拷問がいいんだね。ディア、ロディを呼んで。」

「待ってください!そのような選択はありませんでした。」


 立場の違いを全く分かっていない発言だね。


「消滅方法を聞かないあなたが悪い。ディア、私は嘘を吐いた?」

「吐いてないよ。確認しない方が悪い。」

「それなら同じ言葉でロディに伝えてください。ロディが確認しなければ悪いですよね?」


 ディアとロディはほとんど変わらない思考をする。今回は同じ答えを出すよ。

 

「お待たせしました。今日はお店に行くみたいです。クロアが料理を食べてください。」

「お姉ちゃんも食べてみればいいよ。お店の料理は美味しいと覚えるだけだからね。」

「それなら早く終わらせないと。この人は消滅したいそうだよ。」


 味の分からない私がジャムクッキーの次に高級料理を食べることになるとはね。

 今日はたくさん話しているのに余り疲れていない。最近はロディも妹だと思っているからディアとロディのためだという強い思いの影響だね。


「分かりました。消滅するまで拷問です!」

「消滅を希望しているのです。何故拷問が入るのですか?」


 ロディの言葉は間違いなく突き刺さるよ。


「リンさん、あなたのことが大嫌いだからです。それともクロアが即消滅させると言いました?」

「ロディ、言ってないから同じでいいよ。」

「そちらの都合です。私の望んだものではありません。即消滅してくれないのであればリュウと同じ今日だけにしてください。」


 話す必要がないね。


「リンさん、クロアは自分の都合を押し付けてくる能力たちと戦い続けてきたのです。あなたが正しくあれば消されることもなく好きな選択をすることができた。あなたが無実ならここに残るか体を得て好きな国で暮らすこともできた。しかしクズ能力たちにはそれができない。クロアが自由にしてあげると言っているのに信じない。計画も無視した。だから消滅になったのです。あなたは88人の幼い子を殺している。リュウさんと同じ訳が無いでしょ。それではさようなら。」


 何も言わせずに拷問。

 リンもすぐに消えた。こいつも精神を作られた人形だね。


「クリスは非常識な言葉を言ったけれど、罪ではない。悪意を持つ気体を世界に解き放ったのかもしれない。初代クローディアを殺したのかもしれない。しかし証拠が何もない。だけど敵が残っているから命が狙われるのかもしれない。勿論私たちの命もだよ。これまでのことにあなたは関係ない。関与もしていない。だから望みを言ってみて。」

「残って後から私の罪が発覚したらどのようになりますか?」


 最初から人形だったとは思えない。何をしたのかな?


「クリスの精神が綺麗なら何もしない。濁っていて罪を犯していたら独自の判断で処罰する。幼い子や善良な人を殺すことに関わっていなければ追い出す。私たちは正義の味方ではないから悪を退治したりはしない。日常を邪魔されない限りは無視する。勘違いしてほしくないのが3人を追い出したくて今日にしたわけではないよ。今まで私は魔法や身体強化が使えなかった。精神が濁っていると分かっていても頼るしかない状態だったけれど、全て奪い取った。ディアとロディが怒っているのは初代が死んだ記憶と私が拷問されていたときの記憶が重なるからだと思う。まずは望みを言ってみて。」

「私はドラゴンを生み出したいの!」


 余りにも予想外だよ。ドラゴンを生み出す研究をしていたのかな?


「魔力拡散器を使ってではないよね。方法は分かっているの?」

「偽物ではなくて本物だよ!私はドラゴンを生み出す研究をしていた気がするんだよ。今の世界は昔の道具が何も残っていないと考えた方がいいよね。」


 私が分かるように言葉を選んでくれている。

 クリスを酷い扱いにした理由が敵の都合のような気がしてきた。悪意も感じないし、どちらかと言えばディアとロディに近い。夢を実現させようと研究していただけなのかもしれない。


「人間を生み出した実績があるから残っている可能性もあるよ。私は人間が使っている道具も他種族が使っている道具も見たことがないの。破壊した研究施設を完璧に消して埋めに行くつもりだから探してみる?この世界は偽のドラゴンに支配されてきたから凄く恨まれると思うよ。」

