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世界は子を愛す  作者: 大介
第3章 実験の結末

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第120話 アンジェとリア

 ジェニーが目覚めてすぐに気を張っている。

 私の望みを叶えるために行動するつもりでいると思う。恐らくアンジェを幸せにすることができるのか確認する。


 アンジェは太陽が用意した自動化に組み込まれていたので何度繰り返していても変わらない。それに太陽に洗脳されて私を何度も殺していると思う。

 変わらないからこそ今のアンジェが知らない過去を伝えて様子を見るつもりかもしれない。

 ジェニーは記録で調べることができないアンジェを疑っているから…。


 資料館に入りいつもの椅子に座り皆に問題がないことを確認した。

 アンジェに突撃する前に可愛い顔で不貞腐れている愛娘と話そう。


≪念話≫


「ジェニー、アンジェと話し合いをするつもりでしょ。私が話すからジェニーはついてきなさい。記録で知ったことでアンジェを追い詰めても仕方ないでしょ。」

「アンジェには都合のいい記憶しかなくてそれを信じているんだよ。そんなの不公平でしょ!今のアンジェを恨むことはないけれど、事実は知るべきだよ。」


 なるほど。何も知らずに幸せになろうとしているアンジェが許せない。それを怒って話してもアンジェに正しく伝わらないでしょ。全く、困った子だね…。


「もう一度言うよ。私が話すからジェニーはついてきなさい。何も知らない相手に怒りをぶつけるのは八つ当たりでしょ。私に任せるか八つ当たりされたいか選びなさい。」

「お母さんに任せるけれど、足りないと思ったら口を挟むよ!」


 目的が変わっているでしょ。

 アンジェの過去に怒っているのであれば私の過去にも怒りなさい。


「冷静になるか私に怒るか選びなさい。」

「冷静になるよ…。」


 全く、感情制御が甘すぎるよ。

 このままだと軽い切っ掛けで怒りそうだね。


「ジェニー、失敗の反省は終わったの?それともアンジェのことばかり考えていて自分の失敗に気づいていないの?」

「失敗を探させてアンジェに集中させないつもりでしょ。」


 気づいていないみたいだね。

 説教したくなってきた…。


「自分の精神に隠蔽解除したおバカさんは誰かな?どれほど危険なことをしたのか思い出した?」

「はい…。思い出しました。深く反省します…。」


 アンジェに怒るよりも自分の失敗を反省する方が大切だよ。

 これから何かするときはどうすればいいのか考えなさい。


 落ち込みすぎだよ…。

 私の甘さも大概だろうね。


 ジェニーの頭を撫でながら背中をトントンと叩く。


「ジェニー、顔を上げなさい。下を見るのが癖になると前に進めなくなるよ。」

「はい…。」


 ジェニーが顔を少し上げたときにギュッと抱きしめて首をモミモミする。


「もっと私に甘えられるようになりなさい。自分だけで何かしたければ声を掛けなさい。アンジェに事実を教えるときはどうするの?」

「お母さんが教えて。私は会話を聞いているよ。」


 頭をポンポンと優しく叩いた。


≪念話終了≫


≪念話≫


「アンジェ、直接会って太陽との殺し合いについて話したいことがある。嫌な気持ちになるかもしれないけれど、知らないままではよくないと思う。午後からなら何時でもいいので会える?お母さんが一緒でも大丈夫だよ。」

「16時に帰るよ。心の準備をしておきたいから私が一番知りたくないと思えることを教えて。」


 アンジェの一番は知っているよ…。


「私を殺すために太陽がアンジェを私の精神の中に入れたんだよ。過去の私は洗脳されたアンジェに何度も殺されている。今のアンジェを恨んでも疑ってもいないので安心してね。」

「なるほど…。知らなければならない内容だね。覚悟しておくよ。」


 アンジェは逃げない。

 これからジェニーが人を見る良い切っ掛けになる。


「それでは自宅で待っているよー!」

「また後でねー!」


≪念話終了≫


「ジェニー、アンジェは逃げないし怒らない。私が言わないからアンジェは聞かない。お互いに信じているんだよ。記録と記憶と思考把握ではなく人を見る努力をしなさい。」

「分かったよ…。『知りたくなかった』と怒ると思っていたのに全然違った。記憶を見ただけでアンジェを知っているつもりになっていたよ…。ところでお母さんは何で知っているの?」


 過去にアンジェが私を殺したことがあることだね。


「屑の性格の悪さを考えるとアンジェを保険にしていると思った。私を殺す駒がいないときにアンジェを洗脳して利用する。それに細胞を変える魔法式はジェニーの能力と知識がなければ作れない。確かに不自然な点はあるけれど、屑に洗脳されなければアンジェは善良な私の姉だよ。」

「よく分かったよ。私は反省中だからお母さんに甘えて寝る!」


 反省中だから寝るというのはおかしくない?

 既に眠っているし可愛いので別にいいけれど。


 改めて勉強している子を見ても賑やかな環境に不満を抱いている子はいない。だけど全ての施設を拡張する必要があるから静かに勉強できる資料館も一緒に用意しよう。


「みんな聞いて!敷地で暮らすことができるのは勉強する子と資料館での勉強を終えた子だと忘れないでね。将来的には資料館を増やして勉強を終えた子が教える立場になってほしいと思っているけれど、とりあえず敷地を広くして施設を大きくすることにしたよ。明日の午前に実行するので各種族は目標の人数を決めておいて。よろしくね!」

「はい!」


 ジェニー、今の大音量で起きないのは不自然すぎるよ。

 いつもなら煩いと文句を言うでしょ。


「煩すぎて疲れたから寝る!」

「おやすみー。」


 仮想体で眠らずに監視している娘がいるのは分かっていたけれど、そろそろやめてもらおう。母親の目の前で母親より仕事してどうするの。

 今から私の仮想体と自動化する方法を考えなさい。


 来たら教えて。

【すぐに来たよ】


 自動化できそう?

