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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第36話 お母さん ④

男性恐怖症について人によっては気持ち悪い表現が入っています。

◇◇◇

4日目。豪雨中。


 窓から雨を見ていたら突然ディアが転移してきた。

 予期せぬことが起きた気がして気が気でない…。


「ディア、突然どうしたの?」

「お姉ちゃんの男性恐怖症について自己回復が教えてくれるんだって。それで自宅に帰れと言われたからさ。」


 説明するためだけに能力がディアを自宅に戻した。内容に激怒する可能性もあるのね。つまりクロアが説明しないのではなくできない。それは私の想像以上に重症であることの証明でもあるわ。本当にどれ程の苦しみを抱えているのよ…。


 ディアの念話が気になって仕方ないわね。


 明らかに悔しがっている…。あの一家を拷問しないと気が済まないのね。

 冒険者組合本部に呼び出されたときの会話からクズ兄が原因で間違いなさそうだわ。


「お母さんとフィオナ姉ちゃんに説明するよ。お姉ちゃんの男性恐怖症は、異性を見ると震える。話してると耳を塞いで蹲る。触れられたら過呼吸を起こす。これが私の中にいるときの状態だって。外に出たとき近くに男の人がいたら意識を失うかもしれない。自己回復の説明を聞いてるときも蹲って震えてるみたい…。」


 どのように過ごしてきたのよ。私が予想していた症状ですら余りにも軽い。監視されていただけでこれ程までに酷くなるのかしら。嫌な予感がするわね…。


「ディア、クロアはどのように監視されていたの?」

「クズ兄に常に見られてたよ。」


 直接見られたりしていないわよね…。


「常に見られていたというのは魔法を使った監視ではないの?」

「違うよ。本人が直接見てる。」


 拷問が終わったのが10歳程のはずだから6年間も見られていたことになるわね。

 本当に最悪だわ…。


「いつ、どこで、何をしていても、見られているの?」

「見られてるよ。」


 これは厳しいわね…。

 どのように克服すればよいのか分からない。


「便所だと目の前にいるの?お風呂だと中に入ってくるの?」

「便所はそうだよ。お風呂は一緒に入ってる。」


 そこまでされていたのね…。

 それを知っていて初日のクズ能力はあれをしたのね。腐っているわ!


「クズはどのような表情なの?それと何かしているの?」

「舌なめずりしたりお姉ちゃんの匂いを嗅いだりしてる。食べるのが楽しみなんじゃないの。あいつは殺してくださいと頭を下げるまで拷問し続けるべきだった。そして自殺するまで拷問するべきだったよ…。」


 16歳の少女が嫌いな男にここまでされていた。反吐が出るわね!


「ディア、ベッドで横になって急いでクロアに会いに行きなさい。約束通り夜は巻きついてあげるわ。」

「分かった。私も気になるし行ってくるね。」


 ディアは急いで自室に入っていった。

 とにかく異性を見ると記憶を思い出してしまうのね。


「あ、あ、ああ…、いやぁー!」

「フィオナ、落ち着きなさい!あなたに罪はないわ。姉としてクロアと話すのでしょ。クロアは全て知っているはずよ。それに具体的なことは誰も知らなかったわ。あのクズ能力が腐っていたのよ。わざとクロアが恐怖する記憶を残したのですから。」


 フィオナを抱き寄せて背中をなでる。


 フィオナが遊びながら計画を立てるのを笑って見ていた…。あのとき苦しむクロアを想像して笑っていたのね。皆の前では我慢すると知っていて。

 クロアの能力だからと甘く考えていた自分に腹が立つわ。残った能力たちは特別なのでしょうけれど、娘たちを見守ることだけは負けられない。


 フィオナも落ち着いてくれたようね。


≪念話≫


「母です。誰に繋がっているのかしら?」


<自己回復です。体に念話が繋がりましたので私に繋ぎ直しました。主のお陰でクロアは落ち着きました。ありがとうございます。それで何かありましたか?>


「この念話はクロアとディアに聞こえませんか?」


<会話の漏洩を防ぐ処置をしました。私とお母さんと魔法だけにしか聞こえません>


 私にはできないことを簡単にしてくれたわね。これは頼るのが当たり前になってしまいそうで怖いわね。自分ができないことだけを頼るように気をつけましょう。そうしないと私が成長しない。