「恨まれるのには慣れているよ。というより箱を開けたのが私なら恨まれすぎじゃない?開けたから恨まれたのか別の理由があるのかも。研究施設についていきたいけれど、私はどのように動くのが一番かな?」


 判断を委ねてくれるのは助かる。頼れる大人になってくれるのかもしれない。


「ロディ、クリスは残るみたいだから魔石を元の場所に戻して邪魔な魔力は消してクリスに力を与えてあげて。そして最初はロディの精神を探す研究を手伝ってもらう。次の高性能人形については相談。ドラゴンを生み出すより人形を作る方が簡単だからね。力の使い方と仮想体の動かし方と戻し方を教えてあげて。私たちより知識があるからロディが早く見つかるかもしれない。」

「箱を開けたのがクリスさんで、それだけだとしたら恨まれすぎています。私たちが生きている間は世界を滅ぼさないと約束してください。クリスさんを魔獣より遥かに強くします。そのかわり手伝ってください。」

「記憶と精神の自動複製と追記、自動複写まで手伝って。そのあとなら僕たちも手伝うから。死んで終わりだとつまらないでしょ?ドラゴンをたくさん生み出そうよ!」


 封印を解除しているはずの3歳児たちが燃えている。ロディはすぐに動き出した。

 ドラゴンに惹かれているね。


「クリスが人形で活動する場合は冒険に行く前に記憶と精神を複製してから出発。どこに行ったのか魔力で追跡して死んだら人形を回収できれば最高だね。そしてまた記憶と精神を複写する。」

「それは必要だね。冒険に行くときは簡易型の人形にするよ。技術が盗まれないようにしたいからね。私の本体はクロアの中にいるから、人形で魔石を踏んで記憶と精神を複製してから出発すれば死んでも意識が戻って、新しい人形で再出発できるってことだね。死んだと判断されたら転移の魔法陣で帰還するか自爆。魔力を自然に還す方がいいね。そこまでは手伝うよ。明日からだね。力は持っていけないのかな?」


 理解力が高い。情報の大切さも知っている。自動で力の複製と複写までしてしまうのかな。遥かに私より賢いね。ドラゴンを生み出した後でいいから色々と教えてほしい…。


「力を保護する卵を作らないといけないね。普通は人形を作ってから力を与えるものだと思うけど挑戦しちゃう?」

「力というのは魔法技術全般のことだと思いますが魔石に保護した例がありません。昔はあったのかもしれませんが今では世界に存在しない技術です。新しい仕組みを作る必要があります。挑戦しますか?」


 ロディが戻ってきたのが早すぎる。話し合いは終わっているのかな?


「なるほど。自己回復の記憶保護と精神の保護に追加する必要があるね。よし、作ろう!そして技術は誰にも渡さない!そうすると魔力器も作る必要があるね。私たちは好き勝手にやりたいことをやってから全て消して消えよう!」

「いいですね!誰にも知られず先頭を走り続け全てを消して去るのですね。大人ですよ!」

「最初の計画で世界の先頭に立ってしまうんだね。研究所と空間庫を移動させよう。完全隠蔽だよ。今の場所は雑すぎるからね。」


 クリスが先導し始めたね。助手が2人もいるよ。魔力器まで作るの?

 それに世界への考え方が私に似ている。

 

 何もかもが昔より足りない世界でもドラゴンを生み出すまで走り続けそう。


「研究所と空間庫は凄く大事だよ。今の空間庫も不便すぎると思う。縮小して取り出すときに元の大きさに戻す。入れるときは縮小すれば隠蔽は簡単だよ。」

「クロア、お店の席に座りました。今日もカウンターです。代わります。」


 分身していたんだ。体を動かすだけなら今の分身でも十分だからね。

 全てがクリス仕様になりそうな勢いだね。

 

「代わるね。天才たちの会話についていけなかったよ。」

「お姉ちゃん、ここが世界の頂上だからね。今日は空間庫と研究所の移動で終わるよ。多分ね…。」


 凄く楽しんでいるね。全力3歳児だよ!

