ロサンゼルスでの最後の試合……
さぁ、アメリカでの最後の試合が決まりました。
佐伯と甲斐は、いつも通りにジムで練習している。
ロードワークから戻ると、ラリオスに声を掛けられる。
「2人共、ちょっとこっちに来い!」
2人は会長室に入る。ミゲールかすでに居る。
「2月に試合だ……」
「期間が空きますね?」
「別に、12月でも構いませんよ?」
「まぁ、色々あるからな……佐伯の相手は、ナッシュ·ゴルドー……甲斐の相手は、ジム·バルガス……名前を聞けば分かるな!」
「なかなかビッグネームだね……世界ランカーの2人じゃないか?」
「共に強敵ですね……」
「成る程……準備期間が必要ですね……」
「これにしっかり勝って、日本に帰るぞ!」
「……勝たないと帰れないですね……」
「……負けたら引退だな……」
「卒業試験としては、なかなかいい相手じゃないかな?……君達の約3年の成果が問われる訳だ……楽しみだね?」
「確かに楽しみだな……日本には、池本もトレーナーとして復帰してるしな……」
「「!?」」
「本当ですか?」
「帰って来てるんですか?」
「嘘言っても仕方ないだろう?……お前達がしっかり勝って、俺も池本に会いに行くかな……」
「ラリオス、行くのはいいけど……向こうに住み着かないでくれよ!」
「何言ってんだ、ミゲール?」
「ど~もさ……ラリオスが池本の話をしてると、恋人の話しをしてるみたいに聞こえるからさ……」
「……そっちの趣味があったのか……」
「……帰ったら、池本さんに報告だな……」
「おい、何言ってんだ?……そんな訳ねぇだろ!」
「……焦る所が怪しい……」
「……図星かなぁ……」
「……ラリオス……俺も怪しく感じて来たよ……」
「お前達~……くだらねぇ話ししてねぇで、練習続けろ!」
「「はい!」」
佐伯と甲斐は練習に戻る。
「ミゲール、俺は厳しい試練を与えたつもりなんだが……」
「そうですね……普通に考えたら、潰れていたかもしれないですね……」
「何だかんだと、しっかりと実力を付けて来たな……」
「ええ、次も勝って、日本に帰りそうですね……寂しいんじゃないの、ラリオス!」
「ふん……海を渡ったとしても、無くなる関係じゃない……池本に怒られない様に、もう少し鍛えないとな……」
「確かにね……池本は厳しそうだね……」
「……あいつは少し、頭が特殊なんだ……」
「どういう事?」
「……自分を最低ラインだと思ってやがる……自分が出来る事は、誰でも出来ると考えている……迷惑な話しだ。あんな奴がその辺に居たら、教えるこっちが参っちまうよ!」
「面白い考えだね……成る程、徳井があれだけ強いのも納得だね!」
「確かにな……あの2人、どうなるかなぁ……」
「期待には応えてくれるんじゃないか?」
「……池本が守って来た拳を、今は徳井達が引き継いでる……あいつ等は、その拳と俺達の拳も引き継ぐんだ……強くなってもらわないと困るんだが、潰れないか心配でなぁ……」
「大丈夫じゃないかな?……あの2人は、なかなか頼もしいよ!」
「……今心配しても、どうしようもないな……2人を信じるのみかな……」
「そうだね……2人の直接対決、俺も連れてってくれよ!」
「……お前は、俺をホモ呼ばわりしたから留守番だ!」
「冗談だろ?」
「冗談でも、悪い事はある!」
「いつまでも独身のラリオスが悪いんだろ?」
「開き直るつもりか?」
「事実を言ったまでだ!」
会長室は、なかなか賑やかになっている。
2人は練習に集中している。どうやら、池本が戻って来た事が刺激になっている様だ。
練習が終わり、2人はジムの片付けをしている。
「おい、しっかり勝てよな!」
「昴こそだろ?」
「お前のへなちょこスイッチじゃ、世界ランカーは厳しそうだな?」
「お前のパンチなんて、蚊も殺せねぇよ!」
「言ってろ……あんなディフェンスじゃ、リングの上で大の字だろうな……」
「お前こそ、カウンター狙って逆に前のめりに倒れそうだ!」
「馬鹿言え、お前が負けたって俺は勝つ!……まぁ、お前の分まで世界チャンピオンとして活躍してやるからな!」
「いらぬ世話だ!……お前の分まで俺が勝ってやるよ!」
「デッケェお世話だな!……実力もねぇくせに!」
「お前よりは強いさ……口だけ番長め!」
「なんだと~……」
「やるか~……」
「「あっはっはっはっは!」」
「拳人、負けたら許さねぇからな!」
「お前こそだろ?」
「何だか楽しそうじゃないの?」
エリーが入って来た。
「帰ったんじゃないの?」
「2人と話したくて……」
「そういえば、世界戦が決まったんだって?」
「そう……それで話がしたくて……」
「何か心配事でも?」
「………………………………」
「お?…エリーが珍しくナーバスになってるのか?」
「昴、珍しくは余計!」
「まぁ、世界戦だからね……色々考える事はあるよね……」
「……何をやっても心配で……」
「はっはっはっはっは、心配だってよ~!」
「昴、失礼だろ?」
「失礼?…拳人、大丈夫か?……エリーは池本さんに憧れてんだろ?…なら、今の状況は笑われるか引退を突き付けられるかしか無いだろう?」
「え?…何で?」
「昴……そうかもしれないけど、相手は女の子だぞ?」
「お前、おつむがいかれたか?……男も女も関係ねぇ、プロボクサーだろ?……そんな心構えで、よく池本さんの名前出したな?」
「昴、言い過ぎだろ!」
「言い過ぎ?……拳人、池本さんなら優しく言うか?……間違い無く、引退しろって言うぞ?」
「…………確かに言いそうだが……」
「どうして?…何で引退しろって言われるの?」
「やらなきゃやられる世界だ……不安なんて誰にでもある。そんな不安を感じる暇があったら、少しでも強くなる事を考える。それが出来なければ、やられるだけ……ボクシングはそんな世界だ!」
「確かに池本さんから学んだ事だね……不安は誰にでも有る。それを飲み込んで、徹底的に自分を鍛える……少なくとも、俺達にはそう見えていた……」
「………………………………」
「甘さが抜けねぇなら、辞めるべきだ……意地悪じゃねぇ、お前の為だ……」
「まぁ、決めるのはエリーだ……辞めても俺は構わないよ……」
「………………2人共……言いたい放題言ってくれたわね…………」
「「!?」」
「…………辞める訳無いだろ!…絶対に世界チャンピオンになって、あんた等2人を見返してやるんだから!……見てなさいよ~……」
「はいはい、口だけ番長にならない様にな……」
「口では何とでも言えるからね……」
「…………口だけじゃないわよ!…絶対世界チャンピオンになって、池本に2人の事言ってやるんだから!」
「「!!!」」
「それは待て!…池本さんは関係無いだろ!」
「そうだ!…あの人に言う必要は無い!」
「それは私の勝手だよ~だ!」
エリーは舌を出し、ジムから足早に出て行った。
佐伯と甲斐は顔を見合せ、笑い合った後にジムを閉めて帰路に着いた。何となくだが、先が見えて来た1日であった。
どんな試合が待っていますか……




