現在の位置……
さぁ、日本に帰って来て初めての練習だ……
佐伯と甲斐は、川上ジムに行く。日本に帰って来た翌日である。
佐伯と甲斐は、ジムに着くとすぐに着替えて練習に移る。ラリオスとジョシュもジムに顔を出していた。
現在の川上ジムは、佐伯と甲斐の先輩に当たる手塚が世界戦を控えており、練習の追い込みの真っ最中である。
勿論、手塚のスパーリングが中心となっており、世界チャンピオンである徳井は対戦相手が決まっていない為、手塚のサポートをしていた。
手塚のスパーリングが終わると、石谷トレーナーより声が掛かる。どうやら、佐伯と甲斐が徳井とスパーリングを行うなしい。
最初は佐伯からである。
佐伯と徳井のスパーリング…………
佐伯は左ジャブを放ちながら、左に回っていく。なかなか鋭いジャブであり、フットワークは華麗である。
徳井はヒットマンスタイルから左フリッカーを出し、ゆっくりと動き出す。様子見といった所だろうか。
徳井のフリッカーを佐伯は掻い潜り、徳井の懐に潜り込むとすぐに左ボディから右アッパーを返して距離を取る。スピードはかなり有り、なかなか切れの有るパンチであるが、徳井は佐伯のこのパンチを難なくガードした。
しかし、この後徳井の動きが変わる。
徳井は左フリッカーを放ちながら、左に回っていく。これ事態は変わっていないが、動きが先程よりかなり速い。ギアを入れ換えた様だ。
スピードが上がった事で、徳井のフリッカーの切れも増す。元々捌きずらい徳井のフリッカーに、更にスピードと切れが増している為、佐伯は避けきる事が出来ない。徳井のフリッカーを佐伯は何発か貰う。
それでも、徳井は手を緩めない。
フリッカーを放ちながら、佐伯との距離を保ち自分の距離で戦う。
佐伯は徳井のフリッカーに意識を持って行かれるが、これこそ徳井の作戦である。佐伯の意識が左に向くと、徳井は嘲笑うかの様に右ストレートを佐伯に打ち込む。
佐伯は何とかガードしたが、それでもダメージが残る。佐伯は一瞬だけ迷いが生じた。
その瞬間、徳井は間合いを詰めてパンチを打ち込んで行く。
徳井の連打に佐伯はガードを上げるが、徳井はそのままコーナーまで強引に押し込む。
徳井が右フックを放ったが、これに佐伯がカウンターを合わせる。佐伯は決まったと思ったが、次の瞬間に顔が跳ね上がったのは佐伯だった。徳井が佐伯の右フックに、自分の左アッパーを合わせたのだ。
佐伯は更にガードを固める。
徳井は構わずにパンチを打ち込む。
佐伯がコーナーに押し付けられた所でゴングが鳴った。
続いて、甲斐と徳井のスパーリング…………
甲斐はオーソドックスに構え、左ジャブを放ち前に出て来る。
徳井は左フリッカーを放つと、物凄いスピードで左に回って行く。
甲斐は前に詰めて行くが、徳井を追い切れない。
徳井のフリッカーが甲斐を捉え、甲斐の前進が緩むと徳井は更にフリッカーを打ち込みながら、距離を取って行く。
甲斐は1度間合いを外し、サウスポーにスイッチすると再び徳井目掛けて前進して来る。
徳井は甲斐の頭の位置を確認し、更にスピードを上げて甲斐にパンチを放って行く。
甲斐は頭を振り、徳井に的を絞らせない様にしながら右ジャブを打ち込む。
しかし徳井は、甲斐の右ジャブをパーリングで弾くとすぐに右ストレートを繋げる。このパンチを甲斐は被弾した。
甲斐が少し後退すると、徳井は間合いを詰めてパンチを打ち込んで行く。
徳井のパンチをガードしながら甲斐は徳井のパンチを観察し、徳井の左ボディに合わせて、サウスポースタイルで左ストレートを打ち抜いた。
次の瞬間、徳井は首を捻って甲斐のパンチを上手くかわしていた。
甲斐はバランスを崩す。
徳井は攻撃の手を休めず、甲斐を強引にコーナーまで追い込んで行く。
甲斐はこれに対し、ガードを開き打ち合いに出る。
しかし、徳井は甲斐のガードが開くとすぐに距離を取り、フリッカーを放ちながら左に回って行く。
甲斐は空振りとなり、徳井のパンチをまともに貰う。甲斐は再びガードを上げると、徳井はまたも距離を詰め、パンチを打ち込んで来る。
徳井のパンチが何発か、甲斐のガードを突破しヒットした所でゴングが鳴った。
2人の元に池本とラリオス·ジョシュが歩いて来る。
「何しにアメリカ行って来たんだ?」
「「…………………………」」
「弱いんだよ、ラリオスにも責任あるからな!」
「お前等、俺まで池本に怒られたじゃねぇか……走って出直して来い!」
「「はい!」」
2人はロードワークに出て行った。
徳井が池本達の元に来る。
「徳井……本気で倒しに行っただろう?」
「バレました?」
「ラリオス、ありがとうな……どうやら、少しはマシになったみたいだな!」
「まだまだだけどな……しかし、土台は出来たつもりだ……徳井の強さには驚かされたがな!」
「まぁ、現役世界チャンピオンだからな!」
「俺は、ダウン1つも取れなかった事が悔しいですけどね……」
「しかし……ここは凄いな!今度、手塚の世界タイトルマッチだろ?……しかも、徳井に喜多、お前までスパーリングパートナーをやってるのに、当の本人は更に練習してるんだからな!」
「減量中なのも忘れるなよ!」
池本とラリオスは練習風景を見ている。
池本は我慢出来ず、サンドバッグを叩き始める。そんな池本をラリオスは少し呆れて見ているが、そんな2人をジョシュは笑顔で見ている。
一方、ロードワーク中の佐伯と甲斐……
「参ったな~……もう少し、いいスパーが出来ると思ったんだけどな~……」
「実力の差を痛感しただけだったな……」
「全く……今度、手塚さんの世界戦だろ?」
「かなり仕上がってたな……」
「喜多さんは、無敗のまま世界チャンピオンで引退だろ?」
「しかし……手塚さんのスパーリングパートナーをやってたな……あんなに強え奴も、そうは居ないよな?」
「その先に徳井さんが居て……」
「池本さんの身体、しっかり絞れてたよな……すぐに世界チャンピオンになれそうだ……」
「か~……先は長ぇな~……」
「何言ってんだ、昴?……楽しみがいっぱいじゃねぇか?」
2人はロードワークのペースを上げ、しっかりと走り込んだ。
やはり、現役世界チャンピオンは強い!
2人には、いい薬ですね。




