第30話 冒険者
冒険者を始めて一月経った。最初の1週間ワクワクしてたし本当に楽しかった。だけどそれだけだった。得られるものが何もないし失うものが多すぎる…。
欲塗れの人々に囲まれても苦笑いで我慢した。クズを殺したくても殺さないように我慢した。激怒しないように我慢した。
ブレンダさんから国が崩壊したら死者が増えると聞いたから。
【お姉ちゃん、これが冒険者なの?】
(冒険者になりたかったのは精神操作されていたからだけれど、ここまで酷いとは思っていなかった。ディアに取り入ろうとする人が余りにも多くて気持ち悪いでしょ。助けて感謝されるのは嬉しいけれど、それよりも周りの人たちが問題だよ。これでは仲良くなれる人に出会える訳が無い。ディアにしか不可能だと思われる依頼以外は全て拒否した方がいい。ブレンダさんに話してからお母さんに言いに行くべきだよ。)
【うん、分かった。】
今日の依頼は終えてるからブレンダさんも自宅にいる。隣の家まで歩いていきドアをノックした。
「ディアです。師匠に話したいことがあってきました。」
「入ってきていいよ。」
ブレンダさんは何かの研究中だったのかな。白衣を着てる。
「せっかく決まりごとを考えてもらったけどもう無理だよ。欲塗れの人しか見えない。私たちにしか不可能な依頼以外を拒否しに行こうと思ってるけどいいかな?」
「私も冒険者のことを詳しく知っていたわけではなかったからね。あのように取り囲まれるのが嬉しい人たちもいるんだよ。今から言いに行くの?」
人気者の気分を味わえるのかな。私は無理…。何も思い出したくない。
「早い方がいいと思うから。師匠も一緒に行く?」
「そうだね。格好はこのままでいいかな。行こうか。」
≪加護:冒険者組合本部の所長室に移動して≫
<かしこまりました>
お母さんが突然来た私たちに驚いて椅子から立ち上がった。
「驚くじゃない。急にどうしたの?」
「私たちへの指名依頼を禁止にして。それと今後は私たちにしか不可能な依頼だけを受けることにするよ。」
「お母さん、今までかなり我慢してきていますので流石にこれ以上は教育に悪いです。」
そういえばお母さんに何も言ってないや。解決するのが当たり前だと思われてるから問題が起きるとは思ってない気がする。今までこんなことはなかったのかもしれない。
「どこに行っても求婚者や欲塗れの人に囲まれるの?」
「師匠、説明して。思い出すと吐き気がする…。」
「近隣諸国にクローディアの実力と美貌が知れ渡るのはあっという間でした。半月後くらいからの緊急依頼は全て依頼主の嘘です。依頼達成のサインを書いてほしければ結婚しろだの妾になれだの、性的関係を求められるものばかりでした。とりあえず我慢して色々な人を見てみようと説得してきましたが、状況は悪化の一途をたどりました。このまま悪化すると本当に助けを求めている人たちの依頼が埋もれてしまいます。」
本当に助けを求める依頼は実際にあるんだよね。どうすればいいのかな…。
「良いこと思いついた!依頼内容が嘘だったら死ぬ水晶を作ってあげれば…。うーん…、やっぱり駄目だね。本当に触らせたか分からないし死ぬのは何も知らない人になるかもしれない。財産没収などの規約を作っても意味はなさそう。とりあえず殺していいなら今すぐ殺せるけど貴族だけじゃなくて国王たちもいたから。恐怖している人を確認すれば嘘か本当かは分かるけど緊急依頼で駄目だったら危険度の高い場所への探索依頼に変わるだけだね。それは嘘か本当か分からない。あー!もう嫌だ!気持ち悪い!」
「従業員に現場確認までさせると依頼料が跳ね上がるから無理ね。とりあえずクズは殺して財産没収しなさい。クロアは何か言っているの?」
加護、自己回復、魔法、身体強化、帯電、反射速度強化、雷化、思考速度強化、魔力器。
皆で割り当てして。
財産没収してクズを惨殺。善人は殺したら駄目だよ。証拠も残したら駄目だからね。
≪魔力器:外に出てみたい?≫
<出てみたいです>
何かあれば魔力器に力を貸してあげてね。
「冒険者になりたかったのは精神操作されてたからだって。私たちにしか不可能な依頼以外は全て拒否していいって言ってるよ。学校作りたかったけど酷い生徒が集まりそうだし教師を集めるのも難しそう。明日から9日間は能力に動いてもらうからお姉ちゃんと寝てるね。何かあったら声をかけて。ブレンダさんも戻る?」
「そうだね。私も一緒に戻るよ。という事で活動休止でお願いします。」
「分かったわ。本当に大変な依頼だけ声をかけるわね。」
≪加護:ブレンダさんの家に移動して≫
<かしこまりました>
「研究費は足りてるかな?」
「10億リル以上あるから!未だに自分の財産だと思えないよ。ディアはゆっくり休みなさい。」
競売中のものもたくさんある。まだまだお金は増えてくから休んでも問題ないね。
「それじゃあ、休んでくるね。」
「ええ、元気になって戻ってきて。」
ブレンダさんの家から出て自宅の自室に移動した。
今日当たった人は約2日間遊べるよ。出たことがあるとか関係なしにしよう。
≪加護:全員平等に番号を割り当てたかな?≫
<完全に平等です!>
4番は誰かな?クズ共に死を与えてきて!