「初日の食事中の転移について確認していますか?」


<常時体の中に入れる転移は反射。クズ能力が入っていたときは隣のお店も転移を反射するようにしてありました。そして提供された料理も全て確認済みです。クズ能力が私たちを欺こうなどと思い上がりも甚だしいですね。手についた血を舐めることさえできません。返り血を浴びる雑魚ですから結界で全身を守り全て弾きました。声だけは出せるようにしましたけれどね。それと隣のお店で食事するときには食べることができるようにしてあげました>


 全く油断も隙もなく徹底的だわ。クズ能力は実際の味は知らないでしょうし転移は借りている力なのでしょう。ここまでされてしまえば何もできないわ。私では絶対に防げなかったし気づくのが遅すぎるのよ…。残った能力たちが凄すぎるとしか言えないわね。


「ですが精神の奥にいる子が言えないようなことをしているのでしょ?」


<私たち以外の全能力が男性恐怖症を煽るような拷問をしていたのです。男性器にしか拷問していないので気持ち悪くて言えないのです。それにクロアも知りたくないでしょう>


 縦や横や十字に切断したり輪切りにしたりしているのでしょう。自分や他人のものを食べさせたりもしていたのかもしれないわね。

 その行為に私が付与した能力たちも関与している。繋いだときに真面目に話していたのは演技ね。早く自由にしてもらいたかっただけなのでしょう。

 能力は本当に必要なものなのかしら。クロアでもここまでされたのを知ってしまうと疑問に思うわね…。


「なるほど。少女としては話したくもない光景だったのでしょう。それでクロアの男性恐怖症についてなのですが、邸の8人を見たときにも震えを抑えていましたか?」


<邸の8人については相手が手を伸ばしても届かない距離で止まってくれますし、異性に対する欲を感じないので大丈夫です。それと主のために必要なことであれば男性恐怖症も関係なく行動できます>


 必ず止まってくれるという安心感があるのね。ですが徹底して伝えておきましょう。それに命の恩人である娘に色欲を向けたら…。

 クロアの状態を見ながら楽しめるような環境に改善し続ける必要があるわね。


「襁褓の男の子は大丈夫なのですか?」


<初見では無理だと思いますが襁褓の子の世話を何度も体験しながら少しずつ克服していければよいと考えています>


 無力な男の子を世話することで可愛く思えるようになれば幸いね。ですが襁褓の子との接触でも少しずつという事は何かがあるわ。異性に対する一番の恐怖…。


「クズ兄は性的興奮していましたか?」


<クロアを早く食べたいという欲求が性的興奮に見えてしまいます。そのようなクズを血の繋がりがないだけの家族だと思いお風呂まで一緒に入っていました。それに味見しているかのように舐められています。お風呂に入る度に舐められています。精神を綺麗に作り直して過去を見たときに余りにも気持ち悪く感じたのでしょう。そして皮肉なことに餌として見られていたことが男性恐怖症を抑えてくれているのです>


 間違いなくこれだわ。最低な行為なのに当時のクロアが拒否していないわ。餌として見られていたのだけれど、何をされたのか分かったものではない。それに遊び感覚で更に最低な行為をされていた可能性もあったのですから。

