第33話 お母さん ②
◇◇◇
2日目。
表通りの交差点は酷すぎるわ。
フィオナが提案した、男性を女装させて並ばせたのが住民たちに好評なのが全く理解できないの。しかもスカートを履かせて下着は無しよ。美少女の力で突風が吹き抜ける度に盛り上がるの。肥えた男性もいたけれど、スカートは必須だったようね。それに値段は個別にしていたわ。
確実にクロアの記憶に残るわよね。流石に拷問かしら…。
基本は逃亡禁止と暴力行為の禁止。購入者が望むのなら去勢することにもなっていたわ。見物客は男性と女性で見ている人が綺麗に別れていたわね。
昨日のブリトニーのように鼻血を出している人もいたけれど、タオルで抑えて全く帰る気配がなかったのよね。そして突風の度に目に焼き付けるように何かを見ていたわ。それに鼻血を出した人にはタオルが無料で配られていたのよ。その用意のよさに呆れてしまうわ。
売り出されていた男性の額には×の焼き印がされていたわ。治療は無料だけれど、焼き印を残して購入する店もあったわ。
そして購入するとお店の名前と場所が大声で宣伝される。その効果は絶大だと思うわ。
何故か売値の1割がフィオナの取り分になっていたけれど、クローディアの取り分を4割に減らしていたから文句も出ない。
競売人も普段は偉そうに魔獣の牙や皮などを購入する貴族を売れるからなのか、凄いやる気に満ちた目をしていたし声も張り上げていたわ。
私の予想に反して完売した…。
惨殺は続いていて最低な光景なのに住民たちが平和を楽しんでいるように見えた…。
オルグレン帝国の騎士団も働かされていたわね。
悪人の死体を放置しておくのはまずいからだと思うけれど、今まで仕事をしていないのだから働けと言わんばかり住民たちから野次が飛んでいたのよ。帝都内の治安維持を目的とした組織がなかったから、そのように思われても仕方ないのかもしれないわね。だけど魔獣の侵入を防ぎ国境を守っていたのは彼らだと私は思ったわ。住民たちの態度に不安しかないのよ…。
クローディア様のお陰で悪人が退治されることに感謝しろと叫んでいる人までいたわ。
不安が募るばかりなのよ…。
誰もが恐れる極悪人まで殺されるのだから知る人ぞ知る英雄になってしまっているわ。名を広めるのは本人が望んでいないと隠している人の方が多いけれど、大勢に感謝されているのは間違いないわね。
この状況がクロアの狙いだとは思えないのよ。報復の指示を出すときにはディアが大勢に囲まれていたと知っていたはずだわ。本当は恐れさせたかったのではないのかしら。
お城を消すなり少しだけでも見境なく殺せば間違いなく恐れられたはずだけれど、クロアは優しすぎるの。私はその優しさが大好きだから住民たちの態度が不安で仕方ない。
帝都の空気が全く違うものになったわ。南から吹く風にもすえた匂いが混じっていないのよ。帝都全域を浄化した結果ね。家や道、路上生活に近い人の服や体まで浄化され綺麗になったと聞いたわ。
このような機会は二度とないと分かっているのか頑張って仕事を探しているようね。
帝都内の治安を守っている組織はないわ。国境すら守られていないのかもしれないのよ。しかし誰もそれを恐れていないのが怖いわ。今は魔獣の侵入を警戒している帝国兵もいないのに。彼らが帝都内を歩いていたのが多少なりとも治安維持に役立っていたと思うけれど。
この状況は能力たちにも計算外のような気がするわ。
だから何が起きてもおかしくないと思うのよ…。
ここまでくると冒険者たちもクローディアの悪口を言えないわ。住民の誰かに聞かれたら大変なことになると分かるのよ。そして敵対したらどのようなことになるのか理解したのでしょう。
冒険者たちの方が現実を見ることができているわね。
冒険者組合本部には今でもクローディアへの指名依頼が何故か入るけれど、断る言葉も決めているわ。治安維持をしながら他国の悪人を殲滅していて多忙だから無理。そして悪人の殲滅を終えたら活動を休止することになっているとも伝えているわ。
いつでもどこでも誰でも殺せる力を持つ人が何故あなた達の味方だと思うのよ。これは報復でしかないと噂でも広まっているじゃない。
指名依頼を断られた依頼主が秘密を知ることができたと喜んで帰っていくのよね。異常だと思うわ。10日間で近隣諸国全てを同じ状況にするに違いない。そして治安維持はその日で終わるかもしれないと考えないのかしら。
更地になる日が迫っているように感じるわ。
◇◇◇
3日目。
今日は力のないディアだと聞いている。
絶対に目が離せないわね。クローディアを住民たちに見せるつもりはないのよ。
「お母さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします!」
「おはよう。あなたも能力と呼べばいいのよね?」
実際に能力と呼ぶことはないけれどね。あなたと呼ぶことしかできないわ。
「はい。そのように言えと言われています。え…、すみません。能力です!」
これは大変な日になりそうだわ。先に呼び名を決めてしまいましょう。
「あなたのことをロディと呼んでもいいかしら?」
「おー、特別扱いですね!クローディアだからロディですね。とても嬉しいです!」
ディアより幼く感じるわよ。しかも能力ではないのね…。
クロア、あなたはロディをどこで見つけたの?何故そのようなことができるの?
「ロディ、街を案内してあげたいけれど、ごめんなさいね。街にクローディアが姿を現すと大混乱になるの。何かしたいことがあるかしら?」
「お母さんのお仕事を見て手伝えそうなことがあれば手伝います。何もできなければ見学しています。夕食は隣のお店に連れていってほしいです。」
ロディの仲間たちのお陰で仕事が余りないのよ。質問を許してくれるのかしら?
「ロディに質問するのは禁止か教えてくれない?」
「えっとですね…。質問を確認するそうです。私がすぐに答えられなくてごめんなさい!」
幼いと感じるのに丁寧に頭を下げて謝るのね。ちぐはぐに感じてしまうわ。
ロディについての確認が必要だわ。
「気にしなくてもいいのよ。能力と話せるようになったら私の中のロディと話せるようになれるのかしら?」
「話せますよ!私と同じ存在がお母さんの中にもいます。」
完全に予想外だわ。クロアが見つけた特別な力ではないのね。
私と同じ存在…。能力たちがロディを幼い子のように扱ってほしいのかもしれないわ。
「ロディと話すためには能力と話せるだけでもいいのかしら?」
「クロアと同じくらい能力の声を聞けるようになれば話せるはずです。」
「難しくて分からないわ。能力と直接話したことがないから分からないの。」
「お母さんは精神の奥にいる子を知ってますよね?」
そこから始まるのね…。クロアはその子と何かできるのかしら。
「ええ、能力はその子の影響を受けると聞いているわ。」
「その子と対話できるくらいの能力です。」
クロアはそのようなことができるのね。
「ロディ、それは本能に近い存在よね。能力も操作できないと聞いたわ。」
「その通りです。自己回復が頑張っても声が聞けるだけです。えー?『今のところはです』と追加しろと言われました。更に頑張るみたいです。私も頑張ってますけどみんな凄いですからね。」
成長している自己回復よりも凄いことをしているのね。とんでもないじゃないの。
「自己回復より能力の声を聞けないとロディと話せないのね。」
「うーん…、勘違いをさせてしまいました。ごめんなさい!私は絶対に自分から話しません。主と話せるとも思ってませんでした。言っていいですか?えっと…、いいみたいです!私は話さないし声を出したとしても主が聞こえない場所にいます。だけどクロアは私が話せると確信して皆がいる場所まで連れてきてくれたのです。とても賑やかで楽しい場所です!」
絶対に自分から話さない子を話せると信じて連れていく。全く意味が分からないわ…。
「ロディ、とても難しいわ。精神の奥にいる子と対話できる事との繋がりが分からないの。」
「精神の奥にいる子にも意思があるのは知ってますよね。クロアを主だと認めさせようとしましたから。だけど精神の奥にいる子も自分なんです。自分が自分と話すのです。これはとても凄いことです!私も精神の奥にいる子に似ている存在です。私と話すためには連れ出すしかありません。精神の奥にいる子は最も純粋な自分です。自分を知る力。自分と対話する力。自分と向き合える力が必要です。」
「もしかしてロディは自分が話せると知らなかったの?」
ディアは自分が常識に変わったと言っていたけれど、クロアが常識を粉々に砕いているじゃないの。能力と話して、話せないはずの精神の奥にいる子と対話して、そして似たような子が体のどこかにいるのね。
それを見つけろという事なの?