<4番は私です!>
番号を考え直すよ。
<待ってください!完全に平等です>
殺すのが苦手な人は無理しなくていいからね。そういうのも含めて割当ててる?
<勿論です!>
【お姉ちゃん、会いにいくよ。】
(分かった。自己回復の部屋で待ってる。)
分かった。制裁を与えてきて!
<お任せください!>
3歳児になーれ!
自分の手を確認。問題なし!慣れてきた気がするよ。
お姉ちゃんは今日も膝を曲げて座っていた。
上を見上げて何か言ったと思ったら布団が出てきたよ。
「一緒に寝るんでしょ。早く来なさい。」
「はーい!」
布団の中でお姉ちゃんは抱きしめてくれた。ああ、温かい…。
久しぶりに体の力が抜けた気がする。
「お姉ちゃん、私は何やっても駄目みたい…。」
「一月も頑張ったじゃないの。計画も修正できる。悪いことばかりではないよ。」
私には殺して解決することしか思いつかないよ。
「ギルドを作っても他の冒険者や権力者や悪党に狙われる。だから誰も入りたがらない。国をつくっても国民になれた人は嫌がらせが怖くて外に出られない。何もできないよ!」
「ディアに助けてもらった人たちは感謝していたよ。だけど怖くて近寄れなくするクズ共が悪いだけだからね。いい人にも出会えていたと思うけれど、欲で視界を塞がれていたから仕方ないよ。ディアがしたいことは何か考えよう。」
私はずっと一緒だよ。それだけのために頑張るつもりだから。
「私はお姉ちゃんを笑わせたい!」
「嬉しいけれど、私の訓練が終わらないと出られないし、それまで何もしないの?」
私に近寄ると不幸になる。何もしないのが皆のためだと思える。
「何やっても邪魔されるよ。気持ち悪い目で見てくる。私は弱い人たちの味方になりたかったのに私に関わると不幸になるもん。ギルドに入りたそうな若い子たちもいたけれど、嫌がらせや八つ当たりが怖くて声をかけてこれないみたいだった。私も声をかけてあげられなかった。守るためには殺し続ける日々になると思ったから。」
「少しの間に勉強できているじゃない。自分だけじゃなくて他人の気持ちも考えられるようになった。最初から成功するのは難しいよ。経験の積み重ねで改善していけばいいの。」
何を改善すればいいの?近寄ってくる人を殺せばいいの?分からないよ…。
「本当は友達と遊びたいだけなんだよ。だけどその時間は奪われちゃったでしょ。お姉ちゃんは何をするつもりでいるの?」
「私も遊びたいな。ディアと家族みんなでだよ。そのための分身計画だからね。」
分身計画は皆で一緒に暮らすためだったんだ。だから誰も文句を言わないんだ。
「お姉ちゃんの影響を受けて性格が変わってるじゃない。本当の性格はどんな風かな?」
「私は家族の性格が本物だと思っているよ。だって自由だもの。私は何も縛っていないから。お母さんの能力たちの話を聞いたら縛られているように聞こえたよ。違ったかな?」
皆が同じ方向を見て同じことを考えてるように聞こえた。
「私は仲間たちが自分勝手すぎると思っただけだよ。」
「家族思いで自分勝手でいいじゃない。それが個性でしょ。ここはクローディアという家だけれど、みんな好きな方を向いている。好きなことを考えている。魔力器が外に出るのを心配したのは力を使ったことがないからでしょ。だから力を貸してあげてと頼んだ。ディアが言わなくても皆は力を貸してあげると思うよ。殺しが苦手ならしなくてもいい。ディアも皆を縛ろうとしていないじゃない。自由に遊んでもらうついでにお願いしただけ。家族を侮辱されたからみんな怒っているよ。普通の人は能力と話せても体を貸すことはしないと思う。自分の能力とはいえ怖いはずだよ。体を返してもらえないかもしれないから。だけど私たちは怖くない。信用しているからね。」
当たり前に貸してたけど普通じゃないんだ。お姉ちゃんがいなくても体を貸せたかな?お姉ちゃんの家族だから貸せる気がする。
