第43話 悪意 後編
リンが人形を掴んで机の上に座らせて羽織を脱がせた。それだけしか着ていない。
羽織の外側には何もない。
内側には魔法陣が見える。
「リュウ、この魔法陣は何ですか?」
「結界だ。魔力を流すと証魔力を防ぐことができる。これで広域念話を防いだかもな。」
魔力器から受け取っている魔力を羽織に流せばいい。感情がある人形なら守るだろうね。
「リュウ、証魔力で羽織の裏表を見て。」
「外側には何もねえが内側に魔法陣がある。重なって見にくいが魔力を防ぐ結界のようだ。」
人形は絶対に守りたいみたい。但し、ゴミクズの魔力は通す気がする。
「リン、正面から縦に切り開ける?できれば上半身までお願い。」
「分かりました。顔を正面から切り開いていくのは気分が悪いのですが、そのようなことを言っている場合ではありません。」
人形の中には頭と上半身が紙のようなもので包まれている何かが入っていた。
「リュウ、結界で人形に一切魔力が入らないようにして。結界の中の魔力も排除して。この紙のようなものが魔力が入るのを防いでいる気がする。魔力が入ると爆破するのかもしれない。紙に魔力と証魔力で魔法陣が書かれていなければ結界から出して。」
「この紙のようなものは怪しすぎます。リュウ、準備ができたら教えてください。」
「よし…、結界の中の魔力も証魔力も消した。結界の中で紙を広げて見せてくれ。」
包まれていたものを取ると金属が2つ細い金属で繋がれていた。
「金属にしか見えない。私が魔力を含む金属で知っているのはアダマンタイトだけ。この金属が何が検査はできないよね?」
「それは難しいです。それに中は空洞かもしれません。魔力が入っている可能性もあります。紙のようなものはどのようなものでしょう?」
「2つとも魔法陣は書いてねえ。結界の外に出しても大丈夫だ。次はどうする?」
金属を切断しないと分からないけれど、それは最終手段でいい。
「その2つの紙のようなものに魔力と証魔力で穴をあけてみて。多分両方弾かれるはずだから。」
「人形に想定外の魔力が入るのを防止するためのものだと考えているのですね。」
「両方の紙に小さい穴をあけるぞ…。マジであかねえ。何だこれ?魔法を完全に防ぐとか勘弁してくれよ。」
これを潰せば敵は相当困るはず。だけど人形に命令ができているのだから紙を通過する証があるかもしれない。魔力の記憶や形次第では通るのかもしれない。
「専用の証が必要かもしれないし、そのために魔力を変えられているかもしれない。リンは紙がメスで切れるのか試して。リュウは記憶を一旦入れる分身を用意して。勿論結界で守って。頭から入れてみて。」
「分かりました。やはり切れません。この紙のようなものはゴミクズ以外の命令や攻撃以外は弾くでしょう。」
「クロアが警戒するくらいだから分身に記憶を入れていくぜ…。ここまで喧嘩を売られたら買うしかねえよな!ぶっ潰してやるよ!」
記憶の移動で爆破させる。嫌がらせではなくて殺しにきているね。
「全て想定内だよ。リンはお腹を少し削って魔法陣がないか確認して。リュウは爆破する部分を取り除いて人形の頭の記憶を何とか確認して。」
「爆破で全て消えています。つまり人形に魔法陣があると考えているのですね。」
「爆破する部分を取り除いてやるよ!任せろ。」
私は口を出すことしかできないね…。
「リュウ、爆破は一度だと考えないで。リン、本命は背中だよ。この体にされている人が必ずいる。お腹の皮を重ねるのは難しいと思う。落ち着いて作業して。」
「ここまで複雑な人形を証だけで作れるとは思えません。証は人を人形の大きさで複製している可能性が高いですね。人のお腹の皮を剥がすのは背中に比べて難しいです。殺意が湧きますね。」
「人体実験でこの体にされて朽ちる前に人形にされているのだろうな。俺たちと一緒で記憶は消されているが体を複製して送っているのか。絶対に助けてやるぜ。邪魔なものは全部消してやるよ!」
解剖を見ているだけで不愉快。最悪な気分になる…。
「よし、頭の記憶は読み込んだぞ。念話は使えるようだ。命令内容も入っている。強制命令の発動方法まで分かった。それとクロアについて複数の項目がある。クロアの記憶を送っているのではなく人形が得た情報を送っているようだ。笑えるくらいに空欄だぜ。嫌がらせをしてクロアの情報を増やしたかったのかもしれねえが…、違うな。クロアから直接情報を得るのは諦めて周りにいる人から情報を得ようとしていたんだと思うぜ。嫌いなものを男性じゃなくてゴミクズにして送れなかったのが残念だ。次は腹の記憶を見るぞ。」
