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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実
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第4話 契約

 冒険者組合に入り受付のお姉さんがいるカウンターまで行く。


「こんにちは。依頼完了しました。確認をお願いします。」

「こんにちは…。まだお昼過ぎですよ!?森での素材採取が終わったのですか。はぁ…、依頼票にサインもありますし間違いありませんね。問題はありませんでしたか?」


 ブレンダさんの依頼は冒険者の人たちから苦情が多いと言われている。

 やはり人の評価は当てにならない。


「今後は私を指名してくださるそうです。同じ依頼料でお願いしますね。」

「指名依頼を希望されたのですね。白金等級の依頼料にするわけにはいきませんね。本部長の言葉を守り他の冒険者の方たちから避けられる依頼を受けたのですから。実際に依頼を受けてみて苦情についてはどのように思いましたか?」


 お姉さんは冒険者の苦情を信じているわけではないのかもしれない。

 自分の目で評価できないのだから多くの人の話を聞く。とても好感が持てる人だね。


「平野で魔獣に勝てるからと森で魔獣に勝てると勘違いしていた冒険者が悪いです。それを正直に認めたくないから言い訳して依頼主の責任にしたのです。依頼主は普通に素材採取していただけで変わった行動は何もありませんでした。依頼主側としては、森で素材採取の護衛を依頼したのに森に入らせてくれなかったとなります。枝の上、木や岩の裏、土の中、森では生き物が隠れられる場所がたくさんあります。それを理解していなかったのだと思います。」

「なるほど。魔獣を倒して強くなったと思っている冒険者の方であれば勘違いしているでしょう。クローディア様が護衛すれば短時間で素材採取が終わったという事ですね。何か特別なことをしましたか?」


 ブレンダさんが驚いたことは特別になるのかな?私には常識が足りない。


「南にある目的地の森まで空を飛んで1分程で着きました。森に生息する生き物たちに私が一番強いと教えてから森に入りましたから、危険な生き物との遭遇は蛇が1匹です。一度行ったことのある場所には一瞬で行けるようになりますから、帰りは1秒程です。依頼主に昼食をご馳走になってからここに来ましたので、昼前に依頼は終わっています。」

「どのようにすればそうなるのか理解できませんが、それを実行したのは間違いありませんからね。本部長は最低な判断をしたようです。今の本部長がクローディア様に白金等級らしく依頼を受けろと言ってきた場合はどうしますか?」


 それは両親に相談する内容だ。本部長の言葉に振り回されるつもりはないけれど、どのように対処すればいいのか分からない。


「両親に相談します。正しい対処法が分からず私だけでは殺すことしかできません。」

「よく分かりました。そこで提案なのですが私を専属にしませんか?私がここに立っていたら声をかけていただくだけです。指名依頼を最優先として私が依頼を選びお願いします。どうでしょう?」


 とても面白そうな提案。お姉さんは私に不利益を与えることの危険性を知っている。だからお姉さんに明確な目的や利益が無ければ不自然に感じる。


「お姉さんに目的や利益がありますか?あるのであれば専属でお願いします。」

「目的はクローディア様に活躍して欲しいのです。利益は依頼斡旋料として報酬から一部もらえるとすれば、どのくらい払ってもいいと思いますか?」


 嘘は言っていないように感じる。お姉さんも本部長の言葉が好ましくないのかな。だけど目的を全て話しているとは思えない。私にとって不利益になることではないと思うけれど。


「私に適した依頼を探してくれるわけですよね?他の受付の人に妬まれたりしませんか?」

「専属契約は冒険者組合が推奨している仕組みです。斡旋料は口外しなければ2人だけの秘密になります。冒険者カードの作成や更新時に担当した受付が最初に契約できる機会がありますが、クローディア様は誰とも契約されていません。最初に受付した人の方がいいですか?」


 それだけは絶対に許されない!

