出発の時……
若い2人の物語。
色々騒がしいけど、やる時はやると思う……
大丈夫だろう……うん、多分大丈夫……
すいません、作者から見ても心配な2人です……
3月1日、若い2人の男は飛行機に乗り込む。持っているバッグには最低限の着替えと2人にとって大切な物、それを持って2人はアメリカはロサンゼルスに向かう。
この物語はここから始まる。
2人は飛行機の中に入る。
「甲斐、窓際譲ってやるよ!」
「別にいいよ……気持ち悪いな……」
「人の好意は受け取っておけ!」
「お前の好意はいらねぇよ!」
「いいから受け取れ!」
「やだって言ってんだろ!」
「お客様!…他のお客様に迷惑になります。すぐに席に着いて下さい」
「「……すいません……」」
「みろ、怒られたじゃねぇか!」
「佐伯のせいだろ?」
「お前が素直じゃねぇからだろ!」
「俺は素直だよ!」
「お客様!…座らないなら、降りて貰いますよ!」
「「すいません!」」
2人は慌てて席に着いた。
飛行機はロサンゼルスに向けて出発する。
飛行機が飛び立ち、少しするとCAが飲み物を配りに来る。佐伯はお茶、甲斐は水を貰う。
「静かだな、佐伯」
「うるせぇな、話し掛けるな!」
「うるさくしてねぇだろ!」
「話し掛ける事がうるせぇよ!」
「何だよ、この野郎……この場で決着付けてやろうか?」
「俺の楽勝だ!……望むならやってやるよ!」
「お客様!……何度も申しておりますが、とても迷惑でございます。もう少しお静かにお願い致します!」
「「……すいません……」」
この2人、さっきから何度も怒られている。
窓際に座っている男、佐伯昴18歳、3月1日に高校の卒業をし、着替えてすぐにこの飛行機に乗ってロサンゼルスを目指す。
もう1人の男、甲斐拳人19歳、佐伯より1つ年上であり、彼もまたロサンゼルスを目指す。
2人は親友という訳でもなく、仲が特段いい訳でもない。
しかし、2人には共通点がある。
ある男を目指し、それぞれに夢を持っている事。更に、その夢を叶える為にロサンゼルスを目指している事である。
2人は同じスポーツ新聞を見ている。
日付は2月27日、見ている記事はボクシングである。
見出しには[池本、ミドル級4団体統一!]と書いてある。この2人が憧れ目指す人物は、世界ミドル級4団体統一王者にして、日本人初のPFP1位、池本純也である。そう、この2人はプロボクサーである。
この2人には因縁がある。
甲斐は高校2年の時に、インターハイ·国体を制している。順風満帆に見えた高校時代だが、3年になって他の高校から佐伯が出場すると、なかなか佐伯に勝てなかった。甲斐に変わって佐伯がインターハイ·国体を制した。国体の時には、かなり揉めている。
「俺は階級を変えるつもりはない!」
国体の東京都代表を決める際、甲斐が放った一言である。佐伯と甲斐はフェザー級であり、東京都としては2人を出場させたかった。贔屓目無しに、2人が出場していれば、東京都の国体のメダルは確実に2つは計算出来た。その為にボクシングの国体の監督は、甲斐に階級の変更を依頼したのだが、上記の様に断られたのだ。
しかし、甲斐のこの返答を受け、
「勝った俺が変更は有り得ない。俺は階級を変えるくらいなら、出場を辞退する!」
と佐伯も突っぱねた為、結局は直接対決を制している佐伯が代表となり、佐伯は国体を制する事になる。
翌年、甲斐はボクシングジムに行き、順調にプロボクサーとして歩み始める。
一方の佐伯は、高校のボクシング部に嫌気が差し、部活を辞めボクシングジムに通い、こちらもプロボクサーになった。
佐伯は1戦1勝1KO、甲斐は3戦3勝3KOである。2人は順調にボクサーとして歩むと思われたが、
「2人は甘すぎる!」
と指摘された。指摘したのは2人の憧れの池本と、オリンピックの金メダリストで2階級王者のデイビッド·ラリオスであり、2人は親友の間柄である。2人の経緯は色々あるが、ここでは省く事にする。
そこで2人から提案されたのが、ロサンゼルスのラリオスのジムでの修行である。2人の甘さをなくし、しっかりとボクサーとして歩ませる為、2人が出した結論である。
だから2人のバッグには、最低限の着替えとボクシング用品、それに、詰めきれない程の夢と希望が詰まっている。
2人は早くロサンゼルスに着かないかと、到着を心待ちにしていた。
飛行機に乗る事10数時間、ロサンゼルスの空港に着いた2人。待っていたのはラリオスの通訳であった。
「佐伯·甲斐、待ってたよ!」
「「ありがとうございます!」」
「大丈夫だった?」
「まぁ、何とか!」
「こいつのせいで怒られましたけど!」
「お前が素直じゃねぇからだろ!」
「お前がしつこいからだよ!」
「さしずめ、佐伯は高い所が苦手なのかな?」
「!?……苦手っていうか……あんな鉄の塊が空を飛ぶとは……」
「何だよ、飛行機が怖いなら素直に言えよ!…交換してやったのに!」
「怖くねぇよ!……信じらんねぇだけだ!」
「……負け惜しみだな!」
「違~よ……ぶっとばすぞ!」
「やれるならやってみろ!」
「ストップだ!……池本の苦労が分かる気がするよ……とりあえず、目的地に移動するよ!」
「「はい、お願いします……」」
何処でも揉める2人、この先が思いやられる。
しかし、池本を始めこの2人を楽しみにしている人は意外に多い。果たして、2人はどんな成長をし、どんなボクサーになっていくのか。
そんな2人の最初の1歩は、ここロサンゼルスから始まる。
最初から、揉めに揉めてます。
やっぱり心配な2人です。
これからどうなりますか……




