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世界は子を愛す  作者: 大介
第3章 実験の結末

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第122話 後始末 後編

 太陽で後始末を終えてから自宅に帰り、アンジェとお母さんの体に問題がないかジェニーに確認してもらった。そのあと太陽の核と世界の核に残されている私が記録した情報をジェニーに消してもらった。


 可愛い顔で一生懸命に不機嫌だと訴えてくる愛娘が可愛くて仕方がないから、抱っこしてリビングの椅子に座り頬をプニプニと抓んで遊んでいるけれど、無言を貫いている。


 私から話し掛けないと会話が始まらないね。


「ジェニー、私は思考把握を使っていないから言いたいことは声に出しなさい。」

「もぉー!お母さんが世界ってどういうこと!?」


 何を聞かれるのか分かっていたけれど、これまでの事実と推測を照らし合わせれば納得できるはずなのに面倒だから思考放棄したの?

 それに私を世界だと言ったのはジェニーだよ。

 世界だと名乗っていた偽物の言葉に惑わされているの?


「何で私が怠けていることになるの!?世界がお母さんに個性を渡したと思ったから世界だと言ったの!世界の力を借りていると思っていたけれど、お母さんは世界の力が使える。全然違うでしょ!偽物は論外だよ。お母さんの言葉に釣られていただけの馬鹿だからね。お母さんは自分が生まれた経緯に気づいたのでしょ!?それを教えてよ!」


 私を世界だと言ったときから思考を止めているね。

 常に考え続けなければ駄目でしょ。


「クリスに精神を乗っ取られたクロアの分身がフィオナの過去を見て個性を得たのが私。クリスティーナの人体実験と太陽の遊びで精神と個性を得た世界は核の記録を見ても敵が分からなかった。だから世界の力を組み込んだ精神を生み出して、個性を得た分身がフィオナと同じ体を得たときに精神を入れ換える仕掛けを作った。ジェニーが世界の力を使えないのは既存の複製魔法では魔法技術が足りなくて世界の力を複製することができないからだと思う。太陽に殺された過去の私が作った仕掛けも世界の力以外を複製と複写していたとすれば辻褄が合う。推測するしかない部分があるけれど、私が世界の力を使えるから余り外れてはいないはずだよ。納得できた?」


 ジェニーが世界の核の記録を見ても敵が分からなかったので、自動化で不都合な記録を消していた可能性が高い。

 自動化で記録を全て消していないことは、記録を見たジェニーが不自然に思っていないので間違いない。


 そして正確に言えば私は世界ではなく世界の子になる。

 私の性格から考えると世界の精神が元になっているとしか思えない。


「私がそこまで分かるはずがないでしょ!本人しか分からないのに私が怠けていたことにしないでよね!いつ確信したの!?」

「アンジェ叔母さんの座標を確認せずに念話が繋がったときだよ。私が念話したい相手を知っているのは私だけしかいないからね。」


 世界が生きていて私を特別扱いしているのであれば別だけれど、その場合はクリスティーナの人体実験と太陽の遊びを放置するとは思えない。

 それに世界が私に力を貸して魔法式を書き換えるためには、私の記憶と思考を把握して目的を理解しなければならない。


「ジェニー、納得した?今から資料館に戻る?」

「お母さんのことは分かったけれど、資料館に戻る必要はないよ。疲れたから寝たい。」


「寝ていいよ。」

「抱っこだとぐっすり眠れないでしょ!分かってよね!」


 不安を抱いていることを隠そうとしている。

 全て私が悪いね…。


 私の意思でジェニーを生み出していないことを気にしたことがない。

 更にジェニーの精神は私の精神を完全に複製できていないと推測した。


 本当に最低な母親だよ…。


 ジェニーを突き放しているとしか思えない。

 これで母親だと自信を持って言っているのだから質が悪い。


「ジェニー、望みがあるのなら素直に言いなさい。」

「お母さんの精神を複製して入れ換えて。私はお母さんの娘だと断言したい。推測とか感覚ではなく誰にも疑われない事実がほしい。」


 精神は不変なものではないからジェニーの性格が変わってしまうかもしれないけれど、それを理由に断るつもりはない。

 ジェニーと同じ立場であれば私も確実に望むことだから。

 性格が大きく変わるかもしれないので怖いけれど、全て受け入れる。


「始めるよ。太陽の能力を退避しておいて。それと変わったことがあれば教えて。」

「分かったよ。」


精神(スピリット)複製(デュプリケート)

世界の力を意識して私の精神を複製する


精神交換(スピリットリプレース)

複製した私の精神とジェニーの精神を交換する


魔力化(マジックコンバート)

肉体を失ったジェニーの精神を魔力に変換する


「終わったよ。何か変わった?」

「お母さんが私の不安に気づいた理由が分かったよ。監視以外で感情把握と思考把握を使う必要はなさそう。世界の力も使える。性格は変わっていないと思う。それと不安に思ったのは今が初めてだから気にする必要はないよ。」


 微笑んでいるので嬉しいみたいだね。


「まだ勉強している時間だけれど、布団で寝る?」

「うん。寝る!」


≪念話≫


「リオリナ、早く終わったから先に布団で寝ているよ。12時まで勉強してから帰ってきてね。」

「リア様、分かりました。勉強が終わったらすぐに帰ります!」


≪念話終了≫


 脱衣所に入りジェニーを下ろしてお互いに服を着替えた。

 布団部屋に入り布団の中でジェニーをいつもより少し強く抱きしめた。


「ごめんね。母親らしくなれるように頑張るよ。」

「お母さんは何も悪くないよ。それに今の私が見てもお母さんは特別だよ。追いつけるように頑張るのは私だから。」


 ジェニーの背中をトントンと優しく叩く。


「まずは自分の負担を減らしなさい。おやすみ。」

「分かったよ。おやすみー。」


 ジェニーが寝息を立てるのを待った。


 全く…、大失態としか言えない。

 誰が作ったのか分からない仕掛けで生み出された大切な愛娘の安全と安心を考えていなかった。推測でしかないのに私の精神を複製して生み出されたと思い込んでいた。

 魔法式を見ていないのに仕掛けを警戒していなかった。


 最優先を胸に刻みなさい!


 私は絶対にこの子を守る。

 後悔するようなことは二度としない。

リアは無意識に殺された過去の自分を美化しています。

ジェニーに指摘されましたが認識が甘いままでした。

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