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世界は子を愛す  作者: 大介
第3章 実験の結末

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第127話 叱咤

 椅子に1人で座っているのが寂しいよ……。

 アンジェ叔母さんは目を閉じて情報を整理しているみたいで話し掛けられない。


 はぁ、なんでお母さんの役に立てないのかな……。


 お母さんには思考誘導が効かない桁違いに強い精神力があるのに、敵意のないアンジェ叔母さんを殺したことであれ程までに消耗した。

 最初からこの日のためにアンジェ叔母さんを思考誘導していた敵の醜悪さには反吐が出る。

 追い詰められていくお母さんを見ていることしかできなかったけれど……。


 醜悪な疑似精神の生みの親はより醜悪なことだけは分かったよ。


 お母さんは記録を使って回復する用意が必ずある。

 アンジェ叔母さんを殺したことを重く受け止めて睡眠で回復することにしたのだと思う。

 睡眠を選択した理由は正体不明の仮想体の存在が大きい。

 元気な私は確信していないのにお母さんは確信している。


 お母さんとの差を感じてばかりいるね……。


 お母さんが私を誰かに任せるのはあり得ないと思っていた。

 だけど正体不明の仮想体はお母さんが私を任せてもいいと思える存在。

 お母さんを最優先にする存在なのは間違いない。

 だからお母さんの最優先である私を守ってくれると確信した。


 根拠は何もないけれど、世界の力の自我だと思っている。


 アンジェ叔母さんが今の状態で自宅にいるのも、お母さんを最優先にした結果だと思う。お母さんの本心を知っていたとしても、お母さんの意思を変えるためには諦めるのを待つしかない……。

 正体不明の仮想体はアンジェ叔母さんを殺すことを諦めたお母さんがアンジェ叔母さんと念話しているときに、敵が送り込むために生み出していた残りのアンジェ叔母さんを一掃している。


 結界内の魔力器に満たされていた白魔力の消費量を考えると100万人は軽く消滅させられる。

 敵は狂気に染まっているとしか思えない。


 命を道具にすることが許せない!


 アンジェ叔母さんが目を開けて真面目な表情で私を見ている。

 聞きたいことがあるのかな?


「ジェニー、今戦っている敵は世界の核が使えるよね?」


 アンジェ叔母さんが知っている情報で世界の核を使える存在だと思える敵は、私たちの姿を変えた疑似精神だけ。


「そうだよ。私たちの姿を変えた存在が敵だと思っているの?」

「あの程度ならリアが瞬殺したでしょ。敵は全ての元凶だと思っているけれど、違うかな?」


 お母さんが苦戦する敵は他にいないと思っているね。

 これがお母さんの大好きなアンジェ叔母さん。


 私の記憶にいるアンジェとは全然違うね。


「そうだと思うけれど、敵の正体と居場所が分からないんだよ。だから違うかもしれない。学校で暮らしていたのにそこまで分かるんだね。――あっ!記憶の空白が気になるよね。アンジェ叔母さんの記憶と今日は同日で時刻が違うだけだよ。」


 相当驚いているね。

 これが普通の反応だと思うけれど。


「約3時間で色々ありすぎだよ。ところでジェニーは安全確保できる?」


 アンジェ叔母さんは敵について何も知らないので仕方ないと思う。

 安全に伝える方法はあるのかな……?


「私は安全な状態を知らないよ。アンジェ叔母さんは確認したいことがあるんだよね?お母さんに追いつかないと疑問が増え続けるよ。それなのにお母さんだけしか知り得ない情報はないからね。――強くなると言い訳もできないよ……。私たちはお母さんに休憩を勧めたけれど、その先を考えてみた?」


 敵の攻撃が始まろうとアンジェ叔母さんが更に送り込まれようと私にはどうでもよかった。

 一刻も早くお母さんが元気になってほしいから。


 勝利に繋がる作戦なら我慢するけれど。


 仮に作戦通りにアンジェ叔母さんを殺せたとしても、醜悪な敵は理由がなくてもお母さんの身近にいる人を生み出して様々な形で利用してくる。

 今回のことでお母さんも気づいたと思う。

 敵が生み出した大切な人の死と向き合えば心が壊れる。


 敵が同じことをしてきたら、追い詰められたお母さんを見たくないから私が殲滅する。

 お母さんの気持ちを無視することになっても構わないよ。


 アンジェ叔母さんの表情と雰囲気が重くなったので気づいたね。

 お母さんの作戦を潰したことに後悔している。


「対策済みだから気にしなくても大丈夫だよ。それにアンジェ叔母さんはお母さんが刀で一人ずつ殺していく光景が見えなかったでしょ。結局はお母さんの自己満足。次があれば時間の無駄だから私が殲滅するよ。」


