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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
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熱き悪魔、手塚……

さてさて、甲斐はどうなんでしょう?

8月に入り、甲斐も本格的にスパーリングを始める。スパーリングパートナーは手塚である。手塚はアップが完了し、準備万端である。

甲斐は篠原トレーナーと話をしている。西田会長は、不安な表情でゴングの所に居る。

「篠原さん、早くやりましょう!」

「少しは待ちなよ……甲斐君と確認してるんだから……」

「口だけ男だから、確かに心配ですよね?」

「誰が口だけですか?」

「お前だよ、お前……超口だけ番長だもんな!」

「……言わせておけば~……」

「甲斐君、少しは落ち着きなよ……スパーリングで見せればいいんだから……」

「そうですね……」

「はっはっは、見せられたらだけどな!」

手塚はそう言って、軽く左右フックを放つ。その手塚のパンチを見て、篠原トレーナーは少し顔をしかめる。それだけ手塚のパンチに切れがある。

スパーリングはお互いに12オンスのグローブだが、手塚はヘッドギアをしていない。気合い充分である。

甲斐との話が終わると、篠原トレーナーはリングを降りて行く。

「2人共、準備はいい?」

甲斐と手塚は右手を上げる。

「西田君、よろしく!」

「はい……」

ゴングが鳴る。


甲斐と手塚のスパーリング、1ラウンド…………

甲斐はサウスポーから右ジャブを放つ。いつも通りの攻撃であるが、これに手塚が喰い付く。甲斐の右ジャブを滑る様にかわしながら、手塚は間合いを詰めるが、その際に甲斐の右ジャブに自分の左フックを被せて前に出ていた。

甲斐は手塚のパンチをカウンターで貰うと、派手に頭が弾ける。

手塚はそのまま姿勢を低く保ち、甲斐の懐に飛び込む。飛び込んだ刹那、手塚は左右ボディを甲斐に叩き込む。

甲斐は手塚のボディをガードし、次に来るであろう手塚の左フックに的を絞った。ドンピシャリに手塚の左フックが放たれ、甲斐はカウンターを取ろうとして右手を構えるが、その右手を放たず首を右に傾ける要に動かした。その後、ほんの一瞬の差で手塚の右アッパーが甲斐の顔面をかすめて通過した。甲斐の背中に冷たい汗が流れる。

手塚は構う事なくパンチを出す。甲斐はこれに対し、徹底的に応戦する。

ここでキャリアの差が出る。

先制パンチを浴び、少し混乱している甲斐は闇雲にパンチを出していくが、手塚は頭を振って甲斐のパンチを避けながら、自分のパンチを的確に甲斐のボディに当てていく。

頭は大きく動かす事が出来、特にクロスレンジを得意としている手塚を捉えるのは難しい。これに対し、ボディは動きが少ない為に確実にヒットし易い。この辺はベテランならではである。

甲斐は手塚のパンチを貰いながら、強引に前に出て来る。甲斐もクロスレンジを土俵としている為、引けない理由がある。甲斐は若さと馬力で少しずつ手塚にプレッシャーを掛けるが、手塚は身体を低くして甲斐のフックを空振りさせると、屈伸から伸び上がる様に左ブローを放った。

ガゼルパンチ、手塚の必殺ブローである。

甲斐は手塚の位置から左ボディを予測していたが、違うと分かると咄嗟に右ガードを上げた。

しかし、手塚の体重毎乗せた渾身のパンチである。甲斐はガードしたまま、2m程飛ばされた。

手塚が前に詰め様とした所でゴングが鳴った。


スパーリング2ラウンド目…………

甲斐はサウスポーから右ジャブを出し、前に出て来る。先程のラウンドでクロスレンジで手塚にやられている為に距離を置く選択肢もあった筈だが、甲斐はクロスレンジでの勝負を挑んだ。

この選択肢は今後については大正解である。

世界を見据えた時、小手先だけの作戦では突破出来ない事が必ずある。どうするかと言えば、自分の得意とする戦い方で突破口を見付けるしかない。誰もがやって来た事である。

手塚は頭を振り、左ジャブを放ちながら距離を詰めて行く。元々、手塚はこの戦い方しか出来ない。更に付け加えるなら、手塚は自分の思いも乗せてパンチを放っていく。当たり前だが、手加減なんて言葉は無い。これが手塚らしさであり、喜多から言わせれば[加減を知らない馬鹿]らしい。

お互いの距離が近付くと、2人はパンチをどんどん出していく。

ここで、甲斐が少しだけ変わった。

甲斐は頭を振りながら、手塚のパンチをかわしている。しかも、手塚のボディブローすら細かくステップして避け始める。そのまま攻撃に繋げる甲斐は、オーソドックスとサウスポーを繰り返しながら手塚に向かっていく。

しかし、手塚は動じない。しっかりとスタンスを保ち、ガードを上げて甲斐のパンチを捌きながら己のパンチを返す。

クリーンヒットこそ無いが、見応えのある打撃戦である。

打ち合いの最中、手塚は態勢を低くした。

これを見た甲斐はガゼルパンチを予想したが、次の瞬間に飛んできたのは縦の軌道の右フックであった。

甲斐はすぐに反応し、首を捻る事で直撃は免れたが、この隙を手塚が見逃す筈は無い。

手塚は一気にパンチをまとめ、甲斐をコーナーに追い詰める。

甲斐は反撃の左フックを放つが、手塚が身体を沈める様にかわした所でゴングが鳴った。

スパーリング終了である。


甲斐と手塚はリングを降りて来る。

「甲斐君、やられたね?」

「……後半に逆転する予定です!」

「後半ねぇ……3ラウンドでKO負けだろ?」

「そんな事無いです!」

「どう反撃するんだ?」

「うっ………………」

「やっぱりな……この口だけ世界チャンピオン男め!」

「……ちょっと酷いですよ……」

「今回は手塚君に軍配かな……ロードワークに行って、出直しだね」

「はい、行って来ます……」

甲斐はロードワークに出掛けた。

西田会長が手塚と篠原トレーナーの所に来る。

「手塚、少しやり過ぎじゃないのか?」

「西田君は、相変わらず分かって無いね?」

「何がですか?」

「西田さん……俺は本気で倒しにいったんですよ……それなのに、危ない場面は何度か有った……スパーリングするこっちも大変ですよ!」

「少しずつだけど、甲斐君も成長をしてきたかな?」

「しかし……手塚は手加減が出来ないから……」

「今の甲斐君には、手加減じゃなくて強い相手が必要なんです。いちいち言い訳が出来ないくらいの強者がね……手塚君はぴったりだ」

「あの野郎は、叩けば叩く程に強くなる……俺が池本さんにやって貰った様に、今度は俺が甲斐を強くする!」

「……2人に任せるけど……怪我には気を付けてね……」

「意外に西田君は心配症だよね?」

「甲斐が世界チャンピオンになった時、西田さんだけ感謝されなかったりして!」

「有り得るね!」

「2人共、少し酷いよ……」

西田拳闘会の未来は明るそうだ。

しかし、その中心となる人物である甲斐は、手塚にやられた事を悔しがりながら必死に走っていた。

まだまだ先かもしれないが、手塚と篠原トレーナーが納得の強さになった時、果たして甲斐はどうなっているのだろうか。

佐伯も甲斐も、試合に向けて頑張って欲しいですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 甲斐もまだまだこれからですね! 実りのあるスパーリングでしたね!
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