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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
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2人の変化……佐伯……

アメリカデビューが終わり……

試合の翌日、アカデミーはざわついていた。佐伯と甲斐が姿を表すと、一層ざわつき出した。ラリオスのアカデミーは格闘技のアカデミーである為、アマチュア·プロ共にボクサーが居る。勿論、ラリオスのジムに所属している者も居る。ジムの初日から異彩を放つ2人、昨日の試合で更に興味を持たれたのは当たり前の事かもしれない。更に言えば、ボクシングをやっていない者でも格闘技に携わる者達ばかりなので、佐伯と甲斐の話題が出て来るのは当然かもしれない。

「佐伯·甲斐!」

「うん?」

「何だ?」

「昨日は凄かったな!」

「俺も見たぞ!」

「私なんて、生で見たよ!」

「凄い一撃だったね!」

「2人共、1ラウンドKOだもんね!」

佐伯と甲斐は、教室に入ると色々話し掛けられていた。それだけ昨日の試合が衝撃的だったのかもしれない。

しかし、当の本人達の反応は薄い。確かに試合には勝ったが、ラリオスとミゲールからは賛辞の言葉を貰えていないし、何よりここがゴールではないのだ。浮かれている訳にはいかない。

2人は改めて、気を引き締め直す。


試合後も変わらない生活を送る2人、日曜日になり本日のアルバイトはお休みを貰っている。2人はそれぞれに出掛けた。

佐伯はアカデミーのカポエラの授業の仲間と、甲斐はアカデミーの合気道の仲間と出掛けて行く。


佐伯はアカデミーの仲間に連れられて、とある広い建物に案内された。どうやら、カポエラのジムらしい。スポーツとしてのカポエラではなく、本日は格闘技としてのカポエラを体験する様だ。

カポエラはダンスの様な動きの為、勘違いをされやすいがなかなかに強い。蹴りのスピードや独特の動きやリズムは、対戦相手には厄介である。

ジムの責任者兼指導者は、アップが終わると佐伯に声を掛けた。

「この間の試合は見事だった!」

「ありがとうございます!」

「しかし……まだまだ強くなる!」

「はい!…その為にアメリカに来たんです!」

「ならば、私とスパーリングをしよう……異種格闘技になるが、どうかな?」

「お願いします!」

まさかの佐伯と指導者ブラウン·マロニーのスパーリングが始まる事になった。佐伯もブラウンもレッグガードとグローブ、ヘッドギアを付け、お互いに構えた。


スパーリングが始まる……

佐伯は持ち前のフットワークを使いながら、左ジャブを放っていく。流石に速い佐伯の左ジャブ、ブラウンは何発も被弾する。

ブラウンは何発目かの佐伯の左ジャブの際、側転をしてかわす。着地すると、すぐに横回転しながら蹴りを出していく。

佐伯はこの蹴りをスウェーでかわすが、反撃するには相手が遠い。

佐伯が戸惑うと、ブラウンは更に蹴りを何発も打ち込んで来る。

佐伯は集中し、ブラウンの蹴りを悉くかわしていくが、ブラウンの蹴りの威力はその風切り音から推測出来る。佐伯の首筋に冷たい汗が流れる。

更にブラウンは攻撃を続けていくと、佐伯の雰囲気が変わる。

今まで佐伯は、ブラウンの蹴りを何とかよけている感じであったが、よける動きが滑らかになり、それと同時に今までよりぎりぎりでブラウンの蹴りをかわしていく。ぎりぎりでかわしている為に本来ならひやひや物である筈だか、見ている誰もが佐伯を捉える事は出来ないと確信出来る、何故かそんな動きになっている。

ブラウンの攻撃のスピードは上がっているが、佐伯の動きや避け方は変わらない。ブラウンが更にスピードを上げ、右のハイキックを放つが佐伯はこれに対し、一歩踏み込み頭を低くしてブラウンがハイキックを打ち切る前に左フックを打ち込んだ。

佐伯は、右ハイキックを左フックのクロスカウンターで切って落としたのだ。

ブラウンは佐伯の左フックをまともに貰ったが、回転していた為に威力が半減となり、それでも後方に倒れる様に体が動くと、右手を床に着け片手で側転の様な動きから途中で佐伯に蹴りを放つ。まるっきり上下が反対になっている時に佐伯に蹴りを放ち、そのまま後方に飛び再び構えるブラウン。

しかし佐伯は、このブラウンの蹴りを左のショートアッパーで軌道を逸らし、構えたブラウンに対しフットワークを使いながら左に回っていく。

「ここまでにしようか?」

ブラウンの言葉にスパーリングは終了となり、見ている者誰もが一斉に溜め息を吐いた。

「流石に強いな!」

「いやいや……多彩な蹴り技に、正直参りましたよ!」

「自信は有ったんだけどな……1発も蹴りが入らなかった。完敗だ……」

「あのままやってたら、分かりませんでしたよ!」

「……君の優しさを受け取るとするか……いいスパーリングだったでいいかな?」

「はい!」

この時ブラウンは、才能という物を初めて感じた。多分、あのままやれば更に佐伯は洗練されていき、ブラウンでは追う事すら出来なくなっていた筈である。その証拠に、ブラウンのハイキックをカウンターで捉えるという離れ業を佐伯はやってのけたのだ。最早ブラウンでは、佐伯には敵わない。これはきっと、スパーリングをしたブラウンが1番痛感しているだろう。

「佐伯、カポエラはどんな態勢でも、生きた蹴りを出せるんだ……君のボクシングに役立つと思わないか?」

「そうか、崩れた態勢でもKOが狙えれば…………確かに凄い事です!…ちょくちょく勉強させて貰います!」

何やら佐伯にとって、とても重要な事を学べそうである。本日も佐伯にとっては、かなり意味のある事となっている。

「佐伯、君には是非に、強くなって貰いたい!」

「当たり前ですよ!……最低世界チャンピオン、それは必ず達成します!」

「うん…楽しみだ!……よし、今日はバランスの練習を徹底的にやるか?」

「はい、お願いします!」

佐伯はどうやら、一皮剥けそうである。

佐伯にとって、大切な1日になりました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] さすが佐伯、天才ですね! 甲斐も何か進歩あってほしいですね!
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