ロディも純粋なクローディアだと考えるべきだわ。
「そうなります。あっ、話せたという感じでした。私は記憶を共有することができません。主の記憶しか知りません。あ、今のはクロアのことです。私が主より…、今の主はディアのことです。主より幼い理由は分かりません。話し始めたばかりだからかもしれませんし、精神が成長しないかもしれません。でも頑張りますよ!」
「ロディにとってクロアはどのような主なの?」
体のどこかにいる話せると知らない子を連れ出しているのね。ディアより幼いと自分で言っているわよ?事前説明は正確にしてちょうだい。ディアより幼い純粋なクローディアなのね。
それだけではないと思うけれど…。
「世界一の主ですね。私が知ってる主はクロアしかいません。それに私と話したことがある主はクロアしかいないと思います。そして今日は外にも出ることができました。それに皆が私を守ってくれているから安心です。」
「ロディは能力が縛られることについてはどのように思うの?」
幼く純粋な子なら最も近い答えを教えてくれるはず。私にもできることなのかしら?
「精神の奥にいる子は人それぞれ違うはずです。そしてその子が望む環境であれば縛ることにはならないと思います。クロアの精神の奥にいる子の意思が殺意や憎悪でもおかしくないと思います。だから世界は感謝するべきです!クロアは本当に笑ったことがないから主の笑顔が大好きです。クロアが本当に笑える日々が仲間たちの願いです。今回と同じようなことをしたら更地にします!本気で怒ると更地では済みません。世界が崩壊します。」
「世界が崩壊してもクロアは笑えるの?」
なるほど。これが初日の能力が言っていたことなのね。人それぞれ環境が違う。私の精神の奥の子の意思には悪意が残っているはず。2人の母親なら克服しなければならないわね。それに悪意が残っていては能力と代わることが怖くてできない。クロアとディアがしていることは相当凄いことなのね。
それに純粋な子がこれ程までに怒っているわ。世界が崩壊してもいいとまで考えているのよ。帝都の住民たちには危機感が足りなすぎる。
更地にされる日が迫っている気がするわね。
「笑えます。家族はここに集まっていますから。お母さんも変わらなければ大丈夫です!」
「それは嬉しいわね。娘たちの役に立てる母になりたいのよ。今回失敗してしまったから大人の母としての目線も忘れないようにするわ。」
クロアの家族はクローディアにいる。気をつけなければ世界崩壊を選択するという事になるわね。私が家族に含まれているのが奇跡だわ。本当に嬉しいわね!
「クロアはあの女に体を作り変えられたわ。ロディはそれでもロディだったの?」
「えっと…、お母さんの質問は鋭いそうです。だけど答えても大丈夫です!私はあの女の力が大嫌いです。数え切れないほど魔獣に食べられました。クロアが私を見つけた一番の大きな理由がそれです。精神はあの女に作り変えられることはありませんでしたが、私の体は作り変えられました。ですが私は精神の奥の子と繋がってます。精神の奥の子がクローディアなら私も同じです。クロアは私があの女の力で作り変えられていてもクローディアだと気づいたのです。クロアは元の体に戻る方法を探していました。だから体に残ってるクローディアを探したのです。」
そのような繋がりなのね。恐らくこの子は内臓だけれど、クローディアの精神と繋がっている。精神と繋がっているのですから話せると考えたのね。見つけるには精神の奥の子と対話できる必要があるし自分を知ることが必要になるわ。自分を知るとは途轍もない内容なのね。
ドラゴンの力だけは残しあの女の力を体から消し去った。それがクロアと精神の奥の子の望みでありロディの望みでもあったのね。
「ロディ、本当にありがとう。凄く勉強になったわ。だけど冒険者組合には仕事がないのよ。せっかく出てきたのだから何かやりたいことをしましょう。」
「それは困りましたね。今日を無駄にしたくありません。本部の裏切者を退治しましょう。」
ロディ、絶対にそれは駄目よ。あなたは純粋すぎる子なの。だけど全てを否定したら拗ねてしまうかもしれないわね。計画を考えて様子を見ましょう。
「仲間たちに聞いてみてちょうだい。私もロディにそのようなことをしてほしくないわ。」
「私も1人くらい悪人退治できます!皆が馬鹿にしてきてムカつきますね!」
「何て言われたの?もしかしたらその方が皆の役に立てるかもしれないわ。」
「積み木で遊んでろ、お母さんに巻きつかれて寝てろ、お風呂でゆっくりしてろとかですよ。まるで私ができない子のようです。あーあ!秘密言っちゃおうかな!言ってもいいのかな?私の正体言っちゃおうかな!?」
仲間たちを脅しているわね。今日は仲間たちの苦労がよく分かる日になりそうだわ。
「ロディ、クロアがあなたを見つけたのだからクロアが許可しないと話しては駄目なのよ。秘密は見つけた人が話す権利があると思うの。そのようなことをしたら絶対に駄目。」
「許可が出ました。作戦通りですよ!大人の私が秘密を簡単に話すと思ってますね。甘いです!」
許可しないと確実に話すと思われているのね。我儘全開だわ。
大人扱いされたいのね。
「ロディ、どのように退治するのか計画を考えましょう。大人は計画が大切なの。」
「その通りですね!エイベルに向かって諜報員なのにふざけるなと先制攻撃をします。」
とんでもない計画だわ。一瞬で終わるわね。だけどこの子を血塗れにはしたくないの。死体から流れ出る血も直接見せたくないわ。
「ロディ、待ってちょうだい!それは計画ではないわ。エイベルに諜報員だと自白させるのが大人よ。知っているからと先制攻撃は駄目なの。」
「お母さんと話してるのにうるさーい!魔法が力貸してやるとか言ってるんです。全く必要ないのに。本当に子供扱いですよ。」
子供なの。それも純粋な幼い子なのよ。大人作戦で乗り切るしかないわね。
「ロディ、それは違うわ。大人は力を使いこなすの。ロディは魔法を使いこなせないの?もしかして子供だったの?」
「お母さんの言う通りですね。魔法を使いこなします!エイベルに諜報員だったら死ねと魔法をかけてやるのです。完璧ですね!」
一撃必殺が好きな子なのね。それとも表情では分からないけれど、ディアを悲しませたことを怒っているのかしら。そしてクロアまで悲しませているわね。
「ロディ、それも先制攻撃よ。自白させるためには諜報員を知る必要があるわ。何を聞けばいいのか分かるかしら?」
「諜報員ですか。えっと…。とても難しいですね。」
この流れで私の計画にしましょう。素直な子でよかったわ。
「ロディに諜報員の秘密を教えてあげるわ。実は勝手に動いたら駄目なの。エイベルはどうして動いたのか分かる?」
「分かりました。命令されたんですね!」
「ロディ、大正解よ!エイベルに誰の命令で動いているのか聞けばいいの。だけど何か足りないと思わないかしら?大人なら気づくはずよ。」
「命令だけだと所長の指示も命令かもしれませんね。」
すぐに答えてくれるわね。何か秘密があるのかしら?
