第110話 妖精種の保護 後編
ジェニー、別の妖精種も私が特別だと気づけるの?
【女王と女王候補は気づく】
リオリナに抱っこされている状態は都合がいいね。
【追放が捗る】
追放といっても妖精種が森で暮らすのは自然だよ。
「今から妖精と犬妖精と猫妖精を保護するので木妖精は何も言わないで。この環境で残るのか決断してほしい。それに仲間の死を望むような生命は敷地で暮らしてほしくないからね。」
「敷地の現状でも女王に命令されることはないと思うけれど、世代交代が緩やかになるのは間違いないので出ていくと考えているんだね。妖精種の権力欲がどの程度なのか見せてもらおう。」
余り欲がないと思っていた木妖精でさえ5割も減った。そして今から生み出す妖精種には女王と女王候補がいるので人種と変わらない欲を持っていると思う。
だから驚くほど減る気がする…。
ジェニー、妖精と犬妖精と猫妖精を生み出して敷地について説明している途中でも関係なく不穏な木妖精がいたら追放して。
【了、見逃さない!】
寂しい雰囲気だった敷地があっという間に妖精種の住処のように賑やかになった。
色鮮やかではないけれど…。
「ここに森人はいないよ!女王は部族をまとめて!皆が落ち着いてから話をするよ!」
「偽物は魔法で妖精の見た目を変えていたみたいだね。意味のない嫌がらせをしていたのが本気で不愉快だよ。」
妖精種は瑞々しい緑色を持つのが基本みたい。
夏の保護色だとすれば季節によって色が変わるのかな?
【保護色だけれど、常緑樹が育つ地域で生息していた】
妖精は髪と目の色で犬妖精と猫妖精は毛と目の色。
妖精の女王は透き通るような銀の翅が4枚なので分かるけれど、犬妖精と猫妖精の女王は見た目で分からない。恐らく支配に適した魔法を使用できるのだと思う。
熱帯で暮らしていたのであれば魔獣が見つけるのは難しいね。
木妖精は熱帯に飛ばしてあげた?
【消すのを我慢してね!】
ジェニーは宇宙一優しいね!
娘の優しさが嬉しいよ!
【やめて…】
照れ屋さんだね。
動き回っていた妖精種は木妖精が静かにまとまっているのに気づいてまとまり始めた。森人から解放されたことに喜んでいたのかもしれない。
女王がまとめるまで少し時間が掛かったけれど、説明を始めた。
木妖精に話した内容に加えて、林に多くの果物の木が植えてあり皆がお腹を満たせることを伝えた。食糧が足りないのに争うなとは言えないから。
敷地の状態について皆が理解したところで本題に入る。
「敷地で暮らすか森で暮らすか決めて。話し合ってもいいけれど、女王と女王候補は命令しないで。15分後に確認するので森で暮らしたい人は手か前足を挙げてね。」
「早速話し合いが始まっているけれど、敷地で暮らしたくない人が多い証拠だね。この様子だと妖精種も力があれば人種と同じことをすると思う。私たちの国で世界征服するのが一番のような気がしてきた。差別禁止にして争わずに全種族の国を属国にする。優秀な人と働く意欲のある人を受け入れる仕組みにすれば多種族国家になっていくよ。それでも戦争を仕掛ける国はあると思うけれど…。」
この光景を見ると考えさせられる。女王は皆を説得しようと話し掛けているけれど、女王候補は森で暮らすことを決めたと聞く耳を持たない。
女王が力を得て以前は同じ部族だった生命に会ったとき殺さないかな…。
【追放した後の話を聞けば忘れると思う】
妖精女王の見た目は同じなのに目を引かれる女王が1人いる。
雰囲気が少し変わっているけれど、この感じは知っている。
「アンジェ、プリムスがいる。私が名前を付けたことを教えてあげればいいかな?」
【リアの感性は異常。普通は分からない】
「敷地に残ったらそれでいいと思うよ。一緒に暮らすと贔屓していることになるからね。」
「残ったら念話で伝えるよ。とても元気でいいね。」
ところで始める世界の時期を間違えたかな?
【多種族の生存を考えると最善。ここから滅びるまで人種は進化していない】
進化していないのであれば最善と言えるね。
勉強して知識を増やしても、争うことの利益と不利益を考えていたのでしょ?
【是、権力の強い人はその傾向がある】
同族の奴隷は世界が安定するまで認めるつもりでいるけれど、凄く酷い目に遭っている生命は保護するべきかな?
