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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第32話 お母さん ①

 先程までのやり取りは作戦内容を事前に知らせるため?冒険者組合の検査の予定日を決めるため?その程度であれば念話で済むはずだわ。他にも何か理由があったのだとしたら何かしら。

 ブレンダさんに付与された能力の発言も気になるわね。クロアたちの能力は他人だとし、ブレンダさんの能力は破壊を望んでいたように感じたわ。


 ブレンダさんをソファに残し仕事用の机に戻った。

 嫌な推測に腕が鳥肌になった。だけど考えるのを止めては駄目。2人の母親なのですから。

 

 クロアは毎晩私に巻きつかれて一緒に眠っている。安心できる唯一の場所だからだと以前言っていたし今でも続いている。その発言は絶対に嘘ではないと確信しているわ。私に巻きつかれたいという事は過去を克服する厳しい訓練をしているのだと思う。しかし私と眠るときの感情が癒しであり喜びでもあった場合はブレンダさんと会わない理由は何になるのかしら?

 精神操作され思考誘導までされていたときに一度依頼で会った人とまた会うと倒れる。本当にそうだとしても全く会わないのはクロアらしくない。それにクロアはあの頃の感情を全て疑っているのだから訓練しているのよ。私に対しての感情が変わらないのは精神操作されていなかったのだと思う。

 離れず即死から守り安全な眠り場所にもなった。もしかしたら私が逃げないように思考誘導されていたかもしれないけれど、クロアに何かする理由はなかったはずだもの。


 違和感があるから何か見落としているわね…。


 ブレンダさんはクロアを説教してディアとパーティを組み冒険者になった。

 クロアは純粋にディアの成長を願っていただけだと思う。常識を教えてくれる大人であれば任せてみたいと決断した。

 私もブレンダさんが保護者としてディアについていてくれるから安心した。

 

 ああ…、間違いなく違和感の正体はそれだわ。

 何故初めて会った人に娘を任せて私が安心しているの?


「ブレンダさん、今日で活動休止にすると決めたのはどちらなの?」

「ディアです。助けた子供の死体を何度も見続けたから限界だったのだと思います。」


 何を平然と言っているの!?そのような光景を何度も見て限界だと思ったのなら止めるのが保護者の役目じゃない。何故子供が限界になるまで放置しているのよ。もしかして全てがそれだった…?


「ディアは常識を学べた?」

「流石にあの状況では厳しいと思います。」


 年の近い子たちと遊ぶのが難しかったというのは分かるわ。だけど依頼はすぐに終わっている。空き時間が十分にあるじゃないの。


「依頼の日はブレンダさんがついていてくれるのではなかったの?」

「依頼中だけですよ。依頼が終われば私は研究に戻りますからね。」


「依頼後ディアは1人で家にいたという事かしら?」

「最強ですから問題ありません。能力たちもいますからね。」


 3歳児の教育を引き受けたのではないの?

 ディアをお金儲けに利用しただけじゃない。


「依頼が終わってから常識を教えてあげればよかったのではないの?」

「言葉では学べませんよ。年齢の近い子たちと遊ぶのが一番です。」


 ふぅ…。我慢しなさい…。クロアの能力たちが来た理由はこの女のディアに対する考えを再確認して能力の記憶を消すのが目的だった可能性が高い。


 本当に最低な母親だわ…。

 一月の間に一度だけでもディアに聞くだけでよかった。

 

 今日の依頼はどうだったの?依頼の後はどのように過ごしているの?それだけでよかった。私は母親として何もしていないじゃない!


 知り合いがいないからこの女をドラゴンにするという事が既に異常だわ。ディアの言葉と勢いを信じすぎている。まだ3歳児なのよ…。母親の目線で全く見れていないじゃない。


 この女は何なの?南区域の住宅密集地帯に住んでいて北区域の看板も出していない邸同然の高級店に入ったことがある。

 ディアを皇女より美人だと言っていたわね。つまり皇女の顔を知っている。家から出ることがほとんどない女が偶然街で見かけるような相手ではない。


 間諜もしくは諜報員だと考えるのが自然ね。


 今でもそうなのかしら?世界最強が隣で守り自身もドラゴンの力を手に入れている。自分の持ち場を無断で離れたのだから確実に裏切っていると思われるわね。ディアの隣にいることが任務に可能性もあるけれど、力とお金があるのに人に使われる立場のままでいたいと思うはずがないもの。

