合宿終わり……
合宿が終わります……
最終日も朝からみんなでロードワークに行く。いつも通り、最後の約2kmは勝負をしている。本日のビリだが、手塚が最後となった。池本と徳井はいつもより速いスピードで走り切り、続いて喜多·甲斐·佐伯となっている。本日の朝食担当は手塚に決まった。
朝食となるが、手塚の料理は酷い物であった。目玉焼きは焦げており、味噌汁は出汁が入っていない。野菜を炒めたらしいが、全てが黒くなっており、見た目からまともに食べられそうにない。
「おいおい、マジかよ……」
「うわぁ……」
「酷ぇ……」
「食べられるのかよ……」
「文句を言うな、池本さんは食べてるぞ!」
みんなが池本の方を見ると、池本は黙って食べていた。
「……食べるか……」
「しょうがないよね……」
「頂きます……」
「……………………………………」
「何だよ、いいから食べろよ!」
5人は手塚の作った朝食を食べた。
「うわぁ、不味い!」
「これは食べ物なのか?」
「材料が勿体無い……」
「酷いを通り越してますよ!」
「不味いなぁ……食べられた物じゃないな!」
『お前が言うな!』
「うるせぇなぁ、食べる事は出来るぞ……食べとかねぇと、練習もたねぇぞ!」
池本に言われ、みんなが渋々食べ始める。
「……あれ?…池本さん、ふりかけ……」
「馬鹿、徳井静かに!」
『!?』
「ふりかけだって?」
「1人だけずるいですね?」
「隠してましたね……」
「どうりで静かに食べてる訳だ……」
5人は池本のふりかけを取り合いした。池本は呆れた顔をして、自分の分の食器を片付けた。
午前中の練習だが、最後も徹底的に走り込みである。道なき道をひたすら走り、ダッシュやジグザグ走行をする。合宿最終日とあり、みんな疲れが溜まっている筈ではあるが、誰もが遅れずに必死で走り切る。それぞれが気持ちから、一流のボクサーである事を表している様である。
走り込みから帰って来ると、そのままジムワークに移る。シャドーボクシングから始まり、ミット打ちを佐伯も甲斐もしっかりとやり切る。本日のミットを持つ者は、佐伯は喜多であり甲斐は手塚であった。本来のコンビでミット打ちである。その後もしっかりと練習し、合宿終了となる。
荷物を片付け、オーナーに挨拶をしてから自分達のジムに戻って行った。厳しい合宿だが、やり切った感の有る合宿である。
合宿は終わったが、各自そのままジムへ直行し練習となる。
佐伯は川上ジムへ戻る。喜多と池本も居る。佐伯はロードワークに出て行き、池本は石谷トレーナーと話をしている。そんな時、訪問者が現れた。
「川上は居るか?」
「おお、天川じゃないか?……どうしたんだ?」
「いや~、うちのジムになかなかの選手が来てな……手合わせ願いたくて来たんだ」
「手合わせかぁ……階級は?」
「Sフェザー級だ……誰か居ないか?」
「喜多でいいか?」
「有難い……用意するぞ!」
「はい、お願いします」
天川ジムの天川会長が連れて来た男は頭を下げ、すぐに準備に入った。喜多は川上会長から言われ、スパーリングの準備をする。
「トレーナー、佐川亮三ですね?」
「その様だな……大学の時に国体も制した男か……少し楽しみだな」
準備が整った時、佐伯がロードワークから戻って来る。佐伯も見守る中、佐川と喜多のスパーリングが始まる。
スパーリングの内容はというと、佐川がいくら国体を制した若者だと言っても相手は元世界チャンピオンの喜多である。確かに見所は有り、佐川も善戦してはいたが、喜多は試合を実に上手くコントロールし自分のペースでスパーリングを進めていた。
佐川のパンチ力は確かに凄い物であった。ガードをしたにも関わらず、喜多が顔色を変えたのである。有る意味、このパンチのせいで喜多は自分の戦い方に徹したのかもしれない。
スパーリングは2ラウンド行い、佐川にとっては課題の多い物となったがそれでも光る物があった。
「ありがとうございます、勉強になりました!」
「おう……まだまだだけど、これから頑張れよ!」
「はい、喜多さんに忘れられない様に頑張ります!」
「……気負い過ぎるなよ……」
喜多は佐川の肩を軽く叩いた。
「川上、喜多は強いな!」
「佐川だって、これから楽しみだろ?」
「まぁな!…これからしっかりと絞っていくさ!」
「楽しみにしてるからな!」
天川会長と佐川は頭を下げて帰って行った。
「どうだった、喜多?」
「……強くなりますよ……」
「確かに、いい面構えだったな」
「喜多さん……手を抜いてたでしょ?」
「そんな事ねぇよ!」
「佐伯、焼きもちか?」
「情けねぇな……」
「焼きもちじゃないですよ!」
「……佐伯……どう捉えようと構わんが、次の世代の力は確実に育って来てるんだ……お前がやる事は、そいつ等を引っ張っていけるだけの実力と結果を残す事だ……」
「はい、必ずやります!」
「珍しく喜多がまともな事を言ってるな?」
「池本さんが、いつも邪魔してるんでしょ!」
「記憶にねぇぞ?」
「いつも通りですね……」
どうやら、喜多は喜多なりに色々考えている様だ。今回のスパーリングだが、喜多にとっても佐伯にとっても意味の有る物だったのかもしれない。
川上ジムでそんな事が有った頃の西田拳闘会、
「おらおら、もっと腰入れてパンチを放て!」
「蚊も殺せねぇよ!」
「へなちょこパンチしか打てねぇのか!」
甲斐は手塚に激を飛ばされながら、手塚の持つミット目掛けてパンチを一心不乱に放っていた。手塚も、何か考えが有る様だ。
新しい時代は、確かに来ています……




