秘密の写生会
今日も晴れたので、朝早くから支度して、自転車漕いで例の本来立入禁止の忘れな草の所に来た。
「今日は会えるかな。」
はりきって、二人分のスケッチブックと鉛筆、水彩色鉛筆やクーピーを持ってきた。
おやつもいちご飴や個装されたイチゴチョコを持ってきた。
浮かれ気分で張り切り過ぎだよ、私。
大体ユメヒちゃんはお絵かき好きかわからない言ってたし。
あと私が一方的にユメヒちゃんが好きになって、強引に誘って迷惑に思われてたら…
静かな風が緑の香りを運んでくる。風が吹くたび、さわさわ草木のなびく音が聞こえる。野鳥もいるのだろうか、澄み渡るような鳴き声も聞こえる。
景色をぼんやり見ながら、しばらくこんな考え事をしていたら、「…こんにちは…ユウカ…さん…」と、鈴の音のようなかわいい声がした。
振り向いたら、木の影に隠れた白いのがチラッと見える。もう怖さはない。かわいい。
「わあーい‼︎ユメヒちゃんっっ⁈来てくれたんだー。ヤッホー‼︎」
もう私の方が年下のようなはしゃぎ方をして、隠れてる友の方に駆け寄った。小学の私は礼儀も作法もなってない。また会えた嬉しさで、そんなものは吹き飛んでしまった。
友の格好は、昨日よりも斬新さがアップしていた。
死装束に白いクロックスは昨日と同じだったが、その上に白いダボダボなパーカーを着込んでいた。フードもしっかりかぶっている。
そして何より、目だけ隠すような白い仮面?を身につけていた。元々整った美しい顔立ちだからか、そんな斬新な格好がしっくりと似合っていた。
「昨日は薄着だったもんね。今日は暖かそうだね。」
「…うん。」
ユメヒちゃんは俯きながら、小さく頷いた。
よく見ると、はにかんでいる様な嬉しそうな表情に見える。
多分嫌われてない。心から嬉しくなった。
早速、昨日スケッチした場所に座り、持ってきた画材を広げた。昨日ラフに鉛筆で描いたものに、色を乗せたかった。あの妖精の棲家のような草花と光をうまく再現できるかな?
ユメヒちゃんに新品のスケッチブックを渡し、「色鉛筆もクーピーも、好きに使っていいよ?別にスケッチじゃなくても、何でも描いてみてね。」と、またもや強引に絵描きを強制した。
私は水彩色鉛筆で鉛筆で描いた所に色を乗せ、持ってきた水入れに水筒の水を少し入れ、筆で色を広げたり、ぼやかしたりしてみた。
ユメヒちゃんはその様子を興味深そうにじっと見ていた。自分のスケッチは何も進んでないようだった。
忘れな草もアップで描いてみた。こちらは初めから色鉛筆で仕上げてみた。
「…きれい。」
ユメヒちゃんが話しかけてくれた。
私の腕は、昔美大生だった祖母が手ほどきしてくれたものだ。小学生にしては上手な方なはずだ。
おばあちゃん、ありがとう。