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世界は子を愛す  作者: 大介
第3章 実験の結末

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第124話 世界崩壊

<終わったよ。全員解放していい?>

≪疑似核に結界内の生命の情報を記録しておいて。それと全ての疑似核を精神に入れて≫


<終わったよ。解放していい?>

≪いいよ。お疲れ様≫


 仮想体の記憶が流れ込んでくる。

 考えることは増えたけれど、問題は起きていない。


≪念話≫


「アンジェ、12時になったら子供の世話は分身に任せてお母さんと一緒に自宅に来て。今回の敵は私と同程度の力があると思う。」

「まだ敵がいたんだね……。勝てる見込みはあるの?」


 気になって当然だね。


「敵がこちらを見下しているか私の予想より弱ければ勝てるかもしれない。」

「絶望的な状況だね……。12時まで落ち着いて過ごすよ。」


≪念話終了≫


 アンジェと念話が繋がったから世界の核を消しても世界の力は使えている。

 絶望的なのは変わらないけれど。


 勝率を少しでも上げるために世界の力について考えよう。


 世界の核と繋がっていれば魂を見ることができた。

 太陽の核と繋がっていれば星魔力を見ることができた。


 体の違いは関係ない。

 ――体を作るときに使われた魔力が違っていても見えない。


 仮想体だから見えたわけではない。

 ――クリスティーナと太陽に行ったときに星魔力は見えなかった。

 ――世界の核の中でジェニーに蘇らせてもらったときに魂は見えなかった。


 過去の記憶を確認しても見えていない。

 ――洗脳や思考誘導で視界に入るものを消すことはできない。


「ジェニー、起きなさい。」


 ジェニーの背中を軽く叩いた。


「なにー?」


 ジェニーは眠たそうに目を擦りながら私を見ている。

 記憶の違和感に気づいたのか目を見開いた……。


「色々とあったけれど、落ち着いて私の言う通りにして。全ての元凶だと思われる敵と戦うことになりそうだから世界の力を確認しておきたいの。今すぐ思考把握をやめなさい。」

「――やめたよ。確認が終わったら私の質問に答えてよ!」


 過去と現在の明確な違いは2点。

 ・魂と星魔力を実際に見たことがある。

 ・見えて当然だと思っている。


 実際に見た記憶が必要であってほしいけれど……。


≪結界≫

世界の力を防ぐ


 結界を張ることができない。

 これは厳しいね……。


「確認が終わったらね。さて、ここには白色の魔力がある。見えると信じてみて。」

「――見えるよ。お母さんは新しい魔力を作ったんだね!」


 自身の記憶になくても見ることができる。


「白色の魔力を作ってみて。そのときに使った魔法式を残しておいて。」

「作れちゃった。――通常の魔力と星魔力を混ぜているんだね……。」


 見えている白魔力を解析して作り方まで知ることができる。

 ジェニーも世界の力が危険だと気づいたね。


 この力は諸刃の剣。


 リオリナの性格を歪めた原因は私だね……。

 他にも影響を与えてしまった人はいると思う。


「私の体を作るために使った白魔力の作り方を世界の力で知ることができるか試して。」

「お母さんの体を解析しても使われた魔力までは分からないよ。」


「知っているに決まっているでしょ。だから試してと言っているの。」

「はぁ、確認したくないと思ったのは初めてだよ。――通常の魔力と星魔力を混ぜて圧縮したんだね……。お母さんの記憶を見なければ分からないから世界の力に隠し事はできないのかな?」


 敵が居場所だけでなく姿まで隠す理由がよく分かる。


「結界で防ぐこともできなかったから隠し事は不可能だと思っておいた方がいいね。それでは何が起きていて何をしたか話すよ。心の準備はできているの?」

「大丈夫だよ。全部話して!」


 ――事実だと確認できていることだけを話した。


 時計を見ると11時を少し過ぎていた。


「ジェニーは何も悪くないよ。敵はいつでも私たちを殺せたし今でも殺せるかもしれない。それと残る疑問には予想と推測でしか答えられない。それでも聞きたいことはある?」

「クローディアの最終実験という茶番は何のためにしていたの?お母さんが個性を得る日から始めることができたはずだよ。」


 ジェニーの頭を優しく撫でる……。

 頑張って責任を感じていない振りをしているから。


「クロアが世界の力を使っていれば意味があるよ。私が得た力をクロアの精神と繋げたけれど、使うためには生命力を代償とした。その理由を見つけるためにクリスティーナの実験を利用した。この世界ではクロアの意思で使わせていたけれど、別の世界では違う方法を試していた。私を洗脳して使わせたかったけれど、問題が起きた。だけど私が使っているところも見たいので太陽の核に貼り付けた疑似精神と戦わせていた。もしかしたらと思うでしょ?」