 

 何故か意味深にしているけれど、疲れるまで続けるだけだね。外の声は気が散ると思うから音を遮断する結界は残しておこう。


≪結界解除≫

私とディアを包んでいた結界を解除


≪結界解除≫

私たちと3人を包んでいた結界を解除


 クリスの記憶を消された損失が大きすぎる。


 記憶で見ただけなのに現状を把握するのが早い。危険なことを考えれば実現してしまいそうな勢いがあるのだけれど、情報の大切さをとても理解している。クローディアを最初に生み出したのがクリスでも驚かない。それに研究者としてリンより遥かに上の実力があると思う。精神が濁らずに楽しんで笑って去るのが一番だね。


 ふぅ…。


◇◇◇

高級店。


 体に入ったら声を出す前に全員が私を見ている。これも雰囲気の影響なのかな。 


 私が入ったからなのか体が凄く喜んでいる。

 嬉しいのは分かったから雰囲気を抑えて店内だけにして。


 大将の目には欲が全くないから怖くない。

 初対面だから挨拶が必要だね。席から立って軽く頭を下げた。


「初めまして。こんばんは、大将。クローディアです。愛称はクロアですがどちらで呼んでいただいても構いません。何も知りませんが今夜は料理の味を覚えて帰ります。よろしくお願いします。」


 大将は50歳くらいかな。衰えは感じない。腰も曲がっていない。白い服と帽子には汚れも皺もない。老人と呼ぶのは失礼だね。

 だけど辛いのを我慢している気がする。見た目とは違い目力がとても弱い。


「いらっしゃいませ。こんばんは、クロアさん。まずは席に座ってください。」

「それでは失礼します。」


 ゴクリと喉が鳴ったような気がした。後ろにいる弟子の2人だね。

 大将が軽く見ると頭を下げて私の視界から外れた。


 体はゆったりしていて。


「弟子がすみません。緊張しているようです。料理の味を覚えるとのことですが、どのような料理をご希望ですか?」

「私は今まで料理を食べたことがありません。味のついていない野菜と水。それと魔獣の肉を焼いただけのものしか食べたことがありません。恐らく皆が味に対する基準を持っていると思うのですが私にはありません。ですから全ての料理を美味しいと記憶します。いつも通りでお願いします。食べ方は姉を見て…。ん?あれ?何故2人とも髪と眉毛が黒いの?」

「それについては後で説明するわ。クロア、控えめに説明しても大将に伝わらないわよ。私も記憶で確認してみたわ。クロアの食事は雑草と水だけよ。幼い頃から洗脳されていて食事は全て美味しいとしか思えなかった。そして洗脳が解けたら美味が分からない。甘いや苦いといった味でさえ遮断されていたはずよ。砂糖を舐めても甘いと分からない。同様に塩を舐めても酢を舐めても分からない。味は分かるのだけれど、味覚も洗脳で壊されていたはずだから何とも繋がらない。最低でも調味料の味を覚えてから顔を出すと思っていたのに、敵を倒した記念だから?」


 最初は大将の料理を食べてきてという感じだったのだけれど、出ていくときは追い出されたように感じたよ。気のせいだよね、多分…。


「それよりも力を奪い取ったことの方が大きいかな。背中に付与された能力たちは全て邪魔だったよ。大将には控えめに言わなくてもいいのですね。私は拷問に耐えるだけの存在でした。拷問は激しく精神が簡単に砕けるようなものでしたから私は痛みに耐えることに特化されました。余分なものは削ぎ落して痛みにだけ耐えられるようにされました。普通の精神が円形だとすれば私は三角形です。洗脳を解いて精神を綺麗にした結果、三角形から外れていた部分が分からないのです。引越し前に一度だけ顔を出す予定でしたが、妹たちが全て美味しいと覚えればいいと言うので出てきました。記憶することだけは自信があります。」

「大将、これでも控えめに言っているわ。それとクロア、自分を抑えるのをやめなさい。それが癖になるわ。あなたが素でいられなくなる。耐えられない人とは付き合う必要もない。あなたもいつも通りにしなさい。」