 当時のクロアはそれさえも許してしまう可能性が高い。とても恐ろしいわよね…。


「よく分かりました。お風呂の時間になったら帰ってくるように伝えてください。ディアも巻きつかれて寝たことがありませんから。」


<分かりました。それでは明日よろしくお願いします>


「はい。こちらこそお願いします。」


≪念話終了≫


「フィオナ、念話で確認したのだけれど、クロアはフィオナのことについて気にしていないわ。落ち込むよりも楽しませてあげることを考えなさい。クロアはあなたに文句を言いに出てくるのではなく話したいだけなのよ。そして話題には注意しなさい。クローディアの姿に戻ったときのことや臓器の確認方法などを聞いてもいいわ。なるべくクロアが多く話せるような話題を振ってあげなさい。」

「分かりました…。それに知らなければあのときの光景を話してしまったかもしれません。一切男性を会話の中に含ませません。姉としてクロアを楽しませます。」


 悪気がなかったことは分かっているでしょうしクズ能力に唆されたことも分かっているでしょう。お金を渡したのは仲違いさせるためだったのかもしれないわね。


 全ての行動が不愉快よ!


「クロアが偽の家族と過ごしたときは外食したことも屋台で買い物したこともないでしょう。すれ違う人と話したことすらないわ。自分のことを異性から恋愛対象にされることがない不細工だと思っていたのですから。」

「元の姿に戻る前でもかなりの美少女でしたよ。つまり常にクズが張り付いていたのですね。そして全て見られた。最悪ですよ…。死んでいるのが幸いです。」


 二月待つなんて以ての外だったわ。最初から頼んでおくべきだったのよ。それに魔法はそれを知っていたからディアに厳しく言ったのね。だけど3歳のディアにはうまく伝わらなかった。

 クロアが自分の症状を説明できないほど重症だなんて思いもよらなかった。クロアの状態については能力と話すのが一番でしょう。娘たちの状態確認を怠っていた証拠だわ。中にいて分からないのであれば聞くだけでよかったのですから。

 だけどクズ能力たちがいたときは何を言われていたのか分からない。私を利用してクロアを追い詰めようとしたかもしれないわ。今まで常識だと考えていた知識はただの思い込みとしましょう。これからは自分で考えないと駄目だわ…。


「フィオナ、女の子の邸に行ってあげて。ディアが突然消えて怖がっているのかもしれないわ。」

「そうですね。簡単に説明して遊んできます。では、行ってきます!」


 遊びは忘れないのね。とてもよい心掛けだわ。


「ええ、楽しんできて。」


 フィオナが外に出た少し後に玄関のドアを開けて外に出た。そして空を飛び高級店の屋根の上から辺りを見下ろしてみる。

 あくまで豪雨に慌てているだけの様子しか見られないわね。何日目で人の感情は変わるのかしら。


 自宅に戻りディアとフィオナが帰ってくるのを待つ…。

一人暮らしの方が長いのに静かな自宅がとても寂しく感じるわ。元の暮らしに戻れる気がしないのよね。偶々手にすることができた幸せな日々。ここから先は全身全霊で維持するわ。


 外が暗くなってきたわね。

 カーテンも閉めたままで明かりもつけたままだったわ。


「戻ったよ!お姉ちゃんが震えてた。お母さんと寝るのを代わってあげた方がいいかな?」

「それは男の子がいなくなってからよ。今日はディアに最高の癒しを教えてあげるわ。クロアは何か言っていたのかしら?」


 とても優しいわね…。でも今日はディアの日なのよ。


「私の考えが甘かったみたい。男性と話すのが怖いだけだと思っていたから。お姉ちゃんは言えなくてごめんなさいと謝ったんだけど言えないなら説明できないよね。自己回復の説明を聞いてただけのはずなのに凄く怯えてた。それに私を抱っこすると落ち着くのに今日はいつもより時間がかかった。お母さんと自己回復は何を話してたの?」

「クロアが少しでも外に出られるような環境にすることや、どのように克服していくのかを話していたのよ。邸にいる8人はまだ何もしていないのだけれど、注意だけはしておくわ。それと襁褓の子の世話を体験することで男の子に対する恐怖心を少しでも和らげることができれば幸いね。」


