目覚めと記憶2
そろそろやってくる
「うぅー、思い出せないよ!全然思い出せない!」
列車の中で二度寝をしてしまい、その時に見た夢も思い出せない。
何か大切なことだったようで、でもそうじゃなかったようで。鮮明になっていたはずの夢が薄くぼやけてなにも見えない。
揺れる列車はガタガタと音を立てている。
そんなことにも何か意味があったり、今わたしが必死で夢を思い出そうとすることに、意味があったりするかもしれないのに。その意味がわからなければ、きっと忘れてしまう。
「もう知らないよ」
イライラして髪の毛をわしゃわしゃする。
すると、ベタついていたはずの髪から、あったかくて、良い匂いがした。
「あれ、これは?」
わたしのお気に入りシャンプーの匂い。
髪を振ったせいで残りわずかな香りが飛んできたんできたのか。きっとそうだ。
落ち着く心に身を委ねて、シートに深く腰掛ける。
そっと呼吸をしてみると、静かな列車内に線路と車輪の当たる音、自分の吐く息だけが聞こえる。
首筋にはイライラしていたせいもあり汗が流れる。その汗を腕で拭うと同時、車内の蒸し暑さを感じていた。
「あぢぃ」
走る列車に抵抗もできず、列車内の暑さにとうとう嫌気がさしていた。ドアも開けられなければ、進む先を見ても一本の線路と果てしない原っぱを見せられるだけ。
このままだと本当にゆで卵になってしまいそう。
「別にわたしは卵じゃないけどね!」
別に茹でられているわけでもない。
そんなつまらないことを言ってしまったことを暑さのせいにした。
ありがとうございました!