 3人でお店に行った日に裏切ったとしか考えられないわね。あのお店も諜報関係の人間が経営している可能性がある。


 絶対にお店の中で騒ぎは起こしたくないはず。裏切るつもりがないと思わせるのが最善だわ。

 そのためにクローディアの情報を伝えていたらどのような状況になるのかしら。

 

 今回のように確実に狙われるわね。

 

 最初から子供が弱点だと知っていたとしたら…。

 奴隷の子や親を殺された子を救出したように見せかけて、最初からその子を殺す予定で家族を演じていたのかもしれない。

 冒険者活動を始める前から舞台を用意されていたから気づけなかった。他国でクローディアを失意のどん底に落とす計画が進んでいた。


 推測通りなら誰かが舞台に連れていかなければならない。

 そして1人だけ依頼という形で確実に舞台に連れていけたわね。


 エイベル、あなたも諜報員なのね。

 不正をせず賄賂をもらっていない。しかし副職が諜報員だとか笑えない。


「ブレンダさん、どうしたの?今日はもう帰ってもいいわよ。」

「それがですね、能力たちの反応が鈍いのです。どうしましょう?」


 記憶を全消去したのかしら?


「記憶を消したら鈍くなるに決まっているじゃないの。普通はそこから鍛えるものなのよ。鈍くなったと会話で確認できるだけでも恵まれているわ。」

「ディアは3歳ですよ。それなのに鍛えられるものですか?」


 あなたは研究のために能力を付与してもらったじゃないの。もしかして力に魅了されている?

 ディアの活躍を間近で見てきたからあり得るわね。それに今は能力たちがいない。私には本性を隠す必要もないと思っているのかしら。


「クローディアの主はクロアよ。能力たちが呼び名を変えるのが面倒だからそのままなだけなの。それに能力が成長する理由は分からないと言っていたじゃない。本当に様々なことをしているわ。ディアは可愛がられている主で本格的に鍛えている主はクロアよ。クロアからすれば悪人を殲滅するのは確認する必要のない指示なの。だから能力たちは殲滅中にも発見を探しているのよ。聞いていなかったの?そもそも能力と話せることですら極秘情報よ。強くなる方法は教えてくれないものなのだから。」

「お母さんはまだ知っているではありませんか。それを私にも教えてください!」


 完全に力に魅了されているわね。ディアのように動ける自分を想像しているのかしら。

 私から聞いたくらいでは全く強くなれないと説得しても納得する雰囲気ではないわね。本当に最強になりたいのであればクロアたちのように自分と能力たちで模索するしかないのよ。能力が危険な発見と言っていたのだから強くなれるだけではないはず。いくつかの不利益を覚悟しているに違いない。


「何を言っているの。娘が極秘だと教えてくれたことを無断で誰かに教える訳が無いじゃない。それに能力を鍛え直さないと意味がないわ。知りたいなら娘に直接聞いてちょうだい。」

「問題ありません。私はもう一度能力を入れ直してもらいますから。」


 崖に向かって歩いていると理解していないわね。それにクロアたちに比べれば私は弱いけれど、あなたを殺すくらい訳無いのよ。


「能力たちはあなたに確認してから記憶を消したのよ。入れ直せなんて言ったら殺されるわ。甘く考えすぎているわよ。相手は世界最強なのだからこの部屋の会話くらい楽に盗聴できる。殺されたくないのなら今の能力を鍛えなさい。それに能力たちはクロアの指示で動いている。ディアのように優しくないわよ。」

「ディアとパーティの私を殺す訳が無いですよ。それよりも私を強くした方がディアを守れます。」


 私に殺されたいのかしら。ディアを守れますですって?


 酷い寝言だわ。


「あなたとディアが一緒に冒険者として活動することは二度とないわ。それだけはクロアが絶対に許さない。一月も続いたという事はクロアも訓練に集中していて知らなかっただけよ。だけどクロアが激怒して能力たちに指示を出したからもう無理なの。あの日々を耐え切って覆した子なのよ。特にディアについては甘い考えなんて持つ訳が無い。クロアから見ればあなたは加害者。私も加害者に近い位置にいるわ。死にたくないのなら帰りなさい。能力たちがここに来た意味を考えなさい。」

「確かに厳しい拷問でしたよ。だけど皆がクロアクロアと甘やかすから引きこもるのです。クロアに甘えるなと叱ってあげましょうか?」


 大概にしなさいよ!

