第117話 過去と現在の繋がり ②
◇◇◇
念話中。
「お母さん、アンジェとアンジェのお母さんの精神を入れ換えて仕掛けについて説明したよ。」
ジェニーの対処が驚くほど早い。
アンジェの訓練を継続している理由はこちらが本命かな。
「ありがとう。ジェニー、太陽の能力で作られた体でも星魔力が見えなければ、世界の能力で2人の体を作り変えて。2人には不要な強さだしアンジェは訓練をやめても気にしない。それと種族の絶滅を防ぐ方法を見つけたので世界の規則は中止にする事と、学校と国づくりに影響はないので残りの生命を2年後に生み出す事を伝えて。念のために世界の核を星魔力の結界で守り太陽の核と繋がる魔力線で結界を維持する。ジェニー、自身の負担を気にしなさい。負担を減らす方法を見つけたら相談しなさい。最も危険な問題はジェニーの分身と仮想体が個性を持つことだよ。」
アンジェは今の強さを調べていないので弱くなっても気づかない。だから目に映るものが変わらなければ2人を弱体化した方がいい。それでジェニーの監視する理由がなくなる。
それにジェニーが分身と仮想体を出したままにしている方が遥かに危険。管理していても何が切っ掛けで個性を持つのか分からない。
「報告を聞くだけでそこまで考えるんだね…。2人は星魔力が見えないので体を弱体化してアンジェと訓練するのもやめる。世界の規則を中止にする。残りの生命を2年後に生み出す。世界の核を星魔力の結界で守る。全部実行して伝えるけれど、アンジェが何か言ってきたらお母さんが応対してね。」
アンジェは気にしないと思うけれど、何か言ってきても説得するのは容易。何故ならアンジェの幸せに影響がない。これで本当に影響がなくなる。
前世では求めても得られなかったもの。それが今の暮らしには詰まっているのだと思う。
「アンジェは何も気にしていないね…。私の負担を軽くするのも目的の一つだと思うけれど、弱体化した理由がまだある。全部別の理由がある。圧倒的だと思ったけれど、太陽に勝つお母さんはもっと凄いはずだよ。今日は教えてくれる日でしょ!」
落ち着いて思考する日だよ。
全く…、今から思考するので思考把握しなさい。
2人を弱体化した理由は人間に近づけるため。体が近づかなければ心も近づかない。太陽は見上げるしかないけれど、世界には手が届く。だから今の暮らしにより馴染める。
私の願いは幸せな2人が普通の人間に戻ることだから。
種族の絶滅を防ぐために種族の個体数が規定値になれば自動で通知する仕組みを作る。
太陽の能力があれば簡単に作れるので考えてみなさい。
世界の規則はジェニーが世界の記録を常時監視しなければならない時点で中止。
施行すればジェニーが激怒して威圧を抑えられずに多くの生命が死ぬかもしれない。激怒する理由が知りたければ何を聞いても激怒しないと約束しなさい。
残りの生命を2年後に生み出すのは、会話できない生命を全て生み出した後に世界が安定するのか1年間様子を見るため。
腐った世界の精神は種族特性を持つ生命を弄んでいた可能性が高い。それだけではなく魔法を使う生命の魔法式を書き換えたり高威力、高性能の魔法を与えて遊んでいた気がする。
遊びに飽きたので種族特性のない人間に知識を与えて実験させて種族特性が付けられるのか試した。その完成形がクリスティーナだと思う。
魔法核を作り魔法を整理してくれたジェニーの対応策を聞かせて。
太陽がクリスティーナを最終実験まで放置したのは、実験を終えたクリスティーナを殺して遊ぶつもりでいたのかもしれない。だけど最終実験でクリスティーナを殺す存在が偶然生まれた。
だから最終実験を繰り返して私が生まれる状況を再現した。私の魂に情報が記録されるまで待たなかった理由は不明だけれど、興味はない。
世界の核を星魔力の結界で守る理由は世界が発展しても変わらずに守れるから。
私たちが直接動いて問題解決することを減らしておきたい。
「妖精種の魔力線の報告と対処方法を教えて。」
「太陽の記録を見て最古の妖精種の女王と子の魔力線の魔法式を確認したけれど、効果は子の魔法の隠蔽維持と親子の認識だけ。魔力線の魔法式は全員修正する。木妖精も調べてみる。ところで今の思考は氷山の一角でしょ。私の課題も紛れていたね。はぁ…、涙が出そう…。」
嬉し泣きかな?
