本日2人は休養中……
さて、試合は終わりました……
試合の翌日、2人はバイトも休み休息を取っていた。完勝とはいえ、なかなかハードな試合であった。
2人はそれぞれ、別の場所に向かう。
佐伯はブラウンの所に来ていた。
「やぁ佐伯、どうしたんだい?…今日は休養だろう?」
「そうなんですけど……昨日の試合、納得がいかなくて……」
「テレビで見てたけど、なかなかいい出来だったじゃないか?」
「……まだまだ甘い、日本に居る先輩達にも遠く及ばない……」
「……佐伯、君は山を登る時、何処から登るんだい?」
「山ですか?……何処からって……それはやっぱり、1番下からかな……」
「先輩達が君より上なのは当たり前だよ…先に山を登ってるんだからね……でも、山の坂が急になっても休まず頑張れば……追い付くかもしれないね!」
「確かにそうですけど……」
「佐伯、君は何でそんなに急ぐんだい?」
「ブラウンは池本さんを知ってますか?」
「知ってるよ。ボクシングの世界チャンピオンだ!」
「ああなりたいんです……あの人の様になりたい……あんなチャンピオンになりたいんです……」
「池本か……確かに遠いね…………でもさ、池本だって最初から強かった訳じゃない筈だよ……彼だって、それこそ脇目も降らずに頑張った結果じゃないかな?……それに、池本を目指すなら、やっぱり足元をしっかり固めないとね!」
「そうですね……今は自分の出来る事をやっていくしかないですね……」
「所で佐伯、池本の強さってなんだい?」
「池本さんの強さですか…………パンチ力もあるし、ディフェンス力も高い……スピードもあるし、数えたら切りがないですね……」
「成る程ね……佐伯、多分今のままだと池本には追い付けないよ……甲斐にも勝てない」
「どうしてですか?」
「池本の強さをまずは理解しないとね……まぁ、甲斐も理解出来てないかもね!」
「……ブラウンは分かってるの?」
「多分、君達よりは分かってると思うよ?……これが分かれば、もっと強くなるね!」
佐伯はブラウンの話を聞いて、改めて池本の強さについて考える事をする様になった。
甲斐は渋崎の所に行く。
「いらっしゃい」
「失礼します」
「昨日は、勝利おめでとう!」
「ありがとうございます……」
「勝っても満足出来ませんか?」
「そんな事は無いですけど……」
「佐伯君の試合を見て、自分の未熟さを痛感しましたか?」
「……はい……」
「はっはっは、隣の芝生は青く見える物です」
「……それは……」
「佐伯君も、同じ様に考えてるって事ですよ」
「昴が?……まさか……」
「どう捉えようと勝手ですけどね………それより、池本さんの事…少しは分かりましたか?」
「……色々考えてみたんですが…………とりあえず、池本さんの強さを考えて……」
「それで答えは?」
「……パンチ力も高いし、ガードもいい……スピードもあるし……強くなるべくしてなった感じがして……」
「成る程……君は佐伯君まで辿り着けないですね」
「!?……何でですか?」
「大切な事が分かっていない……佐伯君も分かっていないだろうから、2人はどちらも頂きには辿り着けませんね……」
「大切な事って……?」
「大切な事を簡単に教えて貰えると?……君は、随分と甘ったれですな……少しは苦労をしなさい。それが、今後の糧になる」
「……はい、すいません……」
甲斐も渋崎の話を聞き、改めて池本の強さを考える事にした。
2人にとって、この理解はとても大切な事になる。
時を同じくして、ラリオスはミゲールとジョシュのマンションに来ていた。ジョシュから呼ばれたらしい。
ジョシュは趣味で料理を作る。なかなかの腕前であり、家事全般はそつなくこなす。これがジョシュの独身である理由かもしれない。
ジョシュの作った料理を食べながら話をしている。
「デイビッド、君が考える池本の強さはなんだい?」
「俺も聞きたいですね?」
「池本の強さか……2人はどう思うんだ?」
「パンチ力は凄いよね!……デイビッドだけでなく、ホプキンスも倒したんだから!」
「いや、ディフェンス力を評価したい……クロスレンジであれだけパンチを貰わないんだからな!」
「なら、何がそれを支えてると思う?」
「……練習かな?……しっかりとした練習……」
「ジョシュ、それは誰もがやっているんだ……池本の場合はハートさ……そうだろ、ラリオス?」
「ミゲールは半分正解かな?」
「半分?」
「池本の強さ、それは……信じぬく強さだ!」
「「信じぬく強さ?」」
「誰だって、不安や振り返る事はある……しかし、池本はそれをしないんだ。先にある物を静かに見据えて、それに向かってただ邁進する……簡単な様に聞こえるが、これは難しい……そして、成功の為なら多少の犠牲も覚悟する。これ事態は珍しくないが、多少の犠牲に自分の命まで入っているんだ……あの馬鹿に勝つのは、本当に難しいよ……」
「成る程……凄い男だね……」
「ブライアン会長が言っていた男と被るね……」
「……そうだな……ブライアン会長がいつも話してくれた……[日本には、侍はまだ生きている。俺は確かに遭遇した。あの男の魂を引き継ぐ男が必ず現れる。決して油断するな]……よく言ってた言葉だ……」
「ブライアン会長……癌だったんだよね……」
「ああ……それでもラリオスの試合は見てたけどな……ラリオスが池本に負けて……病院のベッドの上で、テレビを見てたらしいな……」
「そうだな……報告した。池本に負けた事、侍に会った事をな……」
「笑顔だったな……[侍と最後まで打ち合った。俺の誇りだ!]そう言ってたな……」
「嬉しそうだったよね!……デイビッドに会った時、かなり興奮してた……」
「ああ、[Well done my son!(よくやった、我が息子よ!)]と言ってくれたな……それから数日後に亡くなったけどな……」
「それを引き継いで、ジムをやる事にしたんだったな……」
「ブライアン会長、佐伯と甲斐を見たら、もっと興奮しそうだね!」
「そうだな……」
意外な事実が明らかになった。ラリオスの師匠はブライアン·イーグルであった。どうやら、2人は必然的にアメリカに来た様だ。
まだまだな2人です。