【結界内を思考把握と感情把握で監視するのは無理だね】


 訓練中の私が引継いで。

 それと娘を抱きしめてあげて。

【分かった。愛娘は眠ったよ】


 一緒に訓練している娘も抱きしめてあげて。

 拗ねるからね。

【拗ねていたけれど、抱きしめたら眠ったよ。訓練もやめるの?】


 本体の娘が眠っているときは眠らせてあげて。

 娘に頼らない訓練は継続して。

【分かった。訓練は当初の予定通り続ける】


 午前の勉強が終わった後に皆が集まって話し合いを始めた。

 人数が増えても同じ関係でいてほしいね。


 私たちは自宅に帰ってリオリナに座った。

 今日はアンジェが帰ってくるので15時50分までと伝えたらリオリナが拗ねた。


 時間になったのでリオリナに一人で座ってもらった。

 凄く寂しそうな目で私を見ているけれど、気にしていない振りをする。


 時計の針が16時を指した。


「ただいまー!」

「おかえりー!」


 アンジェの声が玄関からリビングに響いたので負けないくらい大きな声を出した。すぐにパタパタと早歩きしている足音が聞こえてくる。

 アンジェは笑顔で自分の椅子に座った。


「お母さんは連れてこなくてよかったの?」

「必要だと思ったことは私から伝えるよ。覚悟してきたから聞かせて。」


 ジェニーを起こしてから話し始めた。


 ・太陽の遊びについて。

 ・クリスティーナの人体実験について。

 ・アンジェの役目について。

 ・アンジェの不自然な点について。

 ・今のアンジェの姿について。

 ・私について


 話し終えたときには夕日がリビングを暖かな色に染めていた。


「ジェニー、話しておきたいことはある?」

「私の教えていないことまでお母さんが知っているのはおかしいでしょ。それと娘の仮想体を買収するのはどうかと思うよ。どうせ帰ってこないしお母さんに任せたからね。」


 ジェニーの仕事を奪った甲斐があったよ。

 反抗期だから母の愛で帰ってこないと言えないみたいだね。


「アンジェ、本来の姿に戻る?私の姿は世界が決めてくれるので気にしなくてもいいよ。」

「初めてお母さんの姿を見たときに安心した理由が分かったよ…。本気で醜悪だね。ジェニー、私の弟妹を生み出せる?」


 人体実験で生み出された生命の記録は消去するように伝えたけれど、ジェニーは優しいのでアンジェの弟妹の記録は消去していない可能性が高い。

 消去したのであれば私の指示だと言えばいいからね。


「お母さんの指示を無視して記録は残してあるから生み出せるよ。6歳以下の子が1万人以上。アンジェが名前を決めて育てるの?お母さんはアンジェの幸せを願っているんだよ。」


 ジェニーは本当に優しいね…。

 朝はアンジェに怒っていたのに今は気遣って話している。


「弟妹についてはお母さんと計画を考えるよ。それとリアは私が人間の体を望むように促しているでしょ。一度は人間として生きてもいいと思っているけれど、必ず戻ってくる。私はリアと一緒に生まれた双子の姉だよ。妹を残して消えるつもりはないから、諦めて!」

「分かったよ…。」


 この感じだと全部気づかれているね。

 姉さんを裏切れないし諦めよう…。


「リアが世界の望む姿になったらお母さんと私の姿を変えて。それとジェニーは私の姪でしょ。これからは私を叔母と呼びなさい。見た目を考慮してお姉ちゃんでもいいよ。」

「分かったよ。アンジェ叔母さん!」


 反抗期の娘は誰にでも噛みつくね。

 アンジェの頬がひくついているよ。


≪私と娘を世界が望む姿に変えて≫


 アンジェは唖然としているしリオリナは恍惚としている。

 ジェニーの顔がよく見えるように持ち上げた。


「可愛いので問題なし。星魔力を纏っているけれど、危険はなさそうだね。」

「軽すぎるよ!世界がお母さんに望む姿は絶対者に決まっているでしょ。はぁ…、翼が生えなくてよかった。アンジェ叔母さんの姿は学校に戻ってから変えるよ。」


 腰まで伸びた純白の髪と黄金の瞳が特徴の可愛い女の子だよ。

 星魔力を纏っていても見える人はいないので問題なし。


 可愛い絶対者を抱っこして頭を撫でる。


「そうだね…。学校に戻ってから私とお母さんの姿を変えて。リアは鏡を見ても何とも思わないかもしれないけれど、地上で生活する女神にしか見えない。普通の人はひれ伏すと思うよ。」

「見た目を気にしても仕方ないよ。急いで学校に戻らなくても大丈夫でしょ?せっかくだから空を飛ぼうよ。リオリナ、飛べるよね?」


 世界一周はいつできるのか分からないけれど、今なら一緒に飛ぶことができる。


「リア様、勿論大丈夫です!」

「約束していたからね…。世界一周はまた今度にしよう。」

「それでは靴を履いて自宅の外に出よう!」


 アンジェは約束を忘れないね…。


 自宅の外でドラゴンに変身したリオリナに3人で乗り、アンジェがジェニーを脚の上に座らせて背後から2人を抱きしめた。

 リオリナがゆっくりと羽ばたいて浮上していくと視界が広がり夕陽が綺麗に見えてくる。視界を遮るものがなくなるまで浮上してから夕陽に向かって飛行してもらう。


 言葉が出ない…。


 様々な想いが溢れて涙が止まらない…。

 私が消えるその日まで、この光景は絶対に忘れない。

母と叔母を気遣う赤ちゃん。

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