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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第28話 善悪

(ディア、間違えていたみたい。師匠だよ。ブレンダ師匠。)

【教えてもらうんだから師匠だよね。】


「お姉ちゃんも間違えてたみたい。ブレンダ師匠…。」

「やめてー!意見を言っただけなの…。もういいわ!最後まで言ってみなさい!」


 ブレンダ師匠が開き直った。このまま進めて本当にいいのかな…。


「ブレンダ師匠、爆走の仕方を教えてください。世界最強の3歳児の爆走もブレンダ師匠なら止めれるそうです。お願いします!」

「私のバカー!世界最強の3歳児だから慎重にもなるよ。叱ったときには終わっているからさ。お母さんとディアの差はどれくらいあるのですか?」

「私が100万人いても一瞬で殺されるくらいの差よ。人数に関係なく殺されるわね。」


 今ならそれくらいの差があると思う。私は何もしないけれどね。


「クロア大師匠、私が間違えていました。何も考えずに普通の子育てのように話してしまったのです。許してください!」

「ブレンダ師匠、今のお姉ちゃんは何もできないんだよ。だからお姉ちゃんの訓練と合わせて3年間の延期だったから。爆走していいんですよね。叱られない限りは爆走し続けてもいいんですよね。ブレンダ師匠、私を導いてください!」


 師匠の顔つきが変わった。やる気になったのかな?


「例えば国をつくるとしたらどのくらいの時間が必要なのかな?」


≪加護:オルグレン帝国を再現するのにどのくらい時間が必要かな?≫

<1時間あれば十分です>


「オルグレン帝国なら1時間で十分だよ。」


 師匠が深い溜息を吐いた。やっぱり私が爆走したら駄目だよね…。


「クロアが慎重になる理由が身に染みて分かったわ。変な方を向いたまま爆走したら誰も止められないもの。対岸の火事だと思っていたら自分自身が燃えていたよ。ディアは何からしたいの?」

「師匠とパーティ組んで最強の冒険者として世界一有名になりたい。手始めに簡単なところから始めてみるよ。」


「ふーん…、簡単なんだね。ところで私の研究はどうなるのかな?」

「依頼を受けない休日に終わらせるね。」


「私の研究が片手間で終わるのね…。ところでクロア怒ってた?」

「反省してたよ。それに全く怒ってない。私のことを信じ切れてなかったと言ってたから。」


 お姉ちゃんの気持ちも分かる。知り合いはいないし悪人ばかり見てきたから私が心配で仕方ないと思う。だけど私はお姉ちゃんが心配だよ。記憶は時間をかけて薄れさせるしかないのかな…。


「それはかなり本気の反省だね。何を言っていたの?」

「『・・・・』と言ってたよ。お姉ちゃんは私を見てる余裕がないから師匠を巻き込んだと思う。それにお母さんも冒険者組合本部の所長だから一緒に依頼を受けれない。常識を知っていて私の側にいてくれる人が師匠しかいないんだよ。」


 同居した3人をお姉ちゃんはどう思ってるのかな?加護や能力と話せれば善人というのも違う気がする。簡単に考えすぎていてお姉ちゃんらしくない。


「ディアに付き添って何かできる余裕のある大人がいないわけね。私もドラゴンになろうかな。何だか私だけすぐに死ぬのもつまらなく感じるわ。」

「ブレンダさん、本気なの?ドラゴンの裏切りは例外なく死だよ。お姉ちゃんも私もブレンダさんが変わるところを見たくないし殺したくない。ドラゴンは人間を餌と考えたり人体実験で利用したりしてきた。力を持っても変わらない自信があるのなら体に負担がかからないようにドラゴンにするけど、どうする?」


 この流れは予想外だよ…。ドラゴンについて全くいい話をしてないから。私たちと一緒に遊んでくれるという事なのかな。


「覚悟しているよ。力を持つドラゴンが悪いことをしたら処刑されるだけだよ。私はあなた達の近くで研究しているから何かあればすぐに対処できるから安心だよ。」


≪魔法:自分の記憶を今日の分消せる?≫

<一度加護に魔法陣を記憶させてからなら可能だぞ>


【お姉ちゃん、ブレンダさんが本気みたいだから付与も真面目にするべきだよね。魔法も今日の記憶を消せるみたいだから、身体強化、魔法、自己回復から今日の記憶を消して付与するのはどうかな?】

