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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第27話 先生

≪加護:ブレンダさんに念話を繋いで≫

<かしこまりました>


◇◇◇

念話中。


「ディアだよ。突然だけど話しながら昼食を一緒にどうかなと思ってるんだ。予定は空いてるかな?それとお母さんも会いたいみたい。食事代はお母さんに払ってもらうから個室がある高級店に行こう。」

「冒険者組合本部が落ち着いたのね。予定は大丈夫だけれど、お母さんが私に会いたい理由は何かな?それと何で声が変わったの?」


 気づくの早すぎだよ。声は余り変わってないと思うんだけど凄い。

 記憶力がいいのかな。


「お母さんは興味があるだけだよ。私の過去を聞けば全て分かると思う。どうかな?」

「私も気になるしいいわよ。それじゃあ、5分後に来てね。」


「分かったよ。またねー!」


念話終了。

◇◇◇


 不思議な人だね。


「5分後に行くよ。声が変わったことにすぐ気づかれた。」

「そこまで変わっていないのに凄いわね。一度会っただけなのでしょ?」


 それだから余計に凄く感じる。


「そうなんだよ。半日一緒にいただけ。それにお姉ちゃんの力を知っても全く利用しなかった。それどころか親切のつもりでしようとしたことを説教して止められてる。帝都で一番安全なのはブレンダさん。」

「凄い人なのね。会うのが楽しみだわ。」


 お母さんを見て何を言うのかな。私はそれが楽しみだよ。


「面白い人だよ。お母さんは冒険者組合本部の所長をするでしょ。私たちも何か手伝う?」

「あなた達が受付したら男性が群がるわ。今度は女性冒険者が死ぬことになる。裏方仕事は十分足りているはずだから大丈夫よ。」


 男性が受付でもいいよね。受付に女性しかいなかったのは前所長の趣味だったのかな。


「男性が群がるのはお母さんの方でしょ。私たちが裏方やってもいいよ。」

「ディアは3歳児の感覚で綺麗になったと思っているだけでしょ。私は男性を寄せ付けない雰囲気が出せるけれど、あなたにはそれがないのよ。だから世間知らずのお嬢様にしか見えないわ。そういう雰囲気の出し方を覚えた方がいいわね。威圧でもいいけれど一般人をひれ伏せさせるのはやりすぎでしょ?」


 そういう雰囲気があるんだ。全く分からない。


「なるほど。それじゃあ、行こう。」

「ええ、行きましょう。」


≪加護:男性を寄せ付けない雰囲気を出せるようにしておいて。それと私とお母さんをブレンダさんの家の前に移動させて≫

<はぁ…、男性を寄せ付けない雰囲気を能力が出せるのですか?かしこまりました>


【お姉ちゃん、加護の反省が足りてないよ!】

(そうなんだ。一度綺麗にするか皆で検討してみるよ。)


 ブレンダさんの家を見ると懐かしく感じる。毎日色々ありすぎたからかな。


≪加護:不審人物でもいたの?いつもと違うことしてるでしょ≫

<クロアの試験です。能力の成長が足りないと言う人がいるみたいで確認作業中です>


 ドラゴンが増えたから試験してるのかも。被害が出てから止めても遅すぎるから。


「こんにちは。来ました!」

「すぐに出るよ。わぉ…、これは斬新な嫌がらせだわ。美女で私を挟んで笑いものにする作戦ね。なかなか成長したじゃない。特に胸がね!」


 斬新な発想だね。そんな嫌がらせがあるのかな。

 ブレンダさんは面白いね。見た目が変わったのに気になるのは胸の大きさなんだ。


≪加護:ブレンダさんを浄化して≫

<かしこまりました>


「面白いでしょ。早速行こう。」

「お風呂にも入っていないと思って綺麗にしたでしょ。その通りよ。どうせなら美女にして!」

「本当に面白い人なのね。あなたも劣っていないじゃない。それに私たちの姿は力がないと大変よ。本当に大変なのよ…。」


 お風呂に入ってないことを自信を持って言えるのが凄い。それとお母さんの言葉に重みがある。男性を寄せ付けない雰囲気が出せるようになるまで苦労したんだ。


「私が脅してる冒険者たちがお母さんに見惚れてたね。そのくらい面倒だよ。」

「飢えた冒険者たちに囲まれるのは無理だわ。美女にも苦労があるのね。個室のあるお店を知っているけれど、高級店で一度しか行ったことがないし、私はお金を払ってもいないのよ。いくらかかるのか分からないけれど、それでもいいの?」