 このままだと私が殺すわよ。それでいいの?


「あなた死にたいの?あの日々を少し見ただけで何を知ったつもりになっているのよ。もしかして私を挑発しているの?私があなたを殺してもいいのよ。」

「そのように甘やかすから出てこないのですよ。終わったことなのですから割り切るだけではありませんか。それに私は保護対象です。お母さんが死んじゃいますよ。」


 割り切るだけですって…。

 殺す理由を探していたのなら早く来なさい。我慢の限界よ!


「もう無理だわ!あなたに殺意を向けているのに私が眠らない。既にあなたは保護対象ではないのよ。拷問を経験したことがない小娘が割り切るですって!?最期に一言だけ聞いてあげるわ。」

「私を殺すとあとで殺されるかもしれませんよ!?本気なのですか!?」


 今更焦っても遅いわよ。

 本当に馬鹿な子だわ。仲良く過ごせたかもしれないのに…。


「クロアのために死ねるなら本望なのよ。それでいいのね!」


 机に手をかけて飛び掛かる直前に、純白の服を着た少女がソファに座っていた女の首を絞めて持ち上げた。ドラゴンがあの程度では死なないけれど、痙攣しているみたいだから私が付与した能力をあえて使っている気がするわね。

 何人惨殺してきたか知らないけれど、クローディアが綺麗なままなのに意地を感じるわ。


「流石お母さん!理由がなくて悔しくて…、本当に悔しくて…。元諜報員でも正当な理由がない限りは手出しできませんが例外はありますからね。この女は記憶を消して人間に戻すことになっていましたが拷問で決定です。クロアが引きこもりで叱るのですか…。毎日拷問の苦しみに耐えて訓練している妹に対してその発言は許せません。お母さんも反省中のようですが私たちの大反省に比べれば軽いものですよ。あなたは主と一緒に決まりごとを考えましたが、主の前でクロアを侮辱したら瞬殺されますからね。お母さんはあなたを本気で殺すつもりでしたが譲っていただきます。下の豚は5日後まで放置しておいてください。逃げるようなら対処します。明後日の子には優しくお願いします。それでは失礼しますね!」


 処理場に連れていかれたわね。


 拷問する理由を探していたみたい。変なところで几帳面なのがクロアの能力らしいわね。

 あら…。最期の言葉を忘れてしまったわ。


「ふぅ…。疲れる日だわ。」

「所長!私の存在を今まで完全に忘れていましたよね!?」


 完全に忘れていたわ…。

 

 そういえば私に秘書がついたのよね。机の端でこちら側を向いて座っている。

 赤髪と茶色の目のブリトニー。お団子頭がお似合いの16歳。


 私がソファから仕事用の机に移動したときにもいたわね。

 意外と根性があるじゃない!


「緊迫した会話の連続だったじゃないの。流石に疲れるわよー。」

「怖い話ばかりでしたね。何かあったのですか?」


 真実をある程度話しても大丈夫でしょう。噂で広めるでしょうから。


「純白の服を着た少女が娘のクローディア。ブリトニーと同い年の16歳。凄く強い冒険者なのよ。その顔を見ると名前は知っていたみたいね。」

「超有名人じゃないですか!緊急依頼を1時間以内で終わらして未知の魔獣まで売り場に持ち込むのですよね。美少女すぎて近寄りがたいですけど今度紹介してくださいね。」


 あれを見ても紹介してほしいのね。面白い子だわ。


「本気でピリピリしているのよ。落ち着いてから紹介するわね。今から話すのは実話だから娘の名誉を守るためにできれば広めてほしいの。この国の皇帝と皇子たちが娘に目をつけたのよ。どん底に落として絶望させて妻にした皇子を皇太子にするとね。娘はとても子供好きで依頼で助けた子たちにお菓子を買ってあげたりして一緒に楽しむのよ。だけどその後の依頼で助けた子たちが殺されていたわ。お前が妻にならない限り子供が死に続けると脅されたの。それで大激怒した娘が皇帝と皇子たちを殺すことに決めたわ。娘は好きな場所に移動できるし悪人の場所も分かるのよ。それで暫く治安維持は私がするから問題ないと言って動き出したわ。額に×(バツ)がついて殺されているのは悪人。邸や家が切断されて連れ去られていくのが子供を殺す依頼に関与していた人よ。連れ去って罪を償うための専門の施設に渡すの。娘の名前は伏せてね。有名になりたいわけではないのよ。」

