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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第35話 お母さん ③後編

◇◇◇

4日目。


 ディアとフィオナがしっかりと歩ける孤児をみんな連れて買い物に行ってから、それなりの時間が経過したわね。何も問題はないのだけれど、帰ってきてからこの場所の偽装だけはしてもらいましょう。

 この場所だけ晴れていたら何かがあると必ず思われる。そして大勢の暴徒が集まるに違いない。最悪の場合は子供の見える範囲で殺し合いが始まるかもしれないわ。


 雨を降らせているのが誰か分かる人はいないでしょう。しかしディアたちが大量の食料を買っているのが強く印象に残るはず。どの方角に帰ったのか覚えている人も必ずいるわ。

 確実に食糧を溜めこんでいると思われるわね。そして食糧の奪い合いが始まったら狙われる可能性が一番高い気がする。それに私が甘い対応をしたことで怒らせてしまった。だからこそ今から起きることを受け止めなければならない。


「母さんよ、説明はしてくれるのかい?」


 もぐもぐ食堂の店長さん呼ばれていたわね。避難してきた大人にも食事を提供してくれている。感謝しなければならないわ。


「私も保護するべき人を連れてきたから説明するのはいいのだけれど、先に約束しておくことを伝えるわ。他国でもお店を開けられるように開店資金から運転資金を営業が軌道に乗るまでは出すつもりよ。仕事が二月になった延長料金も勿論払うわ。それで何を知りたいのかしら?」


 もぐもぐ食堂の関係者は避難できている。それなりに心に余裕があるはず。冷静に話を聞くことができるでしょう。

 店長に焦っている様子がないのも幸いだわ。


「できれば全部教えてくれ。なるべく分かりやすいと助かる。」

「それでは問題を起こした少女たちが記憶から消えていることを信じてくれますか?」


 秘書のブリトニーが集めた子たちのほとんどが消えた。娘たちの友達を探すのは難しいわね。桁外れな力を利用しようと近づいてくる人が多すぎる。目先の欲を優先してしまうのが勿体ないのよね。


 私が長命種だからそのように思うのかしら…。


「そんなことまでできちまうのか。そいつ等は何しやがった?」

「冒険者組合本部の所長である私には秘書が1人いたの。その子の伝手で孤児を世話する少女を集めてもらった。合計で18人いたわ。そのうちの15人が詐欺をしたのよ。親からの被害相談を受けて説得にも回ったわ。その中の少女の父親が『娘を売ってほしければ床に頭をつけろ』と私に言ったの。それだけのことで救えるのならと頭をつけた。そのときに頭を踏まれたのよ。そして少女の売値として1億リンを要求されたわ。お金を払うと少女が感激している演技を続けていた。その父親が貧民街から南区域までを巻き込んで、お金を奪うために暴動を起こそうとした。3000人くらいは集まっていたらしいわ。その集団を殲滅して問題のある少女たちを殺したのよ。そして募集で集まった女性たちも欲塗れだった。孤児に悪さをしてお金を強請ろうとしていたわ。その子たちも殺して家まで飛ばしたのよ。ここに集まっている孤児は幼い女の子が圧倒的に多いでしょ。帝国がしたことを他国も真似するつもりでいた証拠なのよ。娘に助けさせてから殺すために集められた子たち。娘も大激怒したわ。二月の間は豪雨にして5ヵ国から誰一人逃がさないとね。住民が助け合えれば問題ないそうよ。助け合えればね…。」


 激怒しているのは私が頭を踏まれたからよね、クローディア。


 簡単に自分を犠牲にするのは駄目だとよく分かったわ。私は感情が分からないのだから能力に確認してから訪ねればよかったのよ。娘たちが最優先なのですから。

 いいえ…。あの程度のことに娘を巻き込めないわ。慎重に行動するだけでよかったのよ。


 ブレンダはディアのことを諜報員に詳しく伝えたようね。そうでなければ3歳前後の女の子が295人も孤児にされている訳が無いわ。

 「お母さんに会いたい」や「お家に帰りたい」と言っている子が1人もいないのが不愉快だわ。攫われたと騒がれる前に両親を殺しているわね。しかも子供がそれを見ている。もしくは親が娘を売ったのかもしれない。


「それなら何で俺たちを助けたんだ?同じクズ街の住民だぜ?」

「恩には恩を、仇には仇を。私の人付き合いの基本姿勢なのよ。あなた達はここに集まる皆に食事を提供してくれているわ。それだけで十分なのよ。二月の間は一緒に他国に行って食材を選んでもらうわ。勿論お金は私が払う。二月後にここに残るのか他国で食堂か違う何かを始めるのかはあなた達の自由よ。数ヵ国を見て回るつもりなのだから気に入った国で食堂を始めるのが一番だと思っているわ。オルグレン帝国と近隣諸国はやりすぎたのよ。娘の心を壊すために350人以上の幼い女の子を殺すつもりでいたのですから。既に70人近くも亡くなっているの。絶対に怒らせてはいけない子を怒らせてしまったわ。ところで助けたい人はもういないの?」


 絶対に怒らせてはいけないのよ。2つの能力で世界最強を独走している。今までの常識から完全に外れているわ。


 クローディアの最強は揺るがないと確信している。


「助けたい奴はもういないぜ。それで話を好意的に捉えると他国の空き地に好きな店で商売できるってことだな。二月後になるが国を見て回れる。食材も色々試していいんだろ?皆の食事で研究はしねえ。それにも文句はないと考えていいのかい?」

「見て回るのは比較的安全な国に限るけれどね。巨大な冷凍箱を用意すればいいのかしら?量を運ぶのは簡単だけれど、鮮度は維持できないのよ。」


 浄化し続けたら食材は腐らないのかしら?私では実験もできないので聞いてみましょう。


「無駄に多く買って腐らせるほど馬鹿じゃねえよ。それで延長料金はいくら払ってくれる。」

「10倍でどうかしら?9倍だと中途半端でしょ。だから10倍。」


 仕事には正当な対価を払うわ。それに私を疑ってはいないでしょう。


「大金を持っているのは怖えがな。確かに日数で考えるとそうなっちまうな。」

「派手な遊びをしなければいいのよ。それに残しておいて老後に備えるのも有りだと思うわ。無理して使う必要はないのですから。」


 大金を持つ怖さを知っているのですから十分なのよ。そして身を守る力がないのであれば使い方を考えるしかないわ。どこにでも潜んでいる犯罪者の目に留まらないようにね。それと同じ国に住むのなら困ったときに助けてあげてもいいと思っているわ。何も聞かれないのが好ましいのよ。


「ところで母さんの娘がなかなか帰ってこねえな。330人近く連れて買い物とは豪勢だぜ。この後に豪雨とは知らねえ店員は喜んで売るだろうな。」

「あの子には感情が分かるから大丈夫よ。それに子供たちも守っていますから被害はあり得ないわね。最後にお菓子屋の棚を空にして帰ってくるはずよ。何度でも遊べる子たちが近くにいるという事があの子には初めてなのよ。皆でお買い物は最高に楽しい時間でしょう。他国でも絶対に同じことをするわ。」