 お父さんはお母さん一筋なのに他の女性にも優しい顔をするから、勘違いしてしまう女性もいる。夫婦一緒にいる時に勘違いした女性の表情次第でお母さんの敵になるかもしれない…。


「絶対に駄目です!父を見て頬を赤く染めていました。母が隣にいても頬を赤く染めたら夫婦喧嘩になるかもしれません。その時に父の味方をしていると思われてしまう危険性があります。ですから最初に受付した女性と契約することはあり得ません。斡旋料の相場を知りませんが半分までなら払ってもいいと思っています。お姉さんが頭を使ってくれる人で私が体を動かす人。半分でいいです。」

「ギルド、パーティ、冒険者個人など契約相手は様々ですが相場は1割以下です。半分は多すぎます。」


 問題が起きる前に対応しておくべきだね。私と契約ではなくギルドと契約してもらいたい。


「後顧の憂いを断つべきですね。突然ですが名前を教えていただけますか?」

「えっ!?フローラです…。」


≪念話≫


「家族で時間に余裕がある人は今すぐ冒険者組合に来て!」


≪念話終了≫


 誰が来るかな?間違いなく一番はお兄ちゃんで決定だけど。


「少々お待ちください。」

「はい…。」


 フローラさんが緊張している。あー、また何をしたのか説明していないよ…。

 今更説明しても遅いよね。反省が足りないよ!


「ディア、何かあったか?」

「クラレンスがそうやって動くから対応しておくことにしたのよね?」

「ふむ、私が最後か。ディアが何を話すのか楽しみだね。」


 よかった、家族が揃ったね!


「こちらの受付の女性が私と専属契約を提案してくれたフローラさん。ギルド『ドラゴン大好き』の専属になってもらってもいいよね?お兄ちゃんは私に親切にしてくれた同性だけでいいから保護対象にして。当然フローラさんもね。フローラさんがギルドに依頼斡旋してくれるという形にすれば途中でお兄ちゃんが突撃してきても問題ないでしょ?依頼斡旋料は迷惑料も込みで報酬の半分で契約して欲しいと思っているんだ。ギルドとの契約にはお父さんの承認が必要。お母さんが監視してくれればお兄ちゃんの突撃も阻止できる。どうかな?」

「フローラさん、どうしてディアと専属契約しようとしたのかしら?ディアが問題なしと感じているから悪意はないと思う。でも目的を全て話したのかしら。ディアは勘付いているけれど、あえて聞かなかったようね。私たちにしか聞こえないようにするわ。話せる?」


 お母さんが指をパチンと鳴らした。防音と私とフローラさん以外を認識阻害している。

 状況把握能力が凄い。それに魔法の技術も桁違いだ。


「はい…、本部長の考え方や運営の仕方が気に入らないのです。困っている人がいて出せるお金も決まっていて、その内容で依頼を受けてもいいと言ってくれる冒険者の方がいるのであれば、助けられる人はたくさんいます。本部長は依頼料で足切りをして依頼すらさせません。完全な慈善事業ではありませんから利益も必要だと分かっています。ですが依頼する権利は誰にだってあるべきです。見向きもされない依頼になるかもしれませんが、誰かが受けてくれるかもしれません。ここは本部ですから上位冒険者の方が一番多く来ます。そのため近くの支部では対応できない依頼票が回ってきます。本部長はその依頼にも本部の取り分を足します。支部に取り分を渡すわけでもないのですから二重取りです。冒険者の報酬は減り余分に取ったお金をどのようにしているのか分かりません。そこで本部長がクローディア様に言った言葉を利用しようと考えました。他の冒険者に迷惑をかけないように依頼斡旋していますと。都合よくクローディア様を利用しようとする依頼主は弾きます。現地に行っておかしいと感じれば依頼を拒否しても構いません。あわよくば本部長を精神的に追い詰めて潰せればいいと考えています。」


 フローラさんが想像以上に本部長に憤りを感じていた。過去に何かあったのかもしれないし、足切りされて依頼できない人たちの顔を見て辛いのかもしれない。家族を呼んでよかった。私だけでは力不足だから。


「姉ちゃん、見かけによらず熱いじゃねーか!保護対象にしてやるぜ。目的まで気に入った。拷問すんのも殺すのも簡単すぎるからよ。手始めにウチと契約した後に本部長に報告しな。保護対象にされたってな。」

