佐伯と甲斐の休暇……
2人は休暇……
佐伯と甲斐は1週間の休暇となった。チームM&Jからは[何もしない様に]との事なので、朝のロードワークも休みにし2人はお互いに家で過ごす事にしたらしい。
佐伯は久しぶりに朝ゆっくりと起きる。
「珍しくゆっくりね?」
「命令だからね……」
「……大分、動き方がギクシャクしてるわよ?」
「大分しごかれたからね」
「……次の試合はどうなの?」
「……それは当日だね……俺は勝って、次に進むつもりだけどね!」
佐伯が朝飯を食べながら話をしていると、
「すいませ~ん」
「はい……あら、好美ちゃん!」
「昴は……」
「朝からどうしたの?」
「池本さんと徳井さんから、昴が身体を動かさない様にって!」
「……俺のお守りって訳か?」
「そう!」
「あらあら、羨ましい事……」
佐伯の母親は、怪しい笑顔を佐伯に向ける。
「うるせぇな……好美、DVDでも借りて来て、一緒に見ようぜ!」
「うん!」
佐伯と好美は、近くのレンタルショップに向かう事にした。
レンタルショップで5枚のDVDを借りて来た佐伯、自分の部屋で好美とそれを見出した。借りて来たDVDは、アクションが2枚·感動のヒューマンドラマが2枚·ホラーが1枚であった。
佐伯はアクションを再生したが、始まって30分もしないうちに眠ってしまった。好美は佐伯が眠ったのを確認し、佐伯の母親に挨拶して帰って行った。今の佐伯には、休息が必要という事を良く分かっている。好美は1人で、買い物をしながら家に帰った。
甲斐も久しぶりのゆっくりな朝である。
美里はすでに仕事に出ており、甲斐は美里の作った朝飯を温め直して食べていた。
「拳人、イル?」
「……朝早いね……」
「池本ト徳井ニ頼マレタカラネ!」
「俺のお守り役ね……」
「ソウ言ウ事!」
甲斐が食べ終わると、エリーは甲斐の手を引っ張って本屋に向かった。
本屋でボクシング雑誌を買った甲斐、そのままDVDも借りに行く。エリーとDVDを5枚借り、家に帰ってエリーと一緒に見ていたが、こちらも佐伯と同様に始まって30分程で眠ってしまった。
エリーは甲斐に毛布を掛け、静かに甲斐の家を出た。
夕方になり、佐伯も甲斐も電話で起こされる。佐伯は喜多から、甲斐は手塚からの電話である。
「「風呂上がりにストレッチと柔軟はやる様に!」」
だそうだ。
2人は言われるまま、入浴後のストレスと柔軟だけはやった。
翌日以降は、エリーも好美も色々とやる事が有る為、2人の所に顔を出す事はなかった。2人は各々、ゆっくりと自分の部屋で過ごしていた。
休暇4日目、借りて来たDVDを見てしまった佐伯と甲斐は、どちらからというでもなく連絡を取り合った。その結果、2人は昼をファミレスで一緒に取る事にし、借りているDVDを交換する事になった。
待ち合わせをし、2人でファミレスに入っていく。
「いらっしゃいませ!」
席に案内され、注文を終えた2人は自然とボクシングの話になる。
「拳人、左フックってなかなか当たらねぇよな?」
「そうだね…頭を振って沈む様に前に詰めれば、なかなか当たらないかな?」
「アウトでやってても、左フックはなかなか貰う気がしないんだけどな……」
「どうしたんだ?…何か有るのか?」
「池本さんだよ……あの人の試合を見直すとさ、左フックを確実に当ててんだ……」
「……確かに、あの人の左フックは当たるイメージだね……」
「俺達が分からない何かが有るのかな?」
「……聞いてみるか?」
「教えてくれるか?」
「……確かに……」
「……徳井さんとラリオスは、スパーリングの相手してくれたけど……」
「池本さんは、やってくれなかったな……」
「何でだろうな?」
「俺達が、まだまだ足りないって事なんじゃないか?」
2人が話しているうちに、注文の品が届く。2人はそれを食べ始めるが、
「「「すいませ~ん」」」
「「はい?」」
「佐伯さんと甲斐さんですよね?」
「2人のこの間の試合見ました!」
「私達、ファンになっちゃいました!」
「そうなの?」
「それは、ありがとう!」
「一緒に食事してもいいですか?」
「話、色々聞きたいし!」
「出来たら……写真も!」
「別に構わないよな?」
「いいんじゃないかな?」
佐伯と甲斐は、ファンだという女の子3人と一緒に昼を取る事になった。この食事はなかなか楽しい物となり、2人のリフレッシュにもなった。
しかし、2人はこの事で先程話していた事を忘れてしまっていた。意外に重要な事を話していた筈ではある。
時を同じくして、池本と徳井は昼食をラーメン屋で食べていた。本日は佐伯も甲斐も休暇中の為、西田拳闘会にて練習の予定らしい。
「池本さん、スパーリングをしないなんて珍しいですね?」
「そうか?……あんまり、熱苦しくしたくねぇからな……」
「しかし……佐伯と甲斐の成長、肌で感じたかったんじゃないですか?」
「…………確かにそれは有るんだが……」
「どうしたんですか?」
「……徳井、俺がスパーリングをしたとする……」
「はい……」
「どっちが参考になると思う?」
「どっち……佐伯も甲斐も、参考になるんじゃないですか?」
「……質問を変える……」
「はい……」
「俺とのスパーリングを見て、どっちに収穫が有ると思う?」
「スパーリングを見ての収穫……そうなると……甲斐の方が収穫が有りますね……」
「何でだ?」
「佐伯は、高速カウンターが有るけど……池本さんなら、それをスパーリングで攻略しそうですもんね!」
「……それだよ……」
「は?」
「2人は胸を付き合わせて、対等の立場で決着を付けなければいけない……俺は、2人が強くなる為に協力はするが……どっちかに肩入れする訳にはいかない……お互いの攻略方なんて、本人達に任せるしかない……」
「……難しいですね……でも、池本さんの気持ちは分かるつもりです……あの2人に、頑張って貰いましょう!」
「そうだな」
池本と徳井はラーメン屋から出ると、少し早めに西田拳闘会に向かった。池本の考えは、佐伯と甲斐が思っている以上に深い。
そんな池本の考えを知ってか知らずか、佐伯と甲斐は交換したDVDを見ながら、残りの休暇を過ごして行った。
予定の休暇を取り、2人共に身体の疲れはすっかり抜けた様である。
疲れが抜けて、改めて試合に向けて……かな?




