佐伯と甲斐、精進の時……
チームM&Jの練習……
ラリオス達が池本のマンションで作戦会議をした翌日、池本と徳井は川上会長·石谷トレーナー·篠原トレーナー·西田会長を呼び出し、ラリオス達と決めた話をした。全員が納得し、その日より佐伯と甲斐を6月半ばまで徹底的に基礎体力等の強化に当てる事にした。
喜多と手塚をここに呼ばなかったのは、池本と徳井の企みであった。どうやら、喜多と手塚もこの地獄の基礎トレーニングに付き合わせるつもりらしい。
佐伯と甲斐の地獄の基礎トレーニングが始まる。
トレーニング初日、池本達は川上ジムに居た。例のTシャツを着てである。そこに佐伯が現れ、怪訝そうな表情をしながら更衣室に入って行く。佐伯が着替え終わると、池本は川上会長に声を掛け佐伯と喜多を連れて移動する。移動先は勿論、西田拳闘会である。
西田拳闘会にみんなで入ると、こちらでは甲斐が怪訝そうな表情をする。
「さて、お前等は今日から暫く俺達が見る」
「「は?」」
「ジム生の数を考えて、西田拳闘会で6月半ばまで練習だな!」
「地獄を見るからな!」
「弱音吐いたら、思いっきり蹴るからね!」
「僕は……美味しい物でも奢って貰うとしようかな?」
「……西田会長、これは……」
「今朝、決まったんだ!」
「豪華なフォローチームだよね……池本君に徳井君、ラリオスにミゲールまで居て……ジョシュはおまけかな?」
「ミスター篠原、僕は管理者さ……フォローチームは個性が強いからね!」
「川上会長とかは……」
「勿論、許可は取ってるよ」
「喜多君、手塚君……君達もトレーナーとして参加!」
「「!?」」
「俺達もですか?」
「だから、俺もここに居るのか……」
「話はここまでだ、早速練習に入るぞ!……しっかりやらないと、ラリオスみたいに惨敗をベストバウトと言い兼ねないからな!」
「その通りだ!……勝った試合をベストバウトにしよう!」
「勝つ為の最善の努力をしよう!」
「……僕は信じるだけだね!」
「……貴様等、昨日から口が悪いぞ!」
何だかんだと言いながら、佐伯と甲斐を連れて移動した。
西田拳闘会の近くに、大きな公園が有る。色々と整備されており、近くの大学等が走り込みやトレーニングに使う事も多い。舗装された公園1周の道が有り、大体1周600mで有る。
そんな公園に佐伯と甲斐を連れて来たフォローチーム、
「さて、まずは走るか……2周で1.2kmからだな!」
「アップだな……ジョシュ·ミゲール、しっかりと見ててくれ……ラリオスがさぼらない様にな!」
「池本、お前は……」
「いいから走りましょう……喜多·手塚、一緒に走るよ!」
「「おう!」」
「佐伯·甲斐、お前等が主役だからな!」
「「はい!」」
軽く準備運動をして、みんなで走り出した。
トレーニングは過酷である。
アップが完了すると、次は2人1組になり片方が足を持ち、持たれた方は腕だけで進んで行く。これを往復で行い終わった後に交代する訳だが、これを1セットとして5セット行う。続けて背中を地面に向けて四つん這いになり、その姿勢でダッシュをする。これも往復で1セットとして5セット行われる。更に、1周600mダッシュを10本行うのだが、600mだと大体2分以内に帰って来られる。そのままシャドーボクシングを3分になるまで続け、1分の休憩の後に次が始まる。
これだけでもかなりきつい。
それが終わるとスクワットを200回行い、そのまま公園を出てロードワークに行く。ロードワークはジョシュとミゲールは自転車で付いて来る形になり、残り約1kmは西田拳闘会までみんなで勝負である。負けたら奢るらしい。容赦無く買い物をされる恐さを誰もが知っている為、最後の1kmは誰もが本気であった。
