05
私は立ち上がるとすぐに工房の管理室へと向かいました。
そして管理室から一つの鍵束を持ってきました。
私はその鍵の中から牢屋のカギを見つけて、その冒険者の彼を牢屋から出してあげました。
さきほどどの鍵かを使っていたかは遠目でしたけどちゃんと覚えていましたから。
冒険者の彼が頭を深く下げて言いました。
「モニカ、本当にありがとう。なんとお礼を言えばいいか。ああそうだ。名乗るのが遅くなってしまったが私は冒険者のウィーグラフだ。」
「よろしくお願いします。ウィーグラフさん。」
「ウィーグラフでいいよ。私もモニカと呼んでいるからね。」
「分かりました。よろしくね、ウィーグラフ。」
すぐに私はこの工房の販売所へと向かいました。
販売所の所に外への出入口があるからです。
ですが私とウィーグラフは販売所への扉に近づくこともできずに吹き飛ばされてしまいました。
後方に飛ばされて私とウィーグラフはしりもちをつきました。
「これが結界か。」
「はい、中から外に出ようとしても跳ね返されてしまいます。」
「ここから出るのは無理そうだな。」
「他の所から脱出できないか手分けして調べましょう。」
私とウィーグラフで手分けして外への脱出口がないかと工房のあちこちを調べ回りました。
けれどもどれだけ調べても脱出口を見つける事はできませんでした。
「ダメだな。どこからも出られない。」
「どこにも脱出口がないとすると、やっぱりあそこから出るしかないんですかね。」
「でもそれなら奴はどうやって出かけたというんだ?マルゲスは今外出しているんだろう。」
「確かに、マルゲスはどうやって外に出て行ったんでしょうか。私が見た感じではこのドアを通って販売所の所から外に出ていったように見えましたけど」
「そうなるとここから外に出られる方法が何かあるはずだが。」
「もしかすると特定のアイテムを装備していないと出られないのかもしれません。」
「そういえばマルゲスのやつ、左腕に黒のヒスイでできたブレスレッドをしていたな。」
「ええ、マルゲスはいつも左腕に黒のヒスイのブレスレッドを肌身離さず身に着けていますよ。」
「そうか、たぶんあのブレスレッドがここを通るのに必要なアイテムなんです。趣味悪いのブレスレッドだなって思っていましたが、そうかこの工房を出入りするための必要なアイテムならば常に身に着けているのも納得です。さっき出かける時も黒のヒスイのブレスレッドを身に着けていました。」
「ただそれが分かったとしても、黒のヒスイのブレスレッドは今もアイツが肌身離さず持っているんじゃないか?」
「ええ、そうですね。ただスペアのヒスイのブレスレッドをこの工房のどこかに用意していると思います。あれを失くしたらあいつ自身が出られなくなってしまいますから、スペアぐらいは用意してるはずです。それを探しましょう。」
「分かった。」
スペアのブレスレッドをすぐに探し始めました。
だが厳重に隠していると思われるブレスレッドは簡単には見つける事ができませんでした。
アイツどこに黒のヒスイのブレスレッドを隠してるんだ。
私はある事を思い出しました。
「そういえばあいつ錬成釜を使うなって言ってたんですよね。錬成釜は扱いがめんどくさいから使うなって言ってたと思ってたんですが、もしかして。」
私とウィーグラフは錬成釜を調べ始めました。
すると錬成釜の下の所に黒のヒスイのブレスレッドが隠されていました。
「モニカ、ビンゴだ。錬成釜の下の所にヒスイのブレスレッドが隠されていた。」
私たちは錬成釜の下に隠されていた黒のヒスイのブレスレッドを装備しました。
「よしこれを装備して外に出られるか試してみよう。」
黒のヒスイのブレスレッドをそれぞれ一つづつ装備して販売所の扉へと向いました。
すると今度は結界に跳ね返されることもなく、販売所の扉を開けて外に出ることができました。
私は外の空気を数か月ぶりに吸いました。
「やった!!久々に外に出れました。」
私は無事に逃げ出す事ができて晴々としていました。
外の空気がこんなにおいしかったなんて、本当にうれしいです。
嬉しそうにしているとウィーグラフが私に言いました。
「ウィーグラフあなたのおかげで無事に工房から逃げ出すことができました。ありがとう。」
「いやこちらこそ助けてくれてありがとう。」
「どのくらいの間あそこに閉じ込められていたんだ?」
「たぶん5か月ぐらいは外に出てないと思います。」
そうだ、そういえばマルゲスは今どこにいるんだろう?
ウィーグラフも同じ事が気になっているようで私に尋ねました。
「モニカ??マルゲスはどこに行くと言っていた?」
私はウィーグラフに答えました。
「どこに行くかは言っていませんでしたが、でかい取引をしに行くって言ってました。倉庫にあった偽ポーションをごっそり持って行ったみたいです。」
ウィーグラフはマルゲスが向かった先に心当たりがあるようでこう私に言いました。
「でかい取引??なるほどマルゲスのやつバイレル王家と取引するつもりだな。」
「バイレル王家と取引??」
「バイレル王家の騎士団もポーションは必須品だからな。」
「となるとマルゲスのやつ王家と大口取引をしてたか飛びするつもりかもしれない。」
「まずいな、すぐに王城に向かわないと。冒険者ギルドで馬を借りてくる。」
「待ってくださいウィーグラフ、その前に一つ頼まれてくれませんか?」
私はウィーグラフにある事を頼みました。
「なるほど、確かに先に潰しておいた方がいいでしょうね。」
私はウィーグラフと別れて、私だけで王城へと急ぎました。