秘密の友達
内気そうな白い妖精みたいな子が案内してくれた場所は、開けた場所一面に水色の忘れな草が咲いてる場所だった。
所々にさらに青いスミレが咲いている。日の光が穏やかに差している、妖精の棲家のような所だった。
「わあ‼︎すごく素敵な場所!ユメヒちゃん、ありがとう‼︎」
ユメヒちゃんは俯いたままだったが、なんだか嬉しそうだ。
早速、スケッチをしてみる。鉛筆しか持ってこなかったのが残念だ。
スケッチを興味深そうにユメヒちゃんが覗いている。
「ユメヒちゃんはお絵かき好き?」
「…描いたこと、ない、から、わからない…」
「今度会えたら、いっしょに描こうよ。ユメヒちゃんのスケッチ用今度持ってくるよ。」
半ば強引にスケッチする約束をしてしまった。
こうでもしないと、次会うことができないような儚いものを感じていたからかもしれない。
そうこうしてるうちに、正午に帰ると家族に伝えていた時間になり、強引に「また明日、大丈夫だったら会おうね。」と約束をして帰宅した。
小学生の頃の私は、迷惑だっただろうな。
(ユメヒ…コ視点」
ボクは他の人に会ったらダメなのに、今日会って、話もしてしまった。
ボクは、この家の神の生贄の子として、本当は大人しく幽閉されてなければいけないのだけど。
でもたまに天気のいい日、こっそり抜け出して、敷地内を散歩していた。
散歩中、家の敷地内なのに、知らない人がいた。その人は自分より少し年上の子で、迷子のようだ。
迷ったけど、泣きそうになっているので、隠れながら道案内することにした。
その人は花のスケッチが趣味らしいので、関係者以外立入禁止の、花が結構年中咲く場所に案内したら、とても喜んでくれた。
思えば、知らない人とこんなにお話ししたのは初めてだし、初めて楽しい気持ちになった。
いちごの絵の付いた飴もたくさん貰った。
ユウカって名前だったかな。
初めての秘密の友達。
このいちごの飴は宝物にしようかな。
なんだか嬉しいな。
明日もこっそり抜け出せたらいいけど。