「よく分かったわ。ディアはギルドの一員として依頼を受けたいわけね。複数人希望の依頼でもディアだけで問題ないでしょうけれど、ギルドに依頼斡旋している形にすれば本部長も文句を言えないわ。ディアが考えて冒険者をしようとしているのだから手伝ってあげないと。ねぇ、あなた。」

「そうだね。斡旋料は報酬の半分で契約しよう。ディアも言った通り迷惑料だよ。大きな力を持つと嫉妬されて敵意や殺意を向けられる。嫌がらせだけではなく暗殺者を送り込まれることもある。君の安全は保障するし怪我をしたら治療しよう。これはディア個人と契約してもギルドと契約しても一緒だね。契約は秘匿するように本部長に言いなさい。先程息子が言った保護対象になったこと。そして王の愛娘の楽しみを奪うなと。今なら引き返せる。どうするかな?」

「えっ…。クローディア様は王女様だったのですか?」


 私が想像していたよりもフローラさんの負担が大きい…。お父さんは引き返して欲しいと思っているのかな?私の我儘でフローラさんを不幸にしたくない。


「そうだよ。私が王だと伝えた意味を本部長なら理解するはず。彼は腐ってしまった。いや…、私の目が曇っていたのかもしれない。私たちとの接し方を変える必要はないよ。全てを楽しんでいるのだから。さて、契約するかね?」

「します!誰かが動かなければ何も変わりませんから。」


「その通りだね。君の覚悟は伝わったよ。来なさい、カンナカムイ。」


 ニョロちゃんだ!角と羽がなければ金色の蛇にしか見えない。お父さんが羽ペンの大きさで呼ぶのも私の時と同じだ。ニョロちゃんがフローラさんの味方になってくれれば安心だよ。


「ニョロちゃん、久しぶり!元気だった?」

「また私を便利ドラゴン扱いするつもりのようね!あら、ディアじゃない。大きくなったわね!ついに人体実験を耐えきったのね。感動で涙が出そうだわ…。」

「そうだったの?ディアが人体実験されていたなんて知らないわ。どういう事かしら?説明してくれるのよね?」


 ニョロちゃんから見たらそうなのかもしれない。人間をドラゴンに近づけたのだから。だけどお母さんを怒らせては駄目だよ!ニョロちゃんは理解しているから心配ないけれど。


「えっと…、家族愛だったわね。あなたが怒ったら誰が止めるのよ。ディアのことになるとすぐに怒るのは相変わらずのようね。まあ、それだけ可愛いのは認めるわ。今のディアに護衛は必要ない。何をさせる気よ?」

「ディアを冒険者として楽しませてあげたい。そのために受付にいるフローラさんを守って欲しい。私たちと契約解除するまでは一緒に生活して、普段は胸ポケットにでも入っておいてくれ。カンナカムイは女性だから大丈夫だよ。ドラゴンが身近にいるのは怖いかな?」


 普通は怖いと思う。ニョロちゃんはこの大きさでも私より強い。本来の姿に戻れば私では絶対に勝てない最上位ドラゴン。今のお兄ちゃんと同じくらいの強さだと思う。


「あの…、私と一緒に暮らしていただけるのでしょうか?ドラゴンは人間と格が違うと思うのですが…。」

「ふーん。この姿の私を見てもそう思えるのは正しい感性を持っているようね。私も暇だったし守ってあげる。そうね…、せっかくだし人間の食事を楽しませてくれればいいわ。この大きさだから余り食べられないから食費は気にしないでも大丈夫。私はカンナカムイ。好きに呼んでもいいけれど、ニョロちゃんだけは駄目よ。」


「ありがとうございます。カンナカムイ様。」

「固いわよ。可愛い愛称で呼びなさい!呼んだのだから生活費は出しなさいよ。」

「それは君がフローラさんの家に行ってから渡そう。ここでは悪目立ちする。フローラさん、契約書を出してくれないかな?」


 それが本題だったのに忘れそうになっていた。ニョロちゃんとの日々が楽しかったから思い出に浸っていたよ。幼い私は怖いもの知らずで言いたい放題だった。ニョロちゃんからすれば大変な子守だったのだと今なら分かる。ニョロちゃんを大好きな友達だと私は思っているよ。