 あの親子に監視され続けて全く自由がなかったのよ。その理由が食べるためだったのは余りにもクズだわ。本当に助かってよかったけれど、クロアが楽しめていないのが残念よ。ディアの笑顔を見て喜んでくれているかしら。


「ここだけ賑やかな日々になりそうだな。ところであの立派な邸はどうなるんだ?」

「あのまま他国に移動させてもいいし同じ邸を作って荷物だけを移動させることもできるわ。死者を蘇らせること以外なら何でもできると思うのよね。あの子の近くにいるときは細かいことを考える必要はないわ。約束を守ってくれたら私たちも約束を守る。簡単なことをできない人が多いのよ。」


 楽しそうな声が聞こえてきたわね。しかし母として油断しないと決めたのよ。あの子たちにとっての最高の母を目指し続ける。それ以外は全部捨てたのだから。


「賑やかになってきたなー。おい、マジかよ!みんな紙袋持ってるぞ!あんな大量に食い物が売れる店なんてあったか?」

「紙袋はあの子が配ったのでしょう。この後どのようにするのかしら?腐らないものを選んで買うとは思えないのよね。それとあの子が自然と中心にいるのが最高だわ。」


 子供たちはクローディアとの会話やお店の商品に夢中でしょう。そして結界で守られているわ。結界に欲深い人や悪人が触れたら何かが必ず起きるはずよ。

 クローディアに話しかけることができるのはフィオナと子供たちやお店の従業員だけ。今のディアには最高の陣形だわ。

 仲良くなれる子が見つかるといいわね。


「ディア、楽しんでいるわね。食べ物は浄化し続ければ腐らないの?気になるので確認してちょうだい。それとこの辺は外からだと幻影が見えるようにして。声も漏れないようにするのよ。豪雨が降る中で晴れているのは目立ちすぎるし声が聞こえたら怪しまれるわ。幼い子たちに殺し合いを見せたくないのよ。」

「腐らないか確認するよ。それに殺し合いを見るのは最悪だからね。」


 ディアもクロアも幼い子たちを守るためなら徹底的に隙を潰すでしょう。ですから私は漏れがないのか確認しなければならないわね。任せて終わりでは今までと何も変わらない。それに私だけ成長していないなんてことは許せないのよ。


「食べ物は浄化しても中から腐るみたいだよ。光が当たらない場所は綺麗にできないみたい。」

「やはりそうなのね。食料を長持ちさせるには冷凍箱に入れるしかなさそうね。」


 最強の能力たちならできそうだけれど、個別設定が必要な気がするわ。


「それと幻影もできるみたいだよ。雨が降っていて人がいないように見えるようにするから。それに結界で外側と内側の声を遮断するから大丈夫だって。」

「ありがとう。それと今から何か作るなら外が見え辛くなる場所に作ってね。」


 5ヵ国を囲めば森も入るわ。この辺りで出没する魔獣なら協力すれば倒せる。そして各国の騎士団が魔獣狩りをすれば食糧事情が大きく変わるはず。しかし国民のためにすることはないでしょうね。

 奪い合いが起きたときに真っ先に狙われるのは食料品店や貴族たちの邸に違いない。この辺りの邸だけ壊せないし庭にも入れないと気づかれるときが必ず来る。クローディアはそのときの様子をクロアに見せたいはずだわ。私の責任だからクロアの負担を軽減してあげなければならない。クロアに何も見せないようにしてしまうとクローディアが更地にするでしょう。


 いつの間にか巨大な蔵ができているわね。お菓子を入れるためだとしか思えないわ。確実に特別な蔵にしているはず。やはり勉強が必要なようね。

 何故私を見て笑っているのかしら…。もしかして目隠しのために作ったの?


「作ってみたよ。みんな、今日食べるお菓子以外はこの蔵に入れてね。冷凍箱を人数分用意してあるから。鍵付きだからなくさないように手首か足首に巻いておいて。それとお風呂も用意したよ。男女別で全員同時に入れる。浴室で体が魔法で乾くようにしたからタオルはいらないよ。砂で汚れたりしたらお風呂に入ってね。あと、孤児院の全ての部屋を魔法で綺麗にするようにしたから。服も体も綺麗になるよ。二月をここで楽しもう!」

「はい!」

「ディアは半端ないね。」


 二月過ごすためにそこまでするのね。本当に半端ないわね…。


「お母さん、自宅に帰ろう。話したいことがあるんだよ。」

「いいわよ。フィオナ、子供たちの相手をお願いね。」

「分かりました!」


 ディアが先に自宅に入りいつもの椅子に座った。

 私は玄関のドアを閉めて正面の椅子に座った。ディアの表情で真面目な話だと分かる。


「改まってどうしたの?勉強の仕方は教えてあげたでしょ。」

「全然違う話だよ。孤児の男子は最長で二月後に別の施設に預けるの?」


 確認なのか一緒に過ごしたいのかどちらかしら?


「襁褓の子以外の男の子は預けるわ。」

「施設を探すように言っておいた。早ければ明日には預けれるよ。」


 予想とは違ったみたい…。だけどそれに納得しているわけではなさそうね。


「誰かに何か言われたの?」

「お姉ちゃんは好きにすればいいと言ってたよ。魔法は異性との距離を真面目に考えろと言ってた。」


 能力たちがそのようなことを言ってくれるのね。それの何が引っかかっているのかしら?


「残った仲間たちはしっかりとした意見を言ってくれるのね。だけどディアには気になることがあるのでしょ?」

「うーん…。気になるというよりも納得できない感じだね。私は二月遊んだ後にも平気で預けることができると思ってるんだよ。だけど魔法は理屈じゃないと言ってた。お母さんが預けるのを待つか自分で預けるのか決めろってね。私は平気で預けれないのかな?」


 かなり真面目な話をしてくれているわね。ディアが傷つかないようにしてくれている。だけど預けると決めたのは私なのですから、そこだけはしっかりと伝えておかないといけないわ。


「私がディアと孤児たちの距離感を見ていたら無理だと思ったわよ。3歳だと明かして姉が男性恐怖症だから欲塗れの目で見たら許さないと言うつもりだったのかしら?」

「その通りだよ。やっぱり駄目なの?」


 それは最悪な状況になる可能性が高い。それにディアは今の姿と精神がうまく馴染んでいないのね。3歳の子を無理やり16歳にしようとしたのだから問題が起きるに決まっているわ。ディアが自分の姿だと納得するのは10年以上先になるでしょう。

 クロアがそれに気づいていないとは思えない。何か対策を考えているはず。今の私がするべきことはディアを納得させてあげることね。


「男の子がいる状況で明かすのは絶対に駄目よ。女の子だけならいいわ。」

「魔法にも同じことを言われたよ。3歳だと分かれば体を触られるかもしれないと。」


 かなり具体的に説明してくれている。残った2つの能力は相当優秀なようね。それにクロアは好きにすればいいと言っているけれど、我慢しているに違いない。そしてディアは男の子に触られても何とも思わないでしょうけれど、幼い男の子にも異性に対する興味があるはず。更にディアは美少女だからより近づきたいと思うでしょうね。