「勿論いいわよ。お店の主になれるくらいのお金はあるから心配しないで。」


 お母さんが払ってくれるみたい。お金に興味ないと思っていたけど持ってるんだね。あの女は下らないことに使ってたと思うからお母さんの方が持ってそう。


「北区域まで行くんだね。次からはそこで食べよう。」

「私が知らないうちに変わっているわね。空き地がこれ程あるとは思わなかったわ。」

「空き地は全部ディアが買い占めたのよ。邸を建てる予定もないし放置しているわね。」


 売ろうかな…。ここの土地が欲しい人もいると思うし私が持っていても無駄だから。


「ま、待って!北区域の空き地を買い占められるの?住む世界が違いすぎるわよ。」

「ゆっくりお店で話そうよ。ブレンダさんなら理解してくれると思うから。」

「そうね。お店でゆっくり話しましょう。全て分かるはずよ。」


「ここよ。お店が残っていてよかったわ。」


 意外と歩いたけど自宅の隣だった。看板もないし周りにある邸との違いが分からない。私ではお店だと気づけないよ。


 建物に入ると黒で上下揃えた男性が立っていた。


「当店は予約制になっております。予約されておりますか?」

「一番高い部屋は空いていないの?ここに来るのは初めてだけれど、贔屓にしようと思っているの。隣に住んでいますからね。それでも駄目なのか確認してくださらないかしら?」


 高級店だと準備が大変なんだね。だけどお母さんは移動するつもりがない。今はお金持ちの雰囲気を出してるのかな?


「かしこまりました。確認してまいります。」


 男性は小走りで奥にいった。少し待つと戻ってきた。


「一番高い部屋は空いておりますので、そこでもよければ大丈夫だとのことです。」

「フフッ。可愛くて素直な子は好きよ。これでお菓子でも買ってちょうだい。」


 お母さんは男性の肩に手を回すと胸のポケットに白金貨を入れた。男性は胸のポケットを見て一瞬固まってからお母さんに頭を下げた。直接お金を手渡すのは下品なのかな?


「靴はこちらでお脱ぎください。それではごゆっくりお楽しみください。」

「ありがとう。楽しませてもらうわね。」


 見た目とお金で篭絡してる。奥に進むと着物を着ている女性が歩いてきた。


「当店の女将でございます。本日はご利用いただきありがとうございます。」

「予約制だと知らなくてごめんなさい。皆に迷惑をかけてしまったでしょ。これは迷惑料よ。受け取ってくださらないかしら。」


 女将さんは挨拶をすると丁寧に頭を下げた。


 その後にお母さんが袋を女将さんに渡した。袋口の隙間から白金貨が見えた。袋の中身が全部同じなら2000万リンはある。私が払うつもりだったけどお母さんもお金持ちだ。


 袋の中身を見て女将さんが軽く微笑んだ。上品な笑みで欲が見えない。お店の迷惑料として妥当な金額なのかな。


「お気遣いいただきありがとうございます。お客様はお隣にお住まいだと聞きました。空いている部屋を気になさらないのであればいつでもお越しください。」

「ありがとう。今日は友人と来ているのよ。量は普通でいいから最高の品をよろしくね。」


 お母さんは高級店に何度も来たことがありそう。慣れてる感じがする。


「そういう事でございますか。料理長に伝えておきます。コースでよろしかったでしょうか?」

「ブレンダさんはお酒飲むの?」

「は、はい。普段は葡萄酒です。」


 ブレンダさんが緊張してるけど3歳児の私は何も感じない。勉強すれば分かるようになるかな。


「料理に合うお酒を2人分お願い。お酒は大目で大丈夫よ。」

「かしこまりました。当店の最高の料理とお酒をご堪能ください。」


 お母さんの行動に余裕が感じられる。

 お店の中をそれなりに歩いたけど誰も見かけなかった。これは襖だね。


「こちらでございます。ごゆっくりとお過ごしください。」

「ええ、ありがとう。楽しませてもらうわ。」


 これが高級な雰囲気なんだ。床は畳だね。大きな知らない文字と木の枝と石が飾ってある。窓からは綺麗な色をした魚が泳いでる池が見える。


「何をしたの?ディアのお母さんが何をすればこういうことになるの?完全に常連扱いじゃない。」

「受付の男性に100万リンをさり気なく渡して女将さんには2000万リンを渡したと思う。」

「よく見ているわね。予約せずに急遽入店した迷惑料を払っただけよ。」


 本当はもっと色々考えてると思う。お母さんが対処するから見て覚えろという事だね。高級店は客も上品でいる必要があるという事だけは分かった。考えるよりも感じ取れるようにならないと駄目な気がする。お母さんが何も説明しないのはそれが理由だからかな?