【リアが決めていいけれど、その生命は精神が濁り切っている可能性が非常に高い】
酷い目に遭ってから助けるのでは遅いという事だね…。
世界の規則に曖昧な表現を追加するよ。
『世界の全てを知ることのできる私を不愉快にさせるな!』
【発展は遅れると思うけれど、殺されたり奴隷にされる生命は減ると思う】
世界の発展は私たちのつくる国を中心にする。
視界に入らない生命に期待はしない。
【リアが支配者。それで行こう!】
「リア様、そろそろ聞いてもよさそうです。」
「ありがとう。それでは確認するよ!森で暮らしたい人は手か前足を挙げて!」
残念だよ…。
「敷地に残る同族に森で会うと殲滅されるかもしれないけれど、頑張ってね。」
アンジェの言葉で危機感を感じた人は手を下げた。
ジェニー、飛ばして。
【了、邪魔者は不要】
6000人もいたのに木妖精より少ない。
残らなかった女王と残った女王候補はいる?
それと女王の人数を教えて。
【いない。種族別に10人】
3種族、合わせて30人の女王。
女王1人に対して2人前後が残っているので9割以上が森で暮らすことを決断した。
妖精種が森人に禁止されていたことは何かある?
【名付け、命令以外で数を増やす】
「木妖精も普通にしてね。落ち込む必要は全くないよ。何人増えてもいいし名前を決めてもいい。ここは争わなければ自由だからね。だけど悪意を持たないように気をつけて。それと私たちに殺意を向けたら死ぬので注意して。私は敷地に残った皆の望みを叶えていきたいと思っているの。妖精種の発展にも繋がるからね。但し、個人の利益ではなく妖精種の利益になること。もしくは種族の利益になること。敷地を妖精種の住みやすい環境にしていいよ。望みは私の寝ている夜以外ならいつでも言っていいけれど、自宅の中に押し掛けるのはやめてね。玄関のドアをノックすればいいから。それでは望みを言ってみよう。駄目な望みは理由を説明するだけだから心配しないで。」
「はい!勉強できる施設をお願いします!」
長髪の木妖精の人が手を挙げて元気に発言した。
最初に生み出した木妖精の中で話していた人だよね?
【是】
4足歩行の獣でも読める本は作れる?
【余裕!】
「許可するけれど、知識の共有は禁止だよ。妖精と犬妖精と猫妖精に説明するけれど、勉強すれば世界の様々なことを知ることができる。そして強くなれる。敷地の隣には難しい勉強ができる施設が用意されているけれど、そこで勉強したければここでの勉強を全て終えてからね。勉強を望むのは木妖精だけでいい?」
「はい!私たちも勉強します!犬妖精と猫妖精も勉強できればしたいと言っています。」
プリムスが元気に手を挙げて発言した。
犬妖精と猫妖精は念話でプリムスに伝えたの?
ジェニー、敷地の真ん中に勉強する施設を作ってあげて。
【念話で伝えていたけれど、何故分かったの?施設はすぐに作る】
犬と猫が念話以外で話せたらおかしいでしょ。
【確かに…】
敷地の真ん中に石畳を挟んで立派な施設が2つできた。
私の娘に不可能はないみたい!
【もういいから…。私にも不可能はある。対等な条件の実戦でリアに勝てる存在はいない】
対等な条件の実戦はあり得ないよ。
世界は弱肉強食だからね。
「リオリナは私と一緒に木妖精と妖精に混ざって勉強する。アンジェ、犬妖精と猫妖精は念話で話せるので任せていい?」
「分かりました。勉強しながら精神を鍛えます。」
「勿論いいよ。話せるのなら問題なし。」
勉強は基本を知らなければ自力で進めることが難しい。
強くなるために勉強する人もいると思うけれど、すぐに本の内容が理解できなくなる。
「他に望みはあるかな?」
「はい!服をください!」
「服はリアが決めた方がいいよ。それだと揉めないでしょ。」
アンジェの言う通りだね。
女王同士の関係性は知らないけれど、問題の種を蒔く必要はない。
「木妖精は自分の決めた姿で別体を作り出しているよね?勉強すれば好きな服を着た別体を作り出せるよ。犬妖精と猫妖精はいるの?私に直接念話で答えて。」
「木妖精は想像した姿で別体を作り出しています。服はいりませんがリア様の髪色と同じ腕輪をください。これから子を増やしていきますので、ここで暮らす木妖精に腕輪をください。」
