再出発の試合……
さて、試合が決まりそうですね……
7月になる少し前に、ラリオスはロサンゼルスに戻った。自分のジムにアカデミーにと、色々と忙しいらしい。
そんなラリオスに池本は連絡し、佐伯と甲斐の試合の相談をした。ジムも別れた為、そろそろ試合でもと考えたらしい。
これに対し、ラリオスは2つ返事で相手を探した。
見付けて来た相手は、WBCシルバー王者と東洋太平洋チャンピオンである。池本は納得の様である。
この話は川上会長に池本が伝え、徳井の世界防衛戦の時に一緒に行う事になった。トリプルタイトルマッチである。
WBCシルバー王者に佐伯が挑み、東洋太平洋チャンピオンに甲斐が挑む。なかなか楽しみである。
それぞれにこの話は伝わった。試合は11月14日である。
7月20日、川上ジムは恒例の合宿を行うが、この合宿に甲斐と手塚·篠原トレーナーも参加する。
ちなみにだが、西田拳闘会での池本の行動はこの時に行われた。
この合宿では、佐伯と甲斐はがっつりと絞られた。合宿中のスパーリングは喜多と手塚が行っており、佐伯も甲斐もまだまだ敵わない様である。
合宿中の走り込みも喜多と手塚は一緒に走り、2人の前を走る事で2人に課題を与え続けた。
喜多と手塚にやられた2人は、色々な意見交換をする。この合宿は、2人にとって、実の有る合宿となった。
ここから、2人の試合の為の準備が始まる。
佐伯は川上ジムで対戦相手の研究から始まる。対戦相手はアレクセイ·シウバ、ブラジルの選手である。
右利きのアウトボクサーよりの万能型タイプであり、戦績17戦16勝1分、なかなか狡猾なボクサーであり試合運びも上手い。
シウバの試合のビデオを佐伯は、喜多と池本も含めて見ていた。
「これは……」
「どうした?池本?」
「……いや…これは5ラウンド前に倒さないといけないでしょう!」
「!?…池本さん?」
「会長もトレーナーもそう思うでしょう?……喜多はどうだ?」
「確かに強いですけど……これはすんなりクリアして欲しいな……」
「喜多さんまで……」
「当然の意見だ……それくらい分かるだろ?」
「??…分からないですよ?」
「……馬鹿ばっかりだな……俺は徳井の練習に付き合うから、後はよろしくな、喜多……」
池本は会長室から出て行った。
「どういう事ですか?」
「……喜多は言い辛いか……トレーナー、教えてやれ……」
「そうですね……シウバの戦い方は喜多に似ている。しかも、喜多のグレードを下げた感じだ……これは確かに、すんなりクリアしないとな!」
「成る程……喜多さんを超えれば、確かに楽勝ですね!」
「それだ!…その調子込んだ発言をすると思ったんた!……舐めやがって、試合までスパーリングでぼこぼこにしてやるからな!」
「返り討ちですね!」
「クソガキめ……」
どうやら、色々な意味でこの試合は楽しみである。
一方、西田拳闘会。こちらでも甲斐の対戦相手、ガオチャイ·タノムサクのビデオを見ている。
ガオチャイは戦績20戦18勝2敗、負けた2試合はその後の世界チャンピオンとなり強敵には変わらない。
戦い方はインファイトを好み、オーソドックスである。
「……5ラウンド以内にKOしないとね」
「篠原さん、厳しくないですか?」
「そう?……これはすんなりクリアしないと……ねぇ、手塚君?」
「そうですけど……」
「ほら…篠原さん、手塚も慎重じゃないですか?」
「手塚君はそうじゃないよ……だろ?」
「そうですね……」
「??…それより、甲斐はどうなんだ?」
「俺は……確かにクリアしないといけないと思いますけど……」
「何だ、甲斐君は気付いて無いの?」
「何をですか?」
「今度の対戦相手、手塚君のグレードを大分下げた感じだよね?」
「成る程!……手塚さんを超えれば大丈夫か!」
「……それだよ……余りにも簡単に言うそれが気に食わねぇ……お前ごときが、そう簡単に俺を超えられると思うなよ!」
「いやいやいや、手塚さんくらい楽にクリアしないと!」
「……お前、出した言葉は呑み込めねぇからな……」
「手塚さん、遂に俺にやられる日が来ますね!」
「……よし、その口に免じて……今からスパーリングだ!…篠原さん、用意して下さい!」
「はいはい、今日から徹底的にやるとしますか……」
甲斐·手塚·篠原トレーナーは会長室から出て行った。
「……取り残されたな……俺はいまいち分からないが……」
西田会長だけ、納得がいっていない様である。
2人が世界チャンピオンになる為の、日本に来ての始めの1歩は踏み出され様としている。日本に帰って来て、最初の試合がタイトルマッチである事はなかなかハードルが高いかもしれないが、この2人ならやってくれそうである。
少なくとも、試合を組んだラリオスとラリオスに頼んだ池本は、このくらいはすんなりクリアすると踏んでいる。
2人が世界チャンピオンとなり、いい形で戦う為にもこの試合はしっかりと勝ち、次に繋げていきたい所であり、やらなければいけない事である。
今の所、しっかりと歩みを進めている2人、とりあえずは安心だが1つ心配な事がある。
それは、佐伯も甲斐もスパーリングパートナーである喜多と手塚にかなり失礼な事を言っている事である。
実力的には佐伯と甲斐よりまだまだ上な2人、どうやら、佐伯と甲斐は試合まで地獄を見る事は確定の様である。
袂を別った2人、どんな試合を見せてくれますか……