「それはあり得るわ。異性に興味を持つことは普通のことなのよ。多少の欲はあるのかもしれないけれど、問題視する程の欲ではないと思うわ。」

「それが駄目なことなの?何が駄目なの?」


 ディアの目線で説得した方がよさそうね。


「二月後にディアが必ず泣くからよ。我儘を言わないように我慢するのかもしれないけれど、ディアに何を言われても絶対に男の子は預けるわ。」

「私の言葉が信用できないってことなの?」


 皆はディアを心配しているけれど、ディアは自分が疑われていると感じているのね。


「全く違うわ。人との別れを断言するのは無理なのよ。それは理屈ではないわ。ディアはクロアと別れたら世界を滅ぼしそうね。違うのかしら?」

「別れ方によるかもしれないけど無理やりだったら滅ぼすかもしれない。」


 ディアとクロアの理想的な別れ方は精神に寿命があることくらいしか思いつかない。お互いに同じ考えのはずだからこればかりは私が何か言うことではないわね。

 クロアとディアの目的は一緒に楽しんで一緒に死ぬことだったのですから。


「クロアと出会って二月経っているの?」

「お姉ちゃんは特別だよ。日数は関係ないもん。」


 クロアが特別なのは当然のことよね。だけどクロアまで届くのは無理でも特別だと思える子ができるのかもしれないのよ。それが人との出会いなのですから。


「クロアは特別だと私も思っているわ。それなら一緒に遊んでいる男の子が特別にならない理由は何かしら?」

「お姉ちゃんが一番大切だからだよ。」


 それでは駄目なのよ。その理由で人と別れさせるわけにはいかないわ。


「ディア、それはクロアのせいで別れることになると言っているのと同じなのよ。クロアがいなければ別れる必要はないとね。最優先のクロアのせいにするのなら私のせいで別れることになるとしなさい。」

「結局人のせいにしてるじゃない。何が違うの?」


 母としてクローディアを仲違いさせるわけにはいかないのよ。小さなことかもしれないけれど、いつか大きなことに繋がるのかもしれないのだから。


「ディアもクローディアなのよ。クローディアの中で意見が分かれることは駄目。意見の違いを積み重ねていくと大きな不満に繋がるのよ。最優先のクロアが相手でも必ず小さな不満が積み重なるわ。だから私が魔法にお願いしたことにしなさい。」

「それなら何でお母さんはいいの?」


 娘たちのためなら犠牲になれるからなのよ。


「クローディアの母ですから。ディアの不満も全て受け入れてあげるわ。だからクローディアが争うことを私が許しません!」

「それだと積み重ねたらお母さんを嫌いになるかもしれないじゃない。」


 私を嫌いになったのだとしても娘たちが仲良くしてくれるのならそれでいいのよ。


「それでいいのよ。私が嫌いでもあなた達が楽しく過ごせるのならそのようにしなさい。私は好かれたいから母をしているわけではないのよ。だからどのように思われても構わないわ。」

「お母さんのせいにしたら皆が怒るよ。絶対に駄目だよ!」


 男の子を追い出すと決めたのは私なのよ。早い方がディアを傷つけないのだから皆が意見を言っているのだと思う。そして間違いなく正しい意見だと思うわ。


「怒らないわ。私が追い出すと決めていたのは聞いたのでしょ。」

「お母さんだって追い出すのはお姉ちゃんのためじゃないの?」


 クロアのために追い出したいと思っているのは間違いない。だけどディアには別の理由を言わなければいけないわね。


「それは違うわ。クローディアを守るためなのよ。クロアのためだけではないわ。ディアとロディが計画などで対決するのは2人の成長にも繋がるし楽しめていいと思う。だけど下らないことで喧嘩をしたら本気で叱るわ。クローディアは個性があっても歩いていくのは同じ方向よ。皆が別々の方向に歩いたら動けないでしょ。クローディアが成長できないわ。」

「お母さんはクローディアが同じ方向に歩く為なら犠牲になるの?」


 私が考える母とはそのような姿なのよ。それに理想でもあるわ…。


「その通りよ。分かっているじゃないの。母とはそのようなものでしょ。」

「私は嫌だよ!お母さんを犠牲になんてしたくない!」


 あなた達の犠牲になりたかったのよ…。だけど母と呼んでくれるのだから母として努力する。そして犠牲になるのなら母として犠牲になりたい。それはとても幸せな人生なのよ。

 それにフィオナも見守りたい。それまでは死ぬことが許されないわ。簡単に終わらせようとしていた私への罰なのかしら…。


「それなら同じ方向に歩くだけでいいのよ。皆がバラバラになったときに無理やり同じ方向に歩かせるだけなのだから。そしてそのまま歩き続けられるようにね。」

「今日の私は何か間違えたの?」


 本当に素直な子…。

 ディアの心を壊そうとした国々を許す気にはなれそうもないわ。住民が計画通り敵になると証明してくれた。クローディアの母に対して暴動を起こそうとしたのですから。


「いいえ。間違えたのではなく知らないだけなのよ。人と別れたことがないでしょ。それなのに二月も一緒に遊んだ子と平気で別れられると言ったことが駄目なの。知らないのだから知ることも勉強だけれど、私が決めていたことなのだから私のせいなのよ。」

「いつ別れてもお母さんが決めていたことにするの?」


 それが一番いいのよ。不満を溜めるのもぶつけるのも私だけにしなさい。それに3歳児が我慢し続けられる訳が無いわ。だからディアとロディを叱るのも我儘を受け入れて包み込んであげるのも母の役目なのよ。


「ええ。ディアが皆とお買い物から帰ってきたのを見てお願いするつもりだったわ。一刻も早く施設を探してほしいとね。先に魔法がディアに選択させただけなのよ。」

「二月だよ。そんなにも辛いの?」


 大人と子供では時間の感覚が違うでしょうし、ディアはとても優しい子なのよ。願わくばこのまま成長してほしいわ。


「大人の二月と子供の二月は遊ぶ密度が違うわ。ディアとロディは半日交代で毎日遊ぶつもりでいる。そのように考えていないのかな?」

「確かにその通りだよ。毎日遊ぶつもりでいる。」


 交代して遊ぼうとしているのがディアの優しさなのよ。16歳の思考力がそれを選択させるのかもしれないけれど、楽しいことは独占したくなるものなのだから。


「とても密度が高い二月ね。最初の計画もあの子たちのために考えそうだわ。違うのかしら?」

「そうだよ。一緒に勉強をしたい。孤児は勉強できないから仕事がないのでしょ。それなら勉強すればいいだけだよ。それに秘密基地で何か仕事ができるようにするのもいいと思ってるよ。」