(ブレンダさんから言い出すとは思わなかった。付与はブレンダさんの家を作った後にしよう。能力の説明だけしておいて。)


「ブレンダさんが本気だから私たちも本気で能力を付与する。身体強化と魔法と自己回復。ドラゴンの体になるだけで大抵の人間より強いけど身体強化すれば負けることはまずない。魔法はそのままで魔法が使える。自己回復は体と精神を治癒する専門だけど研究するには必須の能力。作った薬品の効果を全て解析できる。指先を切って薬品に触れるか飲めば分かるよ。素材の効果も分かる。毒キノコを食べても死なない。猛毒の蛇に噛まれても死なない。これは私たちが無理やり付与された力なんだよ。お母さんに強化された力も入ってるけどね。ブレンダさんにこれ以上は付与できない。能力を付与できる数には限りがあるから。特例だから極秘だよ。」

「極秘なのは分かるけれど、特例とは何かな?」


「ドラゴンは強さに貪欲だから私たちが人間に能力を付与してドラゴンに付与しない理由は何だと文句を言ってくる可能性がある。極秘にしてくれるだけでいいんだけど、特例でもあるという事だよ。」

「世界最強が能力を付与する前例を作りたくなかったという事だね。食事を楽しんで家を作ってもらって引越した後に私とディアで冒険者をするときの決まりごとを考えよう。料理とお酒がもったいないからね。」

「過去の話をしてしまうと重苦しくなってしまうのは仕方ないわね。ディアをブレンダさんが見てくれるのなら私は冒険者組合本部に集中できるわ。支部も掃除する必要があるかもしれないわね。ブレンダさんと決まりごとを決めるのはいいとして依頼はどうするの?」


 冒険者を楽しめるのなら依頼は何でもいいんだけど人助けをしてみようかな。


「緊急性の高い依頼か支部から回ってきた依頼が中心だね。誰もできない依頼でもいいよ。朝行くのが面倒だから回して。」

「分かったわ。依頼はエイベルに見繕ってもらいましょう。ブレンダさんの登録とギルドの登録と入会だけはしておいて。私は勝手に入会しておくわ。」

「ディアもクロアも凄いよね。それだけの力があれば何でもできるのに正当防衛にしか使ってないのでしょ。ほとんどの人が独裁者になる気がするわ。」


 違和感の正体が分かった。何でアイダは9人も護衛を引き連れて逃げてたのかな。普通は捕まえるはず。親の密命を受けた護衛なら好き勝手に逃げ回らせるのは悪手だよ。訓練をさぼってたアイダが強かったとは思えない。

 フィオナはアイダとの生活を嫌がってたように見えた。何か知ってる気がする。


≪加護:フィオナと念話を繋いで≫

<それはできません。クロアが動いています>


 いつもこれだよ…。私が余計なことをしたからお姉ちゃんが動かなければいけなくなってる。本当に駄目な妹だよね。


(ディア、3歳児が勢いで行動するのは普通だと師匠が言ってたでしょ。何かを間違えたと思っているのであれば同じ間違いをしなければいいんだよ。)

【私が能力と話せると教えたことで面倒になったの?】


(何も知らない相手に話すべきではなかったね。フィオナに話を聞こうとしたのも間違っていない。但し、直接聞けばの話だよ。保護対象たちが殺し合いをしたらどうなるのかな?)

【殺そうとした方が死ぬはずだよ。】


(殺意を出さずに殺すことができたら?)

【殺されちゃうね…。それは想定してないから。】


(能力は人を殺すときに殺意があるのかな?)

【感情があるけど指示通りに行動しただけだと殺意はないかもしれない。】


(加護と能力たちが何も言わなかったという事は人が殺意を完全に消して殺すことはできない。だけど能力に指示を出して人を殺すことを今まで想定していなかった。更に指示の内容を曖昧にすれば完璧。例えばディアと話している人を殺してとかだね。それに保護している方法まで教えてしまった。)

【善人か悪人か分からない人たちに殺せる術を丁寧に教えてしまったんだね。】


(ブレンダさんに能力を付与して話せることまで教えるつもりでしょ。それは問題ないよ。何故なら問題が起きたときに殺すつもりでいるから。それだけの覚悟を持って話さなければならない。3歳児には酷な話だと思うけれど、力を与えるのであれば相応の覚悟が必要だよ。)

【そうだよね。人を殺せる力を簡単に話すべきではないよね。】


(そういう事だね。そしてドラゴンを足せば答えが見えてくるよ。)

【もしかしてアイダはあの短時間で私に執着して独占しようとしてるの?】


(そうだとするとフィオナは何かな?)