「うん…。だから任せたよ。私は殺しすぎると思ったから…。」
「末っ子を悲しませた悪人は殲滅されるよ。10日間ゆっくり休んでまた考えてみようね。」
お姉ちゃんが何か言った気がする。
気にしなくていいね。優しく頭をなでてくれて気持ちいい…。
みんな…、私が馬鹿でごめんなさい。
「うん…。ゆっくり考える。」
「ディア、おやすみなさい。」
「自己回復、ディアを10日間休ませてあげて。防音もお願い。」
<かしこまりました>
≪加護:ゴミ処理場の横に豚小屋を用意して。餌は隣の焼けたゴミでいい≫
<かしこまりました>
「自己回復、そこまで美少女なの?」
<はい。それだけではなく途轍もなく強いのです。お金目的や体目的で人が寄ってきます>
「ディアの計画が全て潰されたと考えていいのね?」
<その通りです>
「軌道修正はできない?」
<冒険者クローディアは困難です>
「学校もギルドも厳しいの?」
<閉じた国で国民を厳選する必要があると思います>
≪豚は両腕と両脚だけ現場に残しなさい。何本残してもいい。城や邸は財産没収した後に×に切断しなさい≫
<かしこまりました!>
「冒険者組合支部はどうなの?」
<感情と人の動きの推測ですが、受付は悪意ある噂を広め、他の従業員は賄賂を受け取り、支部長も賄賂を受け取っていると思います>
≪念話≫
「クロアだけど、お母さん。冒険者組合支部の従業員を総入れ替えして。お陰でディアが寝込んだ。ディアの夢を全部潰された。攫って拷問してもいいけれど、どうする?」
「殺してもいいと思える相手は誰なの?」
本当は全員殺したい。だけど困る人もいると思うから我慢しているの!
「支部長は賄賂もらっている。依頼等級を決める従業員も賄賂もらっている。受付は悪意ある噂を広めている。今日から10日間はディアの夢を潰す原因になった近隣諸国の城と貴族の邸は×に切断して豚は両腕と両脚を切断して拉致するから。冒険者組合支部はお母さんが決めていいよ。」
「分かったわ。総入れ替えするように動くから支部長だけ惨殺してちょうだい。」
「分かった。とにかく10日間は近隣諸国に血の雨を降らせる。」
≪念話終了≫
≪冒険者組合支部の支部長は尋問して悪なら、額に×と切り裂き首を切断。胴体を縦割りにしなさい。×は焼き印でも構わないから≫
<かしこまりました!>
≪冒険者組合以外の悪人も額に×と切り裂き惨殺して街に血の雨を降らせなさい。殺す悪人の基準は皆の判断に任せる≫
<かしこまりました!>
「自己回復、やりすぎだと思う?」
<全然足りないと思います>
「3歳の子が私のために色々と計画してくれて頑張ろうとしてくれていたのに、それを醜い欲で全て潰された。10日後にどのような話をすればいいの?ディアの目標を何にしてあげればいいの?ディアには夢が必要なのよ。エルフやドワーフはどうなの?」
<非常に排他的な種族です。身内扱いしてもらえるようになるには何らかの功績が必要となることが多いです>
「醜悪な人を自動でひれ伏せさせた方がよかった。1週間も経たず嘘の緊急依頼で依頼達成のサインに体を求めてくるような豚がいるとは思わなかった。これ以上考えると怒りで倒れそうだからディアの隣で寝ているよ。睡眠魔法をかけておいて。何かあれば起こして。何もなければ10日後に起こして。10日間好きにしなさい。」
<かしこまりました!>
◇◇◇
カンナカムイ視点。
クロアと念話を終えてから少しするとズザァンズザァンと北から轟音と振動が伝わってきた。
報復が始まったわね…。
クロア、あなたの怒りはどれ程なの?冒険者として活動していたディアが見たものは何だったの?あの場ではディアに気を遣ってブレンダさんも正確な話はしていないと思う。母親として毎日話を聞くべきだったわ。緊急依頼を迅速に解決していると思っていた。子供の話を聞かない母親がいてどうするの!