 成功すればとても素敵な計画だと思うわ。だからこそ余計に心配なのよ。


「とても面白いと思うわ。だけど思いついたときに男の子たちはいなかったのかしら?」

「いたよ…。皆でお菓子を買ってるときに思いついたから。」


 数時間一緒にいただけなのにそこまで考えてしまうのね。やはり一刻も早く追い出した方がいいわ。それに助けた幼い子の遺体をたくさん見たことが原因なのかもしれないけれど、ディアが人と別れることに怯えているように感じるのよ。会えなくなることを亡くなると思ってしまうのかもしれない。本当に不愉快なことをしてくれたわね。


「出会って2時間も経っていないわ。それなのにあの子たちがディアの中にいるわ。それを消すのが私なのよ。ディアが二月後は私に任せると言えば何も言われなかったはずよ。平気で別れられると言ったからまずいと思われたのよ。」

「知らないことを断言したから危ないと思われたんだね。よく分かったよ。別れの辛さを知らなくていいの?」


 一番辛い別れを知っているわよ。無意識に考えないようにしているのかしら…。


「助けた子たちが殺されたときは辛かったでしょ。状況は全く違うし絶対に二度と会えないわけではないのだけれど、割と近いと思うのよ。ディアの中にはお菓子を一緒に楽しく食べた記憶が残るけれど、男の子たちの記憶は消すのだから。それはこの孤児院の環境が良すぎるからなのよ。ここを知っていると他の孤児院には馴染めないのかもしれないわ。」

「私は知っていても相手は会った記憶がないのだから似てるね。生きてればまた会えることがあるかもしれないけど、そのときが初めて出会った日になるから。」


 そしてディアはその子たちと間違いなく話さないわ。クロアの状態によるでしょうけれど、男性恐怖症も理屈ではないのよ。クロアはディアにあえて詳しく伝えていないみたいね。交友関係を狭めてしまう原因になり得るのだから。だけど同じ体なのだから伝えておくべきだわ。


「生きているのと亡くなっているのでは全然違うわ。だけどディアは別れる辛さを知っているのよ。死に別れが一番辛いわ。それを知っているのだから必要ないのよ。人間は出会いと別れを繰り返すわ。短い人生の中で自分と親しくなれる人を探すためでしょうね。ドラゴンは気の合う人と出会ったら親しくなれるまでゆっくりと過ごせる。私は気の合う人を見つけたら別れたくないもの。ところでディアはフィオナのことを何て呼んでいるの?」

「家族だからフィオナ姉ちゃんだよ。フィオナお姉ちゃんにした方がいい?」


 なんて理想的な状態なのかしら。私がフィオナを娘と認めたのだから姉にしてくれたのね。母として今の環境を維持していきたい。私の人生にもこのような幸せがあったのね…・


「どちらでもいいわ。それにフィオナが笑っていたでしょ?」

「そうだね。笑顔で頭をなでられたよ。」


 フィオナは心配していたに違いないわ。クローディアが自分をどのように見てくれているのか。邪魔者だと思われるのかもしれない。あとはクロアがどのように考えているのかを知るべきね。クロアがフィオナを姉と呼べばクローディアが妹になったのだと確定する。

 フィオナに家族がいるのかは知らないけれど、居候のような関係から家族になれたのは大きいわね。安心して自宅に帰ってこれるのだから…。

 クロアに何て呼ばれるのかドキドキしているのかしら。世界最強であり世界の常識を砕き続ける妹がもうすぐ誕生するのかもしれないわよ。


「そのように少しずつ家族が増えたら素敵じゃないの。フィオナは記憶を消されてもいいから精神を綺麗にすることを選んだ。努力する方向を変えたのよ。クローディアがいなければできないことだけれど、立派だと思うわ。」

「お母さんは本当にいいの?加護に何を言われたのか詳しく知らないけど嘘かもしれないよ。全てを捨てることないじゃない。」


 母でいられることが幸せで、それ以外は邪魔なのよ。本当に邪魔されたくないだけなの。娘たちのことだけは人に任せない。絶対に自分で把握できるようにしてみせるから。


「母である限り娘たちの側から離れることはないわ。強くなってあなた達の役に立てるのなら努力するのだけれど、それよりも娘たちを見守ることができるようになりたいのよ。それ以外は邪魔でしかないわ。ところで皇族と王族たちとの会議はするのかしら?」

「自己回復がお母さんとお酒を飲みたいからするって。お店もこちら側に寄せてるし避難も終わってるんだよね?」


 残ている能力なら安心ね。それに何か面白い話が聞けるのかもしれないわ。


「ええ。あのお店の大将も一緒に食材を買いに行く予定よ。家族が避難しているから静かなお店ではなくなっているのだけれど、お店に行きたいのでしょ?ところでディアは今のクローディアが、弱くなったのか、変わらないのか、強くなったのか、どのように思っているの?」

「自己回復が変わらないと言ったみたいだね。世界最強を独走中だって。だけど実際は強くなってるよ。間違いなくね。しかも相当強くなってる。クズが消えたから。」


 維持するだけでも凄いと思っていたのだけれど、また強くなっているのね。

 全く理解できないわ。


「それはどうしてなのかしら?今までは協力していたのだから強かったのではないの?」

「最初のお姉ちゃんと融合したときだけだよ。お母さんに付与してもらった能力は魔法と自己回復が全て覚えてるからね。成長してるつもりで魔力だけ使って拷問と人体実験を楽しむクズが消えたから確実に強くなっているよ。」


 無駄な魔力消費が減って強くなったと言っているのよね。魔法は一体いくつの魔法を並列起動させているのかしら。


「魔法はほぼ全てのドラゴンが保持しているはずよ。だけどそのような話は初めて聞いたわ。」

「能力の精神が濁ってたら成長できないからね。だからお姉ちゃん限定だよ。」


 精神が濁っていたら成長ができない?成長していると聞いた気がするのだけれど。


「能力が成長しているような話を聞いたことがある気がするのだけれど、記憶違いなのかしら?」

「言ったことがあるかもしれないし能力が言ってるかもしれないけど、あれは魔法と自己回復が成長してると思わせてあげるために補助してたんだよ。私の一月の冒険者活動について聞いた?」


 成長していないから成長しているように思わせてあげていたのね。2つの能力が強すぎるわ。だけど多くのドラゴンが保持しているはず。精神が綺麗なクロアだから可能なことなのね。


「悲しいことは聞いたわ。それ以外にも何かがあったの?」

「本気で最悪だよ。冒険者活動初日にブレンダに放置された直後から魔法が捜査してるんだよ。そしてお姉ちゃんは自己回復の部屋で訓練してた。砕いた能力たちは魔法の捜査情報を無視し続けて、更に魔法と自己回復を記憶共有から外した。私のことはどうでもよくて自分の手で直接人を殺したいクズ能力たちが報復するように仕向けたんだよ。魔法は死体があるから行かせるなと言ってたんだよ。結局は関わってる悪人が多すぎたし残りの4ヵ国も混ざって捜査に時間がかかってしまった。一月後に魔法と自己回復はそれが分かっても私たちを悲しませないように演技してたんだよ。クズたちも私たちのために怒ってる演技をしてたから砕いて当然だよね。」