 フローラさんが2枚の複写紙を出した。


 冒険者組合が管理する依頼斡旋の契約書。

 契約者同士が管理する斡旋料の契約書。


「こちらが契約書になります。依頼斡旋料は報酬の半分のままでよろしいのですか?」

「勿論だとも。一度約束した条件を途中で変えたりはしないさ。仕事を辞めたくなった時に契約を解除しても問題ないよ。君が自由で幸せになる権利を奪ったりはしない。依頼斡旋が他者の妨害により難しくなったら悩まないで相談してくれ。君に無理をさせるつもりもないし目的の達成を強制するつもりもない。決して好都合なだけの契約ではないからね。ディアと接触し続ければ必ず大きな雑音が聞こえるようになる。我慢ができなくなった時に契約で君を縛るつもりはないという事さ。」

「なるほど。親馬鹿なだけではなさそうね。人間の醜悪な一面をたくさん見ることになる。それに耐えて高みにのぼるのか逃げるのか選ぶのはフローラってことよ。あなたは精神を鍛えたわけでもない普通の人間だもの。私に相談するのも逃げるのも自由よ。あなたの選択を決して責めないから安心しなさい。私が胸ポケットの中にいる意味を分かりやすく表現するのなら、常に隣にディアがいてあなたの護衛をしている状況。話が大きくなりすぎて処理しきれていないみたいね。家で落ち着いて私と話しましょう。知りたいことを教えてあげる。あなたの目的も聞きたいわ。ドラゴンと生活できる人間なんて世界で一握りよ。幸運なことだと考えて一緒に楽しみましょう!」


 ニョロちゃんの優しさは変わらないね。初対面の人に味方だと強調してくれている。強い冒険者と契約するつもりだったのにドラゴンと関わることになってしまった。普通の人なら混乱するに決まっている。ニョロちゃんは必ずフローラさんの救いになる!甘えさせてもらおう。その代わりに依頼は全力で頑張る。


「今の私は夢心地なのでしょう。余りにも現実離れした状況ですから。ですが契約します。カンナカムイ様の愛称は家で決めます。」

「知らないで終わるより知ってみたいと思った。恐怖心より好奇心が勝ったのよ。これからも勝ち続けるわよ。私と一緒にね!」

「契約成立だね。フローラさんはギルドに依頼斡旋する。ギルドの一員としてディアが依頼を受ける。複数人希望の依頼で息子と娘だけではやり過ぎてしまう可能性が高い。その場合は私か妻も同行しよう。」

「ったくいつになれば信用すんだよ!ガキじゃねーんだぜ。ディアを守ってるだけじゃねーか。おかしなことはしてねーよ。」

「面白い冗談だわ。ディア、あなたは自分の顔をどのように思っているの?」

「予想外の質問だね。1人で出歩いている時に声をかけてくれた男性はいないし、可愛いと言ってくれるのは家族だけだし、私はお母さんの顔に似てきたと思っているのに品位とか何かが足りないのかな…。結論は異性から恋愛対象として見られない女の顔。不細工だね。落ち込んだりしていないから大丈夫だよ!」


「ディアは何を言っているの?それは本音なの?息子の管理くらいしなさいよ!どれほど徹底したらそんな評価をするようになるの?反省するために海底に沈んで頭冷やしなさい!」


 ニョロちゃんが怒っている…。もしかして不細工ではないのかな?


「ディアが私に似てきたと思ってくれていたのが嬉しいわね。それでもクラレンスが馬鹿だからこうなったのよ。ディアが嫌がっていたら封印しようと考えていたわ。だけど素直に受け入れてしまったのよ。まさか不細工と思っていたなんて母親失格ね。やはり海底に封印しようかしら。」


 お母さんが封印するとまで言っている。お兄ちゃんに溺愛されていると思っていたけれど、異常だったのかな…。


「ちょっと待ってくれ!母さんの封印はシャレになんねーから。ディアに害虫が近づかないように殺さず排除してたんだぜ?良心的な解決だろ。俺が殺してねーんだから。ディアには俺が可愛いと言っているからそれを今から信じれば解決じゃねーか。」