「素晴らしいわ、ロディ!エイベルは私と誰かに命令されていたはずよ。どのように聞けばいいかしら?」
「エイベル、命令された人を全員言えと聞けばいいですね。」
「少しだけ足りていない気がするの。エイベルは何を命令されていたのかしら?私には難しいわ。ロディ、助けて!」
「お母さん、私に任せてください!クローディアに送る依頼書を決めたのは誰か全員言えと聞けばいいですね。」
「ロディ、その手があったのね!私も勉強になったわ。ここからは範囲を狭めていくだけね。何人も名前が出たらどうするの?」
「命令する人が1人だけとは限りませんからね。んー、難しいですね。何かあるはずです。何か見落としてる気がします。」
全員の職業を全て聞くのが一番早いけれど、遠回りをしましょう。
悪いことをしていたのだと知ることが大切だわ。
「ロディ、命令した人は仲間たちに退治されていないかしら?」
「諜報員と間諜を消すと言ってました。つまり命令した人の中で死んでる人は誰か聞けばいいのですね。」
「流石よロディ!それなら次に聞くのは死んでいる人のことよ。何を聞けばいいのかしら?」
「名前と職業ですね!」
「素晴らしいわ。やはり大人だったのね!だけど気づけていない問題があるわ。エイベルは2つ職業を持っているはずよ。何かいい方法がないかしら?」
「死んでる人の名前と職業を全て言えですね!」
「その通りよ!それを聞けば諜報員だと言うはずよ。まずは確認することがあるわよね?」
「エイベルは諜報員だと知ってたかですね!」
幼い子より明らかに賢いわ。もしかしたら16歳の思考力も使えるのかしら?だけどそれでは逆に足りなく感じてしまう。少しだけ使って成長できるように頑張っている。その可能性が高いわね。
「完璧だわロディ!あなたの精神は成長しているのよ。ディアを超えた気がするわ。」
「やはり超えてしまいましたか。今度言ってやりましょう。ふふん!」
ディアと張り合っているのかしら?それを見られないのが残念だわ。
「仲間たちはそれだけで退治していないはずよ。諜報員として何をしていたら駄目なのかしら?」
「一番は善人を殺すことですね。ですが子供の死に関与していても駄目だったはずです。」
「直接関与していなかった場合はどのようにすればいいのかしら?依頼内容は嘘だったはずよ。」
「依頼内容が嘘だと知ってたか、子供が死んでると知ってたか聞けばいいですね。」
「最後の難関よ!それではロディ、計画を全部覚えているのかしら?」
「確かに最後の難関ですね。エイベルがクローディアに送る依頼書を命令してた人を全員聞く。その中に死んでる人がいるか聞く。死んでる人の名前と職業を全て聞く。諜報員だと知ってたか聞く。エイベルが善人を殺したことがあるか、子供の死に関与していたか聞く。人の死に関与してなければ依頼内容が嘘だと知ってたか聞く、そして子供が死んでると知ってたか聞けばいいのですね。」
「ロディ、3年後のディアを超えている気がするわ。あなたの成長速度が恐ろしい!」
「私は1日で3年後の主を超えてしまいましたか。ごれが才能の違いですよ!ふふん!」
やはり張り合っているわね。騒々しい2人が想像できる。とても素敵な光景だわ。ディアにもそのように話せる相手が1人はいたのね。家に1人でいても中で楽しく話していたのかしら。そうであってほしいと思ってしまう。
だけど自分の罪を軽くするつもりはない。今後は1人にならないようにしないといけないわ。そのためには友達を作るか私が仕事を辞めるしかないのよね。できれば友達を作りロディとも競えるようにしてあげたいわ。
隣のお店のようにすればいいじゃないの。私の力だけでは足りない。明日にでも相談しましょう。クロアの仲間たちなら協力してくれるはずよ。
「カンナカムイ様、そろそろ行きましょうよ。何をするのかは分かりましたから。」
「小声で話しなさい。それだけは駄目よ。あの子は純粋すぎるわ。今は計画だけれど、本人を目の前にしたときに無邪気に退治できるのか心に傷が残るのか分からないもの。」
「お母さんですね。面白いから見学しています。」
手伝いなさいよ!
「ロディ、目を閉じて考えてみて。目の前に退治する人がいるわ。どのような気持ちなの?」
「少し体が震えますね。これが初陣の怖さですか。私は負けませんよ!」
直接退治させるのは絶対に駄目だわ。同じ失敗はしないと決めたのよ。
「初陣で震えているのね。それなら退治すると言うのを練習してみましょう。」
「練習は大切ですね。エイベル、お前を退治する!」
これが言えるのは予定通りよ。だけど問題は次なの。
「ロディ、もう一度目を閉じて。同じ言葉を言ったら目の前の人が消えるのを想像してみて。」
「消えるの、ですか…。エイ、ベ、ル…。」
声が震えて涙が出ているじゃない。本当に子供は頑張りすぎるのよね。母が娘たちの様子を毎日確認するのは当然だわ。友達を作る計画も大切だけれど、私が母として努力するのは必須よ!