「本題は料理とお酒が揃ってからにしよう。私が払うつもりだったのにお母さんもお金持ってたんだね。興味ないと思ってたよ。」

「あなたの100倍はあると思うわ。私にも色々とあるのよ。」

「何でディアも驚いていないの?凄く大金じゃない。蛇が高く売れたからお金持ってきたよ…。一応渡すね。」


 真面目な人だね。何も言わなければ気づかないのに。


「ありがとう。依頼主から受け取ったお金は大切に使いたいから。それ以外のお金は数えるのが面倒で放置してるけど最低でも100億リンは持ってるよ。」

「私は1兆リンは持ってるわよ。ブレンダさんは何も気にしないで楽しんで。」


 お母さんはどこかの国の守護竜でもしてたのかな。お金を無理やり奪うとは思えないから。


「ブレンダさんは錬金術で何か作ろうとしてるでしょ。援助しようか?お金は稼げる人に任せればいいんだよ。」

「流石にそれは駄目よ。詐欺かもしれないわよ?」

「お金を援助してもらえるのに断るの?面白い人ね。」


 本当に真面目な人だね。この人が変わる姿は見たくない。


「ブレンダさん、私はブレンダさんが何を作ろうとしてるのか知らないけど能力は知ってるんだよ。魔法とかそんな感じの能力ね。その能力が警告を出さない時点で問題なし。私は人の秘密を知るのはよくないと思って聞かないだけで既に知ってるという事だよ。」

「確かにディアは強いからね。そのくらいはできそう。それで今の強さはどれ程なの?」

「世界最強よ。娘は世界最強なの。」


 大切なことだから2回言ったのかな。お母さんは私がいなければ言わないと思うから大丈夫だけど噂で広まってほしくない。世界最強という肩書は悪人を多く集めてしまう気がする。

 ブレンダさんが停止してしまった。私の姿と世界最強が結びつかないみたいだね。


「本当だよ。私は世界最強。ブレンダさんは世界最強に脅されてみたい?」

「嘘でしょ?こんな美少女が世界最強とか…。本当なのかな?」

「本当よ。親の私より強いわ。冗談ではなく世界最強よ。初めてブレンダさんと会ったときは世界10位に入るくらいの強さだったけれど、今は世界最強を独走しているわ。誰も追いつけない強さね。」


 全部お姉ちゃんのお陰だよ。私の失敗をいつでも挽回できるようにしてくれてるから。


「具体的な力を聞かないとよく分からないわ。何かに例えて教えて。」

「そうだね…。例えば私が世界征服を考えたとするよ。今の私なら世界の端まで監視できる。そしていつでも誰でも殺せる。だからここに座ってるだけで世界にいる人は3人だけにすることができる。」

「確かに今のあなたなら倍以上の強さになっているわね。その程度は簡単でしょう。」


 全力他力本願で既に理解できない強さだったのに今の強さは正直分からない。これから実験が始まるから更に強くなる。

 お姉ちゃんはいつか誰かと戦うことを想定してると思う。それが誰か分からない。


「絶対に頷くしかない脅しじゃない。断ったらどうなるのかな?」

「脅しは冗談だよ。私たちは自由が好きだからね。だけどブレンダさんにとっても魅力的な提案だと思う。選択肢が3つあるよ。今の場所に住む。私たちの家の隣に住む、私たちと一緒に住む。隣に住むなら家は研究に適した建物を作るよ。ブレンダさんの希望通りにね。さあ、ブレンダさん。どれを選ぶのかな?」


「私に利点しかないわ。ディアの利点を教えて。」

「詳細な話をしてからじゃないと本当の理由が伝わらないよ。ブレンダさんがどんな答えを出すのか詳細を聞いてからにして。とりあえず私の利点を上げるよ。前提として私には人格が2つあってブレンダさんが会ったのはお姉ちゃんだよ。そして利点の1つ目、お姉ちゃんはブレンダさんと話すことから慣れた方がいい。2つ目、冒険者組合本部を通さずにブレンダさんと素材採取をしたい。3つ目、離れていても守れるけど怖い思いをすることがあるかもしれない。4つ目、ブレンダさんと仲良くなって私たちが国をつくったときにギルドの副会長を任せたい。5つ目、私の計画にブレンダさんの知識を加えたい。私も勉強するけどそれでも常識が足りないと思う。私に凄く利点があるでしょ。」


「お待ちしました。」


 私が話し終わるのを待ってたのかな?