 敵が遊んでいるかもしれないけれど……。


「敵が世界の力を使えなければいいけれど……。敵は何をしてくるかな?」

「この世界を滅ぼすと思う。敵が私より強ければ全滅。同程度なら結界内だけは守れる。だからジェニーが気にする必要は何もないよ。」


 ジェニーが生命を自動で生み出す仕組みを作ったときに、敵が用意した魔石も組み込んでいる。そのため生み出された生命は10日後に爆発する。

 それ以外にも生命の死に直結することをしている。


 だけどジェニーが原因で死ぬ生命はいない。

 私の意思で殺すから。


「お母さんらしくないよ!何で守らないの?守れないの?」

「絶対に守れない。この世界を白魔力で索敵して敵の仮想体を殲滅できたとしても、太陽が生み出す星魔力を使えなければ世界を包み込む結界を維持できない。ここの結界は縮小して維持できるようにしてあるけれど、それでも私たちの動きが制限される。守りながら戦えるほど私たちは強くないよ。」


 敵の仮想体を殲滅して結界で世界を包み生命の爆発を阻止するには魔力が足りない。

 それに生命を助けようと動く私たちを敵が黙って見ているとは思えない。

 

 敵が攻撃を始める合図にしていたらジェニーの心に負荷が掛かる。

 何一つ悪くないジェニーが責任を感じる必要はない。


「お母さんなら勝てると確信できるまで敵対するのを避けることができたでしょ。何で急に敵対したの?」

「核を自在に扱える敵からすれば私たちの死は大した問題ではないよ。それなのに敵対しなければ殺されないと断言できる?本心ではどうしようもないと分かっているでしょ。」


 ジェニーが思考誘導されているのを見て見ぬ振りはできない。

 それに対処が遅れていたらジェニーの心が壊されるところだった。


「そうだけどさ……。私がお母さんの精神に戻れば自由に動けるでしょ。私ならお母さんを補佐できる。自宅でお母さんが戦って守ることが前提の話し合いなんてする意味ないよ。お母さんがいれば結界内は安心で安全という考えが大嫌い。」


 それだと批判している相手と同じだよ。


「私が自由に動くのと私に全て任せるのは言葉が違うだけで私のすることは変わらないよ。それともジェニーが作戦を考えてくれるの?私のために怒ってくれているけれど、ジェニーは皆と違うよね?」

「私は自分勝手な要望を押し付けたりしない。それにお母さんを補佐するから全然違うよ。」


 意固地にさせてしまったね……。

 確かにジェニーは皆と違うけれど。


「私の自由を侵害できる人がここにいるの?それに適切な補佐をジェニーの判断でしてくれるの?私の視点で考えなさい。皆と違うと言える?」

「違うよ!私だけがお母さんの自由を奪える。私の要望は実現可能か検討してくれる。私の命は最優先で守ってくれる。だから私だけは絶対に違う!」


 頬を膨らませて怒りながら甘えてくるなんて、可愛すぎる。

 反則だよね……。


「どうしてほしいのか娘の立場で言ってみなさい。」

「娘としてお母さんの精神に戻る。戦うなら手伝う。私だけ生き残るのは嫌だ。」


 繰り返されたとしても今の私と次の私は違う。

 勘違いは二度としない……。


 ジェニーは温もりを残して私の精神に移動した。


≪仮想体を作ろうか?≫

<お母さんの精神は落ち着くから大丈夫だよ>


≪分かったよ。それと私の魔力器をなるべく満たしておいて≫

<任せてよ!>


 時計を見ると11時30分。

 脱衣所で普段着に着替えて外に出て屋根の上に座った。


 この世界の結界外の生命を魔力に変換。

 結界外の魔力を結界に吸収させる。


 ――予想通りだけれど、対処が早すぎる。


 見上げると色とりどりの光る雨が結界に当たり消えていく。

 結界内に魔力は増えていくけれど、空が消えた。


 ――世界が崩壊した。


<お母さん、皆が宇宙を見たら恐怖するよ。幻影で隠さないの?>

≪幻影で隠しているよ。私たちは外が見えた方がいいでしょ≫


<対策済みなんだね。敵は遊んでいるの?それとも何か目的があるの?>

≪私を挑発して遊んでいるよ≫


 「結界内を魔力で満たしてあげたから出てこい」とでも言いたいのか?

 それとも私の結界を揺らすこともできないほど弱いのか?


<お母さんを挑発するなんて自殺と同じだよ。皆に説明してから殺しにいくの?>

≪私は短気な殺人鬼なの?ジェニーに挑発されている気がするよ≫


<死神に殺してくださいと頼むほど馬鹿じゃないよ!>


 愛娘の言葉が酷い!

ジェニーのためになら平気で死神になります。

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