「はい。ここまでよ。ロディ、こちらにいらしゃい。」
「はい…、お母さん。」
涙をハンカチで拭いて優しく抱きしめてあげる。
「ロディ、大人の仕事は2つに分けられるの。頭を主に使う仕事と体を主に使う仕事。今回の場合だと計画を考える人とその計画を実行する人。計画を考えて自分で実行するのは大人だと言えないわ。何故なら仲間たちを使いこなせていないもの。大人のロディならどのようにするべきか分かるわね?」
「私が考えた計画を仲間に任せるのですね。」
優しく頭をなでてあげる。
「ロディ、大正解よ!仲間にも得意なことや苦手なことがあるでしょ。それは恥ずかしいことではないの。ロディにも得意なことや苦手なことがあるわ。ロディは計画を考えるのが得意なのよ。だけど実行するのは苦手。ロディは大切な仕事を終えたわね。今日は仕事に行くのをやめるわ。フィオナはどうするの?」
「それなら私もロディと一緒にいます。」
「フィオナさんも一緒にいてくれるのですか。とても嬉しいです!」
フィオナが守らなくても今は安全だから従業員の子たちも大丈夫ね。
「さて、ロディ。お話でもしながら私に乗って空を飛んでみる?」
「空まで飛んでくれるのですか!飛びたいです!」
「ロディ、何て可愛いの!私も頑張ったら私の中のロディと話せるようになるかな?」
フィオナが話し相手になってくれている間にドラゴンに戻りましょう。
「服を脱いでドラゴンに戻るわ。ロディと話していてね。」
ドアを開け自室に入る。開けたままにして話し声をよく聞こえるようにした。
「分かりました。ロディ、どうかな?」
「フィオナさんの中にも私はいます。ですが最強の私に会うのは簡単ではありません。」
今まで最強なんて言っていたかしら。何故か冗談に聞こえないわね…。ロディにはまだ秘密があるはずよ。仲間たちも最強ではなくこのままでいてほしいと思っている気がする。
服を脱いで畳んでいく。小さくなれば脱げるけれど、人型を脱皮したみたいで嫌なのよね。
「なるほど。苦しい修行を積み重ねれば私の中のロディと話せるのね。」
「フィオナさん、私は最強です!修行を間違えては駄目です。精神を鍛えるのです。悪意などの邪念を全て克服するのです。フィオナさんも辛い経験を克服しなければなりません。その覚悟はありますか?」
恐らく自分の精神を教えてくれているわね。やはり邪念は克服しなければならない。自分の中にいる悪童なんて探す気にもならないわ。
「最強のロディと話すのは簡単ではないね。しかし私も諦めないよ!」
「ドラゴンは長生きですから大丈夫です。焦りは精神を濁らせます。能力と話せるようになりたいと焦るのは逆効果です。精神を綺麗にしたときには話せるようになってます。私は最強ですから、そこから光り輝くほど綺麗にならなければ話せません。」
純粋なロディと話すためにはそれ程の精神にならなければならないのね。能力と話したいと焦っていた私には耳が痛いわね。クロア、あなたは何故そこまで綺麗でいられるの。
駄目だわ…。私はロディの母でもあるのだから集中しないとね。
さて、ドラゴンに戻りましょう。
「お待たせ。死黒森に移動してほしいの。ロディにしかできない大人の仕事よ。」
「任せてください!3人を死黒森に移動して!」
この森もブラックリザードがいないと静かね。全くいい思い出がないけれど。
さて、大きくなりましょう!
「どんどん大きくなるわよ。ロディが好きな大きさになったら言ってね!」
「ロディ、私も一緒に乗るのを忘れないでね。」
「フィオナさんは跨るのですか?座るのですか?」
幼い子が跨って空を飛ぶのは怖いはずよ。ここで大人は跨るとか言わないでね。
「ロディ、足を伸ばして座れる大きさになってもらった方がいいよ。初めてだと空を飛ぶのも怖いからね。だから私が後ろから抱きしめてあげる。」
「お母さん、凄く大きくなれますね。大木くらいの太さがありますよ。」
「それなりに長生きしているもの。まだこれでも若い方なのよ。」
フィオナも幼い子には優しいのね。生意気な冒険者を殴っている印象が強すぎるわ。
「お母さん、このくらいで大丈夫です。」
「分かったわ。それでは頭に乗って角を握るのか背中に乗るのかどちらにするの?」
「ロディ、頭に乗るのは気持ちいいけれど、かなり怖いよ。大人にしか無理だと思うね。」
フィオナが頭に乗りたいだけじゃないの。慣れたら一番楽しくて気持ちがいいのは間違いないでしょうけれどね。それにしてもロディに大人だと何回言ったのかしら。まだまだ必要になりそうだわ。
「頭に乗ります!怖さを知るのも大人には必要ですからね。」
「流石ロディ!さあ、乗ろう。風はどうする?そのまま感じる?だけど更に怖いよ。大人の中でも最高の大人にしか無理だね。」
フィオナが幼い子を好きなのは間違いないけれど、一緒に自分も楽しんでいるのね。それがフィオナのいいところでもあるわ。一緒に楽しんであげる人が幼い子には必要でしょう。
「ゆっくり飛んであげるから風も感じた方が気持ちいいわよ。」
「最高の大人になるしかありませんね。風を感じます!」
「大人だよ。ロディは最高の大人だよ!さあ、行こう!」
なるべく頭を揺らさないように浮上しないと。先に頭を上げた方がいいわね。
「最初は少しだけ揺れるわ。フィオナ支えてあげてね。」
「ロディ、私も最高の大人なの。任せなさい!」
「流石フィオナさんです!少し怖いのでお願いします!」
本当は凄く怖いのでしょ?今日は子育てを体験しているみたいだわ。
あの頃はよく夢を見たわ。幼いクローディアと空を飛ぶ夢。この子も幼いクローディアだわ。少しだけ夢が叶ったのね。
クロアとディアにも飛んでみたいのか聞いてみましょう。聞かないとディアが嫉妬するかもしれないわ。ロディはディアに自慢すると思うのよね。
「さあ、どんどん上がるわよ。下を見られるかしら?」
「ロディ、下を見ながら世界を感じるの。最強なら全てが小さく見えるよ。」
「なるほど…。あ…、わぁー!雲より高いです。小さい街が見えますね。」
「あの小さい街が先程までいた家がある街なのよ。周りに小さな街が5か所あるでしょ。あれが国なの。ロディの仲間たちは5つの国と近隣の村や町で悪人を退治しているのよ。流石に村は小さすぎて見えないわね。」
「ロディ、仲間たちはどんな感じで悪人を退治しているの?」
「主が何でも計画できるようにしておきましたと言ってクロアの機嫌を取る作戦です。ですがブレンダが主を利用して最悪な結末になったので何が起きるのか分かりません。主が成長するための3年間だったのに一月でブレンダが壊しましたからね。目が覚めてから勉強を再開する気にはならない気がします。だけど主はクロアを笑顔にする計画をクロアと一緒に考えるつもりはありません。何かありませんか?正直に言いますね。更地にする可能性が一番高いです。勿論守りたい人を除いてですから安心してください。」
ロディの雰囲気が突然変わったわ。幼さが消えている。
「ロディ、仲間たちがクロアの機嫌を取ろうとしているのは他にできることがないからという事でいいのね?」
「クロアの報復はいつでも誰でもどこにいても殺せるということを伝えるつもりだった気がします。そのために噂でクローディアが殺していると広めたことが逆に作用してしまいました。クロアは覚悟のない人はクローディアに近づくなと訴えたつもりだと思います。悪人を殺して治安維持するのはその後が決まっていないだけですから。住民をクローディアが守り続ける理由なんてありません。大人ならこのくらい分かります。関わっている悪人が多すぎて選別するのが面倒だから殲滅です。もし主が冒険者を続けていたらクローディアは住民の敵になるように諜報活動されました。あえてその計画を進めて悪人が悪いと言える人だけを残して消すべきでしょうか?」