 ディアのためだと考えようとしてもうまく切り替えられないのね。ディアとほとんど関係のない期間だと考えているのでしょう。

 今度クロアと話すときに伝えないと。あなたが生きた日々でディアに繋がらない日は1日たりとも存在しないとね。


「少しでも濁ったら終わりだとするなら自由は駄目だね。他の種族も能力を持っているのかな?ドラゴンが凄い贔屓されてるよ。人間は能力を持ってない。それに弱いし寿命も短い。ドラゴンの餌なのかな?世界を潰したくなる!」

「人間は保険なのかもしれないわね。天変地異が起きても人間が少し生き残っていれば全種族を生み出せる存在として。エルフやドワーフにも特別な臓器があるのかもしれないわ。他にも獣人や魚人などもいるから本当のところは分からないけれどね。」


 人間にだけ特徴がなさすぎるわ。全てが人から派生しているのであれば一番近いのは人間なのでしょうけれど、現状は人口が多いだけで最弱でしかないわ。


「ドラゴンと人間はそれほど違いがあるの?」

「ありすぎだよ!戦闘能力が違う。痛みなどの耐性も違う。寿命が違う。目が違う。臓器が違う。能力がある。全てドラゴンの方が優れてるからね。ドラゴンなら両腕と片脚を切断されていて能力を使わなくても人間に勝てる。とんでもない贔屓だよ。」


 並べてみると酷いわね。確かに贔屓の塊でしかないわ。ドラゴン1人で人間の国を滅ぼせてしまう。それは流石に問題が大ありよ。人間には独自で守る手段がないのよね。


「確かに酷い差だわ。ところでどのようにすれば臓器の違いが分かるの?クロアが体を切り開いて調べるとは思えないのよ。」

「お母さんが言っていたじゃない。帯電で家の間取りなどが分かるって。やったのは魔法だけど全身に微弱の電気を流して抵抗を記憶するんだよ。まあ、自称最強能力たちしかできないよ。魔法は何も言ってないけど自己回復はお姉ちゃんに言ったから、いつも最強さんって呼ばれてる。しかも細胞を運んだり調べれるのは自己回復だけなのに運搬しか仕事してないとか言われるから。酷いよね。」


 体の中を帯電で調べたのね。流石にそれは帯電では無理だわ。やはり残っているのは最強能力なのね。それなのにクロアに煽られている。悲しい現実だわ。


「ただいまー!流石に疲れたよー。全員で枕投げするのはいいけれど、1人対280人は厳しかったね。とりあえず全員に一度当てて逃げてきた。お風呂入って寝よー!」

「激しい戦いをしてきたのね。お風呂の後は極上を教えてあげましょう。」

「私は抗うけどね。本物の最強だから!」


◇◇◇

お風呂後。


「最強、抗ってみなさい。強くなってもクローディアが安眠できる力加減は体が覚えているのよ。自動調整してくれるわ。これに抗えるクローディアはいません!」

「今まで疲労したお姉ちゃんとロディだけ。お母さんは本物の最強を知らないからね。私用に再調整してもらうことになるよ。」


 微妙に調整はしていたのよ。身長が高くなっているのですから。


「是非してみたいわ。行くわよ!」


 少し冷えている体で巻いていく。お風呂から出た後だとひんやりとして気持ちいいでしょ。そしてゆっくりと温めていくのよ。熟睡できる温度までね。


「ふっふっふっ。流石最強お母さん、今回は負け…。」

「やはり私は無敗のようね。」


 これだけは絶対に負けられないのよ。唯一と言ってもよいくらい本気で努力したのですから。あの日々はクローディアの寝顔を見ることだけが楽しみだったのよ。


「何で個性も違う3人が一瞬で眠るのでしょうね。」

「精神の奥にいる子が好きなのよ。多分だけれどね。」


 理由は何でもいいのよ。クローディアが巻きついてほしいと言えば巻きついてあげるのが私の幸せであり贖罪なのだから。完全に幸せの方が勝っているのだけれど、可愛い娘たちを抱きしめているようなものなのだから当然よね。