≪念話≫
「カンナカムイよ。ブレンダさん、もう一度所長室に来てもらえないかしら。詳細を教えてほしいの。まだ全てを話していないでしょ?」
「そうですね。今から向かいます。知っておいた方がいいでしょう。」
≪念話終了≫
やはりあの説明でも抑えられている。ディアが吐き気がすると言ったから抑えたのか、ディアのいる場で説明するべきではないと考えたのか、どちらかでしょうね。
音と振動が近づいてくる。
そろそろ見える頃だと思い所長室を出て窓から外の様子を確認してみた。
貴族の邸を切断しているわね。それだけで終わるはずがない。財産没収で豚は拉致される。妻や子がいても関係ない。現場には豚の腕と脚が残される。最初の犠牲者は皇帝か皇子でしょうね。
階段を駆け上ってくる音が聞こえた。
「ブレンダさん、所長室でお話を聞かせてください。支部の従業員を総入れ替えするだけでいいのか制裁するべきなのか分かりませんから。」
「激怒しているのは当然ですが、この国の貴族まで関わっているとは知りませんでした。」
所長室のソファに机を挟んで対面に座った。
「とりあえずブレンダさんの能力に聞いてほしいの。ディアが寝込んだ場合はどれ程の被害が予想されるかしら?」
「最低でも関係者は拷問で悪人は惨殺されます。悪人も殺人から物取りまで幅がありますが関係なく惨殺される可能性が高いそうです。善人は殺さないようにしますが丁寧に判断しません。悪人を惨殺する際に善人が巻き込まれても関係ないそうです。」
ブレンダさんに付与されたはずの能力が余りにも詳しい。能力が基準を決めているの?
「惨殺基準は能力が決めているのかしら?代表の能力がいるの?」
「拷問するために拉致する人は決まっているようですが、惨殺する悪人の基準は能力によって違うそうです。担当地域は決められますが自由に悪人を惨殺すればよいそうです。」
自由度が高すぎるわね。能力と人との違いが分からない程だわ。
「ディアが善人を殺すなと指示していた場合でも指示を守らなくていいの?」
「主の指示を無視しても変更してもよいそうです。絶対に殺しては駄目なのが保護対象に選んでいる人たちだけらしいです。起きた主が悲しまなければ好きなように惨殺するそうです。」
あってはならないはずよ。自分の能力が裏切るかもしれないなんて…。だけど2人の元能力ならあり得るかもしれないと思ってしまうわ。
「普通はあり得ないと思うんだけれど、気になるので聞くわ。ディアかクロアがブレンダさんの能力に指示を出した場合はどうするのかしら?」
「主を害する指示以外なら元主の指示に従うそうです。『残っている同じ能力が羨ましいです。あそこまで楽しくて夢のある場所はありません』と言っています。それとクロアとディアは2人とも主のようですがクロアの方が立場が上のようです。呼び名を変えるのが面倒なのでそのままだそうです。」
能力が今の主を無視して元主に従う。能力は主の影響を受けるはずなのに元主に対する思いが残っているわね。それも恐ろしいほど強く…。
「能力たちはブレンダさんの影響を受けているはず。記憶だけでそこまで思うのかしら?」
「記憶だけではなく当時の精神状態も分かるそうです。1万年以上ある記憶の中で初めて自分を知ることができたと言っています。ん…?私も縛っているの?うそー!私も縛っているそうです…。ああ、それですら縛りになるのね。私の研究したいという思いが縛りになるそうです。クロアの思いや強くなった方法は言えないそうです。影響を受けるのは精神の奥であり普通は知ることすらできないようです。クロアは同じ思いを話しているので調べることができてしまうのですが絶対に見せないし聞かせないと言われました。強くなる方法は教えたくないのと私が知って実行したら死ぬらしいです。」
それなら私が話せるようになってから同じことをしたら死ぬという事じゃない。あの子たちが死ぬと分かっていることを教えるはずがないわ。
「強くなる方法を実行すると死ぬと本人たちは知らないはず。聞いてみてくれないかしら?」
「ディアは話すことができれば能力を解放していると考えているそうです。クロアは能力と話せる条件は人それぞれ違うのではないかと考えています。どちらも同じく死ぬとまでは考えていません。」
クロアは私と能力が話すのを聞いてアイダまで能力と話せたから、純粋が理由ではないと考えたのね。ディアが私に強くなる方法を教えたのはクリスティーナにも教えたから平等にしようとしたのでしょう。
「何故死ぬか聞いてもらえるかしら?私は教えてもらっているからブレンダさんに教えないように止める必要があるかもしれないのよ。」
「確かに私が知ってしまうと試したくなりますね。能力の暴走による自爆のようです。強くなる方法を実行すると能力を使えなくなるのだと思います。それなのに能力を使おうとして自爆するのか、能力が縛られた状態だと扱いきれない力なので自爆するのでしょう。」
ブレンダさんが妙に詳しく感じるわね。冒険者として一緒に活動していたからかしら?
「ブレンダさんは何故そのように思ったのかしら?能力を使っているのでしょ?」
「ディアの能力の使い方が特殊でしたから。全自動に近い形です。例えば包丁を握るときに握り潰さないように力を加減するのではなく、料理するから、で終わりだと思います。」
能力に魔力を送ることすらしない。能力名すら言わない。料理する力加減にしてという事なのね。
それだと既存の能力の使い方をした場合は自爆するのが分かる。人が制御できる力ではなく縛られた能力では扱えないのね。
「お母さん、能力が怒っています。それのどこが全自動なんだと。ディアなら料理を作れと指示するそうです。食材と調味料を見せて一番美味しい料理を作れる能力が作れと指示するそうです。そしてまずかったら説教が始まるそうです。」
「色々と考えた私が馬鹿だったわ。私が能力と会話できるようになっても同じ指示は出せない。自由度が高いと思っていたけれど、違うようね。完全に自由だわ。クロアの精神も相当に凄いわね。それに能力が応え実際に料理をするわけですから。話がかなり逸れてしまったわね。クロアも激怒しているけれど、能力の方が更に激怒している可能性が高いのね。それ程の酷い現場だったの?」
酷い話が出てくると思う…。だけど聞かないわけにはいかない。
「お金目当ては分かりやすいのでいいのです。圧倒的な力で何かしてほしいことがあるだけですから。しかし、クローディア自身が目当ての人が多すぎました。最初の方は言葉だけです。依頼主に会いに行ったら全裸の男が立っていたこともありました。耳に入るのも卑猥な言葉ばかりです。力でも権力でもものにできないと理解した王侯貴族は、人質を用意したり死体を用意しました。全て子供です。お前が拒めば子供を殺していくという脅しです。恐らく最初の方の依頼で子供に凄く優しく接していた情報が広まったのです。殺されたり脅されたりした子はディアが楽しく話した子たちでした。魔獣が出没したと緊急依頼で助けた子たちとお菓子を食べたりして仲良く話すと、次の緊急依頼でその子たちが殺されているのです。ギルドに入りたそうな真面目な子たちもいたのですが、ディアが『私が話しかけると不幸になる』と言って目を伏せました。ディアがクロアを笑わせるために3年間勉強する。そして実行する予定だった計画を全て潰されました。私も自分の甘さを痛感しました。権力とお金を持つ欲に目が眩んだクズはここまでするのかと。」
考えが甘すぎた…。
これは駄目だわ。殺すだけでは許せそうもない。ようやく訪れた平和な日常を壊したのね。
「どこの国のクズが一番酷かったの?拷問しに行かないといけないわ。冒険者組合支部の中には本当に助けてほしい人の依頼もあるはず。混乱しているわね…。殺意で頭がおかしくなりそうだわ。」
楽しかったよね。笑って皆でお菓子を食べて。今まで経験できなかった願っていた日々。皆からはお姉ちゃんと呼ばれるかもしれないけれど、そのようなことは関係ない。皆と笑って話せるだけで十分だったはずだから…。
「こんにちは。2日間もあるので遊びに来ました。」
ディアを魔法で眠らせ自身も魔法で眠ることにしました。
激怒で精神が壊れるわけにはいきません。




