強くなりたい2人……
強くなって貰わないと困ります……
佐伯と甲斐はアカデミーに向かった。本日もアカデミーで授業である。佐伯と甲斐は、着いてすぐにラリオスの所に行く。
「何だ?」
「「久我龍晃を知ってますか?」」
佐伯と甲斐は、お互いを見る。
「久我龍晃?……俺は知らんな?」
「そうですか……」
「分からないか……」
2人は肩を落として出て行く2人、ラリオスはただ見送っていた。
教室で2人は話をしている。
「何で甲斐が久我龍晃を知ってんだよ?」
「こっちのセリフだよ!」
「何を知ってんだ?」
「強いってだけだけど……佐伯は?」
「同じだな……どんな風に強かったのかな?」
「気になるな……」
この後2人は、昨日の事をお互いに話した。お互いにびっくりしていた。まさか、同じ人物の名前が違う場所で出ているとは思わなかったのだ。2人の脳裏に久我龍晃の名前が刻まれた。
この答えは、かなり先だが、意外な所で分かる事になる。
とりあえず、2人は一旦、久我龍晃の事は封印する事にした。
昼休み、佐伯と甲斐の周りには人が集まっていた。ボクシングの試合で衝撃的な勝ち方をしたのもあるが、それぞれがカポエラと合気道を相手に凄い立ち会いをした事が噂になっていた。
「スゲェな!……異種格闘技だな!」
「バーリトードに出ちゃえよ!」
「UFCも目指せるんじゃないか?」
「ボクシングで世界チャンピオン…後に総合格闘技でもチャンピオン……ついでにキックでもチャンピオンになれば、完全制覇じゃないか?」
2人の周りは勝手に盛り上がっている。
しかし、2人は良く分かっている。ボクシングの世界チャンピオンになる道は、そんなに甘くない。更に言うなら、どの競技でも世界のトップになるのは、生半可な物ではない。
2人は周りの言葉に踊らされる事無く、自分のやるべき事をしっかりと行っている。少し、成長が感じられる。
ボクシングジムでの練習でも、2人の成長は感じられた。今までは、何処か集中力を乱す事があったが、今の2人にはそれが無い。ラリオスとミゲールもご満悦である。
「おい!」
「「はい!」」
「がんがん試合組むぞ!……3月までに目標は8回戦だ!」
「「はい!」」
8回戦まで上がるには、8勝が必要である。佐伯は2勝·甲斐は4勝である為、まだまだ試合が必要だ。試合間隔が狭く、かなり厳しい目標だが、ラリオスは敢えて2人にこの目標を課した。
ここからはかなり厳しい物になる。
試合間隔は約2カ月、なかなかダメージ等を抜く時間も無い。2人には試合にただ勝つだけでなく、なるべくダメージを残さない勝ち方が要求される。厳しい状況を作られている。
しかし、佐伯と甲斐のレベルは、他の4回戦や6回戦のボクサーより頭1つ抜けている。ラリオスは敢えて厳しい目標を立てる事で、2人を更に強くしようと考えた。実際、試合での経験は練習の何倍もの価値がある。ラリオスは良く分かっている。
9月下旬に試合をした2人、甲斐はこの時6回戦である。佐伯は甲斐に先を越されていると思い、気合いが入っている。
試合は1ラウンド42秒KO勝利である。
甲斐は6回戦との事もあり、多少の苦戦を予想したが、結果は1ラウンド1分27秒でこちらもKO勝ちである。
ダメージの少ない2人は、翌日からジムワークを再開し練習に没頭する。
11月·2月と2人は順当に勝ち星を重ね、4月には甲斐は勝利と共に8回戦に上がる。佐伯は甲斐に遅れる事、約4カ月、見事に8回戦に上がった。
アカデミーでの生活にも溶け込んでおり、2人はクラスの中心となっていた。特に選択格闘技の授業では、2人はそれぞれに目立っており、この授業はどっちも人気になっていた。
ブラウンのジムも渋崎の道場も、授業の人気から門下生が激増した。
ちなみにだが、ブラウンはカポエラの講師では無い。ブラウンの弟子が講師を受け持っている。
佐伯が8回戦に上がったある日曜日、佐伯とブラウンはスーパーに買い物に来ていた。どうやら、みんなで夕食を作って食べる様だ。この時に、甲斐も渋崎とスーパーに買い物に来ていた。理由は同じである。スーパーでばったり会った4人、意外にも最初に声を掛けたのは渋崎であった。
「いや~…ブラウンさんじゃないですか?」
「渋崎先生!……ご無沙汰しています!」
「こんな所で会うなんて……」
「世の中狭いですね!」
「「2人は知り合いですか?」」
「古くからの友人です」
「私がまだ、10歳にもならない頃ですかね?」
「ははは、私も30歳になっていなかった!」
「近くでジムをやってるんですか?」
「この先で道場をやってまして……ブラウンさんはどうなんです?」
「私もジムをやっていますよ!」
「そうですか…それは結構ですな!」
「お互いに元気で何よりです!」
2人の話は盛り上がっている。なかなか楽しそうである。
2人が話しているうちに、渋崎の道場でみんなで鍋をする事になり、ブラウンはカポエラのジムに連絡し渋崎の道場に集まる様に指示した。
「あの道場は、渋崎先生の物でしたか?」
「看板が出てますよ?」
「日本語は読めません……」
「成る程……では、いつでもニアミスでしたな?」
「本当です……渋崎先生は道場しかやってないんですか?」
「いや…ラリオス校長の所で講師もしてますよ!」
「!?…弟子のロバートがカポエラの講師をしていますよ!」
「なんと…………分からない物ですな?」
「本当に…………」
「「はっはっはっはっは!」」
「何だか仲がいいな?」
「喧嘩にならなくて良かったんだが……不思議な光景だな?」
「さて、買い物を終わらせましょう」
「そうですね。みんな待ってますからね!」
4人は買い物の続きをする。ある程度の材料は買い終えた。
「締めに……やっぱり雑炊だな!」
「いや、煮込みうどんだ!」
「馬鹿か?…締めはご飯入れて卵で綴じてだな……」
「うどんを煮込んで、卵を落とすんだろ?」
「ご飯を入れて雑炊だ!」
「煮込みうどんだ!」
「ご飯だ!」
「うどんだ!」
「ご飯だって言ってんだろ?」
「うどんに決まってんだよ!」
「豪快なKOの俺に従え!」
「俺のが戦績は上だ!」
「この野郎~……」
「やるか~……」
2人は腕を捲る。
「「辞めないか!」」
「お前達はお子ちゃまか?」
「リングの上と同一人物だとは思えないよ……」
渋崎とブラウンは頭を何度も横に降った。結局、鍋は何個も作る為に、両方を購入する事になった。少しは成長したかと思ったが、意地の張り合いは変わらない2人の様である。
これからもっと、頑張って貰わないと……