 着物の女性がお酒と料理を運んできた。私はジュース。3歳児だから仕方ないね。


「さて、出会いを祝して乾杯!」

「乾杯!」


「ブレンダさん、今から詳細を説明するから酔う前に決断してね。」

「分かったわ。心して聞かなければならない話だと思う。」


◇◇◇

ブレンダさんに詳細説明中。


【お姉ちゃん、ブレンダさんに話したけど代わる?】

(多分倒れる。迷惑をかけてしまうからもう少し訓練した後にする。それとブレンダさんから渡されたお金だけは混ぜないでよ。)


【分かってる。大切に使うのでしょ。】

(その通り。分かっているならいいの。)


「お姉ちゃんは倒れて迷惑かけるからもう少し訓練してからにするって。」


 間違いなく倒れるんだね…。今の姿になっても過去と現在を切り分けることができないのだと思う。あの日々が鮮明に思い出せるに違いない。姿が変わっても自分が経験したことを忘れられるはずがない。そもそも拷問されてるときの姿が分からないのに別人だと思える訳が無い。


「私の計画とギルド副会長に誘っておいて隠し事はしたくないから話したけど大丈夫?お姉ちゃんがブレンダさんに死にかけた回数は負けないみたいな話をしてたから理由も話した。飲み込めないならお酒と一緒に飲んじゃって。決断するときに酔いが強いと判断したら醒ますからさ。」


 完全に手が止まってしまった。食事もお酒も楽しめてない。これでは駄目だよ…。


「単刀直入に聞くわ。ディアは何を手伝ってほしいの?」

「私の目的はお姉ちゃんを笑顔にしたいだけ。だからそれのお手伝い。」


「こちらのお母さんは大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。話すと更に重くなるけど聞く?」


「話せる範囲でいいから教えてほしいわ。」

「お母さん、いいかな?」

「ええ、いいわよ。」


◇◇◇

ブレンダさんに詳細説明中。


「壊れすぎている…。研究を仕事にしていて初めて理解したくないと思ったわ。考えても間違いなく理解できないね。ところで国をつくる理由は何かな?」

「お姉ちゃんを笑顔にするためだよ。」


「もしかして全部の目的が一緒なのかな?」

「そうだよ。お姉ちゃんが笑顔になればそれでいい。ついでに他の人も幸せにしてあげようと考えてるくらい。」


「よし!隣に引越しする!私の利点が遥かに大きいしクロアの力になってあげたいからね。一緒に同居するのは迷惑かけちゃうし私が死ぬ。」


 精神的に辛いという事だね。隣に引越してくれるだけで十分だよ。


≪加護:紙とペンを出して≫

<かしこまりました>


「流石ブレンダさん。広さと間取りとを何となくでいいから決めて。あと木の家か石の家かもね。すぐに作るから。お風呂に入るの嫌いならトイレに入ったら体も綺麗になるようにしようか?」

「素晴らしいじゃない。だけどトイレよりも台所の方がいいわ。何故か洗っていない食器が溜まるのよね。」


 何故か溜まってしまうなら仕方ないよ。綺麗にしてあげないと。


「それと北側を正面として左右のどちら側に作ってほしいのかも決めてね。北東区の中心だからどちら側でも表通りには面してないよ。目の前には冒険者組合本部で働く人たちの住む邸があるけどね。」

「そうだわ…、このあとエイベルの引越しを手伝ってあげないと。」

「居間に台所に素材置き場に研究室ね。浴室を作らないなんて攻めてるね。そんなにお風呂嫌いなの?」


 全く入る気がないとは思わなかった。汗をかかない体質なのかな?


「汗臭い女だと思ったわね?偶に体を拭いているわ。お風呂は水を温めないといけないでしょ。体を洗わないといけないでしょ。体を拭かないといけないでしょ。髪を乾かさないといけないでしょ。私はお風呂に入る以上に面倒なことを知らないわね。」


 凄い自身だね…。聞いていて驚いちゃうよ。


「ブレンダさんの熱い気持ちは分かったよ。私たちは人の気持ちを尊重したいと思ってるからその通りにするよ。全く話が変わるけどお金を払ってもいいから勉強できる場所ってないかな?」

「色々とあるけど質が悪すぎるよ。賢い教師は貴族が囲い込んでしまうから。何を学びたいの?」


 質が悪いのか…。なかなかうまくいかないね。


「一般常識を学びながらそこで知り合った人たちを通して色々な人と出会ってみたい。ドラゴンのことは嫌でも分かるから人間を知りたい。冒険者だと偏りすぎてると思うから普通の人がいいの。」