◇◇◇
念話中。
「犬妖精と猫妖精はリア様の髪色と同じ首輪を付けてください。木妖精と同じように子を増やしていきますので、子にも首輪を付けてください。」
犬妖精が念話で話し掛けてくれた。
私に支配されているように見えるけれど、それで安心してくれるのかな。
【是】
ジェニー、腕輪と首輪を作ってあげて。
怪我しないように柔らかくしてね。
【了】
「これでいいかな?」
「はい。ありがとうございます。」
念話終了。
◇◇◇
妖精の服だけれど、上は黄色のプラトップで背中の布を結び固定する。下は黄色の半ズボンで紐を結び固定する。上下とも汚れが付かず破れないものにして。それと水を弾く革の靴も用意してあげて。
【了、こだわりすぎ】
「すごいです…。」
「その服は汚れないし破れない。靴は水を弾くよ。せっかくだから服の左胸に名前を刺繍しよう。木妖精は腕輪に、犬妖精と猫妖精は首輪に名前を彫るよ。心の中でこの名前にすると言ってくれるだけで大丈夫。」
相談した我儘をしよう。
【宇宙の支配者の我儘が小さすぎ】
≪念話≫
「驚かずに話を聞いてね。私は君のことを知っているの。君は覚えていないけれど、私の肩に座ったこともあるし一緒に眠ったこともあるよ。そのとき世界の管理者ではなかったけれど、今は世界の管理者だから妖精の中で君だけを贔屓することはできない。だけど私が君にあげた名前を名乗ってくれると嬉しい。名前を聞く?聞かない?念話のことは黙っていてね。」
「聞きます!名乗ります!今でも肩に座っていいのでしょうか?」
私の肩に座っていいのか確認してくれるんだね…。
「君の名前はプリムス。自分で決めたことにしてね。私が地面に下りたらの肩に座って名前が刺繍されたのを皆に見せてあげて。」
「分かりました!」
≪|念話終了≫
「リオリナ、今から妖精が私の肩に座るので我慢だよ。下ろして。」
「分かりました…。」
リオリナの手が小刻みに震えているけれど、大丈夫かな?
【命懸けで我慢すると心の中で呟いている。多分大丈夫】
妖精が肩に座るだけで命懸けなの?
一緒に勉強しても大丈夫?
【命懸けで勉強すると心の中で呟いていた。多分大丈夫】
宇宙一優秀な私の娘が多分と言っているのはおかしいよ。
リオリナが攻撃を仕掛けたら結界で防いで。
説教して我慢できるまで一緒に自宅の外で行動することは禁止にする。
【任せて!】
ジェニーは何故楽しそうなの?
優しい母親に褒められ続けたいの?
【最も嫌がることを即思いつくのは流石だね】
既に地面に足が着いているけれど、リオリナの震える手が凄くゆっくりとはなれた。
それを見たプリムスが飛んできて私の右肩に座った。
妖精種の皆は私の肩にプリムスが座ったことで驚いている。
リオリナの圧が凄いけれど…。
プリムスを結界で守ってくれているの?
威圧が漏れているよ。
【結界で守っているけれど、威圧は届いていない】
「私の背後に過保護なリオリナがいるけれど、皆に慣れるまでは見逃してあげて。気にせず私の肩に座っても脚に座ってもいいからね。ここが妖精種の住処になり知識と力を得た皆が何も恐れずに世界を楽しめるようになってほしい。それと妖精女王の服を見て。名前がプリムスと刺繍されているでしょ。だけど選ばれた特別な種族だと横暴なことをするようになったらここは潰す。絶対に忘れないで!プリムス、ありがとう。」
「はい。また座ります!」
プリムスが私から飛び上がった直後にリオリナに抱っこされた。普通の生命なら抱っこで締め殺される力強さだよ。本当にリオリナらしいね。
「リオリナ、家族以外は死ぬ力強さで抱っこをしている自覚はあるの?」
「力加減ができなければリアと外出禁止だね。」
「いっ、今はリア様の体に合わせているだけです。すぐに普通の抱っこにします!」
言えば緩めてくれるので洗脳が精神に与えていた影響は大きい。
ジェニー、トイレとお風呂は必要かな?
【望めば用意してもいいけれど、結界内は清潔に保つ】
定期的に体を綺麗にし排泄物は浄化するみたいだね。
「言い忘れていたけれど、敷地には池と川があるよ。他に望みはあるかな?」
反応なし。
望みを言えないでいる人はいる?