 お母さんと姉さんは知っているから気づくよね。


「確かにお店に私が来るのは相応しくないと遠慮していたかな。それではいつも通りにします。」


 今日は私の体だからそのままゆったり…。ドサッと誰かが倒れる音がした。

 駄目みたい。嬉しいのは伝わっているから抑えて。


「大丈夫ですか?戻しましょうか?」

「気になさらないでください。そのままでお願いします。緊張感を持って料理しているつもりでしたが私もまだまだですね。経験を積んできたつもりでいましたが勘違いでした。この歳で本物に出会えました。お母さん、今後はクロアさんが来店されるのですか?」

「この子に料理を出せる人を見つける方が難しいわ。弟子を持つ一流の料理人に恥を掻かせてしまうのかもしれないのよ。それは余りにも酷でしょう。お持ち帰りできるお店の料理を食べてもらう予定よ。クロア、何を見ているの?」


 大将が料理するのを見る席ではないの?


「料理するのが見える席に座っているのだから見ない方がおかしいでしょ。この席は大将の手捌きを見る席ではないの?」

「クロア、料理する手順を見ているのは楽しいの?」


 新しいことを知るのは楽しいよ。普通のことをたくさん知りたい。


「楽しいよ。大将は料理する姿を見てほしくてこの席を用意したはず。包丁の動かし方や角度。それに切る厚さを均一にしている食材としていない食材がある。食材の形が変わっていくのを見るのも楽しい。鍋の火加減が違うのも意味があるはずだし、食材を入れた鍋は覚えているから、どのような料理になるのかも楽しみ。大将は食材を均一に切る技量も均等な重さに切る技量もある。それをあえて外すこともしているのだから、それにも意味があるよ。味が分からなくても料理になったときの違いは私でも分かるじゃない。美味しいと記憶するだけではつまらないよ。お店のこの席で楽しめることは全て楽しむ。」

「緊張しているだけなのかもしれませんよ?」


 緊張よりも疲れが見える。やはり気になる。


「緊張しているのが理由なら切り口が揃わないです。大将なら目を閉じていても同じことができるように見えます。それに料理する姿を見るのか見ないのかはお客さんの自由ですが大将は見られていると意識して料理してきたはずです。緊張しているのであれば楽しんでいるのではありませんか?緊張して料理できない人は料理人ではありません。緊張することに慣れるのは油断や隙に繋がります。私なら緊張していることを隠せるようにします。人により料理の味が変わると見せてしまうことになりますからね。全て小娘の冗談です。それでは大将、正直に答えてください。体調が凄く悪いですよね?」

「加齢を見破られましたか。」


 大将は加齢による辛さだと思い我慢しているのかもしれない。


「絶対に違います。言わずにいようと思いましたがやはり気になります。怪我でなければ恐らく重病でしょう。私の目は誤魔化せません。大将、小娘に命令されて座敷で横になりますか?火を止めて横になってください。」

「敵いませんね。火を止めて横になります。」


 座敷まで行き仰向けに寝てもらう。


≪帯電≫

微弱な電気を大将の全身に流して体内を確認


 大将の右肺の下側に黒い大きなものがある。いや…、全身に複数の黒い大小の点が見える。


≪念話≫


「ロディ、大将の右肺の下側を確認して。帯電の情報を送るから黒いものが何か教えて。」

「お待ちください…。クリスさんが肺がんの可能性が高いと言っています。魔法が使えるので悪性腫瘍を採取して浄化したあとに回復すれば治せるそうです。がんは自分の細胞の異常が原因ですので人にうつることはありません。但し、自分の細胞なので回復魔法をかけると悪化するそうです。」