「ディアは巻きつかれて寝たかったみたいですね。我儘3歳児が結構我慢したと思いますよ。」

「クロアのためだからよ。訓練を毎日続けるためにはこれが必須らしいわ。」


 拷問に男性恐怖症まで…。あの一家が生きていて私の方が強くなっていたら確実に拷問していたでしょうね。それでクロアが癒されるわけではないと分かっていても許せないのよ。


「なるほど。訓練継続のために我慢をしていたのですね。」

「フィオナも巻きつかれたかったら言いなさいよ。当分先になりそうだけれどね。」


 フィオナも娘なのだから巻きついて安眠させてあげないと不平等だわ。こればかりは調整に時間がかかってしまうのだけれど、それくらいは許してくれるでしょう。


「私も経験してみたいのですが3歳児からは奪えません。待ちますね。」

「その日を楽しみにしているわ。明日は無難に終わってほしいわね。」


 無難に終わる訳が無い。


 夫と息子を殺されて怒らないはずがない。しかし幼い子を殺すつもりだったことを知っていて賛成していたのであれば殺す。知らなくても殺して何が悪いと考えるのであれば殺す。

 二月の間も女性を襲う暴漢を殺すのかしら?権力者ほど狙われる可能性があるわ。騎士団は信用できるのかしら…。


「夫だけがクズは余りないと思いますよ。それではおやすみなさい。」

「そうよね…。おやすみ。」


◇◇◇

5日目。


「おはよう、お母さん。昨日はなかなかだったけど私は成長するからね。」

「おはよう、ディア。成長する方向を間違えているわよ。計画で負けるのね。」


 私と勝負してどうするのよ。我儘対決は説教が必須になりそうだわ。


「ふっふっふっ。冗談だよ。私は負けない!それじゃあ、代わるね。」

「ええ、また明日ね。」


 今から勉強するのね。急いでも身につかないわよ。何事も大切なのは基礎ですから。今度教えてあげましょう。


「おはようございます、お母さん。今日から食材を買いにいかないといけませんね。先に店長に話を聞いてからにしましょう、」

「そうね。とりあえず私は服を着るわ。」


◇◇◇

着替え後。


「今日は姿を見せながら歩くのですか?」

「はい。主2人は私の部屋にいるので外を見ることができませんし声も聞こえません。それに人の感情を見れますし雰囲気も分かりますから。」


 欲塗れの男に囲まれる国は論外だという事ね。美少女で男性恐怖症は厳しすぎるわ。

 食堂に移動すると店長が野菜を切っていた。


「おはよう、店長。今日は食材を買いに行く?行くなら何時頃がいいの?」

「おはようございます、店長さん。」

「よう、母さんに嬢ちゃん。大きい国なら朝市で食材を売ってる時間のはずだぜ。ちょっと待ってな…。少し足りねえな。買い足しておきたい。」


 毎日900食くらい提供することを考えたら買い出しは必須よね。


「お母さん、店長さんに決めてもらいますか?」

「そうね。せっかくだし選んでもらいましょう。」


 最強能力ですから国選びも万全でしょう。あとは実際に行って自分の目で確かめるわ。


「平野と森と山と海で5ヵ国ずつ候補があります。食材選びを中心とした候補地です。この国より治安がよくて大きい国だけです。気に入った国があれば名前も調べておきます。何か希望があれば言ってください。」

