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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
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甲斐のタイトルマッチ……

佐伯に続け!

佐伯は応援席に行く。

「昴!」

「あれ?…好美は何で居るの?」

「何でじゃないわよ!……ボクシング馬鹿なんだから!」

「ごめん……」

「もう尻に敷かれてるのか?」

「そんな事ないですよ!」

「……こんな奴ですが、これからもお願いします」

「いやいや、こちらこそ」

池本と中谷はお互いに頭を下げている。

「2人で何やってんですか?」

「昴ハ不満?」

「何だよエリー!」

「昴、不満なの?」

「いや、そうじゃないけど……」

「それより……好美さんでしたか?」

「はい!」

「佐伯でいいんですか?」

「??」

「俺に怒られて、泣いてる奴ですよ?」

「そうなの?…昴?」

「泣いて無いでしょ!……悪乗りは辞めて下さい!」

「……また泣かれると大変だから、そういう事にしとくな!」

「……泣き虫昴なんだ……」

「池本さん!…本当に迷惑ですよ!」

応援席で揉めてるうちに、甲斐の試合になった。全員が席に座り、リングに注目する。


甲斐の控え室に西田会長と篠原トレーナー·手塚が入って来る。

「準備はいいか?」

「大丈夫です!」

「佐伯君は、素晴らしい試合をしたね?」

「そうですね……」

「まさか、怖じ気付いた何て言わねぇよな?」

「当たり前です!…俺のがスゲェ所を見せますよ!」

「よし、それでいいんだ!」

入場の合図が入る。

「さて……しっかりと勝利を取って来ようか?」

「はい!」

甲斐は篠原トレーナーの言葉に強く返事をし、控え室から出て行った。


青コーナーから甲斐が入場する。甲斐は花道に姿を表すと、目を瞑って大きく深呼吸を1つしてから花道をゆっくりと歩く。リング前に着いた甲斐は、目を瞑ってもう1度深呼吸をしてからリングインした。

続いて、赤コーナーよりガオチャイ·タノムサクが入場して来る。ガオチャイは花道に姿を表すと、両手を合わせて観客席に2度3度頭を下げてからゆっくりと歩いて来る。リング前でガオチャイは、合わせた両手に額を着けお祈りの様な形を数秒行い、リングに上がった。

アナウンスで両選手の紹介が有り、2人はリング中央に歩み寄る。レフェリーから注目事項を受け、一旦各コーナーに別れる。

「カーン」

ゴングが鳴った。


1ラウンド…………

甲斐はサウスポーから右ジャブを放つ。この時甲斐は、腰を少し入れて強いパンチを放っていた。

ガオチャイは甲斐のこのパンチを左手でパーリングしようとした。パーリングで甲斐のパンチを叩き落とすつもりだった。

しかし、甲斐のパンチは強く放たれた為、弾かれたのはガオチャイの左手である。

ガオチャイの左手が弾かれると、甲斐はそのまま間髪入れずに左フックをガオチャイに打ち込む。これが見事にガオチャイに決まり、ガオチャイは2·3歩後退する。

甲斐はガオチャイに詰め寄ると、ガオチャイ目掛けてパンチを嵐の様に放っていく。

ガオチャイはガードを上げ、ガード越しに甲斐を観察する。甲斐のパンチが止まらないと判断したガオチャイは、甲斐の右フックに合わせて自分の右フックを頭を倒しながら放った。

カウンターを狙ったガオチャイのパンチだが、甲斐はガオチャイから放たれた瞬間に、そのパンチが分かっていたかの様に首を捻ってかわしていた。

お互いのパンチは空を切り、絡み合う様に右腕同士がぶつかる。ガオチャイが頭を上げた所に、狙い済ました様に甲斐の左フックがクリーンヒットする。後退するガオチャイだが、コーナーにぶつかり止まる形になる。

甲斐は更に踏み込んでいくが、ガオチャイは甲斐が踏み込んだ瞬間に甲斐の両腕をホールドする様にクリンチした。

ガオチャイはムエタイ(タイ式キックボクシング)出身である為、打たれ強さを持っている。並みの選手なら、甲斐の左フックでほぼ決まっている筈だが、ガオチャイのタフネスさが伺える。

レフェリーが割って入り、ブレイクとなる。

仕切り直しをし再び相対すると、2人は距離を詰めてクロスレンジでの打ち合いを始める。

近い距離での打ち合いは迫力も有り、何よりパンチの当たる距離の為に危険でもある。お互いにチャンスもピンチも有る距離の筈だが、今回は違っている様である。

ガオチャイは得意の距離になり、徹底的に手を出していく。これに甲斐も応戦するが、甲斐は頭を振りながらガオチャイのパンチを避けていく。近い距離でのパンチであり、頭に放たれたパンチなら避ける事も有るだろうが、甲斐はボディに打たれたパンチまで避けていく。少し異常である。

一方のガオチャイは、甲斐のパンチを何発も貰い早くも左瞼が腫れ出している。このクロスレンジでの攻防で勝負有りである。

少しずつ動きが鈍くなるガオチャイに対し、甲斐の動きはどんどん冴えていく。粘るガオチャイを甲斐は最後、手塚のガゼルパンチを真似て低い姿勢から右のガゼルパンチでガオチャイの意識を刈り取った。

レフェリーは倒れたガオチャイを確認し、カウントを数えずに両手を何度も交差させ試合を終わらせた。

1ラウンド2分22秒KO、甲斐は東洋太平のタイトルを獲得し、戦績15戦15勝14KOとした。


ガオチャイは担架で運ばれていく。甲斐はガオチャイのセコンドに頭を下げてからリング中央で腰にベルトを巻かれた。甲斐が左手を上げると、会場からは拍手が起こった。

インタビュアーがリングに上がる。

「見事なKO勝利をした甲斐選手に話を聞きます。まずは、おめでとうございます!」

「ありがとうございます」

「見事でした!」

「……それなりですね」

「更にその上、狙えますね?」

「世界チャンピオンにはなりますけど、まだまだ甘かったと思います。これからです」

「応援してくれた、ファンに一言!」

「ありがとうございます。これからも勝ち続けます!」

「以上、甲斐選手でした。もう一度大きな拍手をお願いします!」

会場から拍手が甲斐に送られる。甲斐は会場に一礼し、花道を戻って行った。


控え室に戻った甲斐は、シャワーを浴びて応援席に向かう。

「ヤッタネ、拳人!」

「おう、ありがとう!」

「まあまあだな!」

「お前もな!」

「……やっぱり俺の完勝だな!」

「絶対に俺のKO勝ちだ!」

「はいはいはい……話はそれくらいにして、徳井をしっかりと応援だ」

このタイミングで西田会長と篠原トレーナー·手塚が来た。

「佐伯君も甲斐君も、とりあえずおめでとう」

「「ありがとうございます!」」

「……どっちも良く」

「西田さん!」

「ううん…………まだまだ改善は必要だな!」

「西田……手塚に注意されてる様じゃ、先が思いやられるな……」

「池本、そんな事言うなよ!」

みんなで話をしていると、メインイベントの徳井の試合になった。

前にも書いた通り、徳井は完勝した。佐伯も甲斐も、静かに徳井の試合を観戦していた。

2人はどうやら、徳井の試合を見て改めて気持ちを引き締めたらしい。試合が終わった後だというのに、2人は厳しい表情をしていた。

2人共、成長が見られました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拳人もやりましたね! ある意味、徳井さんも2人から確かなバトンをもらっていたのですね!
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