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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第11話 母娘

【クロア、お母さんをお願い。私より適任でしょ?】

(適任なのか分からないけれど、代わるね。)


 ここまで弱っているお母さんを見たのは始めて。自己回復でもすぐに改善できないほど精神的に辛いようにみえる。


「お母さん、まだ昼過ぎだけどベッドで横になってよ。」

「あら、クロアね。分かったわ…。少し待って…。カンナカムイとフローラ、2人でこのお金を好きに使って飲食物や生活に必要なものを買ってきてちょうだい。今日はもう動けないかもしれないわ。結界の維持はしておくから家は安全よ。」

「分かったわ。フローラは私が守るからあなたは休みなさい。これだけのお金があれば十分よ。」

「十分すぎますよ!金銭感覚がおかしくなります。」


 お母さんが机の上に麻袋を10袋出した。ニョロ母さんが袋の中身を確認したときに見えたけれど、大金貨が入っていた。1袋に20枚入っていたとしても2000万リン。お母さんは疲れているから考えるのが面倒になっているに違いない。


 2人が外で買い物をする…。

 外出することで大変なことが起きるかもしれない。気づけてよかった。


(ディア、仲間が話しているときに相手が殺意を向けてきたら目の前で死ぬわよ。疑われないのは私たちだけじゃない。せめて眠らせてあげて。)

【あー!他力本願で自己中心的だよ…。眠らせれるか相談する。問題なければ伝えるよ。】


 加護たちは私とディアが会話しているときに対処法について検討を始めているはず。すぐに返事がくる気がする。加護たちに相談できるのが凄いのよね。


【クロア、問題なしだよ。話してる途中で相手が突然眠った場合は殺意を向けてきたからだと2人に伝えた。お母さんに伝えるのはクロアに任せる。】

(分かったわ。眠った理由が分かれば対処できる。それと左端の部屋のものを窓際の部屋に移動させて窓際の部屋に残っているものを左端の部屋に移動できる?フローラの部屋にする予定だったけれど、お母さんの部屋のままだよ。)


 予想よりも早いね…。部屋の移動は加護たちに部屋を見てほしいと頼まれるのかな。


【加護たちは凄いよね!窓際の部屋を浄化してから両方の部屋にあるものを移動させたよ。フローラにも伝えておいたから大丈夫。】

(兄の部屋を浄化したんだ。とても優しい気配りだね。)


 見ていない部屋の移動がすぐに終わった…。ディアはできるかできないか確認するだけ。加護たちがディアを大好きだからできないとは言いたくない。間違いなくディアに殺意を向けた人は特別枠に入れられる。加護たちが許さない。


 ディアは私が煽っても無反応なのに他の人だとすぐに怒る。記憶と経験を追加し精神を成長させても簡単に16歳のようになれる訳が無い。そのせいなのか3歳児の感情が表に出る時がある。その切っ掛けが私のような気がする。


 そういえば今までディアの気持ちを考えていなかった。


 ディアは生まれた切っ掛けが何かを理解した。自己回復に何回精神を作ったのか聞けるのに聞かないのは怖いからだと思う。このような形で生まれたくなかったという思いが強くなるだけで何もいいことがない。知らない方がいいし絶対に知ってほしくない。

 それにディアはオリジナルの文句を言わない。拷問されたと言えるような子に文句なんて言えないよね…。オリジナルの望みも叶ったとは言えない。同じ世界で同じ体が成長した姿で生まれるのを望んでいない。

 だから新しい生まれた理由がほしいと思うに決まっているよ。


 生き残ったクローディアを楽しませたい。幸せにしたい。そうだよね、ディア?


【そうだよ。お姉ちゃんが抱っこしてくれたから耐えれる。今もあのときの温もりを隣に感じるから。お姉ちゃん、二度と消えるなんて言わないで。お姉ちゃんの記憶と経験があるから足元が冷たく感じるんだ。全てを知ることができるのが怖い。私が生まれたことを喜んでくれる記憶なんてある訳が無いから。怒るし恨むに決まってる。私も本当は消えたいし死にたいよ。だけど血塗れで砕けた精神たちに償える方法は長生きすることだけ。償える方法なんてないと分かってる。ただの自己満足だよ…。ねぇ、誰にも望まれてない私は何をすればいいの?私は逃げられない。お姉ちゃんがいないと寒くて怖いに決まってる。一緒に楽しもうよ。死ぬときも一緒がいい。強くなるから。誰も手が届かないくらい強くなるから。加護たちが私の望みを叶えてくれるから大丈夫。お姉ちゃん、偶にでいいから抱っこしてほしい。お願いだから…。】

