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世界は子を愛す  作者: 大介
第3章 実験の結末

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第132話 生命と創造主

 突然眠気から覚めた。

 咄嗟にお母さんを見ても普段通りに微笑んでいた。


 何も起きていないの?


 鼓動が早鐘を打ち始めた。

 お母さんに抱っこされているのに恐怖を感じる。


 原因を感じ取れない……。


 お母さんが私の耳元で「私は怖くないから落ち着きなさい」と囁いた。

 「お母さんが怖いのは説教のときだけだよ」と囁き返した。


 話し合いで何か起きる。

 お母さんが私の頭を撫でながらクローディアに視線を向けた。


 正解なんだね……。


「クローディア、敵を殲滅するために蘇ったのでしょ。早く片付けてきて。」

「――そうだね。お母さん、敵の拠点に飛ばしてよ。」


 クローディアがお母さんを乗っ取った言い訳でしかないけれど、この人の軽率な行動が元凶だから敵を殲滅するのは当然だと思う。

 クローディアはお祖母ちゃんに任せるつもりでいるので緊張感がまるでない。

 お母さんの記憶を見ているのに笑みを浮かべているのは人として歪んでいる。


 被害者の気持ちを思う素振りが欠片もないんだね……。

 無責任で他力本願で他責思考だから驚くことはないけれど。


 お母さんと同じ顔なのにクローディアが醜く見える。


「お母さんに泣き付かなければ殺されることが分かっているみたいで安心だよ。」

「馬鹿にしないで!お母さんの力を借りるなら敵の拠点に行かないわよ!」


 お母さんが無意味にクローディアを挑発するとは思えない。

 お祖母ちゃんの言動を引き出すためかな。


 私に思い浮かぶ目的は、お祖母ちゃんがクローディアを守る理由を探っている。若しくは守る理由に心当たりがあるので望む状況に誘導している。

 意外とクローディアを黙らせたいだけかもしれない。


 クローディアは通過点でしかないと思うけれど。


「ディア、それでは敵に勝てません。許せないからと敵に殺させるつもりはありません。」

「お母さん、クローディアを敵の拠点に飛ばしてあげて。これは娘の頼みだよ。」


 お母さんはクローディアの特別扱いを確認している気がする。

 クローディアの扱いを決められない理由はこれだから……。


 お祖母ちゃんは自分の子が殺され続けていることを知っているのに放置した。

 重大な目的のためだとしても納得できない……。


 お母さんなら自分の子を犠牲にすることなく目的を達成すると思う。

 お祖母ちゃんの意識が私に向かないので思考把握されていない。


 お母さんに頭をコツンと叩かれた。

 隠してくれているんだね……。


 2人は同格だと感じているし、創造主に世界の力を使われてもお母さんだけなら対処できると思っていたけれど、お母さんも世界の力と類似する力が使える。

 本当に近くて遠い存在だね……。

 お母さんを贔屓して同格に感じているわけではないみたい。


「それはできません。ディアが殺されます。」

「お母さん、敵を殲滅してくるから私とクローディアを敵の拠点に飛ばして。敵の拠点で何か起きてもお母さんに責任はないよ。それにクローディアが心配なら守れるでしょ。」


 お祖母ちゃんから嫌な気配を感じる……。


「一々癇に障る言い方をするわね!お母さん、早く敵の拠点に飛ばして!」

「リア、探る必要はありません。終わらせてください。」


 最悪な言葉だよ……。

 歪んでいる娘を庇う親も歪んでいるね。


 お母さんがクローディアを封印した。

 敵対するのを避けたの……?


 創造主がクローディアを使ってお母さんを試した。

 満足している笑みを早くやめろ!


 イライラする……。


 お母さんが配慮したのは絶対に理由がある。

 早く感情を抑えよう。


 本当にこいつは……。


 お母さんを冷笑するな!

 格付けが終わったことを伝えるためか!?


 お前は肩書きだけだろ!?

 お母さんの方が特別な存在だよ!


 お母さんを見下したことが許せない!

 お母さんがこいつに利用される姿を見たくない!