「うちの若い奴と大将にも声をかけてくるぜ。少し待っててくれよ。」


 食堂ですからお店の定番となる料理の食材が新鮮に手に入る国がいいわよね。国選びでもかなり考えている。やはり砕いた能力たちとは比べ物にならないわ。


「質問してもいいですか?」

「はい。店長さんたちが来るまででしたら大丈夫ですよ。」


「クロアはいつから男性恐怖症だと気づいていたのですか?」

「精神を綺麗にした後に過去の記憶を見たときに疑い、主が冒険者たちを伏せさせたときに確信しました。しかしクロアが冒険者登録してから一月と数日しか経っていません。短期間で様々なことが起きています。それなのに今日までの出来事の全てにおいてクロアが苦しんでいるのです。実に不愉快です!」


 長く一緒に過ごしている気がしたのだけれど、それだけしか経っていないのね。そしてクロアは勝ってきた。それなのに苦しくなっていくばかりで楽しめていない。とても不愉快だわ!


「思い返すとあっという間なのですが、様々なことが起きていますね。クロアが世界を呪ったのだとしても精神は濁らない気がします。」

「クロアは世界を呪うのではなく興味がないのです。しかし精神の奥にいる子は切っ掛けがあれば粛清を始めるそうです。それでも精神は光り輝いていますから問題ありません。」


 ディアとロディが楽しめればそれでいいのね。しかし精神の奥にいる子は許していない。ドラゴンは間違いなく粛清されるわね。クロアを生贄にした人間も怪しい。


「私とフィオナが精神の状態を確認する術はありますか?」

「精神が光り輝くようになれば精神の奥にいる子と繋がったと認識できると思います。クロアは念話するように話しています。」


 繋がりを感じたら綺麗になった証拠なのね。自分で分かるのがいいわね。あとでフィオナにも伝えましょう。


「フィオナは精神を綺麗にしようとしていますから、あなたを付与した方がよかったりしますか?」

「それは絶対に駄目です!精神が濁っている私はかなり邪悪な存在です。クロアが壊した自己回復のように体を乗っ取ろうとするのかもしれません。フィオナさんの精神が綺麗になっていないと能力の状態も把握できません。ですからやりたい放題なのです。」


 フィオナは精神を綺麗にすることだけを考えていて能力を縛っていないわね。それは確かに危険だわ。使う予定のない能力ばかりですから砕くことを検討しましょう。


「危険なのがよく分かりました。精神が綺麗な主はクロアが初めてですか?」

「その通りです。世界は何故ドラゴンを野放しにしているのか理解できません。クロアにいるときの記憶だけを残して全部消したいくらいです。」


 クズドラゴンたちの記憶が何万年あったとしてもクロアの16年が大切なのね。その気持ちは本当によく分かるわ。私も消したい記憶ばかりなのよ。


「ドラゴンが本気で研究しているのか遊んでいるのか分からないくらいに酷いのですか?」

「強くなるために本気で無駄な研究をしていました。そして共喰いや人間を強くして食べれば強くなると更に愚かになっています。人から派生したのではなく魔獣なら納得できます。」


 本当に頭が悪い種族だわ。そして自分も同じ種族なのが悲しいわね…。

 強くなるために無駄な研究を続けてたどり着いたのが共喰いと強化した人間を食べること。今のドラゴンは終わっているわね。強くなることすら忘れて共喰いしたいだけに変わっているのですから。


「現実は残酷ですね…。そして店長が何故か戻ってきません。問題発生ですか?」

「確認してみます…。今日になっても豪雨が続いているので現実に気づいたみたいです。」


「気づいたのはよくない現実のようですね。」

「選ばれた人間だと考えています。邸まで用意してもらえて貴族になったつもりです。昨日までは夢心地だったようなのですが現実は残酷ですね。全員再検査します!」


 自分は特別で選ばれた存在だと考えたのね。それに店長がすぐに戻ってこないことを考えると料理の提供が遅くなってしまうからでしょう。

 勘違いを何度もされるのは面倒ですから暴動も早く起こしたいわね。うまく火付け役になってくれるかしら。それと楽園から追い出された絶望も教えてあげるわ。

良くも悪くも人は変わります。

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