「ロディ、さっきと全然違うね。どうしたの?」
「先程はなるべく自分の力だけで考えていました。今はクロアの思考力を使っています。クロアの記憶を使いクロアの思考力で私が考えた場合はクロアの考えに近い答えを出してしまいます。それでは努力になりませんからね。普段は自分だけで頑張るのです。」
「ロディが今の状態で仲間たちに指示を出したら動くのかな。」
予想通りだったわね。だけどクロアというよりもクロアの精神の奥の子がクロアの記憶と思考力を使って話しているようだわ。クロアに対する思いだけしか感じられないもの。
「本気で指示を出したらそうなります。精神の奥にいる子と同じような存在ですから。私の言葉を疑う理由がありません。」
今のこの子はクロアのためなら簡単に世界を滅ぼす選択をするわね。それをクロアは悲しむはずだわ。もしかしたら今後のことを考えると悲しむ回数が少ないのかもしれない。だけどまだそこまで追い詰められていないはずよ。
母として私の言葉を聞いてくれるかしら?私なりに考えてみたの。
「ロディ、そのままの状態で考えてちょうだい。私が信じられる若い子を少し集めてディアと友達になってもらうわ。事前に3歳児だと説明して秘密の場所で遊んだり常識を学べるようにするの。それ以降は紹介制でしか人を増やさない完全な秘密基地よ。紹介された人は事前審査を入れる。それはクロアの仲間たちに任せるわ。契約書に署名もしてもらう。契約内容もクロアの仲間たちで考えてほしいわ。それと各国の騎士団で治安維持をする部隊を作る。等間隔で駐屯地を作ることにより治安を向上させるの。秘密基地が完成したら16歳前後の少女を集めた遊びながら常識を学びつつ色々な計画を考える場所になる。あえてディアを中心にするのではなく誰でも計画を提案できるようにするの。その中で一番してみたい計画を決めたらそれを実行できるように皆で更に考えるのよ。そしてクロアや仲間たちや私も計画内容を見て実行できると判断したら実際に計画を実行する。仲間たちにも信頼できる子を探してもらえると助かるわ。どうかしら?」
「少しお待ちください…。仲間たちに信頼できる16歳前後の少女を探すように指示を出しました。ついでに孤児院を運営できる人員を確保するように指示を出しました。そして1つの国にするのか5つの国にするのか皇族と王族を集めて会議してもらいます。下らないことを言うようなら消して終わりです。各国の騎士団を治安維持の部隊にするのは仲間たちに任せてください。それと『お母さん、全力で頑張るので私たちが考えたことにしてください』と仲間たちが言っています。かなり図々しいですね。」
よかった…。一先ず止まってくれたわ。あとは仲間たちに任せた方が確実ね。そしてロディが計画を考えたことにすればいいのよ。
少しは母親らしいことができたかしら?
「いいえ。私だけでは絶対に漏れが出てしまうの。どこにでも移動できて人の感情が分かる仲間たちに任せれば秘密基地が間違いなくできるわ。計画の立案者はロディよ。それだけは譲ったら駄目。ロディは計画を考えるのが得意でしょ。私はロディが考えそうなことを先に言ってしまっただけなの。流石だわ!最高の大人は計画すら考えさせることができるのね。大人の到達点だわ。それに秘密基地ならロディに代わっても大丈夫よ。そして起きたディアに言ってやりなさい。『私が考えた秘密基地に行きたい?それなら偶に代わってよ』と満面の笑みでね。これが大人の交渉術よ!」
「なるほど!寝ている間に秘密基地を用意したよ。そこで遊びたければ偶に私と代わってほしいな。と、言うわけですね。主すら手玉に取る。計画を考え交渉までしてしまう。仕方ないから仲間たちにも功績を譲ってあげましょう。ふふん!」
「ロディ、仲間に恩を売るなんて大人の究極奥義だよ。到達点の更に先、極みにまでたどり着いてしまったのね!」
突然よく分からないことを言って場の空気を和らげたのね。フィオナらしいわ。緊張感が一瞬でなくなったもの。
「6日間もあれば仲間たちなら大体終わらせることができるわ。クロアと同じ16歳まで成長してしまったのね。これ以上はないのよ。正に極みね!」
「1日でクロアまでたどり着いてしまいました。本物の天才は私だけです。そして最強で極み!細かいことは仲間たちに任せましょう。いいえ、任せてあげましょう。お母さん、何を任せるといいと思いますか?」
ロディはそれでいいのよ。ディアと一緒に楽しんで計画を考えてほしいわ。
「大切なのは事前審査ね。次に契約書とその内容。そして契約違反した際の罰則。建物や遊具も最適な場所に用意してもらうの。ロディ、秘密基地で最も大切なのは何か分かるかしら?誰にも見つかってはいけないのは当然よね。」
「なるほど。出入口ですね!」
「やはり極みね!答えに一瞬でたどり着いてしまう。」
クロアの最強の仲間たちが頑張ってくれるのなら何を言っても大丈夫ね。
「名目上は冒険者組合本部で雇い秘密のネックレスか腕輪を作って渡しましょう。地下室に秘密の道具を持っていたら転移するドアを用意するのよ。従業員として給与も渡すから親も疑わないし文句も言えないわ。地下室で依頼書を整理していると冒険者たちも思うはずよ。親に暴力を受けている少女なら避難場所にもなるわ。ロディ、そのために私を冒険者組合本部の所長にしていたのね。何て緻密な計画なの。降参だわ…。ロディの計画に私ではついていけない。ここから先はお願いね。」
「計画を考える天才の私に任せてください!主は泣いてクロアに助けを求めるでしょう。私の勝ちです、ふふん!」
「ロディに任せれば全てを解決できたのね。天才だよ!そろそろ食事に行きましょう。ロディも楽しみにしていたでしょ。」
夕暮れね。空を飛んで恐怖したのは私とフィオナだったわね。
「ロディ、一旦小さくなりたいから死黒森の上空に移動させて。」
「移動してください!」
移動する場所も言わない。お店が楽しみで早く行きたいのね。
ゆっくりと地上に下がり2人が地面に下りた後に小さくなる。
「ロディ、服を着たいから自宅に移動させて。」
「移動してください!」
完全に隣のお店で頭がいっぱいだわ。急いで服を着ないと。
「すぐに服を着てくるわ!」
自室に入り人型になり服を着ていく。
仲間たちなら上手くまとめてくれるはず。私も目を光らせておく。任せて終わりにはできないわ。意識せず当然のようにクロアとディアを見守れる母になりたいのよ。今日からロディも含めてね。
「ロディ、移動する場所も言わないのに完璧に魔法を使いこなしているね。」
「勿論ですよ!全てを使いこなしてこそ大人ですからね。」
「最強の大人は突然本気出したら駄目だよ。怖すぎたからね。」
「やっぱり怖かったですか。ごめんなさい!仲間たちも怖いから本気出すなって言います。」
クロアの計画を確実にするには善人も対象にするしかないのよ。クロアがそれに気づかないはずがないわ。激怒していても悪人にはなれなかったのね。
本当に優しい子だわ…。優しいあなたを守れるようになりたい。
「さあ、行きましょう。ロディは食べたい料理が決まっているのかしら?」
「コース料理食べたいです!昨日自慢されましたからね。全員行きたがると思いますよ。」
「美味しいですからね。行きましょう!」
スカートに突風を当てるだけではなく幼い子に自慢までしていたのね。
クロアは確実に気づくわよ。おめでとう、拷問決定だわ!