【被害者だね。体罰とかされてるかもしれない。】


<そろそろ休憩してください>


(ディア、考える練習だと思えばいいよ。本人に尋問すれば分かるからね。)

【分かった。お姉ちゃんは休憩してね。】


「お姉ちゃんと話してたら遅くなっちゃった。ごめんなさい。私は力があるのに椅子に座ってるなんてつまらないからだよ。自由に世界で遊んだ方が楽しいじゃない。この国の権力とぶつかったときブレンダさんならどうするの?」

「長考していると思っていたよ。私は何もできないけれど、ディアは脅せばいいんだよ。殺意を向けてきた人はその場で殺した方がいい。放置すると面倒事が膨らむからね。ディアは誰にも頭を下げたら駄目だからね。今みたいに話しているだけで十分。ディアとクロアが頭を下げる理由なんて何もないから。日常会話での話ではなくて権力に対してだからね。」


 お母さんが深刻な顔をした。何か気がかりがあるのかな?


「やはりブレンダさんが登録しに来たら駄目だわ。あの女の被害者のように振る舞って。冒険者カードとプレートは作って送るわ。ギルドのことなども全部任せて。一緒に住んでいる人たちに、ディアがブレンダさんにドラゴンの力を与えていると知られると面倒なことになるかもしれない。いや…、あの女の被害者では無理があるわね。ドラゴンの力を受け継ぐことができなかったけれど、母親に逃がされたことにしましょう。ディア、力を与え終わる日数を確認して。」


≪自己回復:ブレンダさんをドラゴンの体に変えるのに必要な日数はどのくらい≫

<私を付与して中と外から同時に変えていけば今の私なら1週間です。無駄な力を送る必要がなくドラゴンの力に人間の体は拒絶しない可能性が高いですから>


≪自己回復:ブレンダさんに付与した自己回復の記憶を消す方がいいという事だね≫

<早くドラゴンの体に変えたいのであればそれが最善です>


「今なら1週間でできるって。人体実験の天才だから日々進化してるね。」

「それなら引越しも冒険者として活動するのも1週間後からにしましょう。ブレンダさんの身を守るためだからうまく誤魔化して。」

「ドラゴンになることが危険なのか付与してもらう能力が危険なのかどちらですか?」


 私が付与することを問題だと考える人がいるんだよね。本当にドラゴンは面倒だよ。今のところ、まともな人は辛い被害に遭ったことがある人だけなのはおかしいでしょ。


「ディアが人間をドラゴンにしていることが大問題なの。クロアの治療という名目でブレンダさんの家にお邪魔しなさい。隣に引越す予定だけれど、近所の人に事情を説明したり荷物を整理したいと言えばいいわ。錬金術をしていたから時間がかかるとね。ディアに力を与えてもらえばブレンダさんは最低でも世界で3番目に強くなる。そしてアイダの行動が読めない。ディアと一緒に冒険者をしたいと言い出す可能性もある。そのときにブレンダさんが弱くて徐々に強くなっていけば確信されるわね。ドラゴンは本当に面倒なのよ。」

「そこまで配慮しなければならないのですか?」

「ドラゴンは馬鹿で貪欲で強欲で嫉妬深いから。私が人間を強くすることが許せないはずだよ。しかも自分より強くなる可能性が高いから猶更ね。私が守っているからブレンダさんは安全だけど一緒に住んでいる人たちを皆殺しにすることになるかもしれない。」