「項目に私の情報を記入していたのね。それを証にして送っていた。強制命令の発動が分かれば対策できる。それに他の臓器に強制命令を出して何が起きるか試してみる必要もある。お腹には人形が警戒した記憶でも入っているのかな。」
「お腹には魔法陣が見当たりませんでした。やはり背中ですね…。」
背中にある魔法陣は想像できる。最後に期待するしかない。
「リン、人形の腕と脚を切断できるか確認して。切断できたら中に何か入っているのかもしれないから慎重に切り開いて。」
「分かりました。切断できます。金属は入っていないようです。切断面からは何も見えません。全て切り開いて確認します。」
「腹は全部読み込んだが爆破しねえ。なるほどな。これは証を作るときに必要な記憶だろう。3種類あるぜ。監視、警戒、排除だ。これはリンに送ってロディと確認した方がいい。送っていた証が何に該当するのかが分かる。」
後付けについては何も分からないのかな。そのように思い込ませようとしている気がする。
「ロディに確認するなら私にも送って。リンも伝えるのが難しいでしょ?」
「難しいですね。リュウ、必要な証についてだけクロアに送ってください。」
「それもそうだな。送るぜ!」
記憶だと思っていたけれど、違う。遥か昔の人が使っていた文字なのかな。付与についてもそうなのかもしれない。
「リン、精神がどこに入っているのか分かる?感情があったから精神は必ずある。」
「分かりません。絶対に精神があるはずなのに見えません。後付けされた臓器の精神を見えないようにされている可能性があります。私が見えないのですから全能力が見えないでしょう。無害な強制命令を体に発動させて後付けの臓器か確認するべきですね。腕と脚には何もありませんでした。それでは背中を慎重に切り剥がしていきます。」
「俺も背中を見るぜ。見逃せねえからな!」
自己回復の力でも見えないようにしている。人体実験が好きなドラゴンばかりだから警戒したのか?後から力を制限するくらいのことはしてくるだろうから。
但し、今の自己回復では見えないだけなのかもしれない。ゴミ掃除したら2人の力が上がった。器から出すことができれば更に上がるかもしれない。
「リュウは証魔力でも背中を確認していて。魔力を吸収して拡散する魔法陣があったら念ため切断して。とにかく最後に期待しているよ。」
「人体実験させられていたのは人間で脅されていた場合ですね。期待しましょう!」
「人間を脅して人体実験を続けさせるのかよ。マジで殺してえな!」
これ以上は何も言う必要がないね。リンとリュウに任せよう。
◇◇◇
1時間経過。
リンが明らかに拗ねているね。それにしても人の背中を何だと思っているのだろうか?
「クロア、何枚の魔法陣が入っていると考えていましたか?」
「羽織を消す魔法陣が2枚、肌を消す魔法陣が2枚、金属を消す魔法陣が2枚、紙のようなものを消す魔法陣が2枚、魔力拡散する魔法陣が2枚、魔力を通さない紙を消す魔法陣と証魔力を通さない紙を消す魔法陣を合わせて2枚、悪口などの嫌がらせが2枚、誰かが転移してくる魔法陣が1枚。全部で15枚かな。」
「人形を確実に消すにはそのくらい必要になるぜ。」
リンは魔法陣を組み合わせて同時に複数の効果が出せると思っていたのかな。リュウも同時に複数の魔法を使っているだけで1つの魔法に複数の効果はない。
「何故人形か寝ても爆破しなかったのですか?魔力器から魔力を送られていたはずです。」
「人間の背中で遊んでいて腹が立つけれど人形も魔力器も魔力を送る形を決めることができた。人形は直接魔力を浴びていたわけではないと思う。そして羽織を消したら分かるよ。」
「羽織だけ消すぞ。まあ、紙が入っているよな。つまり寝た人形は無敵状態だ。それに最悪な事実が判明している。記憶を再確認したが分からねえ。もしかしたら爆破する魔法陣の中に情報があったのかもしれねえ。人形に命令する魔力と人形が念話する魔力が分からねえ。それにこの人形がどのようにクロアの記憶を見て確認するんだ?未知の魔力に変換しないと無理だろ。」
何故今になって気づいたの?私が言った言葉を聞いていなかったのかな。怒りで前のめりになっているね。