(消えるなんて二度と言わない。一緒に眠るときに抱きしめてあげる。お母さんにも説明するよ。私たちは一緒に楽しんで一緒に死ぬ。ディアは勉強して依頼は一緒に楽しむ。まずはそれができるように環境を整えないとね。)


 自己回復に思考誘導され動かされ怒って恨んでいた。私の記憶だけで想像できてしまう。砕かれた精神の数だけではない。そのときの記憶や感情も全て知ることができる。3歳児が突然今の状態になれば怖いに決まっている。足元には血塗れの死体があるように感じて冷たくて寒い。

 ディアの精神は自己回復が守り続ける。精神的な逃げ道もないから現実を全て受け入れることしかできない。ディアにとって私の代わりになれる人はいない。余りにも特別な関係だよ。

 ディアに罪はないと思いながら全てがディアのためだったのだからと満足してしまった。加護も万能じゃないと分かっていながら本当に浅はかだ…。そして家族はこの状態。3歳のディアを理解し愛してあげられるのは私とお母さんしかいない。今のお母さんが私たちをどのように思っているのか聞くのが怖い…。

 

 お母さんを支えてあげないと歩くのも辛そうだ。震えを抑えている原因が私なら家を出よう。

 大丈夫だから!私がディアを愛してあげるから心配しないで。


 そっとお母さんの肩を抱いて階段を上る。

 やはり震えを抑えようとしている…。今後のために聞かなければいけない。


「お母さんは私が憎い?」

「クロアが私たちを憎むべきなのよ?クロアとディアに思うところは何もないわ。」


 理由が違うことで安心したけれど、お母さんの体調が悪いのは間違いない。

 もしかしたら兄の態度が原因なのかもしれない。


「お母さん、部屋を窓際に移動したよ。ディアにお願いした。」

「部屋を見る必要もないのね。何ができないのかしら?」


 窓際の部屋のドアを開けるとお母さんの部屋になっていた。部屋の広さは同じだけれど、全く同じ配置になっているとは思わなかった。加護たちの仕事は完璧だね。


「見なくてもここまでできちゃうみたい。お願いした私も驚いた。」

「確かに私の部屋ね。全てをディアに頼ってしまわないように気をつけなければいけないわ。」


 お母さんの言う通りだよ。自己回復に無視された経験があるから拒絶されるのを怖がっている。私がお願いすればよかったのにディアに頼んでしまうのがその証拠だよ。これでは加護たちとの距離が離れてしまう。


【お姉ちゃんの気持ちはしっかりと伝えておいた。私と融合させるために酷いことをして無視したのは間違いないから。私の優先度が高いのは理解したからクロアを無視しないでと言ったら、悪いのは自分たちだから私の命が危うくなること以外なら無視は絶対にしないって。】

(ありがとう。ディアを最優先で守るのは加護たちが正しいよ。私からも話してみる。怖がっているままでは依頼も受けられないからね。一緒に楽しむためには同じことができないと駄目だから。)


 ディアの言葉を聞いて安心している。加護たちも私の気持ちを理解してくれたみたいだし、これからなら話せそうだよ。


 お母さんをベッドに寝かせる。


「お母さん、何を抑えているの?もう我慢しなくてもいいじゃない。」

「そうね…。聞いてちょうだい。私は愛されていると勘違いして夫を竜王にした。その裏では挑戦者を殺し続けてきた。暫くすると私が最強のドラゴンだと有名になった。息子は2000年歳以上。それなのに家族で私のしてきたことに気づいたのはクロアだけよ。だけどクズを竜王にして維持し続けたことにより冒険者組合本部が腐っていた。被害がそれだけだとは思えない。全ての始まりが私なのよ…。竜王が世界一強いという世界の常識を壊した。規約には必ず大切な意味があるのに守らなかった。2000年以上も世界に迷惑をかけ続けた私は許されない。それに夫と息子がクズなのに私だけ正常な訳が無い。私が一番クズだと2000年以上もかけてようやく気づけた。それが余りにも情けなくて…。」