◇◇◇
夕食後の自宅。
料理が運ばれてくる度に目を輝かせていたわね。ディアを意識しているからなのか騒ぐことはなかったけれど、全身で喜びを表しているようだったわ。
皆が喜んでくれているから安い買い物だったわね。出費がかさむわけではないから邸と厨房の維持はクロアの仲間たちに任せましょう。それならお金を使うのは皆で楽しむときだけにできる。
このくらいの我儘は許してくれるわよね。
「ロディ、美味しかった?」
「あのお店を秘密基地に入れたいです。でも他のお客さんが入れなくなりますね。うーん…。」
「ロディ、あのお店はお母さんのものだよ。会員なら入れるようにすればいいよ。普通は入れないからね。」
何でも叶えてしまうのはよくないわ。それに隠れた高級店の方が秘密基地には似合うもの。
「高級店だから秘密基地に入れると食材を仕入れるのが大変なのよ。だから会員なら予約なしで入れるようにしましょう。でも全品無料にしてしまうと他のお客さんが疑うでしょ。それに毎日通えるようなお店でもないの。月に二度くらいなら貸し切りで皆で食べに行っても大丈夫よ。あそこも名前がない秘密のお店なのよ。秘密を知っている皆で楽しまないとね。」
「私たちだけ楽しむのは駄目ですね。それに無料で食べるのは間違ってる気がします。皆でお金を稼ぐ計画を考えて自分たちで稼いだお金で食べるのが一番ですね。大人が分かってきました!」
成功したら素晴らしい計画だわ。それに大人が分かってきたの?今までの会話は何だったのかしら。だけど今日でロディは確実に成長しているわ。
「普通は毎月行くとお金がなくなるからね。高級店だし騒いだら秘密が台無しだよ。秘密の場所には決まりごとが必要だからね。皆が楽しむためには皆が守らないと駄目だよ。ロディは極みだから問題ないけれど、あのお店は大人にならないと駄目なの。少女でも大人の雰囲気を出すの。静かに礼儀正しく料理と会話を楽しむ秘密のお店。教えてあげてね。」
「任せてください!大人を極めた私が教えます!」
秘密基地でフィオナも遊ぶといいかもしれないわね。寿命が違うからいつまでも一緒というわけにはいかないでしょうけれど、そのとき一緒に楽しんだ記憶はお互い大切にできるわ。それにドラゴンだと秘密が話せるくらいになれば姿が変わっても会話を楽しむことができる。種族に囚われない友情も素敵だわ。
「さあ、お風呂に入って寝ましょう。」
◇◇◇
浴室からお風呂。
檜のお風呂は素晴らしいわね。他は全て消してフィオナの部屋も私たちの隣にしたわ。
ふぅ…。癒されるわ。疲れた日には最高ね。
「外で考えると凄い疲れますね。こんなに疲れたの初めてです。」
「ロディ、その疲れが本気で頑張った証拠よ。それに普段考えている事と全然違う内容でしょ。これからは中で考えても疲れるようになるはずよ。秘密基地に集まった子と遊んだり計画を考えたりするのが楽しみでしょ。集まった子が1つずつ計画を提案するの。ロディの計画が選ばれるのか分からないわ。だけど選ばれた子の計画が成功するように皆で一生懸命考えるのよ。クロアは喜ぶしディアも真剣に努力するはずよ。お互い成長するわね。」
「ロディとディアが対決する日が楽しみだよ。どっちが凄い計画をするのかな。」
2人の計画が1つにまとまるかもしれないわね。クロアのために計画するはずだもの。
「主は既に通り過ぎました。後ろすぎて見えません。ふふん!」
「あら、油断は駄目よ。油断して負けるのが一番格好悪いの。赤ちゃんからやり直しね。」
「大人の極みにまでなったロディが赤ちゃんになってしまうのね。残念だよー。」
あら…、落ち込んでしまったわ。言葉を間違えてしまったようね。
「今のロディなら分かっているはずよ。提案された全ての計画には想いがあるのよ。選ばれたから偉いわけではないわ。選ばれなかったから劣っているわけでもないの。選ばれた計画を実行できるように皆で考えることが大切なのよ。そして実行して成功したらとても楽しくて嬉しいのよ。そのような特別な日に行くのが秘密のお店なら最高のご褒美にもなるわね。」
「成功したら楽しくて嬉しいのですか。その気持ちを知りたいです!」
「成功は本当に難しいよ。一度で成功することはないと覚悟しないとね。それでも諦めずに頑張り続ける。成功したいなら頑張るしかないよ。ロディの成功する姿を見せてね!」
失敗も経験してほしいわね。仲間たちが裏で動いたら何でも成功してしまう。クロアがそれは許さないでしょうから私は毎日話を聞いてあげないとね。助言してあげるのも大切だもの。
「成功して皆でコース料理です!仲間たちも頑張っていますからね。私も頑張ります!絶対に諦めません!」
「ロディは今日だけでとても成長しているわ。だけどもっと成長できる。諦めなければ成功できる日が来るかもしれないわ。頑張ってね!」
「ディアとの勝負は激戦だよ。何故か分かるかな?」
ロディはクロアになりきならくてもクローディア。確実に接戦だわ。
「同じ記憶と思考力。厳しい戦いになりそうです。だけど今日の経験は私だけのものです。」
「そうね。ロディとして考えるのが大切だから。クロアになりきるのは反則よ。」
「面白くなりそう。もう少し出れるようにならないと対等な勝負と言えないね。」
外に出て経験することは特別なのね。ディアも自分が有利だと言われる勝負をロディとはしたくないはずだわ。秘密基地では2つの組に分かれる必要がありそうね。
「そうね。計画を考えるときは午前と午後とかなるべく同じ時間にしないと不公平ね。ロディにはディアが寝ている間に計画を考える時間があるから差をつけるなら今が絶好の機会よ。」
「秘密基地が楽しみです!他の子の計画にも参加したいです!」
「その方が勉強になるよ。自分だけで考えても多くは学べないからね。」
変なことを言ったり真面目なことを言ったり面白い子だわ。フィオナも若いのだから何とか楽しめるように考えてあげないとね。素直で優しい子は見守りたくなるのよ。
「そろそろ出ましょうか。ロディにとっておきの寝る場所を用意するわ。クロアが大好きなあれよ。」
「ぐるぐる巻きですか!クロアが毎晩寝ていますからね。これも勉強です!」
「ロディ、あれには抗えないよ。完全にクロア専用だからね。」
浴室で体を拭いてから私だけドラゴンに戻って自室に行く。
◇◇◇
浴室から自室。
ロディを足元から巻いていき楽に呼吸ができるように首と頭を支えてあげる。あの日々で私がクロアのためにできた唯一のことだもの。寝るときだけは全てを忘れてほしかった。クロアが安眠していると感じるまで本気で微調整を続けたわ。
罪悪感を減らしたかっただけなのかもしれない。自己満足なのかもしれない。それでもクロアは今でも私を頼ってくれる。それが嬉しくて仕方ないの。
「これがぐるぐる巻き。抗ってみせます!」
「私はクロアが眠たくなる温かさを知っているの。ロディは耐えられるかしら?」
「ひんやりとした心地よさからゆっくりと温まって…。流石お母さん、降参です…。」
安らかに眠っているクロアの寝顔を見たかっただけなのかもしれないわね。寝顔を見ていると私もすぐに眠ってしまいそうになるわ。クロアに巻きついているときは私も全てを忘れることができたから。
「寝ちゃいましたね。本当に最強ですから終わったのかと思いましたよ。」