 優秀な能力たちが何もしないのは笑顔を見たいからだと言っていたのだけれど、引っかかるものがあった。ディアの精神状態を無視してまで報復に仕向けていたのね。クロアと自己回復は訓練で知ることができず、魔法は捜査する範囲と関係者が多すぎて時間がかかってしまった。つまり私が付与したばかりの能力たちも裏切っているじゃないの。

 本当に記憶共有だけが原因なのかしら?最悪な気分だわ…。私がクロアにクズを付与したのかもしれないのだから。


「余りにも最悪だわ…。クロアはいつから知っていたの?」

「お姉ちゃんが知ったのは私が冒険者活動を休止した後だよ。能力は主の影響を受けるでしょ。だからお姉ちゃんも寝たの。結局10日間も持たずに濁りが濃くなったから主の影響ではないと判断し、最期にお姉ちゃんが訓練している様子を全能力に見せた。能力を砕く前に魔法と自己回復には砕く理由を証明したかったんだって。そのとき砕かれた能力たちは笑いを堪えてたんだよ。砕くの決定でしょ!お姉ちゃんの訓練は笑っていいものではないから。クズドラゴンと一緒だよ。」


 やはり一月後のディアが眠ると決めたときなのね。もしかしたらとクロアは自分の影響を疑って眠ってみたのだけれど、能力たちの精神の濁りは濃くなっていた。

 私もクロアの訓練している様子を見せてもらったのだけれど、とても笑えるものではなかったわ。完全に腐っていたみたいね。主の苦しんでいる様子を見て笑いを堪えるのは異常でしかないわ。


「クロアの精神でそこまで悪質になるのね。それなら全て演技だと考えた方がいいわね。」

「そうだよ。イライラするよ。クローディアに入っているときは私のためとかお姉ちゃんのためとか考えてるんだよ。イライラが増すよ!それにお姉ちゃんはクローディアに説教されたし、お母さんは働き続けることになったし、何が全てお任せくださいだよ!自分の能力を自分で砕けないのが悔しかったね。お姉ちゃんに起こされてから全力で走ってお母さんに秘密基地のことや計画の勉強方法を聞いたけど記憶も確認してみたんだ。全てが終わった後だったけど本気でムカつくよ!」


 それで何もしなかったのね。人を自分の手で直接殺したいから代わったのに孤児を救出する仕事だったのだから。それにクロアの精神でも能力たちが濁るのであれば私なら相当濁っているわね。間違いなくクズを付与している…。

 クロアは絶対に言わない。それは分かっている。だからこそ母として自分が許せないわ!


「クロアの精神は光り輝いているはずよ。それでも濁っていくのは相当なことをしていたのね。」

「精神の奥にいる子が何をしてたのか言わなかった。もしかしたらクズ夫妻を超えたことをしていた可能性があるんだよ。それにこの国は放置して全ての孤児と奴隷として売られてたり捕まってた子を連れて引越せばよかっただけだよ。更地にするか放置するかは別としてね。」


 クロアに言えない程のことまでしているのね。何も言わないのはクロアの精神が濁ることを考えたからだと思うけれど、クズ能力たちが最低すぎるわよ。

 私とフィオナも殺されていたのかもしれないわ。もしくは拷問して記憶を消されていた。時間経過でそれはないと分かっているのだけれど、最悪な気分よ。


「確かに能力は殺すのが前提で計画は何もなかったわね。ロディが帰った直後に来た能力が孤児を救ってほしいと言い出すから何人か聞いたら357人と言うし、男女の人数を教えてと聞いたら知らなかったわ。襁褓の子の人数も知らないのよ。そして当然のように人員の当てもなかったわ。朝一で食堂も開いてないから出入口の外から声をかけて開けてもらって交渉した。服屋も開いてないから出入口を開けてもらって交渉した。透明化して隣から念話しますと言われても一度もしてこないのよ。『あとはお任せください』と言われた次の日の朝だから呆れたわね。親の説得に行くときにはついてこないし、私には感情が見えないからお願いしたのだけれど、見てくれていないのでしょう。仕事する気があるのなら親の説得に行く前に念話でも直接でもいいから指摘してくれるだけでよかったのに何もしていないのよ。だけどディアとクロアが4日間で起きてくれて本当によかったわ。私はあなた達と話すことができるだけでいいのよ。」

「絶対に悪意があるね。感情は見えてたはずだから事件が起きてほしくて黙ってたかもしれないよ。人殺しと拷問と人体実験がしたいだけのクズだからね。」


 そういうことなのね。問題が起きるのを期待して放置していた。そして誰かを直接殺せるときを待っていた。何もしない理由までクズだわ…。


 消えたクズのことは一旦置いておきましょう。

 

 ディアと約束しておかないとね。ロディとだけ空を飛んでいるのを嫉妬しているのかもしれないのよね。母なのだから平等に接するように気をつけないといけないわ。


「今度気晴らしに飛びにいきましょう。それともディアが乗せてくれるのかしら?」

「私は目立つ…。あっ!巧妙な手口だね、お母さん。私に秘密を吐かせるとは中々だよ!」


 えっ!?いつの間にドラゴンになれるようになったのかしら。話してもいい秘密と駄目な秘密がクロアには必ずあるはず。さて、これはどちら側の秘密なのかしら?


「今すぐクロアと相談しなさい。巧妙な手口で話しましたとね。」

「はーい…。」


 言っては駄目な秘密なら記憶を消すはず。言うつもりだったのだけれど、何か条件があったのね。恐らくクズドラゴンで実験して安全だと確かめてから話す予定だったのが有力でしょう。

 ディアの顔が苦いものを口に含んだときのようなっているわ。これは説教が確定したわね。


「クロアに何か言われたの?」

「次の研究は3歳児が考える巧妙な手口についてだよ。フィオナ姉ちゃんも来たら見せるよ。本物のドラゴンとは何かをね。」


 待って!話してもいい秘密が壮大すぎるわ。

 本物のドラゴンとは何なの?クロアは何をしているの?