 昔は有名な病気だったのかな。

 最初に回復魔法で確認は危険だという事が分かってよかった。


「ロディ、採取できるのなら研究所で保管しておいて。まずは外側と中心を手に持って浄化で消せるのか確認してみて。」

「分かりました。周りとは明らかに違うので採取できます。手に持った外側と中心を浄化します。両方とも消せました。」


 消せるのは治せる証拠だけれど、腫瘍の場所によっては消すと致命傷になり得る。

 帯電は臓器の中を把握できる能力ではない。それに肺に穴が開くのも危険だよ。


「ロディ、クリスに確認して。がんは心臓や胃や肝臓にもできたりするの?」

「お待ちください…。全身のあらゆる場所にできるそうです。」


 魔法がなければ完治するのが凄く難しい病気ではないのかな。


 封印も検証ができている魔法ではない。

 体を停止させる時間は短時間にするべきだね。


「がんを浄化した直後に大量出血する可能性がある。封印して10秒以内に全身を浄化して回復して封印解除。ロディ、心臓と肺が止まったのを確認してから対処だよ。」


 心臓からの大量出血は即死に繋がりやすい。


「分かりました。封印します…。心臓と肺の停止を確認。浄化します。回復します。封印を解除します。心臓と肺が動きました!」


 喜んだ小さなロディが大将の体の中から出てきた。

 ロディはディアと少しだけ髪色が違う。頭頂部から右目に向かって細い白線のような髪が伸びているのが特徴。私とディアは黒髪で黒目だから少しの変化で見分けられるようにしたのだと思う。

 私たちよりロディの方が知的に見えるね。


≪帯電≫

大将の全身にあった黒い点が消えている


「ロディ、ありがとう。やはり無知は怖いね…。」

「はい。勉強します…。忘れるところでした!クリスさんについて確認しました。3人と幼馴染の可能性は低いそうです。研究所から出ることが少なかったと言っています。それとドラゴンを生み出す研究をしていたのですが途中部分が消されています。その前後を確認して研究結果を最低でも5つ消されていると泣いています。がんは有名な病気で分かっただけだそうです。ディアが全力で宥めています。ドラゴンを100体は世界に残して消え去ってやると喚いています。」


 目覚めてからすぐ私の雰囲気について言ったことやリュウとリンについて確認したことを考えると、記憶の中で動いていたクローディアは人形ではなく操られていたことになる。クリスも本人だったことになる。そこまでしてクリスの記憶を消したかった。冒険の記憶は3人が幼馴染だと思わせる目的だと誤認させ本当の目的はクリスの記憶消去だと思う…。


 そのように思い込ませる罠だったら面倒すぎる。


 それにしても徹底しすぎている。昔は記憶消去だけでは駄目だったのかな?記憶消去によりできた隙間を元に戻すことができたのかもしれない。

 だけど完全記憶消去では駄目だったのかな?分からないことばかりだね。クリスに覚えていることを聞いて少しずつ慎重に進めていこう。


 制限時間があればお手上げかな…。


「ロディ、ありがとう。クリスにもお礼を言っておいて。あとから会いに行くよ。それと地下にある箱を隠蔽して研究所に移動させて結界で囲んでおいて。取り戻されるかもしれない。」

「はい。お伝えします。箱はすぐに移動します。それでは失礼します。」


≪念話終了≫


「大将、がんという病気を知っていますか?」

「知りません。初めて聞きました。ですが体が凄い楽になりました。」


 今の世界に病気を治す人はいるのだろうか?


「がんは自分の体を作っている細胞というものに異常がおきる病気です。全身に広がっていましたのでかなり危険な状態だったと思われます。ですが人にうつる病気ではありませんので安心してください。今後異常に気づいたら教えてくださいね。」

「老化が原因だと思っていました。ありがとうございます。まだまだ調理場に立てそうです。」


 やはり老化による影響だと考えていた。今は知られていない病気なのだから仕方ない。寝ていても治る病気ではなく死を待ち続けることになる。


「無事に治ってよかったです。」

「本当にありがとうございます。さあ、料理を食べていってください。」


 席に戻ると姉さんに肩を軽く叩かれた。


「何で分かったの?私も初めて聞いた病気だし気づけなかったよ。」

「命懸けの演技では負けないと思うよ。病名についてはクリスに教えてもらった。昔は有名な病気だったみたい。それにクリスは3人の幼馴染ではないね。ドラゴンを生み出すための研究結果が最低5つ消されているみたい。だけどクリスはディアに宥められて100体のドラゴンを生み出して消え去るそうだよ。敵について何も分からない最悪な状況だけれどね。」

「世界を疑えと怒ったディアの気持ちがよく分かるわね。私たちは派手に動かない方がいいのでしょ?」


 敵も私もこの世界を壊すだけの力がある。何かの計画があるのなら隠れて進めるのが敵にとって最善だと思う。そして敵はそれを選択する気がする。


 1万体のドラゴンを生み出して消え去りたい気分!