 お母さんが私の額に手を当てて「冷静になりなさい」と囁いた。

 ふぅ、ひんやりとしていて気持ちがいい……。


 お母さんが私の額をパチンと叩いて「感情制御を忘れたことは反省しなさい。うまくできないときに努力するべきでしょ」と囁いた。

 「はい。分かりました」と囁き返した。


「アンジェが気持ちよさそうに眠っているけれど、どのような気持ちで抱っこしっているの?」

「愛おしいですね。私の娘であり家族です。」


 お母さんを見下した直後によく言える。

 私たちを見下していて疑われると全く思っていない。


 アンジェ叔母さんが自然に眠っているのはあり得ない。

 家族の長としてお母さんを利用するつもりだね……。


 何がしたいのか分からないけれど。


「分かったよ。ジェニー、本気で集中しなさい。感情制御を徹底しなさい。」

「はい。分かりました。」


 お母さんが未だかつて見たことがない真剣な表情をしている。

 それでも感情が漏れていないし何も感じ取れない。


 お母さんはあらゆる能力が世界一だと思う。

 追いかけるのも世界一大変だよ。


「今から創造主が何をしたのか話すけれど、問題ないよね?」

「勿論です。間違いは訂正します。」


 感情制御を徹底しなければ、お母さんの話を最後まで聞くことができないのだと思う。

 絶対に同じ失敗を繰り返さない……。


「それでは話すよ。魔力と魔法は種族差をなくすために用意した。」

「その通りです。強い種族に生まれただけで傲慢になる人は見ていられません。」


 争いが激しくなるけれど、支配者と奴隷が決められた世界より断然いい。


「ジェニー、それは違うよ。魔法は覚えられないし魔力は見えない。それを利用して創造主が世界を支配する種族を決めて魔法を教えた。目的は世界を滅ぼさない種族を探すためだよ。」

「その通りです。繁栄させることができても、滅ぼさずに維持できた種族はいません。」


 普通は魔力と魔法の存在を知ることさえできない。

 魔力と魔法を扱える人間が世界を支配している。


 世界を支配可能な種族の中で人間は最弱。

 平等に魔法が使えるなら人間は世界を支配できない。


 魔力と魔法と種族と人間が世界を支配したことを知っていれば推測できる。

 私は当たり前に疑問を持てなかった……。


 お母さんは創造主の視点で世界を見ていると思う。


 創造主が命を軽視しすぎている……。

 生命に関与しているので余計に酷く感じる。


「世界の力は研究できないし創造主の力を借りなければ使えない。それなのに研究していた人間がいたけれど、何を研究していたの?その研究に世界中の国々が支援していたからね。」

「世界の力はその通りです。魔法を研究していました。人間の欲深さは異常ですね。」


 胸が痛い……。


 元凶はお前だったのか!

 感情制御しないと…。


 殺したい!

 感情を抑えろ!


 今すぐ殺したい!

 もっと強く感情を抑えろ!


 殺せなくて――。


 お母さんが私の視界を手で覆った。

 感情が静まっていく……。


 お母さんが私の頭を撫でた。

 創造主が遠くにいるように感じる。


 全然駄目だね……。

 同じ失敗を繰り返してしまった。


 お母さんが私の頭を優しく撫でてくれる。

 自分の実力を知ることができたよ……。


 本気になればできると思っていたことに対する説教だね。


 お母さんのお陰で殺されずに様々な経験ができる。

 こんな世界でも私は恵まれていると思う。


「クローディアが自殺した後に世界を滅ぼして、疑似精神が生命を管理する世界を創造した。太陽の核に貼り付けられていた疑似精神は親によく似ていた。人体実験を楽しんでいたからね。」

「断片的な情報から推測できていますが、創造主の役目に生命の管理はありません。この私が怠けた疑似精神と似ているですか……。目的が見えませんが下らない挑発です。」


 創造主の声が遠くに聞こえるし落ち着けている。


 単一種族に世界を支配させた。

 創造主の子を含めた単一種族に世界を支配させた。

 疑似精神に世界を支配させた。


 全て失敗しているし先程まで犠牲が出ていた。

 創造主が無能すぎる。


「創造主の復讐が世界で最も醜悪な行為だよ。」

「復讐ではなく天の裁きです。ディアはとても愛情深い子です。全ての愛情を娘に与えていたにも関わらず、娘は母親の死を望みました。世界で最も醜悪な娘です。ディアは自分の死が娘の幸せになると本気で思い死を選びました……。許せません。」


 反抗期の娘の言葉を世界から逃げる口実にしたのかな。

 娘を置いて母親が自殺したのは最低だよ。


 全て知っていて復讐だけする創造主が理解できない。

 人体実験する口実にしたと言われても違和感がない。


「素体だけが同じ別人を拷問するのが天の裁きね……。人体実験と拷問のどちらが主目的か分からないし、太陽の疑似精神の遊びが混ざって混沌としている。人体実験を主動していた研究員もクリスティーナだから、クリスティーナが計画した人体実験をクリスティーナがクリスティーナにする。腐敗した親子の協演は見るに堪えない。創造主の価値観だとクリスティーナの名前をクローディアに変えたことが重要なの?」