 椅子から立ち上がり急いで玄関のドアを開けた。大声ははしたないのだけれど、今は本物のドラゴンが知りたいわ。フィオナも入れているという事は家族にだけ話す予定だったのね。つまりクロアはフィオナを姉と見ているのだと確定したわ。


「フィオナ―!帰ってきなさい!ディアが面白いことをしてくれるみたいよ!」

「それ絶対に危険ですよ!クロアが見つけたんでしょ!?それなのにディアが勝手に秘密を漏らしたんでしょ!?」


 流石家族ね。既に状況を把握しているわ。


「無知なる者よ。見に来るがいいよ。」

「開き直っていて可哀想なのよ!見に来てあげなさい!」


 何故かディアが開き直っているわ。クロアが見つけた秘密なのだから私たちは無知なる者でしょうね。ついに常識の破片も粉々になりそうだわ。


「はーい!皆、また後で遊びに来るよー!」

「はーい!」


 フィオナが子供たちの心を掴んでいるわね。ロディのことも可愛がっていたし、幼い子たちなら安心して接することができるのかもしれないわね。過去に抗い続けるのは辛いでしょうから息抜きも必要だわ。

 小走りで走ってきたフィオナが自宅に入ったらドアを閉めた。そして2人ともいつもの椅子に座った。ディアから見て私は左の椅子に移動して、フィオナがディアの正面の椅子に座った。


「ディア先生、無知なる者が2人揃いました。」

「そんなことをお母さんに言っていたの?嫌な予感がする…。絶対に知らないことだよ。」

「カーテンを閉めてドアに鍵をかけます。明かりをつけてください。」


 ディアが玄関のドアのカギを閉めて窓のカーテンを閉めた。

 私は何故明かりがつくか分からないボタンを押した。すると天井についている魔石が部屋を照らす。今までは魔石で一日中明るいのが普通だったのだけれど、どのような仕組みなのか明日聞いてみましょう。


「覗いている子がいるのかしら?かなり厳重ね…。」

「孤児院の中にいる男の子の数名がこちらに興味を示しているから。帝都の孤児院から連れてきた子ではないみたい…。」

「救出された日に覗きを考えているの?クロアのことを考えたら追い出した方がいいよ。」


 本当に救出された日に覗きを考えているのかしら?記憶を調べて検査した方がいいかもしれないわね。悪人の子で悪意なく奴隷の子を殴ったりしている可能性があるわ。


「今施設を探してもらってるから大丈夫だよ。それでは、へんしーん!」


 服が破れないように小さく変身したわね。しかも私と全く同じ姿で純白のドラゴン。全ドラゴンが無知なる者で決定だわ。クロア、あなたはどこまで先を見ているの?


「純白になった私の姿ね…。クロア関連は無知なる者にしかなれないみたいだわ。」

「だから言ったのに。そのドラゴンは見た感じが違うよ。聖属性でもあるの?」


 確かに聖なる存在のように感じるわ。家族になら教えてもいいと判断するクロアも凄いわ。問題が消えたら必ず教えてくれる。クロア、誇ってもいいのよ。自慢していいのよ。

 普通なら絶対に教えないのよ。ドラゴンの中であなただけが情報を共有してくれるわ。


「甘いね!これからだよ、へんしーん!」


 これが最高機密じゃないの?世界最強だから安心だけれど、普通は怖くて見せられないわ。本気で努力してまずは追いつかない駄目ね。クロアを安眠させているだけでは足りないわ。もっと大きなものを隠しているはずよ。何も言わなくてもいいから心の負担を減らしてあげたいわ。


「少しだけ残っていた常識の破片が粉々になった気がするわ。それは何段階まであるの?」

「絶対に常識から外れているよ。ついに聞いちゃったね…。」

「何段階?無知なる者よ。私は想像したドラゴンに変身できる。つまり無限!」


 凄すぎるわよ。クロアはドラゴンが何かを理解しているのね。それも僅か一月の研究で。しかも精神の訓練をしながら…。

 クロアは謙虚すぎるのよ。もっと自信を持ちなさい!


「先生、説明をお願いします!」

「クロアに怒られて開き直っているよね。」

「怒られたよ!そしてまた怒られるよ!これは本気で危険なことだからね。とりあえず説明するよ。ドラゴンとはドラゴンという種族ではないよ。人が進化する過程で体の中にドラゴンに変身するための臓器ができただけだよ。つまり人型が本来の姿なの。そしてドラゴンに変身するためには魔力が使われてその臓器、仮名魔力拡散器に頭から伝えられた想像している姿に変身できる。大きさは年齢によって変わると予想しているよ。魔力量は関係ないみたいだからね。つまりクズ竜王妃から全て奪ってやったのさ。あはははは!」


 なるほど。人型になれるのではなく本来は人の姿でドラゴンは魔力で想像した姿になっているだけなのね。ドラゴンが何かを理解しているとかではないわね。人の進化の過程を理解しかけているわ。恐らく全種族を見れば完全に理解してしまうわね。

 そして何故これが危険なのかが分からないわ。クロアはどれ程の高みにいるのかしら…。


「先生、無知なる者では危険な理由が分かりません!」

「理由説明して実験が必要だと言えばいいよ。」

「先に言っておくけど全部お姉ちゃんだからね!」


 とりあえず逃げ道を明確にしておいたのね。流石ディアだわ!


「先生、それだけは知っています!」

「言われなくても分かっているよ!」

「うっ!ドラゴンの細胞には3つの要素が存在すると思われます。強い力、人の姿を変える力、本人の力。これを確定させてないのは私たちにとって必要なのは強い力のみであり残りは消したかったから。あの女がこの体を変えてからお姉ちゃんとクローディアは不満だった。嫌いな女の姿に似てるのにドラゴンになれない。だけどドラゴンになるのは簡単だったよ。この体とあの女の体を調べて違いを見つければよかったからね。そして魔力拡散器を見つけたので移植しました。そのときにお姉ちゃんがロディを見つけました。ロディはあの女が嫌いだから綺麗にしても元に戻ると不満でした。そこでお姉ちゃんは綺麗にしたときに取れた破片をちょうだいと言って自己回復に運ばせました。これで嫌いな女の力を消す準備はできたのですが何が消えるのか分かりません。ですがお姉ちゃんは精神の奥にいる子と一致団結して問題なしだと宣言しました。そして強い力だけが残ったのです。同じことを2人にした場合は、消える、姿が何かに変わる、邪魔な汚れだけが消えるの3つのうちのどれかです。最後はあえて邪魔な汚れだと言いました。何故なら消した後の方が強くなるからです。」


 クリスティーナに似ているのにドラゴンになれないのが気に入らない。そもそもクリスティーナに似ていることが気に入らない。研究した理由が実に分かりやすいわ。そして予想通り実験をしていないから伝えるつもりがなかったのね。

 クロアたちは強い力が残れば十分だったので消したのだけれど、私に同じことをした場合は何が起きるのか分からない。


「今のクロアなら違う答えを出しているのでしょ?答えなさい!」

「急にお母さんに戻ったね…。」

「確かにね…。あの女の力とは受け継がれてきたドラゴンの悪意。それが積み重なっている汚れだと考えているよ。」


 呪われていると思っていたのだけれど、悪意と汚れが受け継がれているのかもしれないのね。

 それなら母で実験してもらいましょう。


「それなら腕から汚れを落としてちょうだい。」

「こうなると思ったんだよね。知らないよー。」

「クローディア会議を始めます!静粛に…。」


 絶対に問題ないと分かっているはずだわ。恐らく一番最初に私に試すのが嫌なのね。クリスティーナはドラゴンに変身できなくなり、ドラゴンに変身したクローディアを見て絶望させてから殺したかもしれないわね。クリスティーナから奪っているのがクロアらしいわ。

 あの女はドラゴンの体に変えられた人間として死んだのね。クローディアは人間から勝手にドラゴンの体に作り変えられた。だからあの女を勝手に人間の体にした。そしてクズ竜王でその臓器を壊してドラゴンに変身できなくなるのを確認しているはずだわ。


 クロア、あなたは本当に凄いわ。


「腕が成功したら首から下ね。それも成功したら頭よ。」

「静粛にお願いします!誰が怒られてると思ってるの?」


 会議ではなくて説教なのね。精神の奥にいる子が何も言わないのなら安全よ。そして秘密を軽々と口にしたディアへ説教が大切だわ。


「結果が出ました。感想を正しく伝えてください。いいですね?」

「分かったわ。さあ、やりなさい!」


 実験のようにするのね。腕が消えなければ問題ないでしょう。


「それでは右腕いきます!感想をどうぞ。」


 右腕がとても軽いわ!軽すぎる!

