それぞれの総仕上げ……
試合は決まりました……
佐伯と甲斐のロサンゼルスでの最後の試合が決まり、2人は勝利の為に動き出した。
朝のロードワークは、最近では2人で一緒に走っている。ライバル視している2人が一緒に走る、負けん気を出して朝からハードになるのは目に見えている。この関係がジムワークまで続く、なかなか楽しそうである。
また、アルバイト先のレストランで、いつの間にか2人が戦った時の結果について賭けが行われている。常連の方達からも、楽しみになっている。
ちなみにだが、常連の女性客からは、佐伯にも甲斐にも彼女が出来た為にかなり2人は絡まれていた。この辺は、佐伯は上手く切り抜けていたが、甲斐はたじたじであった。
佐伯と甲斐の試合の前にエリーの世界戦があった。
12月15日、ロサンゼルスのかなり大きな会場、そこでセミファイナルとして試合をした。メインはSライト級の男子の試合である。
後々になるが、この試合はフェルナルド·ハメッドの試合であり、この後にハメッドは世界線戦に加わっていく。
エリーの試合は激しかった。
女子の試合は4ラウンドであるが、始めから接近戦での殴り合いとなる。
エリーも引かないがチャンピオンも引かない。女子とはいえ、なかなかの迫力である。
1ラウンドは互角の展開となるが、2ラウンドから徐々にエリーが優勢になっていく。
打ち合いを悉く制し前に前に出て行くエリーに対し、チャンピオンは距離を取り足を使い出す。それは明らかに接近戦ではエリーの方が上だと示している。
距離を取るチャンピオンと追い掛けるエリー、しかしチャンピオンはアウトボクサーでは無い。
2ラウンド2分過ぎ、エリーはチャンピオンを捕まえると一気に攻め立てる。このラウンドはゴングが鳴り終了となるが、それでもチャンピオンに与えた精神的ダメージは大きい。
3ラウンドにはエリーは接近戦からダウンを奪い、結局判定でエリーがWBC女子フライ級チャンピオンになった。
エリーが世界チャンピオンになった事で、2人は刺激されていた。自分も必ずなると改めて心に秘め、日々の練習に打ち込んでいく。
そんな12月の終わり、2人は練習後にラリオスに呼ばれラリオスの家に行く。ラリオスの家には、ミゲールとエリーが居た。
「さて、対戦相手のビデオでも見るか……試合は2月25日だ、いいな?」
「いつでも構いませんよ!」
「言われた通りにやるだけです!」
「ゴルドーとバルガスの試合か……しっかり見ようか」
「2人共、しっかり勝ってよね!」
「「……当たり前だ!」」
5人は試合のビデオを見る。最初はナッシュ·ゴルドーの試合である。
ゴルドーの試合は、近い距離での打ち合いを制しKOを築いていくタイプであり、スイッチスタイルである珍しいボクサーである。
ビデオでは、サウスポーとオーソドックスを上手く使いアウトボクシングも使いこなしている。両手がリードブローにもKOパンチにもなる、なかなか厄介な相手である。
戦績は16戦16勝14KO、戦績から伺える様にパンチ力も有りそうである。
続いてジム·バルガスである。
バルガスはオーソドックスのアウトボクサーである。素早いフットワークから左ジャブを出していき、相手をコントロールしていく。
焦れた相手が前に出て来るタイミングで右ストレートを叩き込み、こちらもKOを量産している。また、相手がパンチを出そうとした時に先手でパンチを当てている。天性の当て勘も持っている様だ。
戦績18戦18勝15KO、こちらも難しい相手である。
ビデオを見た2人、静かに何かを考えている。
それもその筈である。
2人の対戦相手は、それぞれが佐伯と甲斐に似ている。スイッチスタイルで接近戦を好む甲斐、アウトボクシングから試合をコントロールしKOを築いて来た佐伯、いつか対戦する為の予行練習の様な戦いだと2人は思っていた。
「何だか、戦い方が2人に似てるね!」
「確かに、強敵だね」
「……2人でそのうちにやる予定なんだろ?…このくらいはクリアしないとな?」
「……楽しそうな相手ですね……俺はKOで勝ちますけど、拳人はどうかなぁ……まぁ、KOで負けたとしても、俺がお前の分まで強くなるからな!」
「昴……お前こそ負けそうだ!……参ったなぁ…ここで昴とお別れか~……」
「言葉だけなら世界チャンピオンだな?」
「リボンでも付けて、そのままお返しするよ!」
「せっかく心配してやってるのに!」
「大きなお世話だ!……心配されなくても、俺は勝つからな!」
「俺はKOで勝つが、お前は……ぎりぎり判定かな?」
「馬鹿かお前は?……俺がKOで勝つんだ!……お前のへなちょこパンチじゃ、やっと判定だろ?」
「試合結果で悔しがらない様にな!」
「お前がな!」
「そこまでだ……どうやら、やる気だけならあるみたいだな?」
「「絶対勝ちます!」」
「よし、楽しみにしてるぞ!」
「明日から、しっかり対策を立てていくよ!」
「「はい!」」
「……しっかり勝ってよね?……負けたら許さないから!」
「拳人に言ってくれ……俺は大丈夫だ」
「昴は口だけだからな~……まぁ、しっかり勝つさ!」
話が終わると、2人はアパートまで走って帰った。
アパートに着く。
「拳人、絶対勝てよな!」
「当たり前だ!……お前こそ、しくじったら許さねぇからな!」
「勿論だ……こんな所で足踏みはしてられねぇ……」
「全くだ……まだまだ先は長い……」
2人は握手をし、お互いの部屋に入って行った。
この2人の事をジョシュは見ていた。
「少しは大人になったかな?……」
ジョシュは呟き、少し口元を緩めながらマンションに入って行った。
どんな試合が待っているか……




