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心魂拳~共鳴する拳~  作者: 澤田慶次
18/159

佐伯の試合……

佐伯の出番です。

控え室にラリオスとミゲールが来る。

「甲斐はしっかり勝った」

「続かないとね、佐伯?」

「……2人共、何か勘違いしている……続く必要は無い、俺のが上だと証明する……」

佐伯は静かに、しかし力強く言葉を発した。その顔は今までよりも引き締まっており、ラリオスもミゲールも少し驚いていた。

合図が入り、佐伯は花道へと向かった。


青コーナーより佐伯が入場する。

佐伯は少し顔を下に向け、ゆっくりと花道を歩いて行く。ゆっくりとリングインすると、客席に頭を下げた。

続いて、赤コーナーよりバンナが入場して来る。

バンナは軽くパンチを何発か放ち、それから花道を歩いて来た。軽く打ったパンチが異様に切れている。バンナがリングインすると、会場から拍手が起こった。バンナは応える様に、右手を上げた。

両者の紹介があり、2人はリング中心でレフェリーから注意事項を受けると、一旦各コーナーに別れる。

「カーン」

ゴングが鳴る。


1ラウンド…………

バンナは左ジャブを放ちながら前に出て行く。距離を詰め、自分の距離で戦おうと考えている。

ここで、バンナは一瞬、自分の目を疑った。佐伯が出した左ジャブ、バンナは確認出来なかった。

佐伯のジャブを受けバンナの頭が弾けると、佐伯はすぐに左に回りながら左ジャブを放っていく。これは、アウトボクシングを好む選手なら当たり前であるが、違うのはスピードである。

佐伯のスピードは以前よりも遥かに速く、佐伯に比べればトンプソンもスローに見えるくらいである。

バンナは佐伯のジャブを被弾しながら、それでも佐伯を追う。

しかし、スピードが違う。佐伯のスピードにバンナは付いて行く事が出来ない。

佐伯はバンナに、外からどんどんパンチを放り込んで来る。

バンナは必死にガードしながら、佐伯を追い掛ける。佐伯を追いながらバンナは必死にパンチを返していくが、バンナが右を打とうとした瞬間、佐伯の右ストレートがバンナを捉えた。

一瞬怯んだバンナに、佐伯は更にパンチを被せていく。その連打の速さにバンナはガードを固めるが、佐伯のパンチが軽いと分かるとバンナは右に力を溜め佐伯を狙った。

このバンナのパンチが動き出した瞬間、バンナの顔が弾ける。佐伯の左フックがバンナにクリーンヒットしたのだ。

先にパンチのモーションに入ったのはバンナであるが、佐伯のパンチが先に当たる。ハンドスピードは佐伯の方が上である。

佐伯は終始、スピードを落とす事無くバンナを攻め、時折タイミング良く右ストレートを当てながらこのラウンドを進める。

佐伯の右ストレートがまたもバンナに綺麗にヒットした所でゴングが鳴った。


2ラウンド…………

バンナの顔は赤くなっており、相当頭に血が登っている様だ。バンナは左ジャブから前進して来るが、後の事は考えていないくらいに成り振り構わず距離を詰める。

佐伯は先程のラウンドと変わらない。左ジャブから左に回る。スピードは変わらず物凄い。

バンナは佐伯のパンチを貰う度、しっかりと歯を食い縛りパンチを返していく。そんなやり取りをしながら1分が過ぎた頃、バンナが佐伯に追い付く様になっていく。

先程まではバンナのパンチは佐伯まで届かなかったが、今は佐伯がかわしながら試合を進めている。

誰もが、バンナが佐伯を捉えるのは時間の問題と思ったその時、バンナの右が動いた瞬間に佐伯の右ストレートがバンナに決まり、バンナは左膝と右手をキャンバスに着いた。

レフェリーが割って入りカウントが始まる。

実は、佐伯はわざとスピードを落としバンナに追い付かせていた。

佐伯に追い付けると思ったバンナは、突進力を上げていく。更には、今までの仕返しにとパンチに力が入る。そうやってバンナの前に出て来る力を最大限に活かし、右のカウンターを打ち込んだのだ。もう1つ説明するなら、佐伯は右ストレートを打つ瞬間にスピードを上げ、バンナの虚を突いた。来ると分かっている強いパンチより、分からない所から来るタイミングの良いパンチの方がダメージは大きい。バンナは佐伯のパンチに堪らずダウンをしたという訳である。

バンナはカウント8で立ち上がり、ファイティングポーズを取ると試合再開となる。

佐伯はスピードに強弱を付け、バンナを翻弄していく。故意にスピードを緩め緩急を付ける事で、バンナは佐伯を追い切れない。

野球で、緩いカーブの後のストレートが130kmだったとしても150kmに感じるのと原理は同じである。

佐伯は緩急を付ける事で、バンナに自分のスピードを必要以上に速く感じさせ、ダウンから立ち直る隙を与えない。

バンナは佐伯が何時攻撃するか分からず、更には不意に攻撃すればカウンターの餌食になる為に精神力さえも削られていた。

佐伯が左ジャブから距離を詰め、左右ボディを叩いた時にバンナは右フックを放つが、佐伯は1度バックステップをしバンナの右フックが通過するとステップイン、左ボディから右アッパーを繋げバンナにヒットさせた。

バンナは一瞬、膝が折れ腰が落ちたが何とか堪えた。その瞬間にゴングが鳴った。2ラウンド終了である。

バンナは何とか踏ん張った。それはバンナのプライドである。

学生全米チャンピオンとして将来を期待されていたバンナ、現状、佐伯にいい様にやられている。バンナが踏ん張れた理由は、その屈辱感である。バンナの顔は厳しい表情となり、佐伯を睨む様にしてコーナーに戻った。

試合はまだこれから……

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― 新着の感想 ―
[良い点] さすが佐伯ですね!1ラウンドからダウンを奪うとはキッチリやりますね。
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