「お母さんはクズじゃない!絶対に違うし認めない!クズの近くに長くいたから勘違いしているだけだよ。竜王は誰でもよかった。但し、お母さんに勝てないドラゴンは資格なしだと決めた。とりあえず夫を竜王にしておいて本物の竜王を探し続けていた。だけど2000年以上も経ってお母さんは待つのに飽きた。そこで偶然見つけた人間の捨て子を娘として育ててみることにした。加護を与えて鍛えた。お母さんは手加減が苦手で娘を鍛えすぎてしまったの。強くなりすぎた娘は世界の常識に収まらない。規約に収まらない。娘の常識が世界の常識になり新しい規約を作り直す必要がある。誰もお母さんを非難できないよ。制裁される可能性があるからね。それにお母さんが許されないことなんてこの世界にはないの。許させるだけの力が娘にはあるのだから。お母さんは娘が強すぎて混乱しているんだよ。すぐに落ち着けるから大丈夫。」


 お母さんをクズにはしない。誰にもそのように思わせない。そのためなら新しい理由を作る。お母さんの隣には私とディアがいるのだから否定できない。


「あ…、あれ?そ…、そうだったかしら。可愛い子を育てているつもりが、いつの間にか鍛えていたのね。私よりも少し強くなれると思っていたのよ。混乱していたみたいね。新しい常識が私を贔屓しているように感じたけれど、間違いなく気のせいだわ。一緒にいてディアはどのような事を考えているの?今の体と精神に慣れていないでしょ?」

「そうだね。ディアはまだ慣れていないよ。だから他力本願をしている。能力たちに指示を出すのが大変だから加護に全ての能力を協力させるように管理させた。帝都は既にディアが支配しているよ。話している相手が突然眠ったら殺意を向けてきた証拠だからね。魔法が帝都全域を索敵範囲にしていて、この家の住人に殺意を向けた人の情報を加護に記憶させているよ。そして余剰魔力を使い人体実験が帝都全域で行われることになるね。加護が記憶した情報を殺意が強い順番に並び替えて魔法に渡す。魔法は他の能力と協力しながら人体実験をした後に死体を元の場所に送る。帝都全域が連続殺人事件の現場になるけれど、犯人は自宅で勉強しているから。全自動で殺されていくよ。加護たちは先祖の記憶も全て覚えているから1万年以上の記憶を使い最適な方法を選択して実行する。加護たちに指示を出せるようになってもディアの強さには到底届かない。ディアは加護たちに考えた方法が最適か確認することが多い。加護たちはディアの方法を聞いて変更し追加する。ディアは加護たちと作戦会議をしている感じだね。強くなるのは加護たちに任せるみたい。勉強するだけでも大変なのに依頼も受けるからだって。あと兄の死も無駄になっていないよ。ディアが目を移植したからね。加護たちを見て触れるようになったから更に強くなるよ。」


 ディアが加護を触る力を得た。ドラゴンと敵対したときにその恐ろしさが分かる。まずは人体実験される気がする。だけどディアと敵対するのが悪いよ。殺意を向けるのがおかしい。ディアは過剰かもしれないけれど、正当防衛をしているだけだから。


「生まれて半日も経たずにそこまでしているのね。今までの常識では何も分からないでしょう。ディアも殺している自覚なしなのでしょ?惨殺死体が元の場所に送られてくるのは恐怖よ。しかも毎回殺し方が違うから捜査も進展しないわ。私の想像では加護たちが返事だけをしていると思っていたわ。先祖の記憶を覚えていてそれで方法を最適化する。間違いなく世界最強だわ。あの息子も役に立てたようね。」

「ディアが加護たちを褒めるの。凄いとか素晴らしいとか天才とか、とても嬉しそうに言うんだよ。加護たちはディアが大好きだから日常会話も聞いているよ。能力を使うかもしれない会話をしていたら最適な方法を提案できるようにしているから。ディアと加護たちの会話を聞いていたら、加護たちが世界最強を揺るぎないものにします、と言ってたからもう止まらないね。ディアは勉強しているだけで揺るぎない世界最強になるよ。ところでお母さんにお願いしたいことがあるの。ディアを抱きしめてほしい。3歳児だと思って甘やかしてほしい。ディアは愛情に飢えているんだよ。記憶と経験が追加されただけでは分からない。お母さんに抱きしめられたときの幸せを知ってほしいんだよ。」


 全てを話してしまうとお母さんの罪悪感が増してしまう。責任を感じたからではなく娘として抱きしめてあげてほしい。


「そうだったわね。ディアの中には3歳の心がある。まだ生まれたばかりなのに見た目と強さで忘れてしまいがちになるわ。娘を抱きしめるのは母として当然のことよ。クロアも抱きしめて欲しくなったらいつでも来なさい。」