 お母さんは転移中に実体化して刀で首を切断した。

 正体不明の仮想体は首が切断された瞬間に頭と体を魔力に変えていた。


 魔法を手足のように使う姿を見て、正体不明の仮想体は世界の力の自我だと思った。

 私には自信も足りない……。


「全く見えていないよ。リアが高速飛行していたの?」

「転移中に実体化していたよ。今のアンジェ叔母さんなら見えるよ。」


 何しているの!?

 仮想体が実体で来たらお母さんを裏切っているように見えるでしょ。

 それにアンジェ叔母さんが混乱しているじゃない。


 先程まで仮想体だった存在が私を抱っこして椅子に座った。


 あれ、なんでだろう……?

 お母さんではないけれど、とても似た雰囲気を感じる。


「今は安全だよ。敵の行動は予想できないから気になることがあれば今聞いてね。」


 安全な理由を言わないのは私たちに考えさせるため?

 世界の力と結界内の余剰魔力を使えば太陽の核を消せる気がする。


「太陽の核を消すことができたとしても、太陽の核が太陽にしかないとは限らないよ。敵が太陽の星魔力を保存していたら複製した太陽の核を動かせる。だから今なの?」


 頭をポンポンと叩かれた……。

 私の考えが足りないという事かな?


「太陽の核が星魔力を使い世界の核より広範囲を記録できるなら2つの核の違いは何かな?」


 記録できる範囲が違うことが一番の違いと言いたいけれど、何か引っ掛かる。


 ――そうだ!

 星の大きさで世界の核が記録する範囲は違う。

 世界の核は記録する範囲を変えることができる。


 太陽の能力と世界の能力を得た経験が邪魔だね。


「2つの核は同じ。太陽の核を消した理由は太陽以外で記録させるため。目的は敵の居場所を見つけるためでしょ。とりあえず敵についてアンジェ叔母さんに説明した方がいいよ。」

「正解ではあるけれど、足りないよ。さて、今から説明するけれど、絶望したら駄目だよ。」


 お母さんの作戦を当てることができるとは思っていないよ。


 アンジェ叔母さんに説明すると言わなかったのは私の知らないこともあるから?

 結界内の敵を殲滅したところから話してくれるんだね。


 絶望的な状況だよ……。

 なんで結界内の敵を殲滅できたの?

 どうして敵の攻撃に耐えられる結界を張れたの?


 急に敵対したお母さんを責めた私は本当に馬鹿だね。

 私の心を守るためだとは思わなかったよ……。


 お母さんが一人で戦っていることがよく分かる。

 本当に情けなくて悲しい……。


「絶望していないよね?せっかくだから今のリアが考えている世界について話すよ。」


 自分が生きている世界を疑って否定することは難しいと思う。

 お母さんの推測を聞くと納得できるけれど……。


 世界の核と魂は生命を管理するのに都合がよすぎると思う。

 生命が誕生するか分からないのに用意されていることがおかしい。

 だから世界の核と魂は人工物。

 人工物の魂を宿すように今の生命は書き換えられている。


 ここまでは想像できる。


 本物の魂は存在していて、それが分身に個性を与える。


 お母さんには何が見えているの?


「自己紹介しないとね。私はリアの精神に宿っている力に芽生えた自我だけれど、リアに似ているでしょ。今朝、自我に芽生えたときにリアを守りたいと思ったし、私もリアだと思っているよ。だけどリアが2人いると混乱するから、アリア、イリア、ウリア、エリア、オリア、好きな名前を選んで。それと私は力を取り出せないよ。リアの精神と力が重なっているからね。」


 自分から教えてくれるとは思わなかったよ。

 お母さんが敵対を覚悟したときに自我が芽生えたのだと思う。


 なんで私の心は弱いのかな……?


