世界チャンピオンに向けて……
世界チャンピオンに向けて!
佐伯も甲斐も休暇が明け、所属しているジムに帰って来た。ジムワーク再開である。前の試合で勝った事により、2人は次戦で世界タイトルマッチとなる事になった。有る意味、ナイスなタイミングである。2人もそれは当然分かっている事であり、気合いも入っている。そんな2人が練習を再開する。
佐伯は川上ジムに顔を出す。
「お願いします!」
「おう、よろしくな!」
「世界に向けてだな!」
「はい!」
「……そうか、世界か…………たっぷり絞ってやるか」
「池本さん?」
「早く着替えろ!……俺とロードワークだ!」
「はい!」
佐伯は着替えて来ると、池本と出て行った。
「石谷さん、大丈夫ですかね?」
「大丈夫だ……死ぬ事は無い」
「それ、大丈夫なんすか?」
喜多は心配の様である。
ロードワーク…………
「おら、しっかり付いて来い!」
「遅ぇ!…何やってんだ?」
「何だ何だ、大分軟弱だな?」
「ここからペース上げるぞ!」
「付いて来れなかったら、奢って貰うからな!」
池本にかなり激を飛ばされながら、佐伯は池本の後を何とか付いて行っている。それにしても、引退した筈の池本は脅威的なスタミナである。
ロードワークから帰って来た池本と佐伯、
「すぐに次に移るぞ!」
「…………飛ばし…過ぎ……です……」
「馬鹿かお前は?……ロートルの俺に遅れを取るな!」
「そんな…ロートル……いません……て……」
「ここに居るだろ!……早くシャドーに移れ!」
「……はい……」
佐伯はシャドーボクシングに移る。池本とのロードワークがかなり堪えたらしく、シャドーボクシングの動きが重い。池本に激を飛ばされながら、佐伯は練習を続けていく。
本日の佐伯の練習は、休暇明けという事もありスパーリングは無かった。その分、基本的な練習が多くなり、佐伯はしっかりと絞られていた。
川上ジムの戸締まりは、本日は喜多である。喜多は池本と石谷トレーナーに声を掛け、残って貰っていた。
「どうしたんだ、喜多?」
「いや……池本さんは流石だなって思って……」
「???」
「佐伯とのロードワーク……しっかり課題を与えてましたし……」
「トレーナー、こいつは馬鹿ですか?」
「確認するな……間違いなく馬鹿だ!」
「ちょ、ちょっと!」
「喜多、池本が何で一緒に走ったと思う?」
「え?……佐伯に課題を……」
「……お前は池本と走ってた時、何を感じた?」
「俺はまだまだ甘い……こんな感じです」
「何でそう思ったんだ?」
「池本さんの背中しか見なかったから……」
「……喜多……佐伯は今現在、このジムの筆頭だ……自分では甘えてないつもりかもしれないが、自分より上の存在を近くで感じられない……」
「だから俺は、前を走るんだ……これから戦うであろう世界レベルに負けない様に、自分の甘さを自分で認識させる……課題じゃねぇ、根本からのやり直しだ」
「……俺達の時も……」
「気付くのが遅ぇよ!」
「池本……馬鹿トリオは大変だな……」
「いや、ちょっと石谷さん!」
「明日は、そのトリオの最後の1人が来ますよ!」
「という事は、今日はあっちか?」
「はい、あっちで甲斐を絞ってます」
「あっちも絞られてんのか……負けられねぇな!」
「お?……やる気スイッチが入ったか?」
「池本……喜多のおつむも治してくれ!」
「流石にそれは無理です!」
「2人共、何言ってんですか~?」
「「はっはっは!」」
なかなか楽しい未来が見えてきそうである。
一方の甲斐だが、こちらは西田拳闘会に顔を出す。
「お願いします!」
「おう、世界に向けてだな?」
「はい!」
「しっかりやって行こうか?」
「はい!」
「甲斐、早く着替えて来い。俺とロードワークだ」
「はい!」
甲斐は着替えて来ると、徳井とロードワークに出て行った。
「大丈夫かなぁ?」
「西田さん、大丈夫ですって!」
「西田君、死ぬ事は無いよ」
「……大丈夫な気がしない……」
西田会長は、かなり心配している。
ロードワークだが、徳井は黙って黙々と走る。ダッシュを交えながら、結構なスピードで走っていく。甲斐は付いて行くのがやっとの様である。
ロードワークから帰って来た徳井と甲斐、
「次いくよ……早く用意して!」
「……徳井さん……飛ばし…過ぎ……」
「俺はロートルだよ?……現役が弱音を吐かない!」
「……は、はい……」
甲斐はシャドーボクシングに移る。甲斐のシャドーボクシングは動きがかなり重い。大分疲れている様だ。
甲斐は手塚にかなり強い口調で激を飛ばされている。甲斐はひたすら練習に没頭しているが、手塚は容赦が無い。特にミット打ちの時、甲斐のパンチが手打ちになった。
「ふざけるな!…何だ今のパンチは?負けるつもりか?……やり直しだ、後5ラウンド!」
手塚のトレーナー振りも板に付いて来た。
甲斐は基本的な練習を1日しっかりと行い、本日を終了とした。
西田拳闘会の戸締まりの後、手塚は徳井とラーメン屋に寄った。
「悪いな、徳井……」
「何が?」
「ロードワークだよ……」
「ああ……あれは、池本さんから!」
「そうなのか?」
「池本さんがさ……周りに誰も居ないと、知らず知らずのうちに練習が甘くなるって……」
「そういえば……池本さんは、いつでも俺達の前を走ってくれてたっけなぁ……」
「あの人には、頭が上がらないよ……」
「全くだ……背中を見失わない事が大変だったなぁ……」
「……俺は、ロードワークでも付いて行ったけどね!」
「うぐっ……それを今言うか?」
「今じゃなければ、何時なのさ?」
「この野郎……」
「池本さんに、金髪坊主にされない様にな!」
「それが有った……」
どうやら、こちらも楽しそうである。
どうやら、佐伯に対しても甲斐に対しても鍛え直す事を前提に、池本と徳井は協力をしていく事になりそうである。世界はそれだけ厳しいのかもしれない。
しかし、逆を言えばそれだけ期待されているという事である。その期待を2人は、どんな形で応えていくのか。その答えは、神のみぞ知るになりそうである。
やる事は、まだまだありますね……