「ありがとう。私の精神もまだ未熟みたいだからね。今日はディアに譲るよ。」


(ほら、代わりなさい。)

【うん…、分かった。】


 お母さんが掛け布団を上げてる。中に入ればいいんだよね…。

 ベッドに仰向けで寝たけど自分からお母さんに近づいていいのか分からない。


「ディア、娘が母に遠慮してどうするの。もっと近くに来なさい。」

「うん…。」


 ベッドの上でモゾモゾと体を揺らしながらゆっくりお母さんに近づいていたら、背中とお腹にお母さんの手が伸びてきて一気に抱き寄せられた。体は横向きになり顔はお母さんの肩辺りに優しく当たっている。温かくて凄くいい匂いがする。眠るつもりなんてなかったのに、何だか眠たい。


「ディア、これが普通なのよ。遠慮する必要はないわ。ディアもクロアも私の娘ですから。」

「うん…。だけど私はお母さんの息子が許せなかった。殺したから嫌われているかもしれないと思ってたんだ。」


「私に息子はいないわ。勘違いしていたと分かったのよ。あれは竜王の息子で私の息子ではなかった。息子が母を見下したりはしないでしょ?ディアは私より強いけれど、見下したりしないでしょ?」

「大好きなお母さんを見下す理由なんてないよ。家族だもん。お母さんは温かくて凄くいい匂いがするね。嬉しくて仕方ないのに眠たくなってくる。たくさん話したいことがあるんだ。これが幸せなのかな?」


(やはり帰ってきたときの兄の態度が原因だったんだ。あれは酷すぎた…。2000年以上も一緒に暮らしていた息子が突然見下してきた。仲間全員を見下していた。フローラの次に強いだけなのに勘違いを極めるとあそこまでたどり着くのかもしれない。兄の気持ちを考えても仕方ないね。お母さんの気が晴れたみたいでよかった。)


「そうよ。私たちは家族なの。家族を見下すことはないわ。幸せかどうかは後で考えなさい。話したいことがあるのなら話しなさい。明日からはクロアと相談してどちらが来るのか決めなさい。1人で寝たいとき、母と寝たいとき、娘は好きな方を選べばいいの。そして1人で悩みすぎない。考えることは大切だけれど、答えがでないときもあるわ。そういうときは相談しに来なさい。私もディアに相談するから手伝ってね。」

「お母さんを手伝うのは当然だよ。何でも言ってね…。お母さんの匂いは石鹸?香油?んー、起きてるのが辛くなってきた…。世界の規約も常識も私がこわすからきにしないで…。」


「正解は母の匂いよ。娘は眠気に勝てないの。私も娘を抱きしめて眠るのは久しぶりね。とても癒されるわ。後悔だけの2000年間を意味あるものに変えてくれた。あなた達の母であることが唯一の自慢よ。」


 私たちもお母さんの娘であることが自慢だからね!

 ディアは眠ったみたいだね。世界最強でもお母さんには勝てないよ。


 さて、気になることだし自分で聞いてみないと…。


≪自己回復:ディアの精神に負担となるなら答えなくていいよ。鍛錬の3日目の朝にオリジナルの精神が砕け散ったのは痛みから解放してあげるため?私ができるまでに砕かれた精神があると思うけれど、どのような思いで砕け散ったの?≫

<その通りです。最短で痛みから解放する手段が精神の崩壊しかありませんでした。主の精神が崩壊したときもその他の精神のときもお母さんに抱っこされていると強く錯覚させました>


(例え錯覚でも一番幸せな気持ちになれたんだね。これならディアの気持ちも少しは楽になる。砕けてしまう精神のことも考えていてくれたんだ。)


≪自己回復:ありがとう。救われた気分だよ。ディアがいつも言っているけれど、凄く賢いね。天才だよ≫

<クロアには一番酷いことをしてしまいました。許して欲しいとは言えません。ですが主を最優先にすることをご理解ください>


 勿論理解しているよ。

 それが正しい加護たちの在り方だと思っているからね。

銅貨  10リン

大銅貨 100リン

銀貨  1000リン

大銀貨 5000リン

金貨  1万リン

大金貨 10万リン

白金貨 100万リン


外食なら1000リンでお腹いっぱい食べられます。

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