「殺されて終わりか敵が化けて家族になりすます可能性があるよ。それと封印されていた4人はロディが確認したよね。何も問題なかった?」

「4人とも人形が入っていたみたい。器から全身の精神まで全て解除していたよ。魔力拡散器も取ってから回復して再確認していた。黒と金と銀に分かれたから私たちは黒にしたんだよ。似合うかな?」


 ロディは丁寧に確認してくれている。それに親子を髪色で分けたんだ…。


「姉さんは上品さが増した気がする。幼い子たちの印象が楽しいお姉ちゃんから憧れのお姉さんに変わると思う。お母さんは茶色が強い黒色にした方が似合うよ。」

「やはり上品なお姉さんになったよね。髪色でここまで変わるとは思わなかったよ。私もお母さんは茶色を入れた方がいいと思う。真っ黒だと頭が重いよ。2人のお母さんにも言っておいて。」

「そうなの?もっと具体的な表現をしてちょうだい。」


 自分の色を足すのが一番だと思う。


「肌の色を足してみたら?」

「具体的すぎて驚いたわ。このような感じかしら?」

「それでも悪くないけれど、逆の方がいいよ。肌の色に黒を足すべきだね。」


 その方が似合う気がする。お母さんは明るい髪色の方がいい。


「細かいわね。このくらいかしら?」

「いいと思うよ。お母さんは明るい髪色が似合うからね。」

「私が2人の髪色に合わせた方が楽だったと思うよ。」


 一応聞いておこう。何を言われるのか予想できるけれどね。


「それは駄目よ。あなたもいつか分かるときが来ると思うけれど、明らかに特別な存在よ。同じ体なのにクロアが入ると輝いているわ。クローディアは美少女よ。世界一だと思うくらいにね。だけどクロアが入ると不純な目的では話しかけられないと思うわ。素になると言ったけれど、まだ加減しているでしょ。人が死ぬわけでもないのだからやめなさい。」

「大将、クロアが今から普段通りにするから緊張を楽しんでね。」


 お茶会のときにお母さんと姉さんも一瞬止まっていた。大将は絶対に動けない。


 特別な存在が狙われすぎだよ。

 敵の目的が私のように育つのを待っていたのだとしたら最悪だね。


 さて、今日は私の体だからそのままゆったりしていてね。


「分かったよ。大将、手が止まっています。大丈夫ですか?」

「大将、これが本当のクローディア。正直に答えてちょうだい。料理できそう?」

「体が動きません。顔も上げられません。クロアさんの性格は知っているはずなのに体が許してくれないようです。」


 呼吸はできるみたいでよかった。


「クロア、何をしていたのか教えてちょうだい。」

「雰囲気と言われても私は何もしていないからね。体に雰囲気を店内に抑えてゆったりしているように指示した。そのあといつも通りにしようとしたらお弟子さんが転んだから抑えるように指示した。今は私の体にしてゆったりとしているよ。」

「クロアの体は能力が動かしたりディアやロディが動かしたりしていたからね。体が喜んでいるのかな?私は気持ちいいけれどね。記憶の中にいた偽物が霧散したから。お母さんと私が料理を覚えてクロアは私と一緒に料理して偶に雰囲気を抑えて来店するのが一番じゃないかな?」


 私が体に入るだけで皆が楽しめないのも困るからね。

 体が私の指示を聞いてくれて助かるよ。


「そうよね。私は趣味もなかったし料理を覚えましょう。クロア、今日は雰囲気を抑えて大将の料理を食べて帰りましょう。大将も気にする必要はないわ。世界で本物に見られながら料理したことのある人はいないはずよ。本物は格が違うわ。大将はクローディアに何度も料理しているから自信があったはず。だけど本当のクローディアは主人格が入った状態のことを言うのよ。」

「大将、今まで見てきたクローディアとクロアを同列に見たら駄目だよ。クロアはクローディアの中でも格が違うから。ディアは本物だけれど、まだ幼い。ロディも本物だと言えるかもしれないけれど、やはり幼い。それにこの体で生き抜いてきたのはクロアだからね。」

「2人とも言い過ぎだよ。大将も気にしなくていいですよ。」


 本物や格が違うと言い過ぎだよ。私は人からはみ出たの?


