少女の目覚め(3)
「はい、少し熱いから気を付けてね」
「あ、ありがとうございます」
なんとか冷静を繕ってご飯を受け取る。
出来立てなのかお粥から湯気が出ていた。
暖かいご飯……しかも非常食じゃない……じゅるり。
ぱくり、と口に入れてみれば質の良い出汁の香りが口一杯に広がる。
……ご飯ってこんなにおいしかったんだ。
硬い小麦の固形物しか齧ってこなかったせいか、お粥が輝いて見える。
やばい、なんか泣きそうなんだけど。
はふはふとお粥を食べていると、ベッドの脇に座って頬杖をついていたメイドが私の髪をいじりながら口を開いた。
「お嬢ちゃんの髪、すごく綺麗だねぇ~。今時こんな綺麗な銀髪めったに見ないよ~」
そういう彼女の髪は茶色で、少し伏せられている瞳は黒色をしている。
ファンタジーなんだし、パステルカラーでもおかしくないんじゃないか?
現に戦友の中に紅い髪の奴とか、それこそ同じような白髪の奴だっていたぞ?
「そうですか?私のいたところでは普通でしたけど…」
「えぇ、なにそれ。そういえば、お嬢ちゃん名前はなんていうの?どこ出身?」
すごく今更な気もしないでもないが…
食事に毒も入っていなかったし、一応敵ではないらしい相手だ。
名乗って置こう。
「私の名は、アミス。出身はエルガストです」
「エルガスト?それってどこら辺にあるの?」
「どこもなにも、ここの近くにあるでしょう?世界三大国の一つですよ?アルバスハルト、フェレベティシア、エルガスト。私、ココがアルバスハルトとばかり思っていたのですが…?」
こんな贅沢な暮らしができるほど力を持っている国なんてアルバスハルトしかないはずだ。
〈戦姫〉と言われるだけあって私の観察眼も決して悪くないはず―
「お嬢ちゃん、怪我をしていたしきっと記憶がこんがらがっているのね。」
何を失礼な、私は至って正常だ。
だからそんな残念な子を見る目で見つめるのはやめてくれ。
「ここは、カルディア王国。今年でちょうど二千年の歴史を持つ国よ。世界三大国って言ったら、カルディア、ゲルバニア、ルクシェリア…でしょう?」
かるでぃあ王国?それに、げるばにあ?るくしぇりあ……
どれも聞いたことのない国名。
それになにより……
「ねぇ、二千年の歴史を持つって言いました?」
「え?えぇ、言ったけど……」
おかしい。二千年の歴史を持つ大国など存在しなかったはずだ。
アルバスハルトですら五百年。
エルガストなんて二百年もないぞ。
でも、カルディア王国は二千年――
彼女が嘘をついているようには見えない。
ということは、転生ではなく転移?または、召喚……?
とにかく、ここは私が生きていた世界とは別物と考えるべきね。
「そっか、ありがとうお姉さん。私ちょっと動揺していたみたい。この国についてもっと知りたいんだけど…教えてくれる?」
必殺★上目遣いO・NE・DA・RE!!
「ッはい!私にお応えできるものなら何なりと!あ、何冊か本もお持ちしますね!」
決まったぁああああああ!
いやぁ、美人っていいっすね!役得ですね!
「わぁ、ありがとう~!」
行動の基本は情報収集!
〈氷の戦姫〉アミス、行きますよッ!
To be continued・・・・・