「最低じゃないですか!助けた子が殺されているのを見たら絶望してしまいそうです…。そんな手口で女性を口説こうなんてクズ皇子たちだったのですね。皇帝も手伝っていたから殺すわけですね。」


 今の話を聞いても怖がらないのね。紹介できそうだわ。


「その通りよ。血の雨を降らせると言っていたから傘を携帯しておくように。娘は普通の人や善人は絶対に殺さないわ。最初に子供たちを救う依頼が続いて、その後は助けた子たちの死体を見続けることになった。今連れていかれた人は同じパーティで冒険者をしていたれど、実はこの国の諜報員だった。給与は出すから10日間休んでもいいわよ。今日から10日間で悪人を殲滅すると言っていたから。街の人がどのように動くか分からないから危険なのよ。娘は善人が暴徒になっても殺すと言っていたわ。子供を殺した人たちを調べるとこの国の貴族はかなり関わっている。他国の王族や貴族まで巻き込んでいるのよ。娘は魔法で隠している情報を吐かせることまでできる。娘を絶望させるためだけに酷い規模の計画だったみたいね。」

「それで大激怒なんですね。まず皇帝と皇子たちを殺すのが厳しそうなのに凄いですね。話が大きすぎて信じられない気がしちゃいます。」


 階段を駆け上がる足音が聞こえる。

 すぐにドアが勢いよく開いてフィオナが入ってきた。少し緊張しているみたいね。


「所長、表通りの交差点に皇帝と皇子たちが全裸で檻にいられているそうです。」

「娘が助けた子たちを殺し続けた罰よ。大激怒してこの国から悪人を殲滅するそうよ。」


 一瞬でだらけたわね。


「なーんだ。驚いて損しました。事前に教えてくださいよー。」

「今日決まったばかりなの!血の雨が降るそうだから傘を忘れないように伝えてあげて。それとエイベルにディアが行った地域の冒険者組合支部を一時閉鎖するからまとめておいてと伝えて。依頼主に返金する必要があるわ。5日後に一応検査するから。だけど募集しないと駄目みたいね。」


「馬鹿が逆鱗に触れたみたいですね。権力者の思い通りになると思うなよ!うっしっし、血の雨が楽しみですね。それでは伝えてきます!」


 嬉しそうに壁に向かって拳を何度も突き出している。

 純粋なのは間違いないわね。綺麗になっているのかは不明だけれど、本当に楽しそうに笑えるようになってきたからよかったわ。


 フィオナは笑顔で部屋を出ていった。


「フィオナは娘が助けた子で一緒に住んでいるの。ここにいる従業員は娘が助けた子が多いわ。だから娘の強さを知っているのよ。それとフィオナは権力者が大嫌い。理由は察してあげて。」

「いやいやいや、所長!いきなりお城潰してますよ!皇帝と皇子たちを檻にいれて交差点に放置するのが楽勝ですか。近衛も騎士団も面目丸潰れですね。大丈夫でしょうか?」


 腰を抜かしていると思うわよ。戦う気力もないはずだわ。


「お城を切断できる人と戦いたいと思う?それでも死人が出ないように手加減しているのよ。全裸の皇帝と皇子たちなんて普通はお目にかかれないわ。気になるのなら見てきてもいいわよ?ついでに噂を広めてくれると嬉しいわね。」

「それは大切なお仕事ですね!急いで行ってきます!」


 ソワソワしすぎよ。帝都ですら放置している皇帝と皇子たちは嫌われているはず。見物客は凄い数になりそうね。殺されないようにしていると思うけれど。


 あら、戻ってきたわね。何か用があるのかしら?


