甲斐出陣……
次は甲斐の出番……
佐伯は控え室を出て、観客席に移動した。そのタイミングでラリオスとミゲールが控え室に入って来る。
「佐伯はいい勝ち方をしたな……」
「そうですね……」
「君も勿論、続いてくれるんだろ?」
「愚の骨頂ですね……続かなければ、佐伯に殺されますよ…最も、俺の前でこけたら、俺が佐伯を殺しますけどね!」
「はっはっは、お前達らしくていい感じだ!」
「しっかりと結果を出そう!」
「はい!」
入場の合図が入る。
甲斐は立ち上がり、
「さぁて、バルガス退治といきますか?」
一声掛け、控え室から出て行った。
青コーナーより甲斐が入場する。
花道に姿を表した甲斐、軽く右フックを1発打ってから歩き出すが、そのパンチが恐ろしく切れている。佐伯の勝利の後という事もあり、試合に集中しているのだろう。
甲斐はリングインすると、観客席に頭を下げた。
赤コーナーよりジム·バルガスが入場して来る。
バルガスは花道を一気に走って来た。そのまま、トップロープを飛び越えてリングインすると、観客席に向かって両腕を回しながらアピールした。
選手紹介の後、リング中央でレフェリーから注意事項を受け、一旦各コーナーに別れる。
「カーン」
ゴングが鳴った。
1ラウンド…………
甲斐はサウスポーに構え、右ジャブを放ちながら前に出て行く。
バルガスは左ジャブを出しながら、甲斐が出た分だけ下がり左に回っていく。
甲斐はバルガスのジャブをかわしながら前に出て行くが、バルガスはそう簡単には甲斐を懐に入れさせない。華麗で素早いフットワークから距離をしっかりと取り、一定の距離を保って攻撃して来る。
甲斐はバルガスのパンチをしっかりとガードし、バルガスを追い掛けて行く。甲斐は頭を振って右ジャブを出し、前に前に圧力を掛けていく。
アメリカに来て佐伯に刺激を受けながら、毎日厳しい練習を繰り返して来た事がここで生きる。
甲斐のパンチ力は自分が考えているより上がっており、甲斐の右ジャブをガードしたバルガスの表情が微妙に変わる。
ここから試合は変わっていく。
甲斐のパンチに対しバルガスは必要以上に距離を取り、最初にパンチを貰わない事を前提として試合を進めて行く。どうやら、甲斐のパンチ力が厄介らしい。
甲斐は構う事なく前に出て行く。右ジャブでバルガスを牽制しながら、だんだんと距離を詰めて行く。
1ラウンドも2分が過ぎると、甲斐はバルガスのパンチに慣れて来る。
バルガスの左ジャブを掻い潜り、甲斐は一気に距離を縮めた。この時、甲斐は左足を前に出す様に距離を詰め、そのままバルガスに左ボディを突き刺す。
バルガスはこれを嫌がり左方向へ逃げようとしたが、甲斐は右足を前に出す様に追い掛け、バルガスに距離を取らせない。甲斐はそのまま右ボディをバルガスに打ち込むと、体をバルガスにくっ付ける様にし、ボディにパンチを細かく集めて行く。
バルガスはガードしているが、少しずつ後退していく。後退しながら、バルガスは甲斐のパンチが頭に飛んで来るのを待つ。
甲斐は何発かボディにパンチを打った後、左フックを上に返した。そのパンチにバルガスは自分の左フックを被せたが、そのバルガスの左フックに甲斐は右ボディを更に被せた。
甲斐の作戦だったらしい。
甲斐の右ボディは、バルガスに深々と突き刺さりバルガスが少し嫌な顔をした所でゴングが鳴った。
2ラウンド…………
甲斐はこのラウンドもサウスポーからスタートする。右ジャブを放ち、頭を振りながら前に出て行く。
バルガスは左ジャブを出し、しっかりと距離を取りながら左に回っていく。どうやら、甲斐と打ち合いになる事を避けている様だ。
甲斐はバルガスの左ジャブを気にする事なく、どんどん前に詰めて行く。1ラウンドでバルガスの左ジャブのタイミングをしっかりと覚えた為、甲斐はバルガスのジャブを何度も掻い潜っていく。
バルガスは甲斐が間合いを詰めると、細かいパンチをまとめていき距離を取る。バルガスの連打はなかなか回転が速く、意外と厄介である。
しかし、甲斐はこの攻撃さえも気にしない。しっかりと急所をガードし、バルガスのパンチの中を前に出て行く。
バルガスは軽いパンチだと甲斐が止まらないと判断すると、右の拳に力を込めた。次の瞬間、甲斐の沈み込む動きに合わせて右ストレートをショートで放つ。
誰もが決まったと思っていたが、甲斐はこのパンチを首を捻りながらいなし、左フックを返していた。このパンチがバルガスのテンプルを捉え、バルガスは2·3歩後退する。
甲斐は一気に間合いを詰め、強引にバルガスをコーナーに追い込んで行く。
バルガスもパンチを返すが、甲斐はバルガスのパンチをかわしながら攻撃をしている。先程のバルガスの右ストレートをいなした事もそうだが、来るパンチが分かっている様な動きである。
甲斐は直もバルガスを攻め立てる。左右のパンチを上下に散らしながら、甲斐のパンチは何発かはバルガスのガードを突破してバルガスにヒットしている。
バルガスはこのままではじり貧だと感じ、甲斐の右フックに自分の右フックを被せた。瞬間、バルガスの頭が縦に跳ね上がる。甲斐の左アッパーが決まったのである。
バルガスはその場で右膝を着く。
甲斐はニュートラルコーナーに歩いて行く。
レフェリーがカウントを数える。カウント8でバルガスはファイティングポーズを取り、試合続行となる。
試合再開後、甲斐はすぐに距離を詰めるがバルガスはクリンチする。レフェリーが割って入り1度距離を置くが、甲斐が前に出て来るとすぐにバルガスはクリンチをした。
レフェリーが割って入った所でゴングが鳴る。2ラウンド終了である。
試合はこれから……