ちなみにだが、約1ヵ月で日曜日が休みになるので24回のトレーニングとなり、ビリの回数は佐伯と甲斐が4回ずつ·ラリオスが7回·喜多が4回·手塚が5回となっいた。特に最終日はみんなが混戦となり、殆ど同時であったが、
「ビリはラリオスだ!……1番金が有るからな!」
と、池本の一言でラリオスに決定した。ラリオスは大分不満らしい。
厳しいのは、基礎トレーニングだけでは無い。西田拳闘会に着いてからが本番である。
佐伯と甲斐は、それぞれ喜多と手塚に付き添われテニスボールキャッチを行う。この練習は、受け手から見て左に来たボールは右手で、右に来たボールは左手でキャッチをするものであり、体を捻る事と素早く切り返す事の練習になる。300球が1日の課題である。
ボールキャッチの後は、ミット打ちとなる。ここでは、篠原トレーナーとミゲールの出番となり、佐伯も甲斐も10ラウンドを行う。いつも、なかなか激しいミット打ちとなる。
ミット打ちが終わるとスパーリングであり、これは喜多と手塚が対応する。今度の2人の相手は、アウトもインも出来る万能タイプである為、喜多も手塚も所属ジムに関係なく2人の相手をした。
始めのうちはそれで良かったのだが、ラリオスと徳井は直接2人の成長を感じたいとの事でスパーリングパートナーをする事になった。特に徳井は引退したとはいえ、5月の始めまで諸事情により現役であり、今もその流れで練習している為に佐伯も甲斐もかなりやり込められていた。
5月10日から始まったトレーニングだが、最初はこなすだけで精一杯であった佐伯と甲斐、特にスパーリングでは喜多と手塚にぼこぼこにされていた。
しかし、人間とは恐い物であり、目標を持った人間は凄い物である。
5月も終わりを迎える頃には、この地獄の様なトレーニングを佐伯も甲斐も当たり前の様にこなしていた。勿論、スパーリングにしても喜多と手塚はかなり手を焼いており、ラリオスと徳井も反撃を受ける事が多くなっていった。
そんな毎日が過ぎ、気が付けば6月11日になっていた。
基礎トレーニングからスパーリングまでを終えた2人にミゲールが声を掛け、2人を椅子に座らせた。ミゲールは佐伯と甲斐の足や腕、背中等を少し触っていた。
「ここまで身体を酷使して、弱音は吐かないか……」
「何言ってんのさ、ミゲール……」
「俺達は、まだまだやれるぜ!」
「……強がりはいいが、身体は正直だ……」
「ミゲールが言うんだから、間違いは無い……」
「明日から1週間、しっかりと休め!」
「「え?」」
「不安かもしれないけど、休む事も仕事だよ!」
「疲れは抜かないとな!」
「休暇明けから、試合に向けてだな!」
「……少しくらい、サンドバッグを殴っても……」
「……ダメなら、ミットを2ラウンドくらい……」
「ダメな物はダメだ!……いいから休め!」
「勝つ為の最善策だ!」
「「……はい……」」
池本とラリオスに怒鳴られ、渋々休みを取る事にした佐伯と甲斐だった。
佐伯と甲斐が帰った後、チームM&Jは歩きながら話をしていた。
「後は……各ジムで試合まで、練っていくだけだな!」
「我々の役目は終わった。ロサンゼルスに帰るとしようか?」
「試合は、絶対に勝つだろうしね!」
「世話になった……出来の悪い後輩で、本当に申し訳ない……」
「俺からも、お礼を言わせて下さい」
「何言ってんだ?…楽しい時間さ……」
「この後、2人は世間からもライバルとして見られていく……」
「2人揃っての練習……最後になるかもしれないね……」
「しょうがないさ……それが、ボクシングだろう?」
「そして、俺達はボクサーだもんね!」
「「「……だな!」」」
「「だろ!」」
5人は右手を握り拳を作った。その拳を軽くぶつけ、チームM&Jは解散した。佐伯と甲斐だけではない。この5人にとっても、このトレーニングの期間は思った以上に大切な時間になった様だ。
かなり厳しいトレーニングでした……