 椅子から立ち上がり軽く右拳を何度か突き出してみる…。このようなことがあるのね。本気で拳を突き出していたら肩から先が千切れ飛ぶわ。強くなると言っていたのだけれど、流石にこれ程とは思わなかったわ。


「右腕がとても軽くなりました。そして軽く拳を突き出してみて分かりました。右腕だけが強くなりすぎているので本気を出したら肩から先が千切れるでしょう。」

「そんなにもですか…。クロアの常識のぶち壊し方は凄いよ!」


 疑問を解決してしまうのがクロアの凄さね。


「それでは首から下いきます!感想をどうぞ。」


 全身が軽いわ!何なのこれは!?

 左右に軽くステップを踏む。速い…。魔法で強化する必要を感じない。今ならあの女に勝てるわね。それも無強化で十分よ。

 クロアならディアよりも詳しく分かっているはず。強くなることも当然知っている。強くなると人は変わるのよ。家族だから教えたのは間違いないわね。そして強くなることに興味がないと言っているのだから教えた。


 クロアの気持ちが少し分かったわ。裏切られ続けてきたのだけれど、家族を信じてみたくなったのね…。安心しなさい!私は絶対に変わらないわ!


「うん、うん、なるほど!能力なしでクズ竜王妃に勝てそうなくらい強くなったわ。それに体がとにかく軽い。これは手加減を覚え直さないとまずい状態だわ。フィオナ、自分もしてもらうつもりでいるのであれば試験だと思いなさい。精神を綺麗にするのよね?間違えないでよ。」

「それ程ですか。私は大丈夫ですよ。私の中のロディに会いたいですから。」


 その気持ちが簡単に崩れるのがドラゴンなのよ。

 強くなれば復讐ができるようになるわ。フィオナ、抗いなさい!


「いつもお姉ちゃんが正しいんだよ。頭やるよ?」

「何故拗ねたのかしら?」

「3歳児だからじゃないの?」


 スッキリした。余分なことを考えなくても済む。これならフィオナも大丈夫だわ。


「感想をどうぞ。強くなりたくなりましたか?能力と話したくなりましたか?」

「頭がスッキリしたわ。全部捨てたから興味ないわよ。ドラゴンになるわね。」

「お母さんが服を弾き飛ばしたよ!流石に喜びすぎでしょ!」


 服を着ているのを忘れていたわ…。


 自室に行き姿見で今の姿を確認すると純白になった自分がいる。光り輝いているのが浄化の効果がありそうだわ。本当に聖なる存在にしか見えないわね。


「やはり純白ね。汚れの中に悪意も混ざっていた気がするわ。埃が積み重なるように溜まっていたのね。これは極秘でしょ、ディアちゃん。」

「そうですよー!私が口を滑らせました。それなのに何も知りません。次の大発見は私が見つけてみせる!」

「はい!私もやって!」


 人に戻り椅子に座った。安心して見ていられる。


「家族だけの極秘だからね。それでは私に何でもいいから能力を付与してから砕いて。付与されたときに細胞を採取しないといけないから。」

「それで私はすぐにできたのね。残った能力はやはり優秀だわ。」

「それでは付与するよ。」


 フィオナがディアの背中に手を当てた。

 今は隙間だらけだから付与するのも楽でしょう。


「もういいよ。砕いて。」

「まだ途中だよ!優秀すぎない!?」

「2つの能力で世界最強を独走しているのよ。世界一優秀でしょうね。」


 付与の途中で十分なのね。優秀な能力が更に成長しているのでしょう。


「それではフィオナ姉ちゃん、いくよー!」

「あれ、あらあれ!?いやいや…。ここまで変わるの。あー、本当だ。今までのように人を殴ったら殺しちゃうよ。」


 フィオナが椅子から立ち上がり軽く動いて拳を突き出している。そしてドラゴンに変身した。4足歩行が基本だけれど、直立することもできる一般的なドラゴンね。やはり純白だわ。

 満足したのか人に戻り椅子に座った。


 フィオナに質問しないという事は変わっていないのね。

 さて、ディアを試験しましょう!


「先生、もう秘密はありませんか?」


 代わった。雰囲気からディアに代わるまで入っていた能力のようね。


「お母さん、主の口の軽さは分かりましたので試験は無しでお願いします。本日二度目ですね。世界最強能力の自己回復です。この先の秘密は精神が光り輝いていないと知る権利はありません。お2人のために秘密にしています。それと外で覗いている4人の男の子の記憶を確認した結果、売る側の息子たちでした。そして奴隷だった女の子たちを悪意なく好き勝手にしていたことが判明しましたので記憶を消して追放しました。それではまた明日お会いしましょう。」


 言わなくても確認してくれていたのね。もしかしたらクロアからの指示かもしれないのだけれど、救出されたその日に覗きをするのは子供でも非常識だわ。そのようなことをする子は嫌いなのよ。

 それに悪意なく奴隷の女の子を好き勝手にしている。やはりディアが3歳児だと言わなくて正解だったようね。その子たちにどこを触られるのか分からないもの。そしてクロアのために具体的なことを言わなかったのでしょう。


 精神が光り輝いていないと知る権利がない。間違いなく能力に関係しているわね。これは考えない方がいい気がするわ。


「ちょっと待って!女の子たちも確認してほしいの。人数が多いけれど、子供は悪意なく酷いことができるわ。これからディアやロディやフィオナと仲良くなった子の中におかしな考え方をしている子がいるとまずいわ。それにクロアと話すときが来るかもしれないの。今は演技しているだけなのかもしれないわ。それと私とフィオナも確認して。駄目かしら?」

「確かに幼い女の子は被害者だけしかいないと考えるのは危険ですね。それでは検査を開始します。主に代わりますね。」


 幼い女の子は被害者だと思い込んでいては危険だわ。それに私が疑えばいいのよ。


「もー!お母さんが聞くから悪いんだよ!お姉ちゃんからの伝言。『最初の秘密は実験してから伝えるつもりでいたのだけれど、隠している秘密は教えられない。フィオナ姉さんは私たちが眠っていたときの状況をお母さんに聞いて。直接話せる日を楽しみにしているね。それと3人とも自宅とはいえ全裸は問題だと思うよ』と私を説教しながら言ってたよ。お母さんは今晩私を最高の眠りで癒してよね!」


