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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
22/159

2人はお年頃?

2人の変わった話し……

話は少し遡る。佐伯と甲斐がアメリカに来て、1年くらいの事である。

佐伯と甲斐は、いつも通りに練習し片付けをしていた。2人共に6回戦になっており、それなりに戦績を納めている。そんなある土曜日、2人が片付けをしているとエリーが入って来た。

「ちょっと聞いて!」

「うるさいのが来たよ……」

「……どうしたの?」

「昴には話して無いですよ!」

「それは良かった。拳人よろしくな!」

「そう言うなよ、付き合え昴!」

「え~……」

「何よ、そんなに嫌なの?」

「どうせさぁ、この間の試合が苦戦したとか言うんだろ?」

「うっ…………」

「図星なの?」

エリーは黙って頷く。

「んな物、練習が足りねぇだけだろ?」

「昴、もう少し優しく言えよ……」

「優しくされたいなら、ボクシングなんてやるなよ」

「別に、優しくなんてされたく無いわよ!…ただ、もっと強くなりたいの!」

「エリー、何で苦戦したのか考えてみなよ……苦戦する事は悪い事じゃない、そこから学ばない事がいけないんだ!」

「拳人はどこかの聖人みたいだな。相手を圧倒出来る力が無かっただけの話しさ……色々足りないのさ……」

「足りないのは分かってるけど、意見だって聞きたいの!」

「……正直に言って下半身かな……走り込みが足りないと思うな」

「誰よりも走ってるわよ!」

「か~、これだもんな~……拳人が意見言ったって、反論してんじゃんか?……愚痴が言いたいだけなんじゃないの?」

「何よ!…酷いんじゃないの?」

「2人共落ち着いて……いいかい、エリー…誰と比べて走ってるの?……まさか、ジムの選手なんて言わないよね?」

「…………………………」

「これだよ……所詮甘いんだよ……俺は先に帰るからな……」

佐伯は右手を上げ、着替えて帰って行った。

「何よ、あの態度!」

「……昴も苦い思い出なんだよ……誰と比べてやっているのか、少なくとも俺達よりはやっている自負がないとね……目指す物が世界チャンピオンならね」

「だって……私は女性だし……」

「それを言うなら、昴が言った様にボクシングをやらない事だね……そんな甘えた発言を通したいならね」

「…………厳しいなぁ……昴は厳しさを投げ付けて来るけど、拳人は厳しさをしっかりと伝えて来る……どっちも厳し過ぎ!」

「俺達も同じダメ出しをされたんだよ、ラリオスにね」

「デイビッドに?」

「ああ、そうだ……誰と比べて練習をしてるんだ?…勿論、池本や俺と比べてしてるんだろうな?……ってさ」

「池本やデイビッドと比べるって……まだ、プロになったばかりだったでしょ?」

「そうだね……でもさ、池本さんなら、やってた気がするんだよね……しかも、[それでもまだ甘い]とか言いながらね!」

「…………そうかぁ……私は甘いな~……」

「まぁ、まだまだこれからなんだからさ……お互いに頑張ろうよ」

「うん!」

この事をきっかけに、2人は意外に仲良くなっていく。


翌日の日曜日、佐伯はアカデミーの仲間とブラウンのジムに行く。

いつも変わらない面子である筈だが、その日は少し違っていた。ジムに行くと、見た事無い女性が居た。

「佐伯、丁度良かった。彼女のサポートを頼むよ」

「俺ですか?」

「ああ、よろしくな!」

「初めまして、中谷なかたに好美よしみって言います」

「おお!…日本人だね!」

「え?…はい、そうですけど……」

「いや~…拳人以外の日本人と話すの、久しぶりなんだ!」

「拳人って誰ですか?」

「ああ、別に知らなくていいよ……で、このジムに来た目的は?」

「はい、リズムに乗って動くの、凄い格好いいじゃないですか?…だから、やってみたくて!」

「成る程ね……よし、こっち来なよ…こいつ等と一緒にやればいいさ!」

「はい、ありがとうございます!」

この日から中谷は、休みの日にブラウンのジムに顔を出す様になる。

中谷はロサンゼルスに留学しているが、髪は茶髪であり肌も焼けている。いわゆるギャルに分類される見た目であるが、佐伯と馬が合う様でだんだんと仲良くなっていく。

そして、佐伯の試合を見て、佐伯への感心がどんどん高くなっていく。佐伯も満更では無いらしく、2人の距離は縮まっていく。


2人は若者である。異性に興味を持つのは当たり前だし、自然の摂理である。別に悪い事ではない。

特定の彼女が出来たからと言って、2人は練習が疎かにはならない。そんな2人だから、彼女が出来た事がプラスに働き、ジムワークにも一層力が入って行った。

2人の快進撃は、それぞれの彼女の存在が大きいのかもしれない。

全くタイプの違う2人だが、それぞれが自分の出来る事で佐伯と甲斐を支えていた。簡単な様だが、なかなか出来る事では無い。

2人のアメリカでの生活は、楽しみもちゃんと有る様だ。


しかし、2人がアメリカに来た目的は別である。その目的達成の為に、2人は彼女達に時に心配を掛けながらも、強くなる事に邁進する。時にヤキモチを焼かれながらも、それぞれに自分の道を歩いて行く。

2人が強くなり世界チャンピオンになり、いつしか世界が注目する様な大きな舞台で、2人の直接対決を見たいと思う者は、それなりに居るし期待もしている。

2人は、そんな期待に応える義務があるのだ。

まぁ、若者ですからね……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2人も年頃ですね! そして、しっかり成長してますね!
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