愛娘が何から始めるのか楽しみ。
「生命を自動で生み出すのを中断するよ。魔法核を精査したときに魔力線の問題に気づけなかった。腐った世界の精神が魔法式を書き換えて遊んでいることに気づけなかった…。だけど自動で修正するのは無理だし手動で修正していたら精神が濁ると思う。お母さんならどうにかできる?」
悲しい顔をしないで…。
ジェニーは何一つとして悪くない。
「私の推測を話すので間違っていることは教えて。世界の能力は世界が自動で記録する事象を変更できないけれど、太陽の能力なら変更できる。本来の世界が生命について記録するのは生と死と魂が核に落ちてきたときに情報を記録するだけなのに、今の世界は太陽が遊ぶために生命を記録で監視できるようにした。そして世界は生きていると思う。正確に言えば核だけれど、生み出されてから時を刻み続けている。魂は最初に生命の体を完全に記録して以後は追記し続けるけれど、記録には世界の時間と座標が入っている。だからジェニーが決めた世界の時間に生きていた生命を同じ体で同じ座標に生み出すことができる。どうかな?」
能力を付与してくれたら考えなくても済むのに困った子。
私一人で問題解決できる状態にしたくないの?
「その通りだよ!問題が起きたことを知らずに過ごすのは嫌だ!お母さんが問題解決したのを後で知るのは絶対に嫌だからね!お母さんの推測は何も間違っていない。『世界は生きている』と聞いたときにお母さんが世界だと思った。世界は個性を得てお母さんに渡した。太陽と繋がっている私たちは本来生命を委縮させる存在だよ。自然界で生きる妖精種なら猶更ね。それなのにお母さんの脚に乗ったり肩に座ることに躊躇がないし癒されている。何も問題は解決していないのに凄い満足感だよ。」
泣きそうな顔をしていたのに自信満々で私が世界だと言っている。
難問に直面して思考放棄したに違いない。
「思考放棄したのはお母さんだよ。普段なら世界なのか考える。別の問題があるから考えないのではなくて考える気がない。答えが出ないと無意識に判断したのか当たっていると無意識に判断した。私の勝ちだね!」
何故か笑顔で勝名乗りを上げている…。
愛娘がおバカさんになって私は悲しいよ。
「問題解決に話を戻すよ。生命の種族名と魔法を太陽の核から疑似核に複写することはできる?生み出すときに魔法を上書きすることはできる?」
「種族名と魔法を複写することはできるよ。魔法を上書きしてから生み出すには魔法を使う必要があるけれど、できるよ。」
生み出す前に魔法を上書きすれば腐った世界の精神が遊んだ痕跡を消せる。
「世界の時間と種族名と魔法を複写して種族名で並び替えてから、同じ種族を世界の時間で並び替えることはできる?」
「二度目の並び替えは魔法でするしかないよ。だけど目的は分かった。魔力を持つ生命は消して生み直すしかないけれど、最古の種族の魔法を上書きするんだね。」
なるほどね…。
太陽の能力で処理件数を減らした方がいい。
「魂の最初の記録だけを複写することはできる?」
「それならできるよ。世界の時間と種族名と魔法を疑似核に複写して種族名で並び替えるところまでは太陽の能力を使えばいいんだね。」
笑顔のジェニーを見ていると全て私が考えて教えたくなる。
本当に私は未熟だね…。
「ジェニー、最古の魔法の記録なら大丈夫だと思う?」
「腐った世界の精神が見ていた世界の記録は生命の生と死と魂の情報だけ。魔法が使えると思える妖精種でも最古の記録には問題がなかった。だから魂の情報を見て遊ぶ生命を決めていた可能性が限りなく高い。それに生命で遊ぶようなゴミが生命を直接確認するような手間は掛けないよ。」
ジェニーは世界の記録する事象を知ることができる。
それに太陽をよく知っているので腐った世界の精神の行動も推測できる。
「この問題についてジェニーの対処方法を聞かせて。」
「まずは結界の外にいる妖精種以外の魔力のある生命を消す。その…。」
殺すのは仕方のないことだけれど…。
「ジェニー、特定の感情で大気中にある魔力を集めて魔法を使う仕掛けを付けられた生命がいないと断言できる?触れるだけで他の生命に仕掛けを複写するのは難しい?生み出した生命を殺す決断をしたのだから後悔するようなことはしない。問題が起きる度に殺して修正してから生み出すの?命を軽く考えているの?」
ジェニーの発言に被せて話した。
自然界で生きる生命はいつも本気。生きるために命を奪う。生きるために命を守る。その命を弄んでいいの?その心を弄んでいいの?
私たちには特別な力があり誰も咎められない。だから何をしても許されるの?