「ディアはアイダに感情を向けてないわよね?」

「お母さんが何を心配してるのか分かったよ。既にお姉ちゃんが動いてるから問題ないよ。」


 お母さんが心配してくれる。やっぱり普通はそうだよね。無視するのはおかしいよ。


「クロアが裏で動いているのね。どの程度の動きをしているの?」


≪加護:お姉ちゃんが何をしたか教えて≫

<主がお母さんと一緒に移動する直前にお母さんとブレンダさんの存在を隠蔽しています。主は常に隠蔽されています>


 世界最強は私が爆走しても対処してるじゃない。お姉ちゃんが守ると決めたときの行動は凄すぎる。アイダについて話したのは見た感じそう思っただけなんだ。私が一緒に寝ると決めたらそのときまでに全て暴きそう。


「世界最強は私とお母さんが転移する前にお母さんとブレンダさんの存在を隠蔽してる。ブレンダさんへの返答が遅れたのもお姉ちゃんに叱られてたからだよ。大勢と一緒に住むのは楽しそうとか言ってた気がするけど全員疑ってるもん。」

「私が魔法にかけられていることに気づかないなんてね。上位の魔法なのか転移に紛れ込ませたのかどちらかだと思うけれど、あの子は本当に鉄壁だわ。何を叱られたの?」


「能力と話せる事と保護対象の守り方を話したこと。初対面の人に守ってる人を殺す方法を教えてどうするのと叱られました。それに3歳児でも力を与えるときには問題が起きたときに殺す覚悟を持てと叱られました。ブレンダさんにはそんな感じで話したのにあのときは秘密じゃないと私が勝手に決めて話したから。見つけたのはお姉ちゃんなのに…。」

「クロアなら爆走3歳児を止められるという事なのかな?」


 止めてるように見えるけど実際はギリギリ防いでるんだよ。それが凄いんだけどね。


「止めれてないよ。本当は私が秘密を話すときに止めなければいけないんだよ。それができないから被害者が出ないように対処してくれた。今回の被害者はお母さんとブレンダさん。殺される理由は私と食事したから。」

「同性でも殺されるの?性別も年齢も関係なく殺されるの?」

「何も関係なく殺されるわ。話していただけでも殺される。話しかけただけでも殺される。ドラゴンは強さに貪欲で執着心と独占欲が本当に強いのよ。苦労したことがないドラゴンほど酷いわね。30分程会話しただけでアイダに執着されているとクロアは考えたのね。」


 お姉ちゃんはドラゴンに執着されていた経験があるから。殺す理由にしてもいいのかな。


「私がフィオナに念話しようとしたのも止められたからあらゆる方法で私の場所を探してると思う。私の場所を見つけたら突撃してくるかもしれない。私は分からなかったけどお母さんはあの10人を何だと思う?」

「国王と王妃を殺そうとして失敗したから逃げている。結婚を説得するための密命なんて嘘でしょうね。王女が護衛9人も連れて逃げる理由がそれくらいしか思いつかないわ。」

「30分会話しただけでそこまで執着されるの?怖すぎるわよ。」


 なるほど。お母さんも疑ってたんだ。だけど疑ってる雰囲気も出さないのは流石だよね。


「お姉ちゃんは13年間で初めて半日もゆっくり話せて昼食も一緒に食べた人がいるんだよ。だから今も本当は私と代わりたいはずだよ。だけど外に出れないくらい体調がよくない。冒険者で荒稼ぎしようよ。魔獣を売ればいいだけだから100億は稼げるね!」

「常識がないのはそういう理由なの?100億稼いだら何度でも来れるね。」

「そういう理由よ。全てを遮断された生活。他人と会話すらまともにさせてもらえない。歩いているときに聞いたことを覚えているだけで普通の生活の経験が何もないの。人間の知人はブレンダさんしかいないしドラゴンの知人はいないのよ。冒険者組合本部の従業員たちもここで食事会をしましょう。懇親会でいいわね。あとで少し騒いでもいい部屋があるか聞いてみましょう。」


 お母さんは優しいよね。もしかしたらお姉ちゃんよりも辛い経験をしているかもしれないのに。


「お母さんは過去を克服できてるの?」

「克服できていないわ。あなた達の側にいるから平気なのかもしれない。お母さんと呼んでくれるから立っていられるのかもしれない。娘に頼るのもおかしな話だけれど、何があっても助けてくれると分かるから。クロアには時間も必要だと思うわ。まだ最近の出来事だから…。ディアもクロアも焦ったら駄目よ。時間が解決してくれる問題もあるのだから。」


 やっぱり時間も大切だよね。私は焦りすぎていたよ。


「お待たせしました。」


 新しい料理が運ばれてきたけど盛り付けにも意味があるのかな?

