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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
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エリック·ロペスというボクサー……

エリック·ロペス……

エリック·ロペスはメキシコの余り裕福ではない家庭の三男として生まれる。生活は苦しく、ロペスは学校を卒業したら働く予定でいた。だからロペスは、将来について深く考えた事は無かった。

ロペスの運命を変える事が起きたのは、そんな何気無い日常の1コマからだった。

当時、世界チャンピオンを育てたいと単身世界を渡り歩き、才能有る者を探しに行った男が居た。ミッキー·リデル、当時59歳であり世界的に有名なトレーナーである。彼が排出した世界チャンピオンは多数おり、押しも押されぬ名トレーナーであり現在は自分でジムも開いている。

そのミッキーがメキシコのとある街に着いた時、その事は起こった。

昼間から酔っ払っている者がおり、かなり理不尽な事を大声で叫んでいた。道行く人に絡み、手の付けられない状態であった。

「俺はボクサーだったんだ!…戦いたい奴は、いつでも掛かって来い!」

男は叫びながら、シャドーボクシングの様な事をしていた。

しかし、このシャドーボクシングがなかなか同にいっている。かなり厄介だとミッキーは思っていた。

ミッキーは男を止めようとしたが、その前に男に声を掛けた男が居た。エリック·ロペス、当時15歳である。ロペスは叫んでいる男に声を掛けるが、男はロペス目掛けて攻撃を仕掛けた。

驚く事はここからである。

ロペスは男の攻撃を難なくかわしていく。かわしながら、何やら声を掛けている。端から見るといかにも危ない感じだが、ロペス少年にとっては、この男のパンチは当たる筈も無い物として捉えられている。ミッキーは一目見て、ロペスの才能に惚れ込んだ。

この一連の騒動の後、ミッキーはロペスにどうしてもボクシングをさせたいと本人やロペスの両親を説得する。

始めこそ、ロペスもロペスの両親もミッキーの話を信じなかったが、何度も通い詰めるミッキーに負けて、ロペスはボクシングをする事になった。


ロペスはすぐに頭角を表す。

ミッキーはロペスを引き取り、自分のジムの有るニューヨークに連れて来た。その上でミッキーはお金を出し、ロペスを高校に通わせる事にした。ミッキーはロペスの通う高校にボクシング部の名前だけ作ると、ロペスの練習は自分のジムで行っていた。

ボクシングを始めて半年、ロペスは州の大会に出場する。ミッキーに教えて貰った練習通りに試合をするロペス、結果は全試合RSCという脅威的な強さで優勝を拐った。

続く全米学生選手権もロペスは制した。この大会は、全てをRSC勝利とまではいかないが、それでも圧倒的な勝利をした。ボクシングを始めて1年も経って無い男が、学生とはいえ全米を制した。ある意味事件である。

だからといって、ロペスが慢心することは無い。

自分の為にお金まで出してくれるミッキー、自分が活躍する事で将来的には両親や兄弟にも楽を出来る環境が貰える。何より、リングの上で試合する事の楽しさがロペスの練習を支えていた。


ミッキーの練習は、マイク·タイソンを育てたカス·ダマトがやっていたナンバーコンビネーションを用いている。

ナンバーコンビネーションとは、相手の身体の部位にナンバーを付けトレーナーの指示通りにコンビネーションを放っていく。あのマイク·タイソンを支えた練習の1つであり、的確にパンチを放つ事で試合中に確実に急所にパンチが打ち込まれる。

ミッキーの練習はこれだけでは無い。ミッキーが育てたボクサーに必ずさせる事、それは、毎日練習の終わりに基本パンチを鏡の前で繰り返し反復させるのである。ひたすらジャブを鏡の前で打ち、次はストレート、終わればフックという様に基本動作をひたすら繰り返す。これをやる事で、癖の無いパンチになっていく。

そして何より、ミッキーの練習は優しく無い。ミッキーの考え方では、まず最初にボクシングが有る。全てはそこからであり、自分も含め全てはその後という考え方である。だから、妥協という考え方が無い。

しかし、そのミッキーの考え方はエリック·ロペスという人物に出会い、間違いで無いとミッキーは確信していた。

ロペスはミッキーの練習に黙って付いて来る。来る日も来る日も徹底した基礎を叩き込まれながら、試合に近い状況でのコンビネーションの練習に、時に徹底的に下半身強化の為の走り込みをやりながら、誰もが心を折れそうな練習をロペスはやり遂げる。

結果は付いて来る。高校を卒業する頃には、ロペスの名前は世界に広まりロペスは特待生として大学に進学する。高校でのロペスは、世界ジュニアを制しており、勿論無敗。オリンピック候補選手としても注目を浴びていた。


大学での生活も、基本は変わらない。

ロペスは練習を常にミッキーと行い、いつでもミッキーはロペスの試合に付いて行った。2人の強い絆が見て取れる。

ロペスは国籍をメキシコのままにしていた為、代表についてはメキシコとなるが、これが1つの事件を生む。

ロペスは大学在学中にオリンピックに出場を目標としていたが、アメリカを主戦としているロペスのメキシコ代表に国際オリンピック委員会が難色を示した。結局、ロペスは大学在学中にオリンピック出場を断念する事になる。

この時、ミッキー·リデルはマスコミを通じて声明文を出した。

「ロペスにとって、どんな事も回り道にはならない。世間も否定した奴等も、後で必ず後悔をする。後悔した時、自分の愚かさに気付く」

この声明文は物議を醸し出したが、ミッキーもロペスも気にしていなかった。


ミッキーの声明が間違いで無い事はすぐに証明された。ロペスは世界選手権を圧倒的な強さで制した。殆どパンチを貰う事無く、各国の代表選手を倒していった。

この事でメキシコ自体をロペスは動かす事に成功した。

メキシコ政府は国際オリンピック委員会に対し、ロペスのオリンピック出場を直訴したのだ。メキシコ政府にとっても、ロペスという人物は大切であると言っている様な物である。

結果、ロペスは次のオリンピックに出場し、見事に金メダルを獲得する。また、金メダルを獲得した事により、ロペスの家族も裕福になる事になった。

その後もロペスはアマチュアとして、世界選手権を始め数々のタイトルを総なめにしていった。アマチュアではやり残しが無い、まさにそんな感じである。

そんなロペスが遂に、満を持してプロへの転向を発表したのだ。世界が活性化する訳である。


これは、ラリオスがロサンゼルスに戻る日に池本と話した会話である。

「池本、ロペスが遂に……だな……」

「分かってたんだろ?」

「噂は有ったからな……それより、お前だって分かってたんだろ?」

「確かに、アマチュアではやり残した事はねぇからな……大した選手だよな?」

「ああ……確かに凄い選手だ……」

「最短だと、世界タイトル取ったらすぐか……」

「……難しい相手だ……全てのレベルが高い……」

「まだまだ足りねぇな……まだまだ精進が必要だな……」

「そうだな……しかし、可能性が有るとしたら……あの2人という所か……」

「今はまだ、かなり低い可能性だがな……」

池本もラリオスも、ロペスについては要注意の様である。

もう1つ、付け加える事が有る。ミゲールはミッキーからトレーナーを学んでいた時期が有る。10年以上も昔である。

ミゲールはボクシングより先に人間が有ると考えており、ミッキーとは考え方が合わないとの事で別れる事になった。この辺の因縁も、微妙に影響が有りそうである。

強い事は確かの様です……

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― 新着の感想 ―
[良い点] かつてない強敵が登場ですね! 2人ならきっと乗り越えられる、期待するしかないですね! 楽しみな相手です!
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