 精神力の強いクロアをクリスが乗っ取れたのは、クリスの素体もクリスティーナだから。

 育った環境と記憶と精神が違うのだから別人だよ。


 クリスティーナが名前と姿を変えて様々な立場で登場していたけれど、素体がクリスティーナと断言できるのはクロアかお母さんと直接関与した人だけ。

 創造主の復讐が拷問で、太陽の疑似精神の遊びが拷問と人体実験だから区別できないし、クリスと研究仲間の人体実験を放置していた期間もあるので、混沌としすぎている。


 魔法を管理していた疑似精神の記憶が1万年分あった。

 最終実験でクロアが活動していた期間は3ヵ月程。


 最低でもクロアは4万回殺されている。

 クリスティーナの素体が殺された回数は創造主にしか分からない。


 執拗すぎて気持ち悪い世界一醜悪な復讐だよ。


 分身のお母さんが作られる直前から実験を始めることができたのに、それをしなかった理由が明らかにされていない。

 創造主の目的がお母さんに世界を管理させることだと分かるけれど、クロアから実験を始めることで何が変わるのか分からない。


「母親を自殺させた業を償わせたのです。母親の名前をその身に刻むことが罰です。創造主である私が別人を対象にすることはありません。年齢、姿、記憶、精神、心、何か違いがあるとしても世界が記録する個体番号は同じです。当人を加工しているのです。下らない挑発を続けると後悔しますよ?」


 創造主が世界に合わせたように聞こえた。

 世界の方が立場が上なら創造主の役目が決まっていてもおかしくない。


 創造主は世界の中を自由に創造できる。

 創造に使うのは世界の力だから間違っていないかもしれない。


 但し、世界に心があれば創造主の行為を許すと思えない。


 退屈な世界を賑やかにしたくて創造主が生み出された。

 そのとき世界は心を失った。


 凄惨な世界を終わらせたくて創造主を倒す存在が生み出された。

 そのとき世界は心を失った。


 創造主が弱く生み出されたとは思えないから互角の戦いになる可能性が高い。

 実際に戦っていたとしても創造主が勝っている。


 凄惨な世界が続いているので創造主を倒せる存在を生み出したいけれど、同じ方法で生み出しても同じ結果になる可能性が高い。

 実験を逆手にとり世界は確実に生き延びる生命に心を与えた。

 その心が世界の力を使う鍵となる。


 私がお母さんを世界だと言ったときに創造主が事実か確認した。

 私を利用して何度も聞いたのはそのため。


 過去に戦っているなら気になって当然だね。


 お母さんが全く気にしていないし記録を見ても特別な力はない。

 創造主は自分の記録がないので比較はできないけれど。


 お母さんの気配が残っていたクローディアが「存在意義と力の使い方を思い出した」と言ったけれど、クローディアは創造主の娘で世界の力を借りることができることを思い出した。

 お母さんは創造主を消滅させる存在で世界の力が使えることを思い出した。


 落ち着いていると想像力が豊かになる。

 お母さん、正解かな?


 額を指でパチンと弾かれた。

 肝心な答えを確認していては成長できないね。


「創造主は太陽の遊びでリアの能力が上がっていることに気づいた。生命を管理するためには高い能力が必要だと考えて、クロアとリアの経験を足し続けて出来上がったのが私だね。ジェニーに多種族国家を望んでいると思い込ませれば、私の意思で生命を管理する。事実が挑発に聞こえるのは無能だからだよ。お前と会話した――。」


 お母さんが右手を前に突き出したらバチッと静電気のような音がした。

 右手の線上に私の頭があるから狙われたのは私だね。


「なっ!何をしたのですか!?」


 創造主が驚いている。

 お母さんは世界の力を使わずに攻撃を消滅させたのかな。


 お母さんが私の頭をゆっくりと撫でた。

 いつもの感覚に戻っていく……。


「ジェニー、一緒に死にたいなら私の精神に入りなさい!」

「はい!」


 勝率は決して高くないからね……。


 仮想体を作り肉体を魔力に変換して取り込み、お母さんの精神に入ると真っ白な部屋の天井から落とされた。

 部屋には大きな黒色のソファが1台置いてあり、仮想体のお母さんが座っていたので私はお母さんの膝の上に座った。


 正面の壁にはお母さんを睨む創造主が映されている。

 何もできない弱い自分が悔しい……。


「お母さんが部屋を作ったの?」

「そうだよ。それにジェニーの話し相手にもなるよ。」


 私がお母さんの弱点だからね……。

 本気で戦うために私の保護を完璧にしておきたいのだと思う。


「ジェニー、勝てると思う?」

「絶対に勝つよ!」


 お母さんが私の頭を撫でながらフフッと声に出して笑った。

 戦う相手が最上位の存在なのに緊張や気負いを全く感じなかった。


「怖くないの?創造主はお母さんを諦めないよ……。」

「ジェニーがいれば怖くないよ。」


 私もお母さんがいれば怖くないよ。


 お母さんの経験の一つ一つがクロアとリアの命。

 様々な状況で理不尽に殺された経験……。


 今から戦うのは殺された命が最強まで押し上げた生命。

 私の大好きなお母さんだ!


 創造主、明日も生命を見下していられるのかな。

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