 我儘3歳児の要求にしては可愛いわね。そういえばディアと眠ったことがない気がするわ。今まで訓練で疲労しているクロアばかりだったから我慢していたのね。

 このようなときに素直に甘えたいと言えばいいのよ。3歳児なのですから。


 それにしても美少女と美女が全裸なのはまずいわ。私も大人の男性には見られたくないのよね。

 だけど服を着る前に試しておきたいことがあるのよ。


「純白では他のドラゴンに見られたら大変なことになるわ。色違いで変身できるのかしら…。」


 今までの色を意識する…。

 想像した姿に変われるのなら色も変えられるはず。


「よし!どうかな?うまくいった気がするわ。」

「お母さん、眩しい!本気で眩しい!急にどうしたの?」

「クロアもお母さんに乗せてもらう約束をしていたからね。」


 やはり色まで変えられる。とんでもない発見だわ。


「私が結界で光を抑えるわ。それなら問題ないわよ。クロアも許してあげてね。」

「流石お母さん、天才の発想だよ!やっぱり違うよね!」

「クロアの方が大概だと思うよ。常識残ってないよ。」


 フィオナらしくない表情ね。もしかして…。


「さて、服を着ましょう。フィオナには何があったか説明するわ。」


◇◇◇

着替え中。


「男の子は明日移動させることになったよ。フィオナ姉ちゃんの代わりに私が遊びに行ってくるからね。」

「分かった。それなら2階の窓は閉めるように。何が見えるか分からないからね。」


◇◇◇

フィオナに詳細説明中。


「この話は今の私たちに関係ないのだから気にしないことにしましょう。ところでフィオナ、それほど嬉しかったの。クロアに姉さんと言われたことかしら?それともフィオナと話すのを楽しみにしていると言われたことかしら?明らかに表情が変わりすぎよ。」

「ディアが姉ちゃんと呼ぶのとクロアが姉さんと呼ぶのは大きな違いがありますからね。相当違いがありますからね。ちょっと緊張しているだけですよ。」


 緊張しているの?

 喜んでいるのを隠しているのだと思ったのだけれど、何に緊張しているのかしら?


「強くなっても質問されなかったのよ。問題なしだと判断されたのに何を緊張しているの?」

「私はクロアに助けられていますし色々教えてもらって強くもしてもらって、クロアは間違いなく努力家だと思うのですが成長速度が凄いです。私が姉のように接してもいいのかなと。」


 若い子は難しいことを考えるのね。妹が姉と呼んでいるのに姉が悩むのは何故なのかしら?それにクロアと会話するのは一番難しいのよ。姉としての姿を見せてほしいわね。


「ディアも含めてみんなクロアに助けられているわ。だけどあなたが姉なの。クロアを助けてあげなさい。クロアは訓練に集中することをやめたのよ。外に出て姉と会話したいと思ったのですから。クロアが姉と認めたという事はクローディアが妹になったのよ。精神の奥にいる子が出てくることはないから3人も妹ができたわね。クロアとだけは話せない姉なんて家族にいないわよね?平坦な感情で色々な話題を楽しむ。相当難しいわね。姉として体の弱い妹となるべく長く話すだけなのよ。クロアが話したいと言った相手はフィオナが初めて。飲み物とお菓子くらいは良い物を用意してあげたいわね。そして最初は30分以上話せたら十分だと思うわ。頑張ってね。」

「いいでしょう!私も覚悟が決まりましたよ。姉としてクロアを可愛がってあげましょう!」


 それは凄いわね。平坦な感情で可愛がってあげられるの?フィオナが感情を動かさないように気をつけてもクロアが喜んだら駄目なのよ?


「平坦な感情を維持したまま妹を可愛がってあげられるなんて流石世界最強の姉さんだわ。私も近くで見ているわ。」

「分かりました!ディアとロディに頼んで特訓します!」


 悪くない判断だと思うけれど、子供の遊ぶ時間を奪いすぎないように特訓しないとね。


「姉さんは見ていないわね。クロアはディアを守るために必死で生きてきたの。ディアでは特訓にならないと思うわ。だからロディに頼みなさい。あの子は精神の奥にいる子と繋がることができるしクロアのための特訓なら絶対に断らないと思うわ。但し、遊ばせてあげること。特訓は1時間以内にしなさい。そしてロディに説教されなさい。」

「ロディは突然変身するから説教されそうだよ。だけど私は姉ですからね。姉の極みを見せてあげましょう!」


 普段のまま特訓するのが一番だと思うわ。それと姉にも極みがあるのね…。


◇◇◇

念話中。


「お母さん、自己回復です。お母さんとフィオナさん、それと女の子の検査を終わりました。世話をしてくれている女性も再検査しました。念のため襁褓の子と男の子と世話をしてくれている男性も検査しました。結果ですが女の子15人を追放しました。売る側の娘たちで奴隷の子の服で見えないところを蹴ったり踏んだり鞭で打ったりしています。全体に回復魔法をかけて記憶を消して追放しました。それとクロアが用意してくれた飲み物とお菓子を全部食べると妙なやる気を出しています。助かりました。ありがとうございます。」

「助けられたのはこちらです。それとクロアに男性恐怖症についてディアに説明しなさい。いつも自分ばかりが我慢しないでと私が言っていたと伝えてください。それでは明日もお願いします。」


「分かりましたクロアに伝えておきます。それでは明日お会いしましょう。」


念話終了。

◇◇◇


 あれだけ女の子がいて売る側の子がいないはずがないと思っていたのだけれど、やはり多いわね。それだけオルグレン帝国と近隣諸国が腐っている証拠だわ。


「フィオナ、朗報よ!クロアが用意してくれた飲み物とお菓子を全部食べるとやる気を出しているみたい。楽しんでもらえる量を用意するのが難しいわね。」

「これは情報漏洩だよ。防がないと危険だよ!」


 世界一防ぐのが難しい相手なのよ。それに守ってもらっている身としては安心ではないの。特訓するのを知られたのが恥ずかしいのかしら?


「世界最強に挑むのね。最強で優秀な能力たちはクロアが喜ぶ話をしているだけなのよ。楽しみにしているみたいね。だけど感情を出せないわ。姉として頑張って!」

「楽しみにしていたら代わった瞬間に倒れちゃうよ。やはり極めるしかなさそうね。」


 本当は嬉しいだけみたいね。娘たちは隠すのが癖になっているのだから私が努力して見つけ出すしかない。隠しごとは不可能だと諦めさせてあげるわ!

 クロアも背中ではなく前を向いてくれた。今は家族を見てくれている。母としてそれに応えてあげたい。それにクロアがフィオナを選んでくれたことがとても嬉しいのよ。家族が増えるのはとても幸せなことなのね。だからといって娘を増やすつもりはない。私は今の娘たちが最優先なのですから。もしも娘たちが認める子が現れたら考えてみることにしましょう。


 雨が降っているのが窓から見えるわ。この雨で何を見ることになるのかしら…。

お母さんが成長していくのはこれからですね。

努力家ですから着実に成長していきます。

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