ジムでの事件……
慣れて来た2人……
佐伯と甲斐はアカデミーの後、ジムワークに移る。アルバイトは土日のアカデミーが無い日のみとなり、平日はアカデミーの後はボクシングジムで練習している。
アカデミーのお金に関しては、池本が払うとラリオスに言ったがラリオスは断った。この後一悶着あり、結局、池本とラリオスが半分ずつ持つ形となるが、ラリオスは自分のアカデミーの為にそこは遣り繰り出来る。なので、アパート等もラリオスが準備した物である。
いつも通りに練習している4月の半ば、ジムに1人の女性がやって来た。
「デイビッド、今日からまたよろしくね!」
「休暇終わりか?……まぁ、少しずつ動いていくか」
「何言ってんのよ!…世界が見えて来たんだから、ガンガンに行くわよ!」
「はいはい……体は壊さない様にな……」
ラリオスにかなり強気に話した女性は、着替えてジムワークに移る。このタイミングで佐伯と甲斐がロードワークから帰って来る。
「すぐにジムワークに移る様に!」
「「はい!」」
2人はロープから始め、シャドーボクシングまでを終わらせた。
そんな2人を見ていた者が居た。先程ラリオスに話をしていた女性である。その女性が2人に話し掛ける。
「なかなかいい動きね!」
「それはどうも……」
「ありがとう」
「どう?…私とスパーリングしない?」
「冗談は辞めてくれるかな?」
「馬鹿にされてる気分だよ!」
「……気に入らないわね……デイビッド、この2人とスパーリングさせて!」
「……全くお前は……佐伯·甲斐、用意してくれ……」
「「はい?」」
何だか分からないが、この女性とスパーリングをする事になった。
最初は佐伯と女性のスパーリングである。
「佐伯、ちゃんと攻撃しろよ!」
「考えておきます……」
ゴングが鳴った。
女性は左ジャブを放ちながら、前に出て来る。なかなか鋭いジャブとスムーズな動きをしている。
佐伯はこのジャブをかわし、とんでもないスピードで左に回っていく。その際に、軽く左ジャブを放ち女性にヒットさせた。
これに対し、女性はスピードを上げ手数を増やし佐伯を追い掛ける。その力強さは、男性の4回戦のボクサーくらいはあるのではないだろうか。
しかし、相手が悪い。
佐伯はスピードを更に上げ、結局女性は佐伯に触れる事が出来ず、佐伯は左ジャブを何発か軽く当ててスパーリング終了となった。
続いて甲斐と女性のスパーリングである。
甲斐の戦い方は佐伯と違い、近い距離になる為に佐伯の様にはいかない。
ゴングが鳴ると、女性は左ジャブを出しながら前に詰めて来た。
甲斐は、このジャブをかわして距離を詰め、左ボディをヒットさせる。女性は甲斐が近くに居る為、休まず手を出し続けるが甲斐のウィーピングが速く、パンチを当てる事は出来ない。
甲斐は数発ボディを叩くと、バックステップで距離を取る。女性のパンチは空を切り、体が流れる。
女性と甲斐のスパーリングも、結局は甲斐にパンチを当てる事は出来ずに終了となった。
スパーリング終了後、
「納得出来ない!」
「結果は出たんだ、しょうがないだろう?」
「私のパンチが当たらないなんて!」
「まだまだ甘いという事さ……佐伯·甲斐、紹介しておく。姪のエリザベートだ。エリーと呼んでやってくれ」
「「!?」」
「ラリオスの姪……成る程……」
「どうりでなかなか……」
「何よ、その言い方!」
「負けん気だけは世界チャンピオンなんだがな……」
「確かに!」
「分かる!」
「デイビッドも含めて、馬鹿にしてるの?…私があなた達に歯が立たなかったから!」
「それはないよ!」
「そうそう、俺達だって同じだよ!」
「????」
「こいつ等は、池本に全く歯が立たなくてな……自分達の弱さを痛感してるんだ……」
「弱さを認めた上で、しっかりと強くなる!」
「池本さんが教えてくれた事!」
「!!…池本のジムに居たの?」
「そうだよ!」
「俺は違うジムだったけど、出入りさせて貰ってた!」
「羨ましいな~……デイビッドがボッコボコにされた相手だもんね!」
「おいエリー!…どうみても接戦だっただろ!」
「え~、フルボッコされてたじゃん!」
「「納得!」」
「お前等~……覚えてろよ!」
ラリオスは渋い顔をしていたが、エリーと言われる女性は笑顔である。
「改めて、エリザベート·ラリオスよ!…デイビッドの姪で、女子フライ級の世界ランク9位!」
「佐伯昴、フェザー級です」
「甲斐拳人、同じくフェザー級!」
「よろしくね!…佐伯に甲斐!」
「「こちらこそ!」」
この後、3人はそれぞれに練習しジムワークを終える。
練習後、エリーが2人を誘い食事に行く事になった。ラリオスも一緒である。お金はラリオスが出す様だ。
ラリオスの車でレストランに行き、中に案内される。
席に着くと、ラリオスが全員分の注文を頼んだ。
「さて、エリーから見て2人はどうだ?」
「なかなか強いね!」
「2人から見て、エリーはどうだ?」
「強いと思いますよ!」
「いい感じじゃないですか?」
「……何かあるだろう?」
「う~ん……強いて言うなら、ジャブがテレフォン過ぎかなぁ……」
「力むと大振りになるしね……」
「分かったかエリー、まだまだ甘いんだ…他人の意見もしっかり聞かないとな!」
「…………分かったわよ!……所で池本の事、教えてよ!」
「池本さんか~……」
「難しいな~……」
「一言で言えば、あいつは謎だ……分かってる事は、ボクシングしか頭に無い事だな!」
「ちょっと違うんだよな~!」
「何だ佐伯、何か有るのか?」
「俺も知らない事なのか?」
「私も聞きたい!」
「ふっふっふ……ジムの先輩方に聞いたんだけど……」
「徳井達か!…池本と付き合い長いからな!」
「俺も知りてぇぞ!」
「私は徳井も知りたい!」
「「「それは後!」」」
「……はい……」
「実は、池本さんが気になってる事は…………」
「何だ?」
「速く言え!」
「何々?」
「…………パンダらしい……しかも、池本さんが自分で言ったらしい……」
「「「パンダ!?」」」
「あれか、白黒の……」
「可愛い動物の……」
「……ちょっと可愛い!」
食事を摂りながら、池本の話で盛り上がっていた。池本は海を渡っても、話題の尽きない男である。
リフレッシュ出来た2人、明日より改めて、しっかりボクシングに精進する事を誓った。
これから、まだまだ何かありそうですね。