何か秘密があるとは思っていたけれど、怖すぎるわ。自由なはずの最強能力たちに強制命令を出すことができるのは全く想像ができなかった。それ程までに精神の奥の子に近い存在なのね。
クロアは話せる子を見つけたから楽しい場所まで案内したくらいのつもりだわ。だけどロディを見た他の能力たちはまずいと感じたのね。本気で命令されたら拒否できないと分かったに違いないわ。だからディアと競うように誘導したのでしょう。私にもそのように接してほしくて力のないディアだと説明したのね。
「精神の奥の子に相当近いみたいね。私たちを助けてくれると考えてくれたのに驚いたわ。精神の奥の子はクロアを悲しませる存在が許せないのよ。だけど純粋にクロアの幸せを願っているだけでドラゴンを憎んだりはしていないわ。ドラゴンの私でもドラゴンを憎んでいるはずよ。精神が光り輝く程の修行が必要なのよね。その光はクロアの周りだけしか照らさないけれど、それで十分だと思うわ。フィオナも克服には時間がかかるでしょ?」
「そうですね。まだまずいです。ドラゴンや権力者に対する憎しみが確実に残っています。今の自分と本気で向き合うと逆に染められそうで怖いですね。ですが同類にだけはなりたくないです。」
それが普通だと思うわ。憎悪は簡単に克服できるものではないはずよ。フィオナの考えは正しい気がするわね。中途半端な状態で自分と向き合うと染められてしまう。
「クロアの能力から聞いたけれど、あなたが本気で自分を問われるのは権力を手にしたときよ。一緒に仲良く楽しく過ごせそうなのにつまらないもので自分を見失わないでね。」
「全力で抗うつもりでいますが本気で駄目だと思ったら悪さをする前に記憶を全部消してください。お母さんなら子供が1人増えても大丈夫ですよね?」
悲しいことを言わないで。焦って無理に向き合う必要はないのよ。
「その言葉は覚えておくけれど、あなたの笑顔が少しずつ輝いていくのを見守りたいの。だからもっと楽しみなさい。そして焦らずに過去を克服できる精神力を身につけてほしいわ。今のクロアも毎日拷問されていたときの記憶に抗っていると思うの。巻きつかれて寝たいと毎晩望むくらいだし、それくらいしか外に出られないわ。16歳の子が頑張っているのに100歳の子が頑張らないわけにはいかないでしょ?」
「クロアは外に出て人と会話することさえ難しいですからね。私は日常が少しずつ楽しめるようになってきていて、だけどそれで満足したら終わりでしょう。それでもロディみたいな子が私の中にも隠れているわけですよね。絶対に見つけて話したいです。最高に面白かったですから。私も頑張って見つけるしかありませんね。」
本気で挑むつもりなのね。フィオナも含めて3人で毎晩話すのが一番でしょう。今日は娘が2人も増えたわね。この子たちのためなら自分のことを後回しにできる。努力を続けるつもりでいるけれど、娘たちの様子を確認する方が大切なのよ。
派閥とは全く違うわ。守ってほしいと私に近づいてきた子たちではないのだから。
娘たちは私が守ると決めたのよ。力で及ばないのは理解しているわ。だから母として娘たちの精神を大切に見守りたい。異変を見逃さないようにしたい。母になるための努力をしなければならないわね。
「最難関に挑むのね。それでこそ大人の極みだわ!それにしても更に先の計画では住民に侮辱させるとか頭がおかしいわ。住民たちが皇子との結婚を拒否するクローディアが悪いと罵声を浴びせる姿が容易に想像できてしまうもの。実現していたらこの地は更地どころか抉れていたわ。それにロディをよく見つけたわね。新しい能力でも探し出したのかと思っていたのに私にもフィオナにもいるのですから。」
「本当に驚きましたね。能力たちとは綺麗な精神になれたときには話せる。ドラゴンは長生きだから焦る必要がないし焦ったら濁る。純粋な言葉だから鋭さが違いますよ。話そうとするのではなく精神を綺麗にするように努力する方向を変えます。それではおやすみなさい。」
それがいいわ。濁った精神で能力たちと話せたとしても意味がないもの。
「ええ。おやすみなさい。」
フィオナが隣の自室に行きベッドに飛び込んだような音がした。
ああ、疲れていたのね…。やはり母として未熟だわ。あの子が疲れていると気づけなかった。娘たちは隠すのが上手く問題がない振りをするわ。それを見破る力を身にけるしかないじゃない。隠さないでと言っても隠すと分かっているの。だからこそ本物の母になるために努力するわ。
会話が足りない。観察力も足りない。普段の様子を正しく知らないのだから何も分からない。意識せずにできるようになるまで努力するだけよ。全てを完璧に隠せる訳が無いのだから。
「はぁ…。今日は疲れたわね。」
「突然念話ですみません。朝起きたときに代わる予定です。拗ねると大変ですからね。」
突然念話だと言われても驚くわよ。
「今日は肝が冷えたわ。クロアの記憶と思考力を使い精神の奥の子の感情で話すとか反則でしょ。クロアを悲しませることなく最短で笑顔にできるとは思うけれど、あの子が指示を出したときにも抗えるのかしら?」
「クローディアは自由が基本ですからあの子の指示だけなら抗えます。但し、あの子と精神の奥の子は繋がりが強いので同調されたら終わりです。今の各国の雰囲気は非常にまずいです。指示もなく悪人になるわけにはいきませんから本当に困っていました。」
ロディの本気は同調することなのね。感情だけではなく精神の奥の子になりきってしまう。あの時は感情を使っていただけなのね。最強の奥の手だわ。
「秘密基地は絶対に成功させる必要があると分かったわ。私にできることは少ないけれど、何かあれば遠慮なく言ってちょうだいね。クロアは年の近い子たちと一緒に笑ってほしいのよ。」
「私たちもクロアの笑顔はそのような形で見たいと思っています。既にお母さんにはかなり助けてもらっています。私たちにできる願いの1つや2つは叶えます。」
最難関の願いを言っておきましょう。
「2つお願いするわ。娘たちの笑顔を見せてちょうだい。母親として見たいの。それと娘たちが利用している間だけでいいから隣のお店を整えてほしいのよ。」
「世界を支配するよりも困難な願いをするとは流石はお母さん。叶えられるように頑張ります。お店も秘密基地のようなものですからね。お任せください。」
クロアの仲間たちならお店を整えるのは造作もないでしょうけれど、娘たちが楽しめる場所は頼りたい。私は未熟で万能ではないと知っているから。それに娘たちのことだけを考えていたいの。
「秘密基地の計画を話したけれど、私に知り合いが少ないのは知っているでしょ。まずブリトニーが審査に合格するか分からないし、そこから繋がるかが分からないのよ。それとフィオナは遊んだり計画の問題点を指摘するお姉さんとして参加させたいの。これは私の我儘だから無理にとは言えないわ。できそうならお願いね。」
「お任せください。ブリトニーさんも審査しますが不合格でも秘書を続けてもらいます。フィオナさんは一緒に暮らしていますし裏切る心配がないのですが、もし私たちが問題に気づいたら記憶を消してもよろしいですか?」
記憶消去で許してくれるのはかなり譲歩してくれているわね。
「あの子が抗っているときは見守ってあげて。行動に動いたら迷わず記憶を消してちょうだい。私が責任を持って育てるわ。秘密基地が精神を綺麗にする切っ掛けになってほしいの。」