 とても見た目が綺麗だね。


「ブレンダさんはまだ飲める?」

「はい。あとで醒ましてもらえるのであれば量は問題ありません。」


「ねぇ、ここのお店で少し騒いでも大丈夫な部屋はあるかしら?10人程で懇親会をしたいのよ。」

「はい。10人程の懇親会でしたら問題なく行える部屋がございます。」


 動くのが早いね。そこがいいところだと思う。冒険者組合本部の従業員の人たちはこのお店で懇親会を開いたら驚きそうだね。


「その部屋を予約してほしいの。早い日で予約してちょうだい。あとお店にあるお酒を全てグラスで2人分お願い。懇親会で飲むお酒を選びたいのよ。」

「かしこまりました。ご予約の確認とお酒をご用意いたします。それでは失礼します。」


「お母さん、何でお酒の名前や料金が書いてある紙がないの?」

「言えば持ってきてくれるわよ。だけど名前と値段でお酒を選んでも仕方ないでしょ。味よ。好きな味のお酒が飲みたいの。料理に合うお酒もいいけれど、懇親会は量を多く飲んで楽しみたいじゃない。あの子たちも辛い経験をしてきたのだから楽しい思いもしないとね。月一で懇親会をしてもいいわね。冒険者組合本部は普通に運営すれば利益が出るもの。給与で還元してあげてもあの子たちは怖くて邸から出られない。それなら皆で楽しんだ方がいいでしょ。」

「冒険者組合本部の新しい従業員の人たちも辛い過去があるのですか?」


 みんな空元気のように見えるから恐怖を乗り越えるには時間がかかると思う。


「あと少し救助が遅れたら食べられていたわ。みんな一緒に生活をしているけれど、結婚でもしない限りは怖くて出られないわね。結婚したら近くに家を用意してほしいと頼まれるかもしれないわ。深く刻み込まれた恐怖は簡単には癒えないのよ。」

「死黒森と鮮血湖の魔獣を売り続けて稼いであげるよ。師匠、そんな感じでいいでしょうか?」

「程々にしないと売り場からお金がなくなるよ。同じ種類を何度も売ると貴族はお金を出さなくなるから違う種類を売るべきね。私は弟子に任せて見学でいいのよね?」


 そんなことが許されるはずがないじゃない。爆走しちゃうよ?


「未登録の魔獣は誰が名前を決めるの?」

「普通は発見者よ。売値は競売で決まるわね。」


 私の爆走を止めてください!


「ブレンダ1号から始めます。師匠、任せてください!」

「弟子よ。まだまだ甘いようだね。命名権も競売で売ればいいのよ。」

「それはいい案だわ。かなり稼げるわね。ブレンダさんは服を選ぶところから始めるべきだわ。」


 爆走を止めて更にお金を稼ぐなんて流石です!

 確かに今の服で身体強化したら全裸だね…。


「厳しいご意見をいただきました。このお店に通うなら100万リンくらいの服ですかね?」

「冒険者らしい服の話よ。お店に通うなら清潔にしているだけでいいじゃない。ディアが着ている服は1億リン以上の価値があるわね。私は10万リンくらい。服の指定がある夜会は別だけれど、そこまで気にしなくてもいいと思うわよ。訓練はするのかしら?」

「武器はアダマンタイトの何かをあげるよ。この服は竜王妃の脱皮した皮で作られてるからすぐに脱ぎたいんだよね。ゴミの皮は全部売るつもりだよ。師匠、それなりの服を着てないと走ったら全裸になるよ。手加減を覚える訓練は必要だと思う。」


 アダマンタイトの剣をゴミが家族用とか言ってたね。私たちの魔力で染め直そう。


「確かにあの女の皮を着ているのは嫌よね。ブレンダさんが戦闘するつもりがあるのであれば私の作った服をあげるわ。あくまでもディアの師匠という立場でいくのであればそれなりの服でいいと思うわよ。」

「最低限の動きはできるようになりたいね。ドラゴンなのに子供も助けられないのは情けないから。ところでアダマンタイトは人にあげていいものなの?」

「同じパーティだしいいと思うよ。訓練のときに出すから好きなのを選んで。副ギルド長が安い剣を腰に下げてたら駄目だよ。やっぱり派閥はなしかな…。お母さんも守りたいドラゴンいないでしょ?」


