新たなる展開……
動きが有りそう……
新年を迎え、ボクシング界も騒がしくなっていく。佐伯と甲斐が世界タイトルを奪取した事により、俄に周りの音が大きくなっていた。佐伯と甲斐の直接対決を望む声や防衛戦を重ねてもう少し成長してから激突させる等の意見が、各メディアやファンから声が上がっていた。当然、どちらが勝つかという話になり、ファン同士の小競り合いも起きていた。
そんな中、2人は4月にそれぞれ防衛戦を行った。佐伯は5ラウンドKOで勝利し、戦績16戦16勝15KOとしていた。甲斐は7ラウンドKOでこちらも勝利し、戦績18戦18勝17KOとした。2人の強さは、確かな物になりつつある。
そんな5月の半ば、ある発表が有った。
[フェザー級のワールドボクシングスーパーシリーズ(WBSS)の開催]
である。主催者側から発表が有り、その発表から1週間後に出場選手への打診が有った。当然、佐伯と甲斐にも出場の依頼が来ていた。
今回選ばれた8人だが、佐伯と甲斐の他にWBAスーパーチャンピオンのトーマス·スペンサー(アメリカ)、IBFチャンピオンのフランチェスコ·カンナバーロ(イタリア)、そこに3人の世界ランカー、ルイス·モンゴメリー(アメリカ)、バーキンス·トリニダード(プエルトリコ)、セルゲイ·キシェンコ(ロシア)が選ばれた。勿論、WBAレギュラーチャンピオンのエリック·ロペスも選ばれたのだが、ここから一波乱有った。
WBSSの選手の発表が有ってすぐ、ミッキーは声明文を出した。
「盛り上がるのは大いに結構、やりたければ勝手にやればいい。私もエリックも、この階級に未練は無い。階級最強の称号より、我々は世界最強の名前が欲しいんでね……悪いが、階級を上げて2階級制覇をする事にする。やりたければ、WBSSで優勝してから挑戦して欲しいね……優勝して、初めてエリックと戦う権利が有ると思ってくれ」
との事だった。これを受け、追加の選手としてモーリス·スミス(アメリカ)を選んだ。確かにエリック·ロペスの欠場は痛いが、それでも豪華な顔ぶれのトーナメントが開催となる。
1回戦に当たる試合は、8月に開催となった。
川上ジムでは、ミッキーの声明文を受けて佐伯と喜多が熱くなっていた。
「ふざけるなよ、何様だ!」
「お前をKOする準備なんて、とっくの昔から出来てんだ!」
2人が文句を言っている所に池本がやって来た。
「大分うるせぇなぁ……どうしたんだよ?」
「エリック·ロペスですよ、ふざけやがって……」
「俺がお前くらいKOしてやるっての!」
「階級を上げた事か……別にいいだろ?」
「「よくないですよ!」」
「馬鹿にしてます!」
「何様だってんですよ!」
「……トレーナーも大変ですねぇ……」
「慣れだよ慣れ」
「ちょっと石谷さん!」
「2人は何で冷静なんですか?」
「……WBSSで優勝すれば、エリック·ロペスとやれるんだろ?……別に構わないじゃないか?」
「確かにそうかもしれませんけど……」
「逃げてますよ!」
「……上で待ってんだろ?……今は目の前の事に集中しろ」
「……分かってますけど……」
「納得はいきません……絶対に優勝して、エリックをぶっ倒してやる!……ロードに行って来ます!」
佐伯はロードワークに出て行った。
「喜多、少しは成長しろよ」
「しかし、池本さん……」
「エリック側はな、このトーナメントでのくじ引きが怖かったんだろうな……」
「くじ引きが?」
「場合によってだが、佐伯と甲斐と連戦になる……ミッキーとしては、それはかなり危険だと思ったんだろうなぁ……」
「危険ですか……」
「それだけ、ミッキー側から要注意だと思われてるって事だ」
「成る程……」
「佐伯と甲斐の勝った方と試合をする……1番いい選択だろう……まぁ、2人がしっかり勝たないといけないけどな!」
「……よし、やってやる!」
どうやら、喜多は佐伯を徹底的に鍛える覚悟をした様だ。
ちなみにだが、池本が本日川上ジムに来たのはWBSS関連での事である。WBSSを盛り上げる為、主催者側は3人の親善大使を任命した。今回のトーナメントで4団体が統一となる事から、前回に4団体を統一した時のメインとなっていた選手を選んだ。その時はWBSSは開催されてなかったが、かなり盛り上がった事は確かである。任命されたのは、デイビッド·ラリオス、フェリックス·ホプキンス、池本純也の3人である。親善大使も豪華な顔ぶれである。
一方の西田拳闘会だが、こちらでは甲斐と手塚·西田会長が熱くなっていた。
「何だこいつは!…舐めてんのか?」
「本当ですね、何様だよ!」
「俺にKOされるくせに!」
このタイミングで徳井が入って来る。
「徳井君、あの3人どうにかならない?」
「……単純おつむの3人ですからねぇ……」
「何だ徳井?…喧嘩売りに来たのか?」
「徳井、敵わないけど許さんぞ!」
「西田さん、何で弱気なんですか?」
「徳井さん、こいつおかしいでしょう?」
「……池本さんの言った通りだ……全く、馬鹿ばっかり……」
「「「おい!」」」
「甲斐君、まずは目先の事だよ……練習練習!」
「分かってますよ、ロードに行って来ます」
甲斐はロードワークに出て行った。
「手塚……大丈夫か?」
「何がだよ?」
「池本さんが心配する訳だよ……いいか、ミッキーは佐伯と甲斐を危険だと判断したんだ」
「だから何だよ?」
「本当に馬鹿だよなぁ……ミッキーにとって、最悪の展開は何だ?」
「ミッキーにとって……エリックが負ける事だろ?」
「エリックが負ける可能性で1番高いのは?」
「そりゃあ、甲斐とやる事だろ?」
「……手塚君、冷静になろうか……今、エリックが甲斐君と試合したらどうなる?」
「絶対勝つ!…と言いたい所だけど……難しいですね……激戦必死ですね」
「では、佐伯君とエリックでやったら?」
「……やっぱり激戦かなぁ……」
「だったら手塚、もしもエリックが準決勝で佐伯とやるとして……決勝は誰とやるんだ?」
「甲斐に決まって…………成る程……」
「そういう事だよ……あちらも、かなり警戒してるのさ」
「どんな組み合わせになるかは分からないけど、どちらにしてもエリックに負けた方は必ず協力するだろう?……ミッキーにとって、2人を同時に敵に回すのは得策じゃないって思ったんだろう」
「ふん、せこい手を!」
「それだけ、ミッキーは慎重なんだよ」
「どちらにしろ、直接対決に勝たないと潰せないけどね!」
「よ~し、一気にSフェザー級まで制覇させてやる……甲斐のクソガキには、これから地獄を見せてやる!」
手塚も、甲斐にWBSSを勝ち抜かせる覚悟を決めた様だ。
「あのさぁ……俺は良く分からないんだけど……」
「篠原さん、この男が会長で大丈夫ですか?」
「徳井君、そう言うなよ……僕も心配なんだからさぁ……」
「西田さん……池本さんに殴られ過ぎたんじゃないですか?」
「「有り得る!」」
「おいおい、酷いなぁ……」
西田会長は、どうやらマイペースである。
楽しみな展開に……