「フィオナさんの努力する方向は間違っていませんからできる限りは協力します。拷問などの辛い過去を持つ人は隠すのが上手くなってしまいます。能力と話そうとしていたお母さんの努力が全く違うものになりましたね。しかしロディがお母さんを守る側に入れたのは相当信用に近い位置だと考えられます。つまりお母さんの努力は正しいという事です。お母さんが過去を克服する方法はお母さんとして努力するのが一番のようです。」
母として光り輝くほど修行すればいいのね。1つに集中できるのは助かるわ。それにクロアの精神の奥の子が私も守ってもいいと考えたのは余程のことなのね。嬉しいけれど、今の私は全く輝いていないでしょう。だけど娘たちのために努力するのは苦じゃないのよ。
「余計なことを考えなくて済むわ。ドラゴンに生まれてこれ程まで力に興味がなくなるとは思わなかったわ。嬉しい情報をありがとう。あとは冒険者組合支部をどのようにするのかだけれど、募集して運営するのか駐屯地にして組合の仕事もしてもらうのか。検査で全滅する可能性が高いと思うの。本部も人が多いわけではないから教えるために派遣できないわ。何とかなるかしら?」
「この程度の情報など秘密基地に比べたら安いものです。冒険者組合支部についても状況を見て考えます。全てお任せください。」
本当に頼もしいわね。冒険者組合本部の所長は娘に頼まれたから務めているだけなの。所長を続ける理由は残ったけれど、支部の運営に興味ないわ。
「クローディアの報復が終わった後も決まっているのかしら?」
「報復終了後にクローディアが冒険者活動を休止したと一斉に発表します。発表方法は広域念話です。クローディアに大声は似合いませんからね。そのときに怒りや不満を持った場合は記憶消去です。皇族から貴族たちなら拷問行きです。ですから秘密基地に影響はありません。クローディアが常識を学べる場所を用意できるのが本当に助かりました。」
広域念話?今回のためだけに魔法を生み出しているのね。
「5ヵ国の住民たち、その近隣にある村や町も含めた住民たち、その全住民同時にクローディアの冒険者活動の休止を発表して感情を見て記憶消去できるのね。」
「お母さんのお陰です。私たちにも人目に触れなければ常識を学べないという思い込みがありました。住民を消してしまうと計画を披露する楽しみがなくなってしまいます。それとお母さんはロディが考えたことしにて交渉するように話していましたが、それはできません。ですが主と対等な勝負ができるようにはしますのでご安心ください。秘密基地を私たちやロディが考えたことにすると主は行かないと確実に言います。3歳児の主は我儘全開ですのでクロアのための計画は自分が考えると譲らないのです。私たちがクロアのために勝手に行動したら主は激怒です。ロディが考えたとか関係ないのです。そのため秘密基地を作ることになった経緯をこちらで考えました。すみません。」
交渉相手が世界最強の我儘3歳児だったわね。私には余り我儘を言ってくれないから…。
「ディアとロディが楽しめるのならいいわよ。どのような経緯にするのかしら?」
「はい。主が傷心で眠ったことに心を痛めたお母さんが主のために勉強できて遊べる場所を真剣に考えてくれました。ですがお母さんの力だけではできないことがあると相談されたので私たちも協力することにしました。そして主が成長するためにはロディと競争するのが一番だとお母さんが言っていました。しかし2人が計画を考えるだけでは物足りない。色々な人の計画を聞いて実行できそうな計画を皆で本当に実行できるまで考える。これこそが最大の成長に繋がり更に常識まで学べる。それに遊べる遊具も用意してほしいと頼まれました。そのようにして秘密基地が出来上がったのです。それでもお母さんは心配しています。主が自分の計画が一番だと我儘を言わないのか。人の計画について真面目に考えてくれるのか。2つの組に分かれて主とロディが午前と午後でその組で決まった計画について考える。ロディはお母さんから直接それを言われました。さて、主は秘密基地で勉強するとお母さんに言うのか秘密基地に行かないとお母さんに言うのかどちらですか?ああ、そういえばお母さんは主が寝た後にブレンダを呼び出して話を聞いて激怒しました。お母さんがブレンダを始末する瞬間に私が止めました。お母さんの手を血で汚したくありませんでしたから。どうです?主はお母さんに我儘は言えません。嘘も吐いていません。お母さんが秘密基地を計画したことが大切なのです。」
私の影響力がそれ程まであるのかしら?何故それでいいのかが分からないわ。
「私はロディが精神の奥の子に近い存在でクロアにも近いから計画の立案者にしようとしたのよ。それにクロアやロディや仲間たちが考えた方が信用されるのではないの?私は信用に近いようだけれど、境界は越えられていないわ。何故私でいいのかしら?」
「お母さんだからです。精神の奥の子もお母さんだと思っています。ロディと名前をつけてくれたのもお母さんだからいいのです。お母さんはロディが秘密を漏らさないように名前をつけてくれたのだと思いますが、ロディは努力しても新しい力が使えるようにはならないのです。今は話し始めたばかりですから楽しんでいますが、私たちと話し続けていても自分は皆と違うと理解してしまう日が来ます。主ではありませんがロディもクローディアです。そしてお母さんのお陰で主たちと近い位置になりました。更には大きな目的や遊びまで用意してくれました。私たち能力は対等ですがロディは特別扱いしてもいいのです。お母さんの提案で外に出る回数を増やすことができます。そのようなことを言えるのはクロアか主かお母さんだけなのです。お母さんが考えている境界は越えられません。何故ならクロアではないからです。これはお母さんが努力して越えるものではなくクロアが過去を完全に克服するしかないのです。だからお母さんは家族のような私たちとは違い本当の家族なのです。」
ああ、全く…。泣かせないでよ。温かい涙があるとは知らなかったわ。
自分以外の人が怖い気持ちはよく分かるわ。私は恨まれても仕方がないのに本当の母だと思ってくれているのね。それなのに一月もディアが苦しんでいたのを見逃しているわ。母として努力するのは当然よね。クロアとディアとロディ、それにフィオナ。こんなにも幸せで責任重大な努力をするのは初めてだわ。
「よく分かったわ。母として娘たちを見守り続ける。そして見逃さないように努力するわ。あなた達も今後は惜しみなく力を使うのでしょ?」
「お母さん、その通りです。逆風から順風にようやくできそうなのです。ここからは徹底的に動きます。治安維持部隊が勘違いしないように思考誘導してもよいとさえ思っています。今日は本当にお疲れ様でした。それではおやすみなさい。」
「ええ、おやすみなさい。」
クロアが嫌っている能力さえ使うのね。本気だとよく分かるわ。
私も本気で努力する。意識しなくても娘たちの些細な違和感に気づけるようになるまで。この努力には終わりがない。気づかれたら更に上手く隠すに違いないわ。娘たちが過去を克服するまではそれが必ず続く。その日が来るまで私も努力し続ける。このままずっと可愛い娘たちにお母さんと呼ばれたい。努力する理由はそれだけでいいの。
クローディアが揃いました。
ロディ(魔力器)は移植されたものですが精神の奥の子が繋げたので問題ありません。