「大人気ね。もしかして売るつもりなのかしら?」

「流石お母さんですね。私たちは豚を拷問して終わらせるほど優しくありませんよ。今競売が始まっています。隣にお願いしてきました。それとは関係なくお願いがあるのですが、家の隣のお店を気に入っているのであれば経営者になりませんか?女将と女中数名が諜報員でしたけれど、建物はそのままで諜報員は消しました。主が気に入っていたみたいですしクロアも料理を食べてみたいでしょう。どうですか?」


 本当に全く関係のない話で驚くわ。念話で済む話なのにわざわざ来たのね。

 本当に几帳面だわ。


「娘が喜ぶのなら安い買い物だわ。所長の名前があると楽なのでしょ?好きに使っていいわよ。」

「ありがとうございます。私たちは10日後に目覚めたクロアをご機嫌にする必要があるのです。流石に今回は新しい発見が難しそうですからね。噂まで手伝っていただけて本当に助かります。多少名前が漏れるくらいが丁度よいですからね。人の感情と動きを見ている限りでは淀んでいた空気よりも多少荒らしてでも入れ換えたのがよかったみたいです。」


 皇帝たちに鬱憤を溜めていた人たちが喜んでいるのね。


「明後日の子は従業員に会わせない方がいいのかしら?」

「本人は会いたいでしょうが力がない主だと思ってください。複数の能力を持っていて本人は寝ていますと言ってもらっても構いません。そして治安維持は他の能力がしていますと。5日後は雷化に担当してもらいます。聞きたいこともあると思いますのでご自由に質問してください。」


 雷化と話せば違いがよく分かる。母親でいる限りは優しくしてくれるという事ね。


「雷化と話すのを楽しみにしておくわ。どうせ従業員は皆殺しでしょうからね。本当に嫌になるわ。知り合いが少なくてその中に裏切者が複数人いるのですから。新人の子たちは大丈夫よね?」

「問題ありません。副職が諜報員の人だけですよ。自信があるのか諦めたのか逃げませんね。」


 一度質問から逃れているから自信があるのでしょう。


「皇帝と皇子がいるお店は大繁盛間違いなしね。各国の王族たちも交差点にいるのかしら?」

「勿論ですよ。国別で売っていますからね。ただでもよいのですが購入すればお店の宣伝にもなります。半額は売り場に収める契約にしておきましたから競売人も本気ですよ。こういうときは女性が被害に遭うことが多いですが暴漢は未然に必ず殺しますのでご安心ください。正義の味方ではありませんけれど、女性の味方ではいたいですからね。夫と息子を競売にかけて言える台詞ではありませんけれど。」


「美人なのは間違いないでしょうし悪人がいないのであればいい人と出会えるわ。」

「そうだといいですね。さて、そろそろ血の雨を降らせて盛り上げましょう。もちろん薄めていますからね。本当に降ったと驚くのか逃げるのか喜ぶのか、人の気持ちの変化は分かりませんからね。」


 血の雨が降っているわね…。窓から見える白い壁が赤黒くなっていく。クロアの能力たちなら衛生的に問題が出る前に浄化するでしょうね。これで病気が大流行したら最悪ですもの。


 また階段を駆け上がる足音がする。

 ドアが勢いよく開いてフィオナが部屋に来た。


「所長ー!ついに降りましたよ。凄いことになりそうですね!」

「立役者がソファに座っているわよ。要望があるのなら言っておきなさい。」


「あ、こんにちは。ディア、ではないですね。クロアでもなさそうです。能力の人ですか?」

「正解です。要望がありますか?私は明日も活動しますから色々とできますよ。競売は凄い盛り上がっているみたいですね。」


 フィオナが私の前に来て両手を勢いよく机に置いた。はぁ…、飲みに行きたいのね。


「今晩飲みに行きませんか?所長、行きましょうよー!罪の重さによって服装を変えたりとか色々浮かんできますからね。」

「経営者になる話と女中の募集の話もしなければならないからいいわよ。皆で行きましょうか。」


 確実に今も惨殺は続けているはず。額に×(バツ)をつけるために現場に行くだけで殺すだけなら関係ない。それなのに能力を使っている気配すら感じることができない。

 ある程度の話は聞けるでしょうから5日後を楽しみにしておきましょう。善人でいるつもりはないでしょうけれど、悪人以外は殺さないのが本当に奇跡だわ。クロアが世界を呪っていても不思議ではないのですから。本当に優しい子だから余計に私が守るべきときは守らなければ駄目ね。

 今回のように力なんて関係なく守らなければいけない場面はこれから先も必ずある。何もしないのに母親だなんて恥ずかしくて言えないわ。それだけは許せないのよ…。

檻の中にいる一部の男が興奮したせいで更に盛り上がります。

ブリトニーは鼻血を出して倒れる前に救助されました。

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