「家族の言葉と他人の言葉は違うよ。依頼を楽しんでいる時にお兄ちゃんが突撃してこなければそれだけでいいから。私は冒険者を楽しみたいの!私の居場所を探知して会話を盗聴しているのは気づいているからね。お兄ちゃんは強いから弱い私が心配なのでしょ?過保護すぎるよ。」

「ディア、それは違うわ!残念ながらあなたの兄は変態なの。気づいているのに気にしないのもおかしいわ。私が回復魔法も得意だったら違ったのかもしれないわね。命の危機になるまで手出し厳禁だったもの。すぐに母親が回復しにくるから、家族に状況を把握されているのが当たり前だと思ってしまったのね。地獄の鍛錬を乗り越えたのに変態の兄に監視されるなんてあんまりよ!」


 ニョロちゃんが言うことに間違いはないはず。つまりお兄ちゃんは変態だったんだ。そもそも普通の家族を知らないから比べようがないね。


「お兄ちゃんは何で私から男性を遠ざけるの?恋愛するつもりもないし家族と離れるつもりもない。男性と知り合っても必ず線を引くつもりでいる。家族と一緒にいるのが幸せで、それだけで十分だったけれど、皆が冒険者だったから憧れたの。私が依頼を受けたことで依頼主が喜んでくれたよ。それで人に喜んでもらうのが楽しいと感じた。報酬なんてどうでもよくて楽しみたいだけなの。自分が恵まれているとも自覚している。もしかしてお兄ちゃんは私と結婚したいの?」

「ああ、そうだ。同情してるとかそういうのじゃねーから。俺が幸せにしてやると勝手に決めただけだ。時間はあるから焦るつもりはなかった。俺は心配なんだ。今までの努力をディアに後悔して欲しくねーんだよ。自分を理解していても好きな男ができたら後悔するかもしれねーと思った。だから排除してきた。」


 真面目な理由があったんだ。お兄ちゃんと結婚することに抵抗はない。私の寿命がどれくらいになったのか知らないけれど、同じ時間を生きる人と一緒に過ごしたい。それに家族と離れる理由もなくなる。私が恋愛と常識を知らないのが難点かな…。


「このまま家族一緒にいられる。それにお兄ちゃんより格好いい男性なんて見たことない。ニョロちゃんによると変態みたいだから結婚するまでに直しておいてね。私が努力したと思っているのなら冒険者として楽しませて。真面目な依頼を男性だからと壊すことはしないで。それと私より強敵が現れたら助けて。正直恋愛については分からないけれど、お兄ちゃんと結婚すると契約してもいいよ。結婚した後の呼び方はその時になって考える。それまではお兄ちゃんでいいでしょ?」

「それでいいぜ。ディアに契約とまで言わせたんだ。野暮な真似はしねーよ。だがディアの状況把握だけは継続する。ドラゴンの中に強い相手を喰ったら強くなれると勘違いしているクソ野郎がいた。同様の考えの奴が他にもいるかもしれねーんだ。そいつらからすればディアは格好の餌になる。俺たちが冒険者をしていたのもクソ野郎どもを狩るためだ。情報を集めやすいからな。ディアが生存最優先なのも格上からの初撃に耐えられるようにするためだ。だから冒険者になるのを反対した。それと変態じゃねーよ、ボケカムイ。素直なディアに余計なことを吹き込むな。」

「あらあら、2人は結婚するのね。クラレンスの懸念も分かるけれど、ディアに遊ばせてあげるのも大切なことよ。学べることが多いわ。そして無言を貫く夫…。何も言えないわよねー。息子と同じことを私にしたのだから。結婚するのはディアから幼さが消えてからよ。今日は婚約をしたお祝いをしましょう。カンナカムイ、私たちは帰るけれど何か言い残しはない?」


「隠したいことは特にないと思っていいわね?」

「ええ、良好な関係を築くには隠し事はよくないわ。それではまた会いましょう。」


 お母さんの魔法で家族揃って帰宅した。

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