ハル10
よろしくお願いしますー。
いつのまにか。
どんよりとした空も、降っていた雨も嘘のように消えていて、暖かい光に包まれてる。そして、わたしとハルはお互い原っぱに腰を下ろしている。
「ってことで!もう一回教えてください!」
ハルに言われたこと。わたしはこれか始まる旅に備えて、三つのことを忘れてはいけないらしいのです。
そんな簡単な事は、二度と説明されなくても頭の良いわたしなら朝飯前。
「メモしなよ、頭悪いんだからさ」
ハルからは何度も説明を聞くけど、やっぱり理解できていないのは、わたしの頭が悪いのではなくて、記憶が苦手なだけ。そんなわたしに呆れながらも、胸元のポケットからメモ帳とペンを取り出したハルは、わたしの代わりに、さっき言っていた二つの忘れてはいけない内容を書いてくれました。
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1,この場所も、これから旅する場所も忘れるな
2,これから通る三つの各駅は必ず降りて、やるべきことをすること!絶対に駅を引き返したり,飛ばしたりするな
3,必ず元の世界に戻ること。
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三つでした。
ハルが切り取ったメモ用紙を受け取る。
「ありがとー」
「厳重に保管してね、今すぐに!」
どれだけわたしを信頼していないのでしょうか。急かされるハルの言葉通りに、メモ用紙を半分に折って胸元のポケットに入れた。
「はい、厳重です」
「え、そんなんでだいじょぶ?」
「だいじょぶ!」
適当に返事をして済ませたけれど、まだわたしを心配しているハルは困ったようにため息をついた。
でも、わたしが本気を出せば忘れることはないのでだいじょぶ。
そんな事より、わたしが今知りたいことはこの世界の存在と意味、それに答えだけ。
他のストーリーの前置きとか、理屈とか根拠とか要らないから、答えだけを教えてもらいたい。
「ユキはそのことを忘れずに進めばきっと戻れるから、そこに答えもあるから」
文句が頭に流れているわたしに対して、わたしの心を読み取るように言葉吐いたハル。この時のハルの声と表情は冷静、と言うよりも不安と寂しさで出来ていることに気がつく。
その瞬間、ポタポタと雨が降り始めていることにも気がついた。
「ハル、女の子が泣いてた。怖かったって」
こんな時に、白の女の子との約束を思い出してハルに話した。
そしたらハルは、突然にわたしを覆ってきた。
「そっか。ごめん、怖くしちゃって」
「なに?急に、えっ?それにわたしじゃなくて…」
きっとこれは雨のせいで、わたしの気持ちが憂鬱になっているだけで、不安だったり。悲しかったりするのは当然のことだから。だから今はハルに守ってもらう。情緒不安定なわたしを守ってほしい。
「戻ろうよ」
優しい言葉に甘えてコクリと頷くと、ハルは片膝をついて背中を見せる。そして何も言わずに、そんな大きくも小さくもないぴったりな背中にわたしは寄りかかった。
何だか眠い。
このまま寝て終えば楽になるかもしれない。身を任せた身体が揺れていて、雨の音と肌に触れる水の冷たさが心地良くて、どんな雨も、今だけは好きになれるような気がした。
よろしくありがとう




