休暇が明けて……
試合に向けて……
1週間の休暇が明け、佐伯も甲斐もジムワークを再開させた。本日の朝よりロードワークも再開し、2人はやる気満々といった所だろうか。疲れも抜け、これからが本格的に試合への準備となりそうである。
佐伯は川上ジムに姿を現した。
「お願いします!」
「おう!」
「疲れは抜けたか?」
「はい!」
「よし、ロード行って来い」
「はい!」
佐伯は着替えてロードワークに出た。
「……何か変わりましたかね?」
「スパーやれば分かるんじゃないか?」
「……そうですね」
「問題児2人はどうしたんだ?」
「今日は、あっちに行ってるみたいですよ」
「……あいつ等は、色々楽しそうだな?」
「本当に……」
川上ジムは本日、川上会長はお休みである。どうやら、何か用事が有るらしい。本日は石谷トレーナーと喜多だけである。
ロードワークから帰って来た佐伯、着替えてアップをしてから喜多とスパーリングになる。
佐伯と喜多のスパーリング…………
喜多は左ジャブを放ち、左に左に回っていく。そのジャブの切れはかなりの物であり、動くスピードは世界戦の時より速く見える。実際、喜多の世界戦の時より今の方が速い。
佐伯は左ジャブを放ちこちらも左に回っていくが、佐伯のジャブのスピードが凄い事になっている。喜多が2発目に放ったジャブの後から佐伯はジャブを放ったが、佐伯のパンチが先に喜多に当たり喜多のパンチが伸び切る前に佐伯はその場所から移動していた。
これを受けた喜多は、自分のマックスのスピードで佐伯と対峙する事にした。喜多がギアをトップに入れた為、普通にパンチは当たらない、誰もがそう思うくらいのスピードである。
しかし、佐伯はその喜多に確実にパンチを当てていく。喜多の左を避けながら、佐伯は自身のリードブローを喜多に打ち込んでいく。
喜多は佐伯のパンチを肩で強引に弾き、接近戦に持ち込んだ。クロスレンジで喜多の素早いパンチが佐伯目掛けて飛んで来る。
これに対し、佐伯はクロスレンジでの喜多のパンチを全く貰わない。上体を揺らしながら頭に来たパンチをかわし、ボディに来たパンチはガードをしている。
喜多は回転を上げ更に速い連打を出していくが、スピードに乗って来た所で佐伯が左をカウンターで喜多に打ち込んだ。喜多はそれでも止まらないが、佐伯は2発3発とカウンターを喜多に捩じ込んでいく。
喜多が後退し、佐伯が前に出て行く所でゴングが鳴る。
リングから降りて来る2人、
「休暇明けだから、今日は1ラウンドだ……」
「やり足りないですよ!」
「休むのも仕事だって、池本さんに言われたろ?」
「……分かりました……」
「佐伯、ミットやるぞ……喜多、練習生を見てくれ!」
「「分かりました」」
喜多は練習生の指導に廻る。佐伯は石谷トレーナーとミット打ちを始める。このミット打ちだが、石谷トレーナーは佐伯のレベルアップを肌で感じる事になる。
佐伯のパンチのスピードが、今までとは比べ物にならない。ハンドスピードが増しており、スピードが増した事でパンチの切れも増していた。これから先、更にKO勝利が増えそうである。
とはいえ、流石は石谷トレーナーである。しっかりと激を飛ばし、佐伯のミットを10ラウンドきっちりと持った。
「サンドバッグ打って、しっかり出直せ!」
「……はい……」
佐伯はサンドバッグを叩き、この後、いつも通りの練習をして帰路に着いた。
甲斐は西田拳闘会に来た。
「お願いします!」
「おう!…疲れは抜けたか?」
「はい!」
「着替えて、ロードに行って来なよ」
「はい!……西田会長、どうしたんですか?」
会長室で下を向いている西田会長を見付け、甲斐は2人に聞いた。
「サポートチームに入れて貰えなかった事がショックらしい……」
「ずっと池本君に言ってたからね」
「……会長がサポートチームって……」
手塚は甲斐の肩に手を乗せた。
「言いたい事は分かる……」
「……もう少し、立場を理解して欲しい所だね……」
「…………とりあえず、着替えてロードに行って来ます!」
甲斐は着替えてロードワークに出て行った。
甲斐がロードワークから帰って来ると、池本と徳井が居た。
「アップして、手塚君とスパーリングね」
「はい!」
「俺達も見てるからな!」
「楽しみにしてるよ!」
「はい!」
甲斐はアップし、手塚とスパーリングになった。
甲斐と手塚のスパーリング…………
手塚は左ジャブを出し、頭を振りながら前に出ていく。この頭の振りが速く、外から見ると的が絞れなさそうである。
これに対し甲斐は、サウスポーから右ジャブを放ち右に回っていく。アウトボクシングを展開している。この甲斐のジャブだが、手塚を綺麗に捉える。甲斐のジャブに合わせ、手塚の頭が何度も弾ける。
甲斐と手塚の距離が出来ると、手塚は先程より速く頭を振りながら前に出て来た。どうやら、全力で甲斐の相手をするつもりの様である。
甲斐は手塚のアタックに対し、的確にリードブローをヒットさせる。そのパンチで手塚の圧力が少し弱まったと感じた時、甲斐は一気に間合いを詰め、手塚にパンチを放っていく。手塚はガードを固めたが、甲斐が止まらないと感じると打ち合いに出た。
本来なら、この手塚の判断を正解だと言いたい所だが、本日はそうはいかない様である。
甲斐は手塚の得意とするクロスレンジで、手塚のパンチをかわしながら己のパンチを叩き込んでいく。そのパンチの威力がどんどん上がっていき、手塚が後退していく。それでも甲斐は攻撃の手を緩めず、手塚にパンチを嵐の様に放っていく。
手塚は何発も甲斐のパンチを貰い後退するが、維持でダウンだけはしないでいた。その上でパンチを返していく。この辺は手塚らしく、褒めたい所ではある。
しかし、甲斐は止まらない。手塚をどんどんと追い詰めていく。
手塚は甲斐のパンチを受け、ふらついたが左手でロープを掴みダウンを拒否し、その崩れた態勢からパンチを放つ。
このパンチを甲斐は何とかガードする。予想しないパンチだった様ではあるが、クリーンヒットは許さなかった。
甲斐がガードをした事で手塚が態勢を整えた時にゴングが鳴る。
2人がリングから降りて来る。
「今日はここまでだ……」
「足りないですよ!」
「……怪我をしない為にも、少ないくらいが今はいいんだ!」
「……とりあえずは分かりました……」
「甲斐君、ミットやるよ!」
「はい!」
「手塚君、練習生を見てくれるかい?」
「すぐにやります……」
「池本君と徳井君は……」
「俺達は……」
「勝手に汗を掻きますよ!」
甲斐はミット打ちの後、いつもの練習をして上がって行った。
この日、佐伯と甲斐は確実に進歩した姿を見せる事が出来ていた。自分達は気付いていないかもしれないが、ちょっとやそっとではどうにもならないくらいの実力を備えつつ有る。ラリオス達が遥々アメリカからサポートをしにやって来る才能の片鱗が見えた日と言っも過言ではない。
しかし、彼等の目標はまだまだ先であり、ここで満足されても困る。だが、この2人なら大丈夫だと、少なくとも池本と徳井は感じている様だ。
順調です……




