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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
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難航する対戦相手……

次は……

佐伯と甲斐は、1週間の休暇を取りジムワークを再開させた。試合自体は完勝ではあったが、身体への負担は有る為に休暇はしっかりと取っていた。

ジムワークが再開され、2人はそれぞれのジムで練習に集中する。難敵と思われた相手を1ラウンドで撃破した事により、佐伯も甲斐もボクサーとして一皮剥けた様である。練習でも、動きやパンチの威力等に進歩が見られる。

問題なのは防衛戦である。

佐伯も甲斐も、余りにもいい勝ち方をし過ぎた為に挑戦者が現れない状況であった。世界ランカーや世界チャンピオン達が、倒すのに苦労したシウバとガオチャイを1ラウンドで仕留めたのである。当然と言えば当然なのだが、川上会長も西田会長も頭を抱えていた。

そんな状況を見かねて、池本はラリオスに佐伯と甲斐の対戦相手を探す様に依頼した。

池本自身は徳井の事で手一杯であり、なかなかそちらまでは手を回せない。更に、ラリオスならロサンゼルスにジムを構えている為に対戦相手を見付けるのに適していると考えていた。

ラリオスはこの話を快諾し、対戦相手を探す事にした。


ラリオスは、大体対戦相手を絞っていた。その為、すぐに交渉に入るが話はなかなか決まらなかった。

ここで、色々な事情が重なる。

まずは、プロモーターの問題である。ある程度の知名度が有る選手だと、大体プロモーターと契約しており話が進み辛い。この辺は、プロモーターの影響力がいかに強いかという事を表している。

もう1つ、こちらの方が重要である。

佐伯も甲斐も世界ランカーとはいえ、上位に位置していない。更には、佐伯と甲斐とやったとして次に世界戦が出来る確約も無い。リターンが無い代わりにリスクは生じている。増して、難敵を1ラウンドで撃破しているとなると、更に交渉は難しくなる。

ラリオスの交渉は難航していた。


徳井が2階級王者となり、引退を表明した3月の後半にラリオスの交渉に動きが出る。この辺は、ラリオスならではなのかもしれない。

ラリオスはエドウィンジムに顔を出し、会長のエドウィン·ホプキンスに話をした。

「エド……唐突で申し訳ないが、佐伯か甲斐のどちらかをラバナレスに挑戦させてくれ!」

「……話が急過ぎないか?」

「しかしなぁ…………フェザー級は腰抜けばかりでな……誰も対戦に首を縦に振らないんだ……」

「あれだけの実力だからな……少し待ってろ」

エドウィンはラバナレスを連れて来た。

「ラバナレス、佐伯か甲斐と試合をしないかとの事らしい」

「!?……あの2人は……」

「言いたい事は分かるが、フェザー級の奴等が腰抜けばかりでな……1つくらい階級上げても構わんだろ……どうだ?」

ラリオスが話を終えると、2人の男が会長室に入って来た。

「その話は納得出来ないな!」

「俺達が先だ……俺がラバナレスと契約する!」

入って来た男達は、ランディ·ランデルマンとブロッグ·アローナである。ここで、2人の紹介をしておく。

ランディ·ランデルマン、WBC世界Sバンタム級チャンピオンで階級を上げる事を各メディアに発表している。ランディとしては、フェザー級の世界タイトルを獲得したらすぐに階級を上げるつもりの様であり、その標的がラバナレスの様だ。戦績24戦24勝20KOである。

ブロッグ·アローナ、WBO世界Sバンタム級チャンピオンであり、こちらも階級を上げる事を発表している。ランディと同じく、フェザー級を制してすぐに、更に階級を上げる予定の為に直接ラバナレスのジムまで来た様だ。戦績21戦21勝18KOとなっている。

更にこの2人、実はなかなか仲が良い。その為、1番いい時に統一戦をしようという話になり、2人共に階級を上げる事になった。

「俺のが早く話をしているが?」

「ラリオス、あんたの目は大丈夫か?」

「そんな日本人より、俺達のが花が有るだろ?」

「……メディアが作り上げただけだろう?…実力は怪しいもんだ……」

「……何だと?」

「俺達を舐めてるのか?」

「無理するな……負けると分かってるから、こいつ等2人とはやりたく無いんだろ?」

「ラリオス、そんな奴等がうちのラバナレスに挑戦なのか?」

「形だけだよエド……どうせやらないさ……」

「好き放題言ってくれるな!」

「その日本人を潰せばいいのか?」

「いいぞ、無理しなくて……お前等には無理だろうからな……」

「言いたい事はそれだけか?」

「やってやるよ!……俺達の実力、見せてやるよ!」

「せっかくだから、この試合の勝者にフェザー級のタイトルマッチが繋がる様に、俺が話を付けてやる……その上で、うちのラバナレスとのタイトルマッチだな!」

「それは有難い!」

「思わぬ収穫だ!」

「まぁ、お前等は負けるがな……」

「当日を楽しみにしてる!」

「そっちこそ、口だけになるなよ!」

ランディとブロッグは帰って行った。

「やったな、ラリオス!」

「ああ……フェザー級のタイトルマッチ、大丈夫なのか?」

「任せておけ!……ラバナレス、どっちが勝つと思う?」

「興味は無い……しかし、佐伯と甲斐の成長は見てみたいな……」

思わぬ所で、世界戦まで見据えた動きになってきた。奇しくも、川上会長が言っていた年内のタイトルマッチも現実味を帯びて来た。

「さて……忙しくなるな……」

ラリオスは立ち上がり、エドウィンとラバナレスに礼を言って足早にエドウィンジムを出て行った。


この後、エドウィン·ホプキンスからこの対戦カードの話が発表され、ランディ·ランデルマンは佐伯と、ブロッグ·アローナは甲斐と対戦する事になる。

この時、最終的にはラバナレスとの試合をちらつかせながら、フェザー級のチャンピオンが不甲斐ないから迷惑が掛かっているとの発言をする。この発言にいち速く反応したのが、WBC世界フェザー級チャンピオンのヒカルド·クゥトゥアとWBO世界フェザー級チャンピオンのマウリシオ·オズワルトである。

2人は時を同じくして、ランディと佐伯の勝者かブロッグと甲斐の勝者とタイトルマッチをする事を名言した。

世界のボクシングが、活性化していきそうだ。

世界が見えて来ました……

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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよ防衛戦から世界戦まで見えてきましたね! しかも次の挑戦者は無敗の難敵ですね。 でも必ず勝たないといけませんね!
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