「弟子たちが私を超えるまでクロアさんに出す料理は全て私が仕込み私が作ります。自惚れていたようです。今まで自分に厳しくしているつもりでしたが、その全てを体に否定された感じがしました。初心にかえって無心で料理すればよかったのです。今までの自分を守ろうとしたから動けなかったのでしょう。料理が替わる頃に席に座ってください。クロアさんは人と何が違うと思いますか?」

「魔獣に食べられて死にかけた回数です。以前は1万回以上と言っていましたが、何故か今は5万回以上となっています。陽が出ると食べられて陽が隠れるまで続きましたから1日で50回なのか100回なのか死ぬ寸前まで魔獣に食べられていました。回復する方も頭がおかしいです。お母さん、実際は何回くらい死にかけているの?」

「回復するのも死ぬ寸前で止めるのも頭がおかしいわよ。最初の1年で5万回以上は死にかけているわ。あの女の魔力が切れる様子がなかったのよ。記憶を共有した存在が5人はいたのかもしれない。今後は20万回以上としておきなさい。あなたが過去を見直す必要はないし当時数を数えている余裕なんてなかった。だけどあなたは生き抜いたの。そして全て潰した。特別で当然なのよ。」


 私の雰囲気は20万回死にかけたからなのかな。

 

 あの人の魔力が尽きなかったという情報は助かる。間違いなく人形だけれど、実在した人物なのかが気になるね。だけど人形だと気づいたのは邪魔な記憶を消すのが普通のことになっていた後だからリュウも簡単に思考誘導された。違うね…、リュウはいつでも簡単に思考誘導できた。

 偽の情報は必要ないと思っていたのだけれど、偽の情報しかないと気づいたのが遅すぎた。


 姉さんの能力たちの記憶から何か見つけることができたのかもしれないけれど、それよりも早く能力たちの影響を消したかった。精神を少しでも綺麗な状態のままにしたかった。


「そ…、それは余りにも異常ですね。どのようにして耐えたのですか?」

「激痛なので心と体が死にたがるのです。体から何かが抜けてしまうような感じでした。ですが何も逃がしませんでした。自分はこの世界にいるのだと必死にしがみつきました。何にしがみついていたのかは分かりません。土や草を握っていただけなのかもしれません。回復されるので死にません。守られているので死にません。心の底で思っていたはずです。私を生かしたことを絶対に後悔させると。残念ながら洗脳が日に日に強くなっていくので、そのような思いは浮かびませんでした。ですが今生きている私は後悔させました。全て奪いました。洗脳され監視され体中に爆弾を埋め込まれ、それでも潰しました。特別な感情はありません。日常を邪魔するのなら潰すだけです。」


 精神が濁っていたことを考えると絶対に復讐を考えていたはずだから。再度濁らないのが不思議だね。一度でも精神が光輝いたら濁りを浄化してくれるのかもしれない。


「クロア、分かっているでしょ。世界を掴んで認めさせたって。だからこの世界に生きているだけの私たちはクロアに逆らえない。世界を理解しているのにそれを理解していないのはおかしいよ。興味がないのは分かるけれどさ。」

「分かっているけれど、命令を聞く前に死ぬよ。かなり強い威圧になるはずだから。お母さんと姉さんでも今のままでは無理だよ。」

「クロアの言う通りだと思うわ。確実に死ぬでしょう。クロアの本気が強制命令より弱いはずがないもの。」


 私の力を知りたいのかな?


「よく分かったよ。お母さんの料理の味が分かるまで強制命令を出し続けるから。姉さんのクッキーが甘いと分かるまで強制命令を出し続けるから。嫌だったら抗ってね。」

「分かっているよ。ディアのように拗ねているようで実際に実行することをね。やめてよー!クロアは優しいからそのような酷いことはできないよ。とりあえず素の状態でまだ上があるのか教えて。」

「強制命令は本当にやめてちょうだい。それでまだ上があるの?」


 私を煽っているのかな?悪ふざけをする相手を間違えているよ。


「あるよ。私に代わると体が喜んでいるのが分かるからね。だからこの体は私のものだと強く意識するだけでいい。いつも抑えられている体は間違いなく大喜びだよ。見たいの?」

「大将も無心で料理しているし大丈夫だよ。見せてー!」

「今後ディアとロディが体を得たらその状態が普通になるのよね。見ておきたいわ。」

「私は無心で料理しておりますのでご安心ください。」


 目を閉じて体に語りかける

 少し私を見せることにする。今まで通り雰囲気は店内に抑えて私の体になりなさい!


