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忘れな草といちご飴  作者: ねこにさかな
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出会い

ある気持ちの良い晴れの日の朝、スケッチのために近くの山に来た。再来年、美大に進学するためでもあるけれど、ある思い出のために。


山といっても本格的に登山するような所ではなく、小学生の頃から自転車で気軽に行けるような雑木林だ。

春になると、いろいろな野辺の花たちが可憐に咲いている。

国有地とかではなく、個人所有の所と聞いている。だからか、山菜採りとかは禁じられてるらしい。

日当たりの良い場所にわらびや山椒の葉も見る事ができる。だいぶ育って食べられそうにない蕗の薹も良いデッサンになる。


小学高高学年のときから、デッサンのためにこの場所によく自転車で来ていた。

自転車を道路脇に置き、スミレや一輪草、カタクリの花など目当てに雑木林を少し進み過ぎてしまい、道に迷ってしまった。

当時携帯電話など持っておらず、不安で泣きそうになっていると、木かげからちらちらと白いものが見え隠れしている。

一瞬恐怖に固まってしまっていると、「大丈夫?」と鈴の音の様な小さなささやきが聞こえた。

「迷ってしまったの。」と、その隠れている白い小さな人?に返事をしたら、「こっち、こっち、」と白く細い腕が見える。


何かかわいい気がする。近くに寄って、声の主を見ようとしたら、声の主は両手でパッと顔を隠した。

白く長い髪を裾の方で結えている。皮膚も真っ白、しかも白い死装束のようなものを着ている、5、6歳の子だった。

白い子は「こっち。」と言い顔を隠しながら案内してくれて、無事に知っている道に出ることができた。

すぐどこかに行こうとした白い子を呼び止めて、カバンからオヤツに持ってきたいちごあめを数個手渡そうとしたけど、白い子の両手は顔隠しで塞がっている。

「お礼したいな。飴は嫌いなの?」

「顔、見ても、怖がったり、しない?」

「しないよ。お友達になりたいな〜。」

「…どうして?」

「かわいいから!」

鈴の音のような小さな声も、全身真っ白の小さく細い姿も、本当にかわいいと思い、つい変態みたいな事を言ってしまった。

少しの沈黙のあと、白い子は両手でいちご飴数個を受け取ってくれた。

俯いている顔はとても整っているが、両目が普通より大きく、白目のない赤い瞳だった。

でも、私はこの俯いた白い子がとてもかわいいと思った。

「私、優香っていうんだ。名前、よかったら教えて?友達になってくれたら嬉しいな。」

「…ユメヒ…コ…」

消え入りそうな声で教えてくれた。ユメヒちゃん?

「ユメヒちゃん⁈名前もかわいい‼︎また絵を描きにここにくるね。また会えたらもっとお話ししようね。よろしくね‼︎」

「…絵を描いているの?」

おっ!話に食いついてくれた!

「お花のデッサンをしてるんだ〜。」

「お花、好きなの?」

「お花大好きだよ。ここいつも何か咲いてるから、学校休みのときたまに来るんだよ。」

「…こっち、もっと咲いてる…」

内気そうなユメヒちゃんが、どこかへ案内してくれようとしている。

私は迷わずユメヒちゃんのあとをついて行った。


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