それぞれの道……
どうやら、ジムは別れたみたいです。
佐伯と甲斐は、川上ジムにて毎日練習している。
変わった事と言えば、エリーが日本にやって来て、甲斐の母親から付き合う事を認められた事である。そのまま日本におり、甲斐の家で生活している。
エリーとの1件は色々と有ったが、何とか纏まった。池本の尽力も有ったが、ラリオスが心配する程、甲斐の母親である美里は話が分からない人ではなかった。
池本だけはエリーに対して警戒を強めたが、それ以外は概ね大丈夫だろう。
ジョシュについては、上手く逃げたのだが、後々逃げた事についてラリオスから責められた事は言う迄もない。
佐伯と甲斐以外で変わった事と言えば、手塚は統一戦に望み惜しくも敗れ、引退してトレーナーを目指す事になった。その手塚の就職先は、川上ジムでトレーナーをしていた西田が立ち上げた〔西田拳闘会〕であり、甲斐は西田拳闘会が立ち上がると同時に移籍する事になった。西田拳闘会がオープンするのは、7月1日である。
この話は、実は2人が渡米する前に池本が画策していた事であり、2人が直接対決をする為に考えた事である。更に、西田と手塚だけでは不安だと、川上会長と石谷トレーナーの計らいで篠原トレーナーがチーフトレーナーとして西田のジムに行く事が決まった。
実際に移籍する前日にも色々騒動が起こるが、それは割愛させて頂く。喜多と手塚は納得とだけ言っておく。
また、佐伯と甲斐は日本に帰ってから、まだ試合をしていない。これは、西田健闘会が開くのを待っていた為であり、日本に帰ってからは2人はお互いの道を歩く事を強調する為であるらしい。
だからといって、佐伯も甲斐も川上ジムでの練習を怠る事はなかった。徳井·喜多·手塚といった元世界チャンピオン·現役世界チャンピオンとスパーリングが出来るとあって、2人は気合いが入っていた。
まだまだ通じない2人ではあるが、佐伯と甲斐にとって有意義な時間になった事は確かである。
そして、月日は7月1日となる。
甲斐は西田拳闘会に姿を表した。
「お願いします!」
「おう、よろしくな!」
「張り切っていこうか?」
「はい!……西田さんは?」
「甲斐、一応会長と呼べ!」
「すいません……で、何処に?」
「駅前でチラシを配ってるよ……意外にマメだよね!」
「ホームページも、細かく更新してるみたいですからね……」
「……似合わないですね?」
「確かにな!」
「……西田君は、あれでも結構大変なんだよ……」
話が終わると、甲斐は更衣室に入って行った。
そのタイミングで、何人かの厳つい男達が入って来る。
「何だ?」
「すいません……」
「入会希望です……」
「始まってますよね?」
「大丈夫ですか?」
「お願いしますって入って来るもんだろうが!……やり直しだ!」
『……はい……』
「聞こえねぇな!…返事!」
『はい!』
「よし、やり直せ!」
男達は元気に挨拶をして、入り直す。
「よし、入会だな!」
『はい!』
「手塚君…張り切り過ぎ……」
「……サーセン……」
「いやいや、俺は手塚さんの試合見て入会しようと考えたんで!」
「自分もです!」
「??…川上ジムに俺は居たぞ?」
「いや…西田会長のホームページに……」
「手塚さんがトレーナーやる予定だって……」
「でかでかと書いてありました……」
「……案外やるね、西田君……」
「何て言っていいもんか……とりあえず、着替えて練習だ!」
『はい!』
西田拳闘会の初日としては、かなり順調な滑り出しである。
この後、入会希望者は5名来る事となり、甲斐を含めるとジム生は10名になった。
おまけの話ではあるが、甲斐が西田拳闘会に所属している事でエリーは西田拳闘会を手伝う事になる。そのエリーがジム生から人気であり、更に練習生を獲得する事になるのだが、西田がいい気になりホームページでエリー特集を組み、その事が手塚にばれて西田は手塚にかなり怒られた。この日を境に、手塚は西田を[西田さん]と呼び会長とは言わなくなった。西田が可哀想なので、この物語では今後は西田会長と呼ぶ事にしよう。
場所が変わったからといって、甲斐の練習は変わらない。寧ろ、ジムの代表選手としての自覚が芽生え、更なる精進をしていく事だろう。また、スパーリングパートナーは手塚が行う為、こちらも手薄になる事は無さそうだ。
一方の佐伯である。
川上ジムで練習をしているが、こちらも手を抜く事は無い。毎日厳しい練習をしている。
西田拳闘会と違う所と言えば、ジムの筆頭には徳井がおり、池本は基本徳井のスパーリングパートナーをしている。佐伯の相手は喜多が務めている。
しかし、喜多も元世界チャンピオンであり現在も厳しいトレーニングをしている為、佐伯は学ぶ事が多い。スパーリングでも喜多にやり込められている為、毎日歯ぎしりが止まらない。
こちらはこちらで、毎日なかなか厳しい事になっている。
川上ジムの人気はというと、徳井が居て喜多がトレーナーという事でこちらも人気がある。練習生も増えている。
池本については、会長·石谷トレーナー·ラリオスから練習生を見るのは禁止されている。普通に厳し過ぎるのである。本人は納得していない様ではある。
この納得いっていない事は、西田拳闘会に被害が出る。みんなが合宿に行き、池本がヘルプで西田拳闘会にトレーナーで行った際、入って来た練習生を連れて自分のロードワークに付いて来させた。
その結果、何名も退会者が出て西田会長はかなりご立腹だったが、篠原トレーナーと手塚は気にも止めていなかった。
何はともあれ、佐伯と甲斐は別々の道を歩く事になった。
贔屓目無しにして、今現在の2人の実力は殆ど変わらないと思われる。つまり、これからの練習や考え方、経験等で実力に差が出て来る。
どんな覚悟で、どんなボクサーに2人はなっていくのか。直接対決よりも先に、気になる所ではある。
改めて1歩です。