 目を開ける…。


「無反応なのは酷くない。あれ、大将は?倒れていないよね?」

「あー、クロアだね!いやー、夜でよかった。近隣諸国の住民がクロアに向かって頭を下げている気がするよ。だから大将も頭を下げていると思う。私としては眩しい。照らされていないのに眩しいです!それより上はないよね?」

「大将、蹲る必要はないわ。まだ上があるの?」

「申し訳ありませんでした。お顔を拝見するような失礼なことはできません。」


 悪ふざけを続行するみたいだね…。


 目を閉じて体に語りかける

 雰囲気は店内に抑えること。誰も死なない程度に遊んであげなさい!


 目を開ける…。


「何で跪いているの。全力を出しちゃうよ?」

「クロア、調子に乗りました。許してください!」

「罰なら全て私が受けますから許してください!」


 目を閉じて体に語りかける。

 2人が跪いたから私の勝ち。遊び相手にもなれないようだね。ゆったりしていてね。


 目を開ける…。


「緊張感を楽しめたかな?」

「呼吸ができるー!音を出したら許されないと思ったよ。澄んだ雰囲気を怖く感じた。全力があるのは本当なの?」

「娘の顔すら見えない母はどうなのかしら。情けなさすぎるわ…。全力があるのかしら?」


 大将も復活したみたいだけれど、オドオドしている気がする。


◇◇◇

念話中。


「お姉ちゃん、何かしたの?」

「お母さんと姉さんが悪ふざけしてきたから、体に誰も死なない程度に遊んであげなさいと指示しただけだよ。」


 ディアは平気みたいだね。精神に影響するのかもしれない。


「ロディが喜んでいて、お姉ちゃんが体を気遣ったと意味が分からないことを言ったから何かと思ったけど本当なんだね。それで悪ふざけした2人は?」

「私に跪いて謝罪したよ。」


 ロディが喜んでいて体に指示したことも分かっている。

 私の体は話せない精神の集まりなのか1つの精神という事だね。


「あっはははは。お姉ちゃんを相手に悪ふざけとか理解力が足りないと伝えておいて。今度は私が見てる前でやってね。じゃあねー!」


念話終了。

◇◇◇


「あるよ。誰も死なない程度に遊んであげなさいと指示を出しただけだからね。今はゆったりしていてねと指示を出したよ。それとディアが私に悪ふざけとか理解力が足りないと笑っていたよ。」

「何も言えないわね…。それで全力はどのような指示を出すの?」


 実際は分からないけれど、世界最強だと言われているからね。


「そうだね。私の存在を世界に示しなさいかな。もしくは世界で遊びなさいだね。」

「何で世界が入るの?」

「そうよね。体を喜ばせるのに世界は関係ないでしょ?」


 世界の女王とか格が違うとか本物とか言っているのに。


「2人とも記憶まで消えたの?私が世界最強だよ。」

「そうよね…。理解力が足りなかったわ。世界最強に上を見せろと言って悪ふざけして生きているのですから奇跡ね。」

「クロアが命令を聞く前に死ぬと言っていたじゃない。雰囲気が澄んでいるから問題ないという油断が原因だね。ディアが笑い転げている姿が目に浮かぶよ。大将も世界最強を知ることができてよかったね。」

「自分の甘さを理解できました。すみません。とても真似はできません。」


 大将の料理はジャムクッキーよりもたくさんの味がした。料理を何品も食べたのだけれど、食べる順番にも意味があるように感じた。そして楽しんで食べるものだと知ることもできた。今の世界でも楽しめることは溢れていると思う。それにディアとロディが楽しいことを計画してくれる。クリスは凄いことをしてくれる気がする。


 私は焦らず慎重に一歩ずつ進もう。

一番苦しいときに何もしてくれなかった能力を信じるはずがありません。

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