「とりあえず落ち着いて。命令専用の証があって人形はそれを渡されてから項目を埋める。作り方も知らない時間制限で消える証。念話もそうなのかもしれない。人形は命令でしか動かないと考えた方がいい。今の魔力は理解できない使い方ができる。今見えていて理解できないものから解明した方がいいよ。怒りと焦りは視野を狭くする。研究員が残してくれた魔法陣が残っている。罠かもしれないけれど、動く!そのために地下室を隠蔽してあるのでしょ。黒死森に移動。被害者だったら見つけた魔法陣で邪魔なものは消して帯電で異常なものを見つけたら全て鮮血湖の中に捨てる。そして地下室に転移。全て完全隠蔽。敵の情報も意識せずに把握。狭い視野では危険だから冷静に動いて。それとお母さんと姉さんに睡眠魔法を重ねておいて。」
「クロアの言う通りです。今の魔力も証も解明できていません。未知のものを調査する状況ではありません。冷静に動いてください。」
「分かった!今から動くぞ。完全隠蔽で敵を監視してやる。睡眠魔法を重ねてからだな。」
強制命令は睡眠魔法を弾こうとしているのかもしれないから。本当に分からないことばかりだよ。だけどリンとリュウが成長すれば全て分かるようになる気がする。
「リン、移動しよう。外が見えない。ディア、行くよ!」
「分かりました。ディアちゃん、寝たふりはやめましょう。」
「助けた女の子の中に魔力拡散器を保持してる子が必ずいる。精神の奥にいる子からの指示だから。今回の敵は私が徹底的にぶっ潰すよ!」
ディアの言う通りだね。準備できたから救出しろと命令された気がする。
リュウが黒死森に移動して魔法陣を起動した。
茶色い目に茶色い髪を後ろで束ねている。羽織を着ている。間違いなく被害者だね。
<リュウ、急いで!>
≪爆破ばかり見てきたからよ。爆破する直前に送ってやった≫
完全に激怒しているね。冷静に行動するのは難しそうだね。
<怪しいものが入っていた?>
≪ああ、手と足に2つずつ埋め込まれている。マジで不愉快だぜ!≫
<何のために冷静になれと言われたのか理解していますか?>
鮮血湖に移動した。ヒュドラが飲み込んだら戦うのかな。クズ兄と来たことがあるけれど、蛇が1つの胴体にたくさんついている魔獣だった。それぞれの蛇が独立して動いているように見えた。
鮮血湖と呼ばれているのは魔獣が湖の水を飲もうとしたところをヒュドラに食べられる。ヒュドラは湖に潜って魔獣を食べるから湖が魔獣の血で赤く染まっているときが多いから。
湖全体が赤く染まるわけでもないけれど、人間はここまで入ってこれない。ドラゴンが名付けた可能性が高いね。
≪作戦通りだぜ。冷静に切れているんだ。いつものクロアに似ているだろ≫
自宅の地下室に移動した。
<リュウ、頭に人形は入っていないよね?魔力拡散器もないよね?>
≪ああ、確認したがない。これからどうする?≫
<爆破した場所は分かるのですか?敵の追っ手はどうですか?>
最強猪さんに真似されるのは恥ずかしい。注意事項を絶対に忘れていたよ…。
≪爆破したのは索敵範囲外だな。追っ手は2人来ている。2人とも真っ黒に染まった俺だな。精神を見なくても分かるぜ。その程度では絶対に俺は追えねえよ。ゴミクズの手下共が!ヒュドラに敵意を向けていたようだが突如消えた。俺の索敵範囲外で移動できるとしたら地下か空だ≫
<リュウ、代わって。その子が何故か気になる!>
<私も気になります。何故でしょう?>
リュウと代わった。見たことがある気がする。何故だろう?
「起きて、ねえ、起きて!助けたよ!」
「あ、ああ、あ!クロア!死んだはずだよね!?何で生きているの!?」
愛称で呼ばれた…。記憶を入れられているの?
「私の名前はクローディアだよ?何で知っているの?」
「そんなこと知っているよ。だからクロアじゃない。リンとリュウは?それに弱くなった?今までの強さがないよ。」
クローディアの雰囲気にすればいいのかな?
「それだよ!その絶対に負けないという雰囲気!クロアが私たちを殺せば勝てたんだよ!誰にでも化ける存在が遺跡で発見されたらしい。私たちはドラゴンに乗って世界を旅していたけれど、そいつと出会った。クロアを殺したのは私たちなんだよ。」
「今度は本気で潰すつもりだよ。あなたの名前を教えて。」
私が殺せたんだ…。殺しそこねているなんて情けない!