【いない】
「望むためには知識が大切だよ。そして力を得れば自力で解決できるかもしれない。勉強は明日の朝からにしよう。落ち着いて待っていてね。果物は豊富にあるし場所を取り合う必要はないよ。敷地の端まで行くと高さ1mの土壁があり敷地から外は見えるけれど、外から敷地は見えない。気になることがあれば教えて。今から好きなように過ごしてね。それでは解散!」
「はい!」
声と念話が重なり頭の中で反響している。
相手次第では隙を作ることができそう。
【うるさい!消音対策しておく】
私たちが自宅に戻るまで解散しそうにない。
「自宅に入ろう。」
「そうだね。このままだと解散してくれなさそうだよ。」
私たちは皆に手を振ってから自宅に向かった。
リオリナは自宅に入っても私を下ろすことはなく、私の靴を脱がして自分の靴も脱いで棚に置き、私を抱っこしたままリビングの椅子に座った。
「なるほど。これは確かに想定外ね。保護はうまく行ったの?」
お母さんはリオリナに抱っこされている私を見て笑った。
特に疑問もなく受け入れているように感じる。
「7000人生み出したけれど、約9割が森で暮らすことになった。私を騙すつもりの人と女王になりたい人がほとんど。残った人を軽く脅したけれど、勘違いせずに暮らせるのかは不明。妖精種も人種と変わらないと感じたよ。」
「ここにつくる国が圧倒的な力を見せつけて全ての国を争わず属国にしていけばいいよ。そのあと国の法で縛った方が楽だと思う。粛清に怯える世界より最強の国に馴染む方がいいでしょ。」
「多種族国家が難しいのは分かったけれど、奴隷から解放してもらったと思っているはずでしょ。助けてもらったことに感謝もせず自分の欲を優先させるのはおかしくないかしら?」
おかしくないかしら?
感謝されたことが余りないので疑問に思わなかったよ。
【女王は感謝していた。他は教養が足りない】
女王候補は?
【教養が足りない。女王が亡くなると女王候補が女王になり知識を継承する】
「女王は感謝していたけれど、他は教養が足りない。女王候補は女王が亡くなると知識を継承するので、同じく教養が足りない。文字の読み書きより挨拶と感謝と謝罪を先に覚えさせた方がいいかもしれないね。」
「これまでは森人の奴隷で女王が教育する機会はなかっただろうからね。女王以外は人種の3歳児だと思って接するよ。この件に関しては女王に教育してもらった方がいいと思う。」
「なるほど。森人としては奴隷に知識を与えたくなかったでしょうからね。とりあえず明日から実験場の人間の教育を始めるわ。リア、ジェニーにこれを用意してもらって。」
お母さんから紙を手渡されたけれど、これなら私でも用意できる。
【リア、何故お母さんに私が娘だと言わないの?】
お母さんから聞かれたら教えるよ。
アンジェとリオリナは必要だったので説明したの。
【リアはそれでもいいの?】
普通なら太陽が生み出した精神が安全なのか気になるでしょ。アンジェは私のことを信じているので聞かなかったけれど、お母さんは気にしていない。だから聞かれなければ教えない。
ところでジェニーは何故気にしているの?
お母さんの思考が気に入らなければアンジェが愛情で満たされるまでは我慢して。
【違うよ。お母さんを仲間外れにしていると思わないの?】
ジェニーが仲間外れにされているのかな…。
私の娘だと教えなければお母さんはジェニーを家族だと思わないの?
便利な精神としか思っていないのであれば教えるよ。
【そうだよ!それが気になるの!】
最初から素直に言えばいいのに…。
「お母さん、ジェニーは私が生み出した私の娘だからね。太陽と殺し合いの影響で私の精神に問題があるので治そうとしてくれているの。先程気づいたことだから隠していたわけではないよ。」
「赤ちゃんに娘がいるなんて凄いわね。それでどのような問題があるのかしら?」
お母さんはジェニーの望む状態になった?
【なった。間違いなく私を家族枠に入れた】
「感情の維持ができない。一緒に暮らしていれば問題ないけれど、離れてしまうとその相手に対して思っていた感情が抜けていく。だから仲良くしていた相手でも裏切った相手でも同様に知っている人としか思えない。ジェニーの提案とアンジェの意見でリオリナを生み出したよ。」
「かなり酷い影響じゃない。裏切られても隙が生まれないように自分を変えていったのでしょう。ジェニーは正常なリアならリオリナを生み出すと伝え、リアはアンジェに確認したのかしら。これで太陽に殺され続けたことが事実となってしまうわね…。リオリナは二度とリアを裏切らないように。自信がなければリアと一緒に行動するべきではないわ。それとリアを抱きしめて満足しているのではなく愛情を与えるように努力しなさい。自分のためにリアを抱きしめるのであれば、リアは私に抱きついて眠った方がいいはずよ。分かったわね?」
「分かりました!リア様は赤ちゃんですから私の愛情で虜にします。」
「リアを虜にしたら凄いよ。だけど嫉妬で威圧が漏れる精神力では難しいかな。」
私の愛情はジェニーに届いているはずなので問題なし。
寂しければ私をお母さんと呼べばいいのだから。
【そうかもしれないね…】
ジェニーが照れているけれど、私は優しいので黙っていてあげる。
【娘を煽る技術は宇宙一だよ!】
敷地に残ったのは女王の付き人です。




