わたし旅33
あいうえお
前で歩く2人の会話を夢中に聞いている。
けれどそれほどの発展もない。まるでお互いが互いの様子を伺うように、踏み込んではいけない距離を探すように話し合っている。
そんな2人に合わせるよう、山奥の景色は、はっきりと紅葉の景色が茂り、風に当たりお互いの服が靡く。そんな本来なら微笑ましいはずの光景を見て、置いて行かれてしまうんじゃないかって、そんな不安も感じた。
「ユキ、僕のこと忘れてない?」
繋がる手が引く。
肩が当たると同時に隣を見れば、目を細めて不貞腐れるハルの顔がある。そんな姿は、わたしなんかより嫉妬を見せていた。
「まったくぅ!乙女だなあー」
「違うよ、これは仕方ないだけだから」
「乙女だなあー!」
2人はもう遠くて、声は聞こえない。
どんな話をして、どうなっていくのかすごく不安で、もしかしたら2人とも突然消えてしまうんじゃないか、そんなことを思っちゃう。
だけど、わたしのことをいつまでも思ってくれるハルは隣にいて、そんなハルに甘えている。どこまでも我儘なわたしで、都合のいいわたしなのに。こんなにも優しくて、楽しくて、大好きな三人がいる。
「どうしたの?そんなニヤニヤして」
「え?」
ハルから顔を覗き込まれて、自分でも気づかなかった頬は確かに上がっている。
「僕のこと考えてた?」
「ううん、三人のことだよ!」
「そっか」
あははは。
大袈裟に、声を出して笑ってみる。目の前にいる2人に追い付こうと急かして、ハルの手を引っ張る。風が吹いている中に自分の髪が靡いたのが伝わる。すると、笑う声に気付いた2人はわたしを見て微笑んだ。相変わらずにぎくしゃくする2人の隣にわたしとハルは並ぶ。
ハル、わたし、ナツ、アキ。
よろしくお願いします