「記憶がないんだね。私はクリスティーナ。皆からはクリスと呼ばれているよ。」
「服を出すから着替えて。そのあとリュウに代わるから落ち着いてね。」
なるほど。最初から拷問して殺す予定だったわけだ。何人の関係ないクローディアが殺されたのか分からない。本当に最低で醜悪な世界。
「この姿は恥ずかしいね。すぐに着替えるよ。まあ、クロアがいれば安心だよ!」
≪リュウ、羽織を消して分身に記憶を入れてから記憶を確認して。私は産まれた瞬間から狙われていたみたい。殺せたのに殺さなかった。最低だね…≫
<話を聞いていたが悪いのは俺たちじゃねえか。すぐに代わる!>
仲間を殺せば殺せた…。何故私の仲間が犠牲にならなければならないの。そのようなことは正義の味方に頼んでよ。私は日常を楽しみたいただの少女だよ!
「お姉ちゃん、3人を殺してもつまらないじゃない。この世界になったのはお姉ちゃんのせいじゃないよ。何でお姉ちゃんだけが戦わないといけないの?おかしいよ!」
「その通りです!楽しめない世界のために戦っても意味がありません。悪いのは昔の人間たちです。遺跡を探検して封印を解いたのです。化け物はクローディアを殺し続ける世界を作りたいのでしょう。殲滅です!」
「爆発し続けているね。確かに3人殺して自分だけ生き残っても意味がないね。今回は私たちが楽しむためだから徹底的に潰さないとね!」
≪今からリンに記憶を送る。クズの親玉はこいつじゃねえのか?≫
「このドラゴンです。私たちが遺跡で見つけて孵化させたドラゴンではありませんか。飼い主に命令して嫌がらせとか殺してほしいみたいですね。それにクロアを殺したのは私たち3人です。洗脳され襲っています。ですがクロアはものともせず化け物だけを狙い続けています。本当の正体は分かりませんが見えない魔法を使っているようです。クロアはそれも避けています。そして私たちが自殺しようと首に刃物を当てた瞬間に後ろから刺されました。後ろから刺したのも操られている人間です。情けないです…。」
遺跡で見つけて孵化させたドラゴンの卵…。あとで私も確認しよう。
≪クリスの精神の場所は分かるか?≫
冒険中に出会っただけの私を殺すためにこの世界にしたの?それに私は殺されている。本当に意味が分からない。封印したのも私なのかな?
<同じ人形でしたから分かります>
≪吸収できるだろ?クロアの中が一番安全だ≫
私の体は人間保存器なの?
リンが入って成長したからできるのかな。着替えた服はどのようになるの?
<吸収します。リュウも中に入ってください。記憶消去などをした方がいいでしょう>
≪そうだな。事情がよく分かるはずだ≫
「何か吸われているけれど、大丈夫なの?」
「ああ、クロアの中に入るだけだ。色々教えてやるよ!」
それで了承するの?流石に怪しすぎるよ。
「吸収してもらった方がいいね!リュウがクロアの体を借りているの?反抗期は治っていないの?」
「それは言わなくてもいいだろ!」
クリスの体は崩れて消えた。服は残ったけれど…。
体の中にいるクリスは着替えた服を着ている。精神的な問題なのだろうね。
「あー、天使がいる!私はクリスだよ。あなたの名前は何ですか?」
「ディアだよ。お姉ちゃんの妹。クリス姉ちゃんは何をしてたの?」
ディアに魅了されたね。その気持ちはよく分かるよ!