「アンジェ叔母さんが名前を決めてよ。私はお祖母ちゃんと呼ぶから。」

「ジェニーのお祖母ちゃんだとリアと私がお母さんと呼ぶことになるけれど、それはリアと相談して決めるよ。名前はイリアね。イリアの話を聞いてリアとの差を痛感しているけれど、目的は何かな?」


 アンジェ叔母さんも私と一緒でお母さんとの差に絶望しそうなのかな……?

 お母さんを追いかけているつもりでいたのに違う道を走っている気がするよ。


「リアが命懸けで戦っているのにリアに追いつくことを考えている2人を見つけたからだよ。当たり前のことを言うけれど、今は敵について考えるべきでしょ。敵と戦うつもりがあるなら敵について考えなさい。戦うつもりがなければリアの精神に隠れていなさい。さあ、今すぐ決断しなさい!」


 怒られて当然だよ……。

 お母さんに追いつきたいとか役に立ちたいとか馬鹿みたい。


 誰でも分かることだね……。

 何も考えていないから何もできない。

 お母さんが命懸けで守ってくれているのに最低だよ。


「戦うに決まっているでしょ!」

「私も戦うよ!」

「それならリアの弱点を考えてみなさい。」


 お母さんに弱点があるの?


 なるほどね……。

 いつもならお母さんにできないことはどうしようもないと考える。

 そんな考え方で役に立てるはずがない。


 お祖母ちゃんはお母さんの弱点に気づいている。


 敵はアンジェ叔母さんの思考誘導が解けてすぐにアンジェ叔母さんを送り込んできた。

 一番最初に個性を得たお母さんの精神にアンジェ叔母さんはいたのかな?

 普通に考えればいないよね……。


 実験は繰り返されていて今もまだ続いている可能性がある。

 あ母さんが個性を得てすぐに記録で生み出したお母さんと入れ換えているかもしれない。


 全て同じお母さんに攻撃をしたらお母さんは同じ方法で防ぐと思う。

 お母さんは基本的に最善を選択するから……。


 敵が確認していたとすれば、結界の構成とアンジェ叔母さんに対処する方法で、今のお母さんと過去のお母さんを比較できる。

 多少違っていてもお母さんの最善が同じだと分かれば充分。

 敵の目的は分からないけれど、今考える必要はない。


「お祖母ちゃんが私たちに同じことを言っている可能性もあるし、私たちがお母さんの作戦を補強できない可能性もある。お祖母ちゃんはお母さんが特別だと思っているでしょ。敵を潰す可能性を上げるためなの?」


 お祖母ちゃんは私の頭をポンポン叩くのが好きなのかな。

 落ち着くから別にいいけれどね。


「思考誘導されて敵の指示に従う2人。問題が起きてもリアの作戦で動く2人。敵は2人に興味がない。リアは特別だと思っているけれど、赤ちゃんが泣き続けていると私が集中できない。リアに追いつく方法を黙って考えていたとしても大声で泣き喚ているのと同じだよ。つまり私が集中できる環境にしたかっただけ。赤ちゃんの動きは予想できないから役に立つかもしれないけれどね。」


 集中できる環境にするためというのは本音だね。

 赤ちゃんの活躍も期待していない。


 これまでの私たちを見れば当然のことだと思う。


「アンジェ叔母さん、赤ちゃん扱いされて期待もされていないよ。それにお母さんの作戦を邪魔したら黙らされると思う。やる気になった?」

「生まれたばかりの赤ちゃんの言葉とは思えないね。私たちの本気は誰も知らない可能性が高いし、リアの精神に隠れて補強できれば敵も気づかない。本気で暴れる赤ちゃんの力を教えてあげないとね。」


 アンジェ叔母さん以外は赤ちゃんだよ。

 成人していた過去は別人で、今は生まれ変わった赤ちゃんなのかな?


 本気で暴れるアンジェ叔母さんは見てみたい。

 赤ちゃん対大人の戦いかな?


「思考誘導が解けたアンジェのことを忘れているでしょ。」

「赤ちゃんがそんなことを覚えているはずがないでしょ。ねぇ、お母さん。」

「はぁ、もう泣き喚いているよ……。」


 お母さんと相談する前にお祖母ちゃん(イリア)をお母さんと呼んでいるよ。

 それがアンジェ叔母さんの答えだよね。

イリアの予定通りです。

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