 ドラゴンと関わりたくない。他の種族はどんな感じなのかな。会える日が楽しみ。


「いないわね。ギルドでいいわよ。ブレンダさんのお陰で計画も変わったし楽しめそうじゃない。」

「私は戦闘できた方がいいのかな?ディアはどのように思う。」

「研究に必要な素材が魔獣の肝だった場合、私を待つのか自分で取りに行くのかどっちがいいの?」


「なるほど!そのように考えると戦えるようになる必要があるね。冒険者と研究者を兼業しているのに魔獣の素材は取れませんは格好悪いわ。」

「ちょっと今から沈黙してるから気にせず楽しんでてね。」

「ええ、クロアと状況確認するのね。」


【お母さんの言ってた理由もあり得ると思ったけど簡単なことを見逃してた。食事に来てたんでしょ。人間は飽きてドラゴンを食べたかった。】

(正解。どうやって気づかれないようにしたのかな?)


【耳を塞ぐ魔法を使えばいい。】

(そうだね。誰でも怪しいと思う状況で食欲を優先するのがおかしい。それなら7人が動かなかった理由も分かるかな?)


【剣を奪われた後にアイダの指示で7人の耳を塞いだ。】

(正解。動くなって命令と一緒だね。)


【耳を塞ぐ魔法をかけたのはフィオナだよね?】

(その通り。理由は何かな?)


【生贄。フィオナは人喰いするつもりがなく何かあれば犠牲にされる予定だった。】

(そうだね。フィオナが会話を聞いていて問題ないと判断したら解除することになっていた。)


【フィオナは必死だったんだね。人喰いたちの餌にされないために。】

(本当に涙が出るほど努力したのだと思う。)


【能力と話せるのは善ではないんだね。】

(それは分からない。ドラゴンが人を食べるのが善か悪か決まっていない。人間だって他の動物を食べる。悪と考えて食べている人は少ないと思うよ。だから話せる理由が決まったわけではないよ。思い込みは危険だからね。)


【それで人喰い旅行中のゴミ9人はどうしたの?】

(眼球とドラゴンになるための臓器と魔力器を摘出して殺したよ。それで保存の試験中。魔力濃度が2割から10割までの魔力水に沈めて空間庫に入れてあるよ。)


【ゴミの親たちはどうするの?】

(気にしない。人間を食べるドラゴンを駆除するのが私たちの役目ではないから。助けを求められたら助けるけれどね。既に2人の部屋は潰してある。フィオナがどうしたいのか聞いてあげて。)


≪加護:フィオナに念話を繋いで≫

<かしこまりました>


◇◇◇

念話中。


「やあ、ディアだよ。9人は処分した。お姉ちゃんが終わらせたよ。これからも一緒に住む?邸に住む?1人で住む?私たちは視界に入った被害者を助けることにしてるから。特にお姉ちゃんがね。少しの間は冒険者組合本部で働いてほしい。エイベル以外は人喰いドラゴンの被害者なんだ。態度の悪い冒険者に絡まれたら助けてあげて。従業員が集まったら私たちと冒険者をしてもいいし、私たちの母と一緒に冒険者組合本部で働き続けてもいい。今日から新しい人生が始められるよ!」

「私に罰はないのですか?騙したんですよ!?」


 被害者なのに罰を求めてどうするの。これからは楽しまないと!


「演技が上手いから3歳児の私は騙されたけどお姉ちゃんは騙されてないよ。生き残るために頑張っただけじゃない。何も悪くないよ。人を食べないんでしょ。それならここで私たちと過ごすのが安全だと思う。だけど私たちは自由が好きだから決めるのはフィオナだよ。」

「一緒に住みたいです。1人は怖いです。冒険者組合本部で働きたいと思います。ありがとうございまず。ぐすっ…。」


「突然泣いたら皆に心配されるよ。それじゃあ、また後でね!」


念話終了。

◇◇◇


 私もお姉ちゃんみたいに人助けができるようになりたい。

 普通は見逃してしまいそうな被害者を助けてあげられるようになりたい。

思い込むのは危険です。

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