「私は冒険の補助やドラゴンの世話係。それに魔獣の研究もしていたよ。私たち4人は幼馴染。クロアは圧倒的じゃない。世界中から求婚者が殺到していたよ。雰囲気を抑えていないクロアの前で立っていられたのが私たち3人しかいなかったというのもあるね。男性が群れるから冒険することにしたんだよ。それに私たち3人も同行した。クロアが死んでからの記憶はないんだよ。」
「いらないよ。知らない方がいい記憶もあるからね。とりあえずリュウに記憶入れてもらって。」
人体実験の記憶はいらない。私の仲間ばかり犠牲にして楽に死ねると思うなよ。
「クロア、楽しい記憶だけ入れてやろうか?」
「確認したいことがあるから全部入れて。あとで消してもらうと思うけれどね。」
凄く楽しんでいるね。世界中で色々な人に出会い料理を食べる。クズの親玉は緑の鱗のドラゴンみたいだね。トカゲに羽と角があるだけだね。ここか…。今は作業を進めよう。
「ちょっと!なにこれ!クロア死んでいるじゃない。私も見ていられないような拷問されて洗脳されて、名前まで利用している。何で出会っただけなのにここまでされないといけないの?向こうから襲ってきたから戦闘することになったんだよ。意味が分からない。殲滅だよ。殲滅!」
「リュウ、結界内に魔力拡散器を持っている人が必ずいる。幼い子たちの中に絶対いる。まずはクズドラゴン以外の人形を消して。結界も外からの念話を完全防止で。幼い子の体を切り開くつもりはないけれど、確認したいことがある。」
「命令は入れ代わる時間稼ぎだったのかもしれない。まずはお姉ちゃんの体を完璧にする。強制命令で自分だけ微かに震えろと頭から全身に命令して。リン姉ちゃんはそれで精神の場所を確認。臓器自体が精神なら全体が震えるはずだから。リュウが仕事を終えたらお母さん達に睡眠魔法を重ねて実験開始。私は暫く封印を解くことにする。」
「クズドラゴンを放置して相手を追い詰めすぎないようにするんだな。よし、仕事してくる。」
ディア、化け物だけを生き残らせる時間稼ぎだったのかもしれない。覚悟はできているの?確認することが多いね。
「クリス姉ちゃん、今のドラゴンはどのように見える?助けてほしいのかな?」
「これは手遅れだね。濁っているよ。リンとリュウに命令していたのならクロアに助けてと言うことくらいはできたはず。今までの嫌がらせは化け物の仕業に思えるけれど、放置でいいよ。クロアを殺すためだけにこの世界にしていたとしたら異常すぎる。私は全身の臓器に精神があると思う。命令を聞くだけの精神。人形が顔を変えているのも魔力拡散器を使っているのかもしれない。魔力拡散器を使って遊ぶのなら改造は必須だと思う。この臓器はもともと化け物だけのものだったはずだよ。自分の臓器を無償提供なんてあり得ない。リュウが戻ってきたら人形に魔力拡散器を入れよう。ロディは思いつく言葉を魔力拡散器にかけて。リンは全員を見るので忙しいでしょ。」
「そうですね。万が一全身の臓器が震えた場合は精神だけを破壊する方法を考えなければなりません。ですが記憶がなければ強制命令で言われた言葉を理解できません。リュウに手伝ってもらうしかありませんね。」
みんな本気で怒っている。私が殺しそこねたせいで十数万年も拘束されてきたのに…。
「リン、ロディを呼んできて。」
「分かりました。」
<お待たせしました。記憶を確認しましたが私は全種類の証を持っていました。使っていたのは警戒の証です>
「そうなのね。ところで証の形は変えられる?」
<はい。証の記憶の中に形についても入っているはずです>
「それなら証で眼鏡を作って。それを人数分用意してあげて。」
<証を奪おうと魔力が集まってきますが奪えませんね。先にそちらを用意してきます>
ロディの雰囲気が消えたから魔力器に戻っていったはず。
「リン、クリス、魔力拡散器が歳によりドラゴンを大きくできるのは何故かな?お母さんのドラゴンの大きさになるには絶対に魔力が足りない。魔力器と繋がっていたから足りないと分かったら証を作るのかな。それに歳を取ったとどのように判断するの。記憶があると思わない?歳の数だけ証を作れば簡単に成長したように見せられる。もしくは魔力器に年齢を送るように指示を出しているのかどちらかだね。」
魔力拡散器は魔力器から魔力路に繋がる直前に無理やりつけた臓器にしか見えない。5つ穴があいているだけの黒い臓器。大きさは手の平くらい。
「リン、魔力拡散器を取ったら魔力路が回復したんだよね?」
「はい。魔力器と繋がりました。」
やはり後付けしたばかりでは残らないよね。
「人形が魔力拡散器を取った後に回復したらどのようになるのかを確認しないと。人形に魔力拡散器をつけても遺伝しないはず。ディア、回復しなかったらどのようにする?」
「殺すよ。人間の成長方法まで真似できるはずがないから。それに記憶がなくても人を殺していることに変わりはないから。化けた人形が殺しているとは思えないけど関与している。それに臓器を真似しているのではなく命令により爆発する可能性もあるから。