「ディアが南区域で勉強すると確実に犯罪組織に狙われるよ。3歳児で常識がないから綺麗になった程度に考えていると思うけれど、この国の皇女より美人だと思う。噂が広まれば確実に人攫い達から狙われる。すると誰が噂を流したのかが気になる。そしてたどり着くのが一緒に勉強していた人になるのよ。うーん…。誰にディアを紹介しても犯罪組織とぶつかる気がする。潰しても人が代わるだけだと思う。犯罪組織を全て潰して貧民街の人間を皆殺しにするなら…。駄目だね。安全だと分かれば求婚者たちに囲まれる。異性を遠ざけたとしても同性から妬まれる。恋人をとられたと勘違いして恨まれる。貴族と出会えば妾にしようとしてくる。人間にも色々な一面があるけれど、ディアの容姿では最低な一面を見てしまうことが多いよ。お母さんも無理だから何も言わないのですか?」


 お母さんには子育てした経験がないし500年も支配されてたから、厳しいよ。


「私は500年程支配されていたの。解放されたのが先日よ。そしてドラゴンには派閥というものがあるけれど、私が守っていた派閥はただの人喰いドラゴンの餌場になっていたわ。だから頼れると思っていた派閥の子も殺した。今の私には娘しかいないの。人間社会も500年あれば変わってしまう。知り合いも当然亡くなっている。だからディアが見たいものを見せることが私にはできないのよ。」


 ゴミ夫妻に500年支配されていただけでも酷いのに守っていた眷属は偽の人質だった。お母さんなら逃げるくらい簡単なのに、それを阻止するために仕組まれた罠。酷すぎる…。


「ディア、私は子育てをしたことがないから想像でしかないけれど、3歳児が周りの人の影響を受けるのは普通だよ。家族やその友人たちに囲まれて過ごす。4、5歳くらいから近所の子と一緒に遊んで影響を受ける。周りの影響を受けなくなるのは成人して色々な経験を積んだ結果でしかないのよ。影響を受ける人は死ぬまで影響を受け続ける。だけどディアとクロアはその時間を奪われた。クロアも間違えているよ。ディアを通して自分が経験できなかった日常を過ごしてほしいという思いは分かるけれど、それは不可能なの。何故なら見た目が16歳だから。16歳になってから出会うような人たちと3歳児が出会うから強く印象に残ってしまう。クロアとしては簡単なお願いをしたつもりだと思う。普通の日々を過ごしてほしいと。でもディアには無理だよ。それを奪われて今に至るのだから。ディアが冒険者は悪人ばかりだと影響を受けた。その状態で善人の冒険者を見たらどのように思うの?」

「善人の冒険者もいるじゃないと思う。」


「それでいいのよ。綺麗なものばかりを見ていても真っ直ぐ育たない。世間知らずの馬鹿になるだけ。だから決まりごとを作ればいい。人は直接殺さない。殺す相手はどのような人か調べるなどだね。ディアが影響を受けることを否定する方が性格が曲がる。普通を否定されているのだから。3歳児が勢いで行動することも普通。ただ勢いでできることが大きすぎるから決まりごとが必要なの。ディアが間違ったことをしたりしそうになったら叱ってあげるのがお母さんとクロアの役目だよ。ギルドに人間を入れるのかどうかなんて暇になってから考えればいいの。3歳児には善も悪も曖昧。だから叱られない限りは爆走。この世界はあなた達が善だから自分たちで考えるしかないわ。ディア、まずはクロアに確認して。」


【お姉ちゃん、ブレンダさんが爆走してるよ。】

(いいえ。私が間違っていたのよ。綺麗なものなんて見ていない私がディアに綺麗なものを見せようとしていた。影響を受けたらそれで固定されると決めつけていた。ディアが犯罪者になってしまうことを恐れて籠に入れてしまった。ディアのことを信じ切れていない証拠だね。全く駄目な姉だわ。ブレンダ先生に爆走の仕方を教えてもらって。世界最強の3歳児の爆走もブレンダ先生なら軽く止められるわ。)


「ブレンダ先生…。」

「はい、終了です!私が間違えていました。本当にすみませんでした。」


 お姉ちゃんから私を押し付けられると感じたんだ。素早い判断だね。


(ディア、ブレンダ大先生よ。敬称を間違えていたわ。)

【分かったよ。】


「間違えました。ブレンダ大先生…。」

「はーい、終了です!クロア怒ってるのー?許してくれないかなー?私が間違えていたからさ。ごめんなさい!」


 大先生も勘違いしてるね。お姉ちゃんは本気で反省してる。

 お姉ちゃんが私のことを頼める大人がブレンダ大先生しかいないんだよ。

ブレンダ大先生はお風呂が嫌いなだけです。

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