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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
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試合に向けて……

2人は試合に向けて練習中……

佐伯も甲斐も試合に向けて全力投球である。

自分の所属するジムで、毎日を力の限りボクシングである。勿論、佐伯は喜多が、甲斐は手塚がスパーリングからいつもの練習までを付きっきりで指導している。最近では、喜多も手塚もミットを持つ様になり、更に激しい激を飛ばしていた。

喜多と手塚はスパーリングでも佐伯と甲斐の相手をするが、毎日の居残り練習や徳井とのスパーリングから試合勘や身体の動きも現役に近い物になり、スパーリングパートナーとしての役割をしっかりとこなしている。

喜多も手塚も現役に近い実力に戻っているが、佐伯と甲斐はスパーリングで2人を圧倒する事も少なくない。2人の成長に喜多も手塚も目を見張るが、2人の鼻が伸びない様に喜多と手塚は気合いを入れ直す。喜多も手塚も、自分の引き出しを空けながら必死でそれぞれのスパーリングパートナーとしての役割をこなしていく。


ジムの方はといえば、池本と徳井が川上ジムと西田拳闘会に交互に行き臨時トレーナーをやっている為、喜多と手塚の穴埋めは出来ていた。

池本と徳井のトレーナーの仕方は違っている。当たり前といえば当たり前であるが、同じジムで練習を積んだ筈だが、こうも違う物かと石谷トレーナーと篠原トレーナーは思っていた。

池本は、基本的に厳しい。妥協すれば試合で苦しむのは選手である事を念頭に、徹底して基本を叩き込み言葉もきつい。[ここでダメな奴は勝ち残れない]これが池本の考え方である。

一方の徳井は、基本的に優しい。1つ1つの練習を丁寧に、何度でも付き合ってくれる。上手く出来れば素直に褒め、言葉はどこか穏やかである。[やるだけやって、ダメなら諦めればいい]徳井らしい考え方である。

しかし、2人に共通して言える事が有る。[やるのは自分]である。だから、池本に指導されても徳井に指導されても、最終的には己でやり切るしか無いのである。


池本と徳井がトレーナーをやる為、練習生は増える。特に西田拳闘会は立ち上がって間もないジムの為、練習生はそれ程多くない。直接池本と徳井に教えて貰える機会が多く、それを聞いた人達が西田拳闘会に押し寄せて来る事になった。会員の中には女性や中年の男性もおり、戦うというより健康の為に身体を動かす人も複数名居た。

ここで意外な事だが、池本はそういった戦う為じゃない人達の扱い方がかなり上手い。褒める時は少し大袈裟に褒め、直したい時は無理には進めないといった態度を取る。更には、厳しい時には必ず声を掛け終わると本人達と一緒に喜ぶ。本当に意外な1面である。池本は健康の為の会員、特に中年の男性から人気が有る。

意外といえば徳井もである。徳井は元々言い方が優しい為、池本より健康の為の会員向きだと思っていたが、徳井は余りにも言っている事が通じないと、途中で篠原トレーナーと交換する事が多い。意外に徳井は短気である。フォローをする篠原トレーナーは上手くやっており、女性会員からの人気は篠原トレーナーが1番である。


肝心の佐伯と甲斐はというと、7月に入り練習も過酷さを増していた。スパーリングは佐伯と喜多·甲斐と手塚ではあるが、ラウンド数が増えている。この頃になると、喜多も手塚も現役の頃と遜色ないくらいに動けており、スパーリングが長くなっても問題は無い。寧ろ、長くなる事で色々駆け引きが出来、好都合かもしれない。

スパーリングが長くなった事で、喜多も手塚も経験の差を出していく。これが佐伯と甲斐にはかなり厄介の様である。

喜多は佐伯の方がスピードが上と認識すると、緩急を付けた動きをしながら佐伯に自分のスピードを実際より速く感じさせている。そんな高速のスパーリングの中、喜多は佐伯のパンチを予測し、場合によってはカウンターを狙っている自分のパンチでさえ予測し、更にその上を取っていた。

佐伯に取ってはスピードで負けている錯覚を起こし、スパーリングだけではなく練習自体にも集中力が増す結果となり、佐伯の練習は激しさを増す事になった。

手塚は甲斐を翻弄する事に徹している。距離を取ったと思えば、接近戦を仕掛ける。大きいパンチを放ったと思えば、小さく鋭いパンチを放つ。過去に自分がやられて嫌だった事を次々に甲斐にやっていく。

甲斐は最初こそ苛ついたりしたが、今では冷静に対処しながらスパーリングを進めている。甲斐の精神面の成長にも役立っている。

しかし、甲斐がいくら冷静に対処出来る様になっても、パートナーは手塚である。それだけで優位には立てない。

次第に甲斐は劣勢に立たされるが、甲斐にスイッチが入る。手塚のパンチが何処に飛んで来るか分かるかの様に甲斐は手塚のボディさえもかわしていく。

これに対し手塚は、自分がSライト級で有るという利を生かし、パンチを相討ち狙いで放っていく。甲斐はフェザー級の為、威力は手塚のが上である。甲斐はガードをしっかりとしているが、手塚は甲斐のガードの上からパンチを相討ち上等で叩き込んでいく。

これは甲斐にとって予想外で有り、スパーリング終了後に毎回考えさせられた。毎回考えて、その度に甲斐はスパーリングで手塚に跳ね返される。その為、練習だけではなく、いつでもボクシングを考える様になっており、その昔に池本が言っていた[息を吸う時もボクサーでいる事を意識する]事に近い状態になっていた。


2人は次の試合までに、強くなる要素たっぷりである。間違い無く、試合までにボクサーとして1皮も2皮も剥けるだろう。何より、本人達が強くなる為に努力を惜しまない事が素晴らしい。

この先、2人が直接対決するまでの道のりが、かなり楽しみになって来た。これから、2人はボクサーとしてどんな道を歩むのだろうか。

順調……かな……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今のところ着実に日々成長していますね! 試合までにどれだけ成長できるか、まだまだこれからですね!
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