ディアも覚悟を決めているみたいだね。本当はこのようなことはしたくないけれど。
「魔力拡散器はここで実験できるほど小さくない。リンは仮想体で外に出られる?」
「索敵範囲に入っているのなら出られます。触るためにリュウに結界を張ってもらう必要がありますけれど。」
外で実験するのに問題はなさそうだね。
「クリスの精神はどこにあるの?」
「器の中に入れてあります。問題ありません。」
「私も出してよ。お姉ちゃんはお母さん達の洗脳が解けていたらお茶会を楽しめばいいから。」
無敵3歳児は止められないね。
「一度引っ張りあげてみて。私たちは人型が当たり前になっているだけだから。」
「分かりました。」
「私も引っ張ってよ!外に出るとか意味が分からないから。先程まで外にいたのに…。」
徹底的に潰す。絶望させてから殺す。ディアの望みを叶えてあげないとね。
「それと相手は私を必ず殺したいみたいだから頭と心臓は注意して見てみて。クローディアは名前だけで殺されるみたいだから後付けて何か入れられているのかもしれない。拷問中に何か埋め込まれていても気づかないし私を殺さなかったのは本人が殺したいのだと思う。」
「分かりました。絶対に見逃さないように確認します。」
「そうだよね。絶対にクロアを絶望させてから殺そうとしているよね。封印なんて生温いことはしないよね。絶望させてから惨殺だよ!許せないから!」
「相手の策を全て潰して惨殺だよ。クローディアを敵にしたことを後悔させる。絶望させる。そして殺す!」
「めっちゃ燃えてんじゃねえか!とりあえず結界内を全員検査するぜ」
完全に忘れていた…。ドラゴンは魔力拡散器も遺伝する。
「待って!お母さんも姉さんも回復したら魔力拡散器は回復しなかったの?あったら人形じゃないし、なかったら人形だよ…。」
「検査してねえわ…。回復手段がねえぞ。」
「血止め程度の回復と魔力器に強制命令を出してみて。魔力路と繋げとね。そのあと全員を確認しよう。まずは今あるかないか教えて。絶対に嘘は吐かないで!」
ドラゴンの体は強い。出血程度で死ぬはずがない。問題は魔力路に穴があいてしまうこと。
「分かった…。まず確認するぞ。」
お母さんも姉さんも拷問されてきた。私と出会うのかも不明だった。絶対に擬態されていないはず。例え人形でも受け入れる。
「2人ともあったぞ!安心だが不安もあるな。保管場所は空いているか?」
「空けました。嘘だったらディアに殺されますからね!」
「ディアは本気だよ!」
今なら魔力を通してお母さんの魔力も見える。
「嘘じゃねえよ。まずお母さんから入れるぞ。そして強制命令でどのようになるのかだ。魔力が使われた!完璧だぜ。血止め程度の回復魔法をかけて睡眠魔法を重ねるぞ。」
「溢れた魔力が分岐していないということだね。」
よかった…。
「ああ、真っ直ぐ上っているだけだ。よし、次はフィオナだ。」
「リン、魔力拡散器は大きさも穴の大きさも変わらない?」
「はい。見た目は全く一緒です。精神と記憶を持っていて感情がないのかもしれません。」
幼い子は100人近くいる気がするよ…。
「リンも終わったぜ。全体検査する。」
「ディア、今の私の考えを見たね?最悪を想定して激怒しないように。」
「そっちの可能性も高いと思う。助けた子が全員擬態だったら絶対に激怒するからね。」
全員はないと思うけれど、激怒するんだね。先走らないようにだけ注意しておこう。私も激怒しそうだから。
「すぐに助けたから擬態している子が少ないのではなく擬態している子だけを生き残らせようとしていたという事ですか。擬態した子は食事が必要ないのかもしれません。嫌になりますね。」
リュウにしては検査に時間がかかっている。大勢の名前確認が必要なんだね…。
「最悪だったようだね…。」
「ああ、名前が分からねえから記憶を見ているが擬態した記憶はねえな。これはクズ加護も強制命令を出されているぞ。恐怖の感情は殺しができる絶好の機会なのに見逃すはずがねえ。ディア、激怒するなよ。88人だ。パチパチか!?」
「皆が見えないように87人を瞬殺して1人だけ眠らせて結界で囲んで元に戻れと強制命令を出してみて。人の命を使ってまで馬鹿にしてくるのか…。」
「魔力拡散器を全て取ってください。改造するのに利用します。場所は送りました。」
「人間の国の孤児に魔力拡散器がついているはずがない。嫌がらせでここまでするのですか…。ゴミクズには絶望が必要ですね。」
私に対する嫌がらせで命を弄んでいる。罪のない幼い子まで殺している。十数万も経っているのに誰に罪があるのだろう?気持ち悪い執念だね…。
「よし、元に戻すぞ。ああ、これは駄目だ…。ディアと同じ姿になった。」
「真の姿に戻れと言ってみて。それでも駄目ならクローディアかクロアと言って。魔力がどのように動くのかも見ていて。」
私の名前で変身させるのでしょ?何にしてくれるの?
「おい流石にそれで変身は頭がおかしいぞ。はぁ…、クロアでカマキリになった。今から記憶を送る。魔力器から魔力を使ってねえ。証を持っている魔力が出てきた。そして集まった魔力に複写したのだと思う。」
「カマキリは鎌のような手を持つ肉食の昆虫です。主に昆虫を食べる昆虫なのですがこの大きさだと何を食べるのでしょう。リュウ、リン、クリスでも試してください。」
人を襲う虫になるのね…。そして予想通り証を作ったのか魔力器から受け取っている。後付けの臓器には悪意しかない。
「ああ…。俺たちには興味ねえようだ。個別設定できると考えた方がいいな。灰にするわ。」
「待って。元の姿に戻してから魔力器に爆破しろと言ってみて。そのあと全部の臓器に向かって爆破しろと言って。」
結果は分かっている。だけど試しておかなければならない。
「分かった…。魔力が少ねえからか横腹に穴があいた。全部の臓器に向かって爆破しろと言ったら肉片が飛び散った。綺麗に灰にする。」
少し簡単すぎる気がする。それに肉片が飛び散るほどの威力が何故あるの。爆発物を埋め込まれていたと考えた方がいい。
「リュウ、私の全臓器に微かに震えていろと言って。リン、確認をお願い。ディア、ロディは絶対に守るから大丈夫。それにロディは強制命令に抗えるからね。それにこの子たちは体に何か仕込まれていたのかもしれない。変身しても消せない爆発物があるのかもしれないから。頭の中、心臓付近をお願い。」
「分かりました。これは戦いなのでしょうか。悪意を押し付けられているだけです。」
「本当だよ。自分より強い存在が気に入らないのなら鍛錬すればいいのに何これ!敵はクロアが怖くて夜も眠れないみたいだよ。雑魚だね!」
「大丈夫だよ。私はお姉ちゃんを信じているし敵は私が殺す!」
ディアは絶対に自分で殺すつもりだね。私が殺したいけれど、男性に囲まれて冷静でいられるか分からない。ディアのためだと思っていても視界に入る男性が邪魔をする。
「全員冷静になりなさい!雑魚に何故怒っているの。遊ぶついでに潰すの。相手が勘違いするから本気になったら駄目だよ。分かった?」
「分かってるよ!クローディアが雑魚相手に本気になる訳が無いからね。だけど殺す!」
「よし僅かに震わせるぞ。リン、見逃すなよ!」
「分かっています。雑魚の仕込みなど全て排除します。」
「雑魚なのは間違いないね。それよりも執着が気持ち悪い。何なのこいつ!?」
外に出て目を閉じて集中する。
≪頭頂部の真ん中から少し下にある。目も震える。両手、両足にもある。左側の胸の下にある。おへその下にある。あとは両肘、両肩、背中の中心、腰、両膝にもある。私が気づいたのはこれくらい。震えているのは臓器ではない。それと私の目を切断して回復魔法をかけて。よく考えればこれクズ兄の目だった。保管場所を用意できたらお願い≫
<リュウ、私についてきて。転移で外に出して>
<ああ、分かった>
<お姉ちゃんが見つけてるじゃない。自分の体を把握しすぎだよ>
<クロア最強だからね。このくらいはできるよ!>
どんどん震えている個所が減っていく。
<俺が帯電で見逃しすぎだろ!>
≪リュウは体の構造知らないでしょ。それに上半身だけだったはず。1cmもない球体の魔石で爆破させることなんてできるの?≫
<大きな魔石を縮小させればいいだけだ。それに魔法陣を入れて命令待ちの精神を入れて完成だ。竜の目も震えるのか。邪魔だな。回復すれば戻るだろう>
≪リュウ、分身計画は目をどのようにするつもりなの?≫
確か竜の目を使うと言っていたはず。
<竜の目を使うつもりだぞ…。おい、マジでやるのか?>
≪時間の無駄は嫌いなの。やりなさい≫
竜の目を人の目に戻す時間が勿体ない。やるべきことはたくさんあるのだから。
<リン、人間の目の保存場所を用意してくれ。5人分だ>
<気づいてからの決断が早すぎます…。用意できました>
<お姉ちゃん、私が勢いで移植したから…。ごめんなさい>
≪役に立ったじゃないの。それに強制命令で器が反応した気がする。確実に解体させられると考えた方がいい。巨大な魔石に全魔力を移して縮小化。人形がいた場所に置いて。そして無敵の紙で下だけあけておいて包めば完璧だよ。それと個別に臓器名があるのでしょ?それで確認しておきたい≫
全臓器を破壊する言葉もあるのかもしれないけれど、臓器別は必ずある気がする。相手を痛めつけて絶望させるのに効果的だから。
<行くぞ!中に入っていれば痛くねえだろ?いいのか?>
≪いいの。自分の体から目を切り離すのだから痛くて当然だよ。そして取り出した魔石に魔力が魔力に包まれていないか確認。内容はロディに見てもらう。大きさによっては使えるから≫
<よし、やるぞ…>
プツッ、プツッと目ができては何かが切れる音が頭の中で響いている。
<終わったぞ。見えるか?>
≪ええ。器を感じる力と視力は落ちたと思うけれど、大丈夫。それでは結界を張って魔石が魔力に包まれていないか確認して。精神は魔力の中にあると思い込みすぎている気がするから>
疑うのは私の仕事。他には何もできないから疑い続ける。
<分かってはいたがクロアからの指示は圧倒的な早さで計画が進むな。俺たちを成長させるのは後からでもいい。マジで魔力で包まれているぞ。ロディを呼んでくる!>
誤認させ勘違いさせ思い込ませる。一度でも失敗すれば死ぬようにしている。自分で殺したいのか自爆させたいのか分からない。
<どうしました?今日は忙しいです>
≪あの魔石についている魔力の形と何が書いてあるのか見える?>
<魔力の形は変わりません。剥がされそうになったら魔石の魔法陣を起動。魔力を減らされたら魔石の魔法陣を起動、それと爆破、爆発などの強制命令で魔法陣を起動です>
≪魔力の複写とロディの書き換えが解除方法かな?≫
<魔力に気づかれなければいいのです。隠蔽して記憶消去でもいいですよ>
≪ロディ、ありがとう。助かったよ。眼鏡より先にリンと一緒に私の臓器を見て。魔力で包まれているのかもしれない≫
気づかせなければいいのか。面白い情報だね。
<分かりました。確認してきます>
≪リュウ、結界を張って1つ爆発させてみよう。威力を確認しないとね≫
<今まで精神は魔力の中にあると思い込ませてきて魔石を包んでいるのか。人形もそうだったのかもしれねえな。魔力を少し抜いて爆破させるぞ>
えっ!?1つで死にそうな威力だよ。本当に敵が何をしたいのか分からない。
≪1つで私の体がなくなりそうな威力だね。隠蔽してクリスがいた場所に送れる?3個くらいでいいよ。2個は浮遊島に落として。気づいていないと思わせておきたいから≫
<これだけの爆発ならどこか場所が分かるかもしれねえな。少し抜いてから爆発まで少し余裕がある。完全隠蔽爆弾だ。まるでドラゴンを恨んでいるようだな。できれば浮遊島も落としたいな>
≪索敵範囲は変えないでね。意識もしないで。どこなのか分かる?≫
<何で黒死森で拷問されたのか分かったぜ。あの森の地下にクリスがいたようだ。ようやく爆発を観測できた。本拠地なのかは不明だがな。リン、浮遊島が落ちたぞ。まだ生きているみてえだな>
あの女の代わりに回復に来た可能性があるね。
≪もう1個落として。なるべく恨みがドラゴンに向いていると思わせたい≫
<かなり死んだな。それで次はどのように動く?>
≪リンとロディの確認作業に強制命令を使ってみて。微かに震えるときだけ魔力が見えるかもしれないから≫
<分かった。すぐに行ってくるぜ!>
体の中に入る。
「お姉ちゃん、魔力で攻撃されたら爆破があったら死んでたよ。敵は何がしたいのかな?」
「クローディアを使って遊んでいるんだよ。何で死ぬのか楽しみにしているんだよ。目の前まで来たら絶望させるつもりなのだろうね。精々楽しんでもらえばいいよ。最後に楽しむのは私たちだから。」
敵も何がしたいのか分からなくなっていないのかな。私たちはお前を殺すことだけは忘れないから安心して待っていればいいよ。
この世界の全ての人をいつでも利用できるようにしていたようです。