現実は何をしても許される。自分の行動が許せるのであればそれが正しい。
ジェニーは私のことを世界だと言ったときの浮ついた気持ちのまま命を奪う問題について考えている。本気で考えていて見落としがあれば指摘するだけで終わるけれど…。
「ジェニーは今の自分が正しいと思っているの?私は命を軽く扱うことが許せない。誰が相手でも関係ない。心の狭い私をねじ伏せて自分の正しさを貫く?」
「ごめんなさい…。問題が解決したと思って軽い気持ちで考えていました…。」
絶対に譲れないことだから厳しく伝えたことは後悔していない。
だけど沈んでいるジェニーを見ているのがとても辛い…。
叱られたときよりも叱る方が悲しくて苦しい…。
ジェニーの頭を優しく撫でて背中をトントンと叩いた。
「私だけに問題解決させたくないのでしょ。本気で考えた対処方法を聞かせて。」
ジェニーの髪の毛をワシャワシャしてから優しく手で梳いた。
気持ちが上がってきたかな…。
背中をパンッと叩いた。
「ジェニーには難しすぎたね。私が考えるので作業はジェニーに任せるよ。」
「今考えていたの!対処方法に穴がないか確認しているの!」
ジェニーが本気になれば解決できると知っているよ。
太陽に勝つことができたのだから。
「私の結界外にいる妖精種以外の生命は死体も残さずに消すよ。妖精種は他種族と接触していないし魔力線以外の魔法に問題はないから。他に方法は思いつかないし状況が悪化するかもしれないので実行していい?」
「そうだね。実行していいよ。」
妖精種について再確認した。それで充分。
手作業で生み出した生命を確認していくのは非現実的で、時間を掛ければ妖精種も殺すことになるかもしれないので早く実行する。
ジェニーの本気が伝わってくるよ。
「生命を消したので太陽の核の記録と世界の核の記録を整理するために遮断するよ。まずは世界が記録している事象を本来の形に戻す。そして太陽の核に記録されている世界を再生した記録と妖精種と学校の人間を生み出した記録を疑似核に複写する。次に世界が滅びた後の記録と太陽が複製した世界の記録を消去して疑似核の記録を複写する。そのあと遮断を解除して世界の核の記録を消去してから疑似核の記録を複写して疑似核を消す。何か気になることはある?」
世界の記録する事象を本来の形に戻し核の記録を整理するのであれば別の問題を先に解決できる。同時進行は避けるべきだけれど、時間に追われているわけではないのでジェニーなら大丈夫。
太陽の能力を知らないので魔法が必要なのか分からないけれど。
「種族の個体数が1000まで減ったら通知する仕組みを先に作るので考えてみなさい。疑似核に複写するまでは進めても大丈夫だよ。」
「世界の記録の生と死に個体数を追加すればいいんだね。通知以外は自動化できるよ。通知方法は色々と思いつくけれど、どうすればいいの?」
全種族の個体数を記録する必要がないので通知する仕組みを複雑にしなくて済む。
それに世界の状況次第で修正する可能性があるので簡素な方がいい。
「リビングの南側の壁に光る魔石を付けて明かりの色を変える。世界の記録を見て放置と保護のどちらにするのか決めたら明かりの色を戻す。複数種が同時期に絶滅危惧種になるかもしれないので記憶領域に種族名を複写する。どうかな?」
「すぐにできるよ。生命の死の記録で個体数が1000になったら魔石を橙色に光らせる。魔石の明かりの色を戻すのと記憶領域に複写した種族名の消去は手作業にするよ。疑似核から世界の核に記録を複写するときに生命を生み出した記録だけは追記しないと駄目だね。他に気になることはある?」
生命が生み出した記録だけは追記する…。
世界に把握させる事と記録させる事の設定は分けられているからだね。
世界は平等だと思うので私たちが数えてほしいものだけを数えさせることはできない。そのため世界が何を数えるのか分からず星魔力の消費量が予測できない。
だから世界に数えさせるのではなく記録の中で増減させるように設定した。
「お母さん、それは気になることだよね?何で自分で考えて答えまでたどり着いているの?」
「ジェニーを信じているからだよ。だから理由を考えてみた。間違っていたら指摘してくれるでしょ。それに気になることはあるよ。研究結果を疑似核2に複写して太陽の核の記録を消去してから最初に複写して疑似核2を消す。それ以外は大丈夫だよ。」
世界を消し記録を消せば全てなかったことになるとは思いたくない。だからクリスティーナが主動とはいえ人間の研究結果は残す。
欲は世界の発展に繋がるけれど、無数の犠牲者を生み世界を滅ぼす原因にもなると私たちは覚えておかなければならない。
「分かったよ。生命を生み出し終わるまで300日と言ったけれど、1年近く掛かりそう。残りの会話できる生命も同じように生み出せるようにしておくね。」
「お願いね。それと時間があるときに森人の王の記憶を確認してみて。神が森人に何をしたのか確認しておきたい。」
会話できる生命は魔法消去と記憶消去で痕跡を消したいけれど、最悪の場合は世界の時間を変えるしか解決策がないかもしれない…。
私の方針を変えることができるのはジェニーだけだよ。
愛娘が少し驚いたように私を見たので微笑んで優しく頭を撫でた。
命懸けで勝ち取った自由と時間。
私はジェニーの望みをたくさん叶えたい。
リアはジェニーが勘違いしていると